会社員でも旅に出たいをテーマに、サラリーマンの吉川が、駐在するメキシコを中心に旅した記録をつづります。チアパス州の奥地にあるエバーグリーン牧場を舞台に繰り広げられる人や動物との出会いが第1作目です。
メキシコ北部の町できいたホーンセクション主体のバンダ ダニエルとのレッスンに、僕は常に自分が弾いて歌いたいと思った曲をカセットにダビングしては持って行った。今考えるとなんともぜいたくなことをしていたのかと思うが、いつも次のレッスンまでにダニエルは曲のコード進行をメモしてくれていた。 「シンジもいずれできるようになるさ。曲を聴いたらコードが浮かんでくるようにね」 僕はその感覚がよく分からなかった。ダニエルが探してくれたコード進行を弾くことはできるけど、自分で曲を聴きながらコードを探し当てることは到底できない。 その日僕はエリック・クラプトンのバラードで当時えらくヒットした Tears in He…
アフリカからアメリカ大陸に行きついたリズムが多くの音楽のルーツになった ダニエルのレッスンは常に音楽の歴史とともに進む。彼はカントリーとブルースをベースに、ジャズやアフリカ音楽、カリブの音楽を取り入れて「ワールドビート」という独自のスタイルを築いたのだという。 「ブルースもジャズも結局アフリカがルーツだ。アメリカならそうだけど、例えばハイチならコンパという音楽ある。ジャマイカならレゲエだ。多くの黒人ミュージシャンとこれまで音楽やってきたけど、彼らは本当にシンプルな奏法で見事に感情を表現する」 そう言ってその一つのテクニックとして「チョーキング」を僕に見せた。弦を普通に上から指で押さえるのではな…
町ではときにけたたましい音楽が家まで聞こえる。 トラビス・ピッキングを何度も練習しているうちに、徐々に形ができてきた。その頃の僕はたぶん取りつかれたようにこの一見複雑なピッキングを何度も何度も繰り返して自分のものにしようとしていた。 ベース音は間もなくできるようになったが、それに合わせて今度は高い音を同時に弾く。それもリズムに合わせないといけない。いちいち力が入っていたが、徐々に指が自 然に動くようになってきた。指を意識していたのが、だんだん音やリズムを耳で聞いて指がそれについてくるように調節する感じに近い。 そうして僕はダニエルの前で妙に力が入ったトラビスピッキングを披露した。 「とうとうで…
ホテルのロビーでフラメンコが演奏される(本文と写真は関係ありません。) 「マール・トラビスからすべてが始まっている」 ダニエルは僕にフィンガーピッキングを教えるときにあるギタリストの話をし始めた。後にトラビス・ピッキングと呼ばれる奏法を編み出した人だ。 僕はその日まで、ダニエルが指で弾く奏法を何度も見て、どうしてそんな風に弾けるのか不思議でしょうがなかった。 左手はギアーのネックを持ち、フレットを押さえる。 結局ピアノなら10本でいろいろな弾けるが、ギターの場合音を出す際に弦をはじくのは右手の5本だけだ。 それで低音のベース音を親指で弾きながら、メロディーは人差し指から小指までを使って弾く。親…
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