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人生は花鳥風月 https://saga135.hatenablog.jp/

自分の趣味であるギャンブルや読書、水泳、魚釣り、ゲーム、動画鑑賞等を中心に世相や人生観、様々な事を綴っています。 言ってみれば何でもありなブログです。

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2021/01/18

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  • 甦るパノラマ 二十八話

    酒に十の徳ありと言うが今の二人には幾つの効果が齎されたであろう。気分的には愉快である事は言うまでもないのだが、別に悩みが一掃された訳でもない。無論そこまで高望みする訳でもないのだが、愉快に微笑みながら談笑する表情の中にも何処か翳を感じてしまうのは思慮深い二人に共通した欠点でもあった。 それを察してか料理を運んでくれたおかみさんは明るい面持ながらも少し意味深な事を口にする。 「はい出来ましたよ、貴方達、今日ぐらいは硬い話は止めて大いに寛いで行って下さいましね、お酒はいくらでもありますから」 今日ぐらいとはどういう意味なのだろうか。英昭は初めて来た店なのに恰もその性格を見透かしたような言い方には蟠…

  • 7月の終わり しておくべき事 ~心構え、抱負

    去り際の 態も見事な 文月よ(笑) いよいよ7月も終わりを迎えますか。本当に早いですね。この前正月になったばかりと思っていましたが、もはや7月も終わり盆も間近、そしてまた正月と。 儚きは世の常。それに抗う事ほど虚しいものは無いように思える今日この頃ではありますが、ここらで時を止めて欲しいとも思ってしまう稚拙な自分もいます。 それにしても文月のこの鮮やかな立ち去り方も見事というしかありませんよね。立つ鳥跡を濁さずとは言いますが正に花鳥風月、自分も見習いたいぐらいです。 そこで月末にしておきたい事、そして新しい月を迎える上での心構えと抱負ですね。色々ありますが一つ一つ抑えて行きたいと思います^^ …

  • 甦るパノラマ 二十七話

    まだ二十歳過ぎである英昭にとって600万円という金額は大金だった。初めて手にする金。札の幅は同じだが厚さは約60mm(6cm)、とてもじゃないが財布には入らない。勿論入れる気も無い。ならば何処に保管するのか。金融機関に預けるのはヤバい。となれば自ずと箪笥預金しか道は無くなって来る。 先々警察に捕まる可能性の残っているこの現状で母に渡すのもまだ時期早尚だろう。英昭は取り合えず普段通りに生活する事を心掛ける。そうなれば今までのように仕事をサボる事も出来ない。大金を手にして初めて感じるこの窮屈感。まるで自由を奪われたようなこの感じは金を手にするまではある程度は予想していたものの、想定外の事の方が多く…

  • 英雄に天下は取れない?

    風吹けば 心安らぐ 猛暑かな(笑) それぐらいで安らぐ訳ないやろっ! っていう話なのですが、ここらで一雨降って欲しい所ではありますね 🥵 それにしてもこの連日の酷暑の中、皆さん如何お過ごしあそばされていますでしょうか。くれぐれもご自愛のほどお祈り申し上げ候。 ま~世間はコロナに五輪ピック、地震に大島優子結婚と相変わらず忙しいようですが、それも一興これも一興で自分としては常に花鳥風月を心掛け、亦夢見て時代に流される事無く流れて生きて行きたいという所ですかね。 という事で(どういう事やねん?)今日のテーマはタイトル通り『英雄に天下は取れないのか?』というその真意を探るべく、歴史上の偉人から現代社会…

  • 甦るパノラマ 二十六話

    現場に着いた二人は手筈通りに防犯カメラにスプレーを吹き付け辺りを警戒しながらも素早く行動する。英昭はシケ張り、義正はATMが置かれているハウスぎりぎりに付けていたトラックの上から直接重機を操縦する。 華奢なハウスは一瞬にして潰れ去りATM機が姿を見せる。それをそのまま重機で掴み上げ見事に奪取した。トラックに積まれたATM機はシートで覆い隠し、英昭は急いで運転席に乗り込む。 数十m走った所で車を停め、義正がトラックの荷台から降りて来る。席を交代した二人はここで初めて一息つく事が出来た。この間僅かに5分。正に予定通りの全く手抜かりのない仕事っぷりであった。 「やったな! これで俺達は億万長者か?」…

