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笑う門には福来る 笑顔応援隊 i 少納言日記 https://syounagon.hatenablog.com/

「笑顔応援隊 i 」すーちゃん👼ぶんぶん👱‍♀️少納言👩は、 寛容で豊かで笑顔溢れる世界にする使命をおびて日夜活動中🌷 少納言👩があれやらこれやら綴るブログでございます💖

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2020/10/16

  • 今も昔も祭りはワクワク🌷【源氏物語135 第九帖 葵8】行列に参加した人々は皆美しく身を飾っているが 源氏が抜きん出て美しい。誰も彼も源氏に夢中である。

    行列に参加した人々は皆 分相応に美しい装いで身を飾っている中でも 高官は高官らしい光を負っていると見えたが、 源氏に比べるとだれも見栄えがなかったようである。 大将の臨時の随身を、 殿上にも勤める近衛の尉《じょう》が するようなことは例の少ないことで、 何かの晴れの行幸などばかりに許されることであったが、 今日は蔵人《くろうど》を兼ねた右近衛《うこんえ》の尉が 源氏に従っていた。 そのほかの随身も顔姿ともによい者ばかりが選ばれてあって、 源氏が世の中で重んぜられていることは、こんな時にもよく見えた。 この人にはなびかぬ草木もないこの世であった。 壺装束《つぼしょうぞく》といって頭の髪の上から上…

  • 深く愛する故の妄執【源氏物語134 第九帖 葵7】御息所の前を知らぬまま通り過ぎ、左大臣家に敬意を表す源氏。屈辱に涙を流す御息所

    源氏は御息所の来ていることなどは 少しも気がつかないのであるから、 振り返ってみるはずもない。 気の毒な御息所である。 前から評判のあったとおりに、 風流を尽くした物見車にたくさんの女の乗り込んでいる中には、 素知らぬ顔は作りながらも源氏の好奇心を惹《ひ》くのもあった。 微笑《ほほえみ》を見せて行くあたりには 恋人たちの車があったことと思われる。 左大臣家の車は一目で知れて、 ここは源氏もきわめてまじめな顔をして通ったのである。 行列の中の源氏の従者がこの一団の車には敬意を表して通った。 侮辱されていることをまたこれによっても御息所はいたましいほど感じた。 影をのみ みたらし川の つれなさに …

  • 女の恨みはなぜか 女に向かうもの【源氏物語132 第九帖 葵 5】祭りの日、お忍びの御息所の車を左大臣家の家従が押し退ける。

    💠邸《やしき》を出たのはずっと朝もおそくなってからだった。 この一行はそれほどたいそうにも見せないふうで出た。 車のこみ合う中へ幾つかの左大臣家の車が続いて出て来たので、 どこへ見物の場所を取ろうかと迷うばかりであった。 貴族の女の乗用らしい車が多くとまっていて、つまらぬ物の少ない所を選んで、 じゃまになる車は皆|除《の》けさせた。 その中に外見は網代車《あじろぐるま》の少し古くなった物にすぎぬが、 御簾の下のとばりの好みもきわめて上品で、 ずっと奥のほうへ寄って乗った人々の服装の優美な色も 童女の上着の汗袗《かざみ》の端の少しずつ洩《も》れて見える様子にも、 わざわざ目立たぬふうにして 貴女…

  • 女の恨みはなぜか 女に向かうもの【源氏物語132 第九帖 葵 5】祭りの日、お忍びの御息所の車を左大臣家の家従が押し退ける。

    💠邸《やしき》を出たのはずっと朝もおそくなってからだった。 この一行はそれほどたいそうにも見せないふうで出た。 車のこみ合う中へ幾つかの左大臣家の車が続いて出て来たので、 どこへ見物の場所を取ろうかと迷うばかりであった。 貴族の女の乗用らしい車が多くとまっていて、つまらぬ物の少ない所を選んで、 じゃまになる車は皆|除《の》けさせた。 その中に外見は網代車《あじろぐるま》の少し古くなった物にすぎぬが、 御簾の下のとばりの好みもきわめて上品で、 ずっと奥のほうへ寄って乗った人々の服装の優美な色も 童女の上着の汗袗《かざみ》の端の少しずつ洩《も》れて見える様子にも、 わざわざ目立たぬふうにして 貴女…