  • 甦るパノラマ 二十五話

    案ずるより産むが易し。どうせ一回きりの人生ならたとえそれが悪い事であっても、大して人に迷惑を掛ける訳でも無かったら人を殺める訳でも無い、所詮はあくどく儲けているサラ金業者の金ではないか。ならばいっそそれを奪う事に依って正義の証とする事も出来るのではないか。 実に都合の良い自己中心的な考え方ではあるのだが、これ以上逡巡する事を嫌った英昭の衝動に駆られた想いは理性を失いエスカレートして行く一方だった。 そうなれば事を起こすに早いに越した事はない。兵は神速を尊ぶ。今度は自分の方から積極的にアプローチを掛ける。電話に出た義正の声にはこの前とは真逆なぐらいに張りが感じられた。 「おう、ようやく腹が決まっ…

  • お題 記憶に残るあの日 ~情けない話

    はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」 あの日 あの時 あの場所で 君に会えなかったら 僕らはいつまでも 見知らぬ二人のまま ♪ って当たり前やろ!って話なのですが、そんなツッコミを入れてはいけません(笑) 残念ながらそんな劇的でドラマチックな恋愛などとは無縁だった自分としては、またまた他愛もない単なる思い出話になってしまうのですけど、それでも一応お題に準ずる事にはなるのかなという事で宜しくお願い致します^^ 無免許で長距離を流した思い出 高校生時分の話です。その日昼に授業を終えた自分は小学生からの付き合いだった他校生の友人と二人でペチった(パクった、盗んだ)単車にニケツ(二人…

  • 甦るパノラマ 二十四話

    何とも薄汚れた、見窄らしい恰好をしている義正には清潔感や若さが全く感じられなかった。皺だらけのシャツに洗ってもいないような擦り切れた薄っぺらいズボンに黒ずんだ白い靴。髪もボサボサで風呂に入っている様子もない。虚ろな目つきに光は無く死んでいるようにさえ見える。これこそがギャンブル依存症の末路とでもいうのだろうか。まるでポン中のようでもある。 それに比べるとまだ幾分英昭の方がマシな感じもする。同じギャンブル中毒でありながらこの違いは何なのだろう。それを確かめるべく義正を問い質す英昭。しかし彼の心もまた死にかけている事に違いは無かったのだった。 「おい、どうしたんだよお前、久しぶりに会ったのに何だよ…

  • 甦るパノラマ 二十三話

    都会の喧騒とはいうが、敢えてそこに身を窶す、ギャンブルに嵌っているこの現状に憂き身を窶す事に依って何がしかの突破口を見出そうとする思慮も決して間違ってはいない気もする。堕ちる所まで堕ちないと底が見えない、と言えば浅はかな感じもするのだが、今の英昭にはそうする事でしか己が生きている証を立てる事が出来なかったのかもしれない。 依然として彼はボートレースに興じていたのだが、一朝一夕に大金を得る事は出来ない。そこで思い付いた事は実に稚拙で軽率で打算的な話なのだが、1レース辺りにまとまった金額を投資して大儲けするといったいわゆる勝負だった。 或る休日に競艇場に赴いた彼はいきなりそれを実行に移す。次のレー…

  • 甦るパノラマ 二十二話

    英昭が社会人になってから早や3年という歳月が経った。22歳になった今その生活は更に荒み、劣化の一途を辿っているように見える。もはや彼はまともな人生を歩む気すら無くしてしまったのだろうか。勤務態度も悪化し無断欠勤する日も多い。始めの内は母に対して繕っていた嘘でさえも今では全くつかなくなり、堂々とギャンブルに興じるその様は実に救い難い完全な依存症の姿であった。 ギャンブルの収支がプラスならまだしも明らかに大幅なマイナスである。それどころか消費者金融からも数百万円という借金をしており、そのうえ母からも無心をするような自堕落な日々が続いていた。 女手一つで育ててくれた母に対し親孝行をしたいという気持ち…

  • 甦るパノラマ 二十一話

    午後8時前、英昭はそのまま駅前にあるパチンコ店に駆け込む。混んでいた所為もあったが時間に余裕の無かった彼は大して何も考えずに行き当たりばったりで空いていた台に坐る。初めて打つ機種だった。データカウンタを見上げると本日の大当たり回数は23回とそこそこの数字だ。これならもう一伸びあってもおかしくはない。 実に短絡的な発想だが、それが功を奏する場合も結構多い。すると打ち始めて僅か数回転でいきなり大当たりを射止める事が出来た。やはり天は俺に味方しているのだ。この調子で連チャンすれば閉店までにそこそこの出玉が見込める。 これこそがギャンブル好きな人間の実に甘い夢物語なのだろう。大当たり図柄は6で一回交換…

  • 甦るパノラマ 二十話

    英昭はこんな形でしかさゆりと会えなかった自分を恥じた。都会の喧騒は彼の陰鬱な心持を更に曇らせる。大勢の群衆で溢れる帰宅ラッシュ時の忙しい駅前に、まだ世に擦れていないさゆりの純粋で淑女のような気品を漂わす綺麗な姿は少し浮いているようにも見える。彼女は英昭に近付いて来て徐に口を開き出した。 「久しぶりね、何処行くの?」 「何処ってこれから帰る所だよ」 「ちょっとつき合ってくれない?」 「あ、ああ、いいけど」 二人は取り合えず近くにあった居酒屋へ入った。そういえばさゆりと酒を飲むのは初めての経験だった。 「乾杯」 控え目ながらもそう声掛けをしてビールを飲み出す二人。さゆりの飲みっぷりの良さに愕いた英…

  • 甦るパノラマ 十九話

    さゆりの記憶の中で自分から電話をした事は一度も無かった。当然英昭が出なかった事も。高校生時分では翌日にその様子を確かめる事も出来るのだが、今となってはそれも難しい。わざわざ家まで行くのも憚られる。そこまで深く考え込むのも彼女らしくない訳なのだが、何故か気になって仕方がない。 これこそが恋というものなのか。離れ離れになって初めて経験するこの想い。こればかりは如何に聡明な彼女にも整理し難い事であったに違いない。さゆりは陰鬱な想いを秘めたまま眠りに就くのだった。 パチンコで大負けした英昭が家に帰ったのは午後10時半だった。玄関を開けても母は出迎えてくれなかった。もうとっくに夕飯も食べて床に就く頃だろ…

  • オリンピック心得 大暑 ~円周率(心)近似値の日

    蒼天に 想いを馳せる 五輪かな(笑) いやいや、暑い日が続きますが正に夏真っ盛りという感じですかね。子供の頃ほど夏の到来を喜べないくせに、夏の終わりには毎年決まって虚無感に襲われるという自分も情けない限りです(笑) 何れにしてもいよいよ明日オリンピックが開会されるのですか~。これについても色んな事を考えていましたが、事ここに至っては賛成も反対もへちまも蜂の頭もないと。 とはいえやはり一応の心得は必要とも思いますね。今日はその辺の事と記念、行事などについて語って行きたいと思います^^ オリンピック心得 その1 開会式やオリンピックの競技会場に乱入しない これは言うまでもない当たり前の話なのですが…

  • 甦るパノラマ 十八話

    付き合いの酒に付き合いのギャンブル。付き合いという言葉からはろくなものがイメージ出来ない。余り気は進まなかったがギャンブル好きな性質と、酒の影響で多少なりとも気が大きくなっていた英昭は歩みを止めなかった。 そこは初めて来る店であったが仕事帰りの人達が駆け込む夕方は結構賑わっていた。たとえ一歩でも足を踏み入れるとまるで別世界のような雰囲気を漂わせるパチンコ屋とは一体何なのか。上辺だけとはいえ綺麗な内装の中に響き渡る大きな音と怪しい光、幾重にも積み上げられたドル箱、射幸心を煽られ理性を失った客達の昂奮を抑え切れない様子。 それらの事象だけでも意志の弱い人間なら我を忘れて堕落してしまう可能性もあるだ…