  • 御禊の日 運命は狂い出す【源氏物語131 第九帖 葵4】葵上は懐妊中であるが母宮の勧めで 西院の禊の行列を見物に行く。

    🌸そのころ前代の加茂《かも》の斎院《さいいん》が おやめになって皇太后腹の院の女三の宮が新しく斎院に定まった。 院も太后もことに愛しておいでになった内親王であるから、 神の奉仕者として常人と違った生活へおはいりになることを 御親心に苦しく思召《おぼしめ》したが、 ほかに適当な方がなかったのである。 斎院就任の初めの儀式は 古くから決まった神事の一つで 簡単に行なわれる時もあるが、 今度はきわめて派手なふうに行なわれるらしい。 斎院の御勢力の多少にこんなこともよるらしいのである。 御禊《ごけい》の日に供奉《ぐぶ》する大臣は 定員のほかに特に宣旨があって源氏の右大将をも加えられた。 物見車で出よう…

  • 妻と夫 近いが故のすれ違い【源氏物語130 第九帖 葵 3】朝顔の姫君は 源氏と恋仲にはならず、よい距離感をとる。葵の上は妊娠中で心細い。源氏は葵を愛おしく思う。

    🌸この噂《うわさ》が世間から伝わってきた時、 式部卿《しきぶきょう》の宮の朝顔の姫君は、 自分だけは源氏の甘いささやきに酔って、 やがては苦い悔いの中に 自己を見いだす愚を学ぶまいと心に思うところがあって、 源氏の手紙に時には短い返事を書くことも以前はあったが、 それももう多くの場合書かぬことになった。 そうといっても露骨に反感を見せたり、 軽蔑的な態度をとったりすることのないのを 源氏はうれしく思った。 こんな人であるから長い年月の間忘れることもなく 恋しいのであると思っていた。 左大臣家にいる葵《あおい》夫人は こんなふうに源氏の心が幾つにも分かれているのを憎みながらも、 たいしてほかの恋…

  • 女の恨みは買ってはならぬ【源氏物語129 第九帖 葵 2】先の東宮と六条御息所の女王が伊勢斎宮に選定。六条御息所は斎宮と共に伊勢に下ろうと考えていた。桐壺院は源氏にお小言をお言いになった。

    🌸あの六条の御息所《みやすどころ》の生んだ前皇太子の忘れ形見の女王が 斎宮《さいぐう》に選定された。 源氏の愛のたよりなさを感じている御息所は、 斎宮の年少なのに托《たく》して自分も伊勢へ下ってしまおうかと その時から思っていた。 この噂《うわさ》を院がお聞きになって、 「私の弟の東宮が非常に愛していた人を、 おまえが何でもなく扱うのを見て、私はかわいそうでならない。 斎宮なども姪でなく自分の内親王と同じように思っているのだから、 どちらからいっても御息所を尊重すべきである。 多情な心から、熱したり、冷たくなったりしてみせては 世間がおまえを批難する」 と源氏へお小言《こごと》をお言いになった…

  • 源氏の子が東宮に【源氏物語 128 第九帖 葵 1】藤壺の宮と源氏の密かな子は東宮となり、院は源氏に後見を命じた。

    🌸天子が新しくお立ちになり、時代の空気が変わってから、 源氏は何にも興味が持てなくなっていた。 官位の昇進した窮屈《きゅうくつ》さもあって、 忍び歩きももう軽々しくできないのである。 あちらにもこちらにも待って訪《と》われぬ恋人の悩みを作らせていた。 そんな恨みの報いなのか源氏自身は中宮の御冷淡さを 歎《なげ》く苦しい涙ばかりを流していた。 位をお退《ひ》きになった院と中宮は 普通の家の夫婦のように暮らしておいでになるのである。 前《さき》の弘徽殿《こきでん》の女御《にょご》である新皇太后は ねたましく思召《おぼしめ》すのか、 院へはおいでにならずに当帝の御所にばかり行っておいでになったから、…

  • 朧月夜‥運命の恋人【源氏物語127 第八帖 花宴11 完】酔ったふりをしながら、ため息する人に近づき 几帳越しに手を取る。ついに有明の姫君を探し当てる

    「苦しいのにしいられた酒で私は困っています。 もったいないことですが こちらの宮様に はかばっていただく縁故があると思いますから」 妻戸に添った御簾の下から上半身を少し源氏は中へ入れた。 「困ります。あなた様のような尊貴な御身分の方は 親類の縁故などをおっしゃるものではございませんでしょう」 と言う女の様子には、重々しさはないが、 ただの若い女房とは思われぬ品のよさと 美しい感じのあるのを 源氏は認めた。 薫物《たきもの》が煙いほどに焚《た》かれていて、 この室内に起《た》ち居《い》する女の衣摺《きぬず》れの音が はなやかなものに思われた。 奥ゆかしいところは欠けて、 派手な現代型の贅沢さが見…