  • 甦るパノラマ 十七話

    桜が満開に咲き誇る頃、世は新年度を迎える。もはや残冬の肌寒さも消え去った地上はすっかり春の陽気に包まれている。燦然と輝く陽射しには謝意を感じるが結構眩しい。その穏やかな光に乗じるようにあらゆる生命は元気に躍動し始める。 天為に依って開花した桜が演出してくれる神々しくも和やかな、優しい柔らかい雰囲気は万物に何を告げようと言うのだろう。それをただ短絡的に喜び、浮かれている人々の様は些か滑稽で、桜に対しても反って非礼に値するのではといった考え方は過ぎた思慮に依るものなのだろうか。 何れにしても春を迎え、新年度を迎えた人々の表情はあくまでも明るく朗らかで、前向きな精神の芽生えを映し出していたのだった。…

  • 甦るパノラマ 十六話

    「そんなに深く考えなくても、今の貴方のままでいいのよ」 さゆりが発したこの一言は言葉であって言葉で無い。理性ではなく感性。英昭の感覚に直接刺激を与えたさゆりの想いがどれだけ彼を楽にさせたか、その力は計り知れない。安心した英昭は軽く笑みを零す。それに釣られるように優しい笑みを浮かべるさゆり。質は違えど感受性の強かった二人にはこんなやり取りこそが或る意味楽しい試練、超えて行ける壁であったのかもしれない。その壁を一つ一つ超えて来たからこそ今に至る事が出来たのだろう。その具体的な内容までは分からないまでも。 「ご飯出来たわよ~」 「は~い」 二人を呼ぶ母の声も返事をする英昭の声も心なしか何時もより明る…

  • 保守と革新 ~選挙に見る無常感

    移り行く 空の景色も 無常かな(笑) もはや梅雨も明け外の景色もすっかり夏一色になりましたね。無論それはそれで良い事なのですが、暑い夏の到来と短い春にも色んな想いを巡らしてしまう自分がいます。 そこで昨日行われた兵庫県知事選。自分の地元兵庫県という事で注目していたのですが、その結果については個人的には残念で仕方ありません。 またまた硬い話で恐縮なのですが政治に見る今の日本の世相と言いますか、そもそも世の中、人間、森羅万象とは一体何なのかといった訳の分からない話をして行きたいと思います(笑) 兵庫県知事選 news.yahoo.co.jp 本来選挙や政治の話をするのはタブーでモラルに反する行為だ…

  • 甦るパノラマ 十五話

    恋に焦がれて鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす。どちらかと言えば互いに無口な方だった英昭とさゆりとの関係は蛍の恋に近かったのではなかろうか。 身体の契りは交わしても心の契りはまだ交わしていないというのが正直な気持ちかもしれない。別に焦る訳でもないのだが違う進路を歩む事になった英昭はもう一歩踏み込んだ恋愛をしたいと思っていた。 今にも咲かんとする桜は可憐な蕾を無数に宿し開花の時期を窺っている。木に停まっているメジロやヒヨドリは綺麗な鳴き声を上げながら戯れている。雀や鳩以外の鳥の鳴き声に気付くと自然とそっちに目を移してしまう人の癖は滑稽にも見える。英昭は空を見上げながら鳥達の飛び行く様を眺めていた。…

  • 甦るパノラマ 十四話

    二人だけの卒業式。真の卒業式。その日に交わした初めての契りはこの3年間の高校生活の集大成を飾るような烈しくも甘美な形を彩り、二人の愛の着地点でもあったのか。そう解釈してしまうのも些か虚しい気もするのだが、少なくとも一つの節目であった事には違いないだろう。 それが真の愛なのか、勢いだけのものなのか。聡明なさゆりが勢いだけで他人に靡く訳がないと確信していた英昭は今一度彼女の顔を見つめながら呟くのだった。 「良かったな」 さゆりは少し照れながらも相変わらずの毅然とした態度で答える。 「そうね、良かったわ」 そして顔を見合わせた二人は徐に笑すのだった。愛に理屈など要らないと言えば尤もらしくも聴こえるの…

  • 甦るパノラマ 十三話

    光陰流水の如し。高校に入学して早や3年という歳月が経った今、英昭はいよいよ卒業の時を迎える。まだ寒さの残る3月上旬ではあったが、1、2月をやり過ごした事で少しは気が楽になっていた。 桃の花を見上げながら思う事はその美しい佇まいと、この3年という歳月が表す懐かしさと、これから将来に向けての抱負だった。 ぼんやりと眺めていた英昭の目には木の梢に停まった一羽の蝶の姿が映る。冬の間は幼虫として身を竦めていたであろうこの蝶は春の陽射しを感じ取り、その可憐な姿を目一杯広げて晴れやかに飛び回っている訳だが、果たして本当に嬉しいのだろうか。嬉しくないといえば嘘になるかもしれないが、真に嬉しいかといえばそれも言…

  • 甦るパノラマ 十二話

    それから一年余の月日が流れ高校三年生の正月を過ぎた一月中旬。秋の優雅な雰囲気を一切拭い去ったこの時期に感じる事はただ寒いだけという実に淋しいものだ。あれだけ鮮やかに咲き誇っていた樹々もすっかり枯れ果て、葉を失ったその姿はまるで案山子のようにも見える。 白い雪にも風情を感じない訳でもないが、人間に動物、虫、植物、あらゆる生命の中で特に人が抱く正直な気持ちとしてはこの寒さの厳しい冬を出来るだけ早く通り過ぎ、穏やかな春の到来を待つというのが専らであろう。 そんな些か贅沢に思える感情とは別に、質の違った贅沢、或いは夢物語とも思える幻想に浸っていた者が居た。 英昭のギャンブルの調子はあれからもちょっとし…

  • 甦るパノラマ 十一話

    英昭が足早に駆け付けた店は天遊会館という如何にも昔ながらな屋号のパチンコ店であった。そこは彼の地元の隣町に位置するのだが歩いていけない距離でもない。 午後5時半、店の前には既に人だかりが出来ていた。新装開店という変則時間に開店するイベントは当時は新台入れ替えの際、当たり前のように行われていたイベントであり、その日は良く出ていた。その最たるはやはりパチンコ、スロット共に仕組まれていたモーニングというサービスで、この台を引き当てる事が出来れば小資金で大当たりをゲット出来、勝利する確率も大幅に上がって来る。 普段からこのモーニングを入れてある店なら尚更で、新装開店時なら全台に入ってる事もしばしばあっ…

  • 甦るパノラマ 十話

    それから数日が経った体育祭当日、この日も朝から気持ち良く晴れた渡った空は地上を明るく照らし出し、万物に生命の息吹を与えてくれる。正に体育祭日和。そこまでの関心が無いまでもまだ若い英昭や他の生徒達は意気揚々と胸を弾ませ、気を逸らせながら登校する。 その心意気に乗じるように華麗に飛び立つ鳥や、虫達の微笑ましくも勇ましい果敢な姿は恰も体育祭に出場する一選手のような漂いさえある。 「母さんも後で見に行くから」 玄関先まで英昭を見送った母もそう言って明るい笑みを浮かべていた。英昭は内心別に来なくてもいいよとは思いながらも母と同じく笑みを浮かべてアイコンタクトを取り、軽い足取りで歩き出す。 学生服に身を包…

  • 甦るパノラマ 九話

    拍手で迎えられたさゆりは皆にチヤホヤされながらも相変わらずの冷静沈着な様子で自分の持ち場へ戻る。殆ど息も切らせてはいない。本人よりもテンションの上がっていた同級生が笑顔で語り掛ける。 「さゆり凄いじゃない! また速くなったんじゃない? 女子ではno.1間違いなしね」 女子達で盛り上がっている中に恐る恐る近づいて行く英昭。彼もまた自分の高揚感を抑え切れない一人であった。 「お見事!」 訊き覚えのあるその声に振り向いたさゆりは以前として落ち着いた様子で済ましていた。英昭は次の言葉に迷いながらも正直な想いを投げ掛けてみた。 「まだ怒ってんのか? 俺が悪かったよ、それにしてもさゆりがこんなに足が速いと…