  • 朧月夜の君はどこに?【源氏物語126第八帖 花宴10】右大臣の招きを受ける。酔った風をしながら 内親王方のおられる寝殿の妻戸に寄りかかる。

    🌸源氏は御所にいた時で、帝《みかど》にこのことを申し上げた。 「得意なのだね」 帝はお笑いになって、 「使いまでもよこしたのだから行ってやるがいい。 孫の内親王たちのために 将来兄として力になってもらいたいと 願っている大臣の家《うち》だから」 など仰せられた。 ことに美しく装って、 ずっと日が暮れてから待たれて源氏は行った。 桜の色の支那錦《しなにしき》の直衣《のうし》、 赤紫の下襲《したがさね》の裾《すそ》を長く引いて、 ほかの人は皆正装の袍《ほう》を着て出ている席へ、 艶《えん》な宮様姿をした源氏が、 多数の人に敬意を表されながらはいって行った。 桜の花の美がこの時にわかに減じてしまった…

  • 右大臣からの招き【源氏物語 115第八帖 花宴9】有明の姫君を思いながら悩ましく過ごす源氏。そんな時、右大臣から藤の花の宴に招かれた。

    🌼有明《ありあけ》の君は短い夢のようなあの夜を心に思いながら、 悩ましく日を送っていた。 東宮の後宮へこの四月ごろはいることに 親たちが決めているのが 苦悶《くもん》の原因である。 源氏もまったく何人《なにびと》であるかの 見分けがつかなかったわけではなかったが、 右大臣家の何女であるかがわからないことであったし、 自分へことさら好意を持たない弘徽殿の女御の一族に 恋人を求めようと働きかけることは 世間体のよろしくないことであろうとも 躊躇《ちゅうちょ》されて、 煩悶《はんもん》を重ねているばかりであった。 三月の二十日過ぎに右大臣は自邸で弓の勝負の催しをして、 親王方をはじめ高官を多く招待し…

  • 夫と妻のすれ違い【源氏物語124 第八帖 花宴8】若紫の姫君は少しずつ大人になる。葵の上は相変わらず つれない。源氏は琴を弾きながら歌っていた。

    🌸この二、三日間に宮中であったことを語って聞かせたり、 琴を教えたりなどしていて、日が暮れると源氏が出かけるのを、 紫の女王は少女心に物足らず思っても、 このごろは習慣づけられていて、無理に留めようなどとはしない。 左大臣家の源氏の夫人は例によってすぐには出て来なかった。 いつまでも座に一人でいてつれづれな源氏は、 夫人との間柄に一抹《いちまつ》の寂しさを感じて、 琴をかき鳴らしながら、 「やはらかに寝《ぬ》る夜はなくて」と歌っていた。 左大臣が来て、花の宴のおもしろかったことなどを源氏に話していた。 「私がこの年になるまで、四代の天子の宮廷を見てまいりましたが、 今度ほどよい詩がたくさんでき…

  • 【源氏物語123 第八帖 花宴7】取り替えてきた扇は桜色の薄様で霞んだ月が描いてあった。若紫はしばらく見ないうちに美しく成長している。

    🌸源氏は胸のとどろくのを覚えた。 どんな方法によって何女《なにじょ》であるかを知ればよいか、 父の右大臣にその関係を知られて 婿としてたいそうに待遇されるようなことになって、 それでいいことかどうか。 その人の性格も何もまだよく知らないのであるから、 結婚をしてしまうのは危険である、 そうかといってこのまま関係が進展しないことにも堪えられない、 どうすればいいのかとつくづく物思いをしながら源氏は寝ていた。 姫君がどんなに寂しいことだろう、 幾日も帰らないのであるからとかわいく二条の院の人を思いやってもいた。 取り替えてきた扇は、 桜色の薄様を三重に張ったもので、 地の濃い所に霞《かす》んだ月が…

  • 【源氏物語122 第八帖 花宴6】春の宴であった有明の女君が誰か気になる源氏。良清や惟光に退出する車を見張らせる

    太宰帥《だざいのそつ》親王の夫人や 頭中将が愛しない四の君などは美人だと聞いたが、 かえってそれであったらおもしろい恋を 経験することになるのだろうが、 六の君は東宮の後宮《こうきゅう》へ入れるはずだとか聞いていた、 その人であったら気の毒なことになったというべきである。 幾人もある右大臣の娘のどの人であるかを知ることは 困難なことであろう。 もう逢うまいとは思わぬ様子であった人が、 なぜ手紙を往復させる方法について 何ごとも教えなかったのであろうなどとしきりに考えられるのも 心が惹《ひ》かれているといわねばならない。 思いがけぬことの行なわれたについても、 藤壺《ふじつぼ》にはいつもああした…