  • 甦るパノラマ 八話

    料理を食べ始める英昭の手は些かなりとも震えていた。母が丹精を込めて作ってくれた料理は美味しいに決まっているのだが、せっかくの御馳走も気が沈んでいた今の英昭の喉を余り通らない。だが母を悲しませてはいけないと思った彼は少し大袈裟な物言いをする。 「めっちゃくちゃ美味しいよ! こんな料理を食べたのは生まれて初めてだよ!」 「ふん、大袈裟な子ね」 一口食べただけでそこまで感動する英昭の様子を訝った母は彼の顔にはっきりと目を見据えて今日一日の事を訊いて来た。 「で、競馬場デートはどうだったの?」 益々慌てた英昭はて少し活舌の悪い言い方をする。 「な、何でデートだと分かったんだよ?」 「あんたの様子を見て…

  • 甦るパノラマ 七話

    パーンパパパパパパパーン。 軽快に、高らかに鳴り響くファンファーレは如何にも今から一大競走が始まるかのような大袈裟な雰囲気を辺り一帯に漂わし、観客達の心は更に昂奮して行く。 第一回秋華賞、レース場に姿を現した騎手達は各々の馬に跨り颯爽と返し馬に赴く。その可憐な雄姿に魅了された一同は歓声を上げて応援する。天高く響き渡る歓声に共鳴するように二つに割れた雲間からは眩しいまでの光芒が差し込み、光輝く競走馬の毛艶は美しさを増す。これには流石のさゆりも感動したようでその表情は多少なりともうっとりとしてた。 そんなさゆりの肩に手を添えレース場を遠くに見つめる英昭。この時の彼の表情はあくまでも一人の純粋無垢な…

  • 甦るパノラマ 六話

    この日のメインレース(11R)はG1秋華賞だった。牝馬のクラシック戦線であるこの重賞レースは今年から新しく始まったG1レースで場内も熱気にに溢れていた。 英昭はデートに必要な最低限の金しか持って来ておらず、前もって予想もしていなかったのだが、いざさゆりの下を離れ一人になると自ずとギャンブル好きの血が騒ぎ、結局はそのなけなしの資金で馬券を購入してしまった。彼が買った馬券はこの秋華賞の馬連でその購入額は僅か500円だけであった。こんなものが当たる訳がない。英昭はダメ元で遊びで購入しただけだった。 弁当を買って戻るとさゆりは元の場所に坐ったままで英昭の顔に目をやり優しく微笑んだ。一安心した英昭は弁当…

  • 甦るパノラマ 五話

    二日後のデート当日は薄曇りながらも雨が降る気配は余り感じられない。英昭は何時ものように傘を持たずに家を出る。すると後ろから母が声を掛けて来た。 「一応傘持って行ったら? 何時降って来るか分からないわよ」 「いいんだって」 母の忠告に耳を傾けなかった英昭は意気揚々と出発する。性格も然る事ながらこれも根拠のない自信という若者の特権なのだろうか。今の英昭には怖いものなど何一つ無かったようにも思えるのだった。 二駅電車に乗り何時も二人が学校帰りに分かれている駅のホームでさゆりを待つ英昭。気が逸る彼の心情はまるで遠足に出掛ける幼稚園児のような幼さを漂わせる。時計を何回も見直し、時間を確かめる。約束の時間…

  • 七夕は年間行事No.1 ~不変の想い

    天の川 夢に観ゆるは 七夕か(笑) 笹の葉さらさら~ のきばに揺れる~ お星さまきらきら きんぎんすなご ♫ この歌を思い浮かべるだけでも心が癒され気持ち良くなって来ます。 年間行事や記念日には余り関心が無い自分ですが、七夕だけは本当に好きですね。はっきり言って正月の次に、いや寧ろ同等に好きなぐらいです。 今日は生憎の天気なのですが、一年に一度の七夕を祝う気持ちには何ら変わりはありません。毎日同じ事ですけど、特に今日という一日は大事にしたいと思います。 七夕とは 中国、日本、韓国、台湾、ベトナムなどにおける節供、節日の一つで、五節句の一つにも数えられ、その起源は中国の漢の時代に編纂された織女、…

  • 甦るパノラマ 四話

    さゆりと母が異口同音に投げ掛けた言葉は英昭を悩ませるのに十分だった。さっきまでは平静を装っていたが、いざ自室で独りになるとその哀しい、やるせない想いは自ずと胸に込み上げて来る。過去を振り返る事が特段嫌いでもなかった英昭は横になり、追憶に浸って行った。 それは遡ること9年前、英昭が8歳、小学2年生の夏の出来事であった。今も昔も夏は暑いものだ。この年も日本は厳しい猛暑に見舞われ、外に出ると目の前の景色は陽炎のようにゆらゆらと歪んで見える。 強く照り輝く陽射しの下、蝉達は煩いほどに勇ましく啼き続け人々は汗を拭いながら日々の生活に勤しむ。学校の授業を終えた英昭は家に帰り、夕食までの間家の傍で近所の人達…

  • 甦るパノラマ 三話

    棚から牡丹餅とでも言おうか。思いもしなかったさゆりとの出会いは最近の英昭にとっては大袈裟な言い方をすると、ギャンブルで勝った時以外で初めて経験する喜びであったようにも感じる。やはり幸運というものは掴もうとして掴めるものではなく、意図せずに舞い込んで来るものなのだろうか。 これはギャンブルに於いても同じ事が言える訳なのだが、それとこれを一緒にしてしまうのは少々軽率でさゆりに対しても非礼に値するようにも思える。公園を出て駅で別れた二人はそれぞれの想いを胸に帰途に着くのであった。 家に帰った英昭は何時ものように母が作ってくれた夕食を食べる。この時母は息子のそわそわする様子を見逃さなかった。 「英昭、…

  • 甦るパノラマ 二話

    義正はこちらの意見を訊くまでもなくいきなり口を切り出す。 「金貸してくれないか?」 確かに少し無神経な奴ではあったが、会っていきなりの無心とはどういう了見なのだろう。英昭はムカつく気持ちを抑えつつ喋り出す。 「取り合えず俺の話を訊いてくれないか?」 「なら尚更金貸してくれよ、貸してくれたならいくらでも訊いてやるからよ、お前最近調子いいんだろ? 少しぐらいいいじゃねーか」 呆れ返った英昭はこいつをぶん殴ってやろうとも考えたが、余りに卑しいその性格を憐んだ彼は愛想を尽かしたような感じで答えた。 「もういいよ、お前と話にならない、相談しようとした俺が馬鹿だったよ、じゃあな~」 「おい、ちょっと待てよ…

  • 論破とは? ~真意を探ろうとしない現代日本社会

    月替わり 未だ感じぬ 夏の色(笑) いやいや、梅雨やコロナの影響も然ることながら、なかなか心の夏は訪れないものです。無論それは自分次第という事なのでしょうけど。 とのかく7月、文月になった訳です。こうなったからには心身ともに綺麗さっぱりリフレッシュして夏を謳歌したい所です^^ という事で(どういう事やねん!?)今日は日頃ネット上などでよく目にするワード 「論破」これについて語って行きたいと思います。 論破とは? その意味は? まずこの論破という言葉の意味ですね。今更なのですがこれは読んで字の如く議論して相手の説を破る事。言い負かす事。とあります。 初めに着目するべきはこの議論なんですよね。議論…

  • 甦るパノラマ 一話

    キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン。 「じゃあまた明日~、さようなら~」 生徒達にとって終業のチャイムほど嬉しいものはなかった。部活動や習い事に勉強、交友やデート、アルバイトや娯楽等。気の赴くままに行動出来る放課後は正に自由を感じるひと時であった。 英昭はこの自由を殊更喜んでいた。自分の趣味に興じる事が出来るからだ。 「おい英昭、今日も行くのか?」 「ああ、サクっと一儲けして来るぜ!」 そう答えた英昭は軽い足取りで颯爽と下校し、一旦家に帰り私服に着替えてから戦地へと赴く。この頃はまだ地元の商店街には数多くの店が軒を連ねていた。その中で英昭がよく通っていた店は三軒あったのだが、今…

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