  • 【源氏物語121 第八帖 花宴5】春の宴 朧月夜の女君との出会い。二人は扇を交換する。この一夜は源氏の運命を大きく変えていく

    🌕「ぜひ言ってください、だれであるかをね。 どんなふうにして手紙を上げたらいいのか、 これきりとはあなただって思わないでしょう」 などと源氏が言うと、 「うき身世に やがて消えなば 尋ねても 草の原をば 訪はじとや思ふ」 という様子にきわめて艶《えん》な所があった。 「そう、私の言ったことはあなたのだれであるかを 捜す努力を惜しんでいるように聞こえましたね」 と言って、また、 「何《いづ》れぞと 露のやどりを わかむ間に 小笹《こざさ》が原に 風もこそ吹け」 私との関係を迷惑にお思いにならないのだったら、 お隠しになる必要はないじゃありませんか。 わざとわからなくするのですか」 と言い切らぬう…

  • 🍀眠れぬ時に【源氏物語120 第八帖 花宴4】「朧月夜に似るものぞなき」歌いながらくる女君との出会い。陥るべきところに陥った春の夜🌕源氏の運命は大きく動いていく。

    🌕若々しく貴女らしい声で、 「朧月夜《おぼろづきよ》に似るものぞなき」 と 歌いながらこの戸口へ出て来る人があった。 源氏はうれしくて突然|袖《そで》をとらえた。 女はこわいと思うふうで、 「気味が悪い、だれ」 と言ったが、 「何もそんなこわいものではありませんよ」 と源氏は言って、 さらに、 深き夜の 哀れを知るも 入る月の おぼろげならぬ 契りとぞ思ふ とささやいた。 抱いて行った人を静かに一室へおろしてから三の口をしめた。 この不謹慎な闖入者《ちんにゅうしゃ》にあきれている女の様子が 柔らかに美しく感ぜられた。 慄《ふる》え声で、 「ここに知らぬ人が」 と言っていたが、 「私はもう皆に同…

  • 【源氏物語260 第10帖 賢木72 完】激怒する大后に、どうしてお話ししたろうと後悔した。大后は源氏の排斥を企てようとお思いになった。

    💠時の残影 written by のる💠 きつい調子で、 だれのこともぐんぐん悪くお言いになるのを、聞いていて大臣は、 ののしられている者のほうがかわいそうになった。 なぜお話ししたろうと後悔した。 「でもこのことは当分秘密にしていただきましょう。 陛下にも申し上げないでください。 どんなことがあっても許してくださるだろうと、 あれは陛下の御愛情に甘えているだけだと思う。 私がいましめてやって、 それでもあれが聞きません時は私が責任を負います」 などと大臣は最初の意気込みに似ない弱々しい申し出をしたが、 もう太后の御|機嫌《きげん》は直りもせず、 源氏に対する憎悪《ぞうお》の減じることもなかっ…

  • 美しい月は 人の心を惑わす【源氏物語119 第八帖 花宴3】春の夜の御所、源氏は不用心になっている弘徽殿の縁側に上がった。男も女も道を踏み外すのはこういう時‥

    中宮はすぐれた源氏の美貌がお目にとまるにつけても、 東宮の母君の女御がどんな心でこの人を憎みうるのであろうと 不思議にお思いになり、 そのあとではまたこんなふうに 源氏に関心を持つのもよろしくない心であると思召した。 大かたに 花の姿を見ましかば つゆも心の おかれましやは こんな歌はだれにもお見せになるはずのものではないが、 どうして伝わっているのであろうか。 夜がふけてから南殿の宴は終わった。 公卿《こうけい》が皆退出するし、 中宮と東宮はお住居《すまい》の御殿へお帰りになって静かになった。 明るい月が上ってきて、 春の夜の御所の中が美しいものになっていった。 酔いを帯びた源氏は このまま…

  • 東宮より挿頭の花を下賜される【源氏物語118 第八帖 花宴2 】紫宸殿にて桜の宴🌸美しい舞に左大臣は落涙する。頭中将の舞も素晴らしい。頭中将は御衣を賜る

    🌸春の永日《ながび》がようやく入り日の刻になるころ、 春鶯囀《しゅんおうてん》の舞がおもしろく舞われた。 源氏の紅葉賀の青海波《せいがいは》の巧妙であったことを 忘れがたく思召《おぼしめ》して、 東宮が源氏へ挿《かざし》の花を下賜あそばして、 ぜひこの舞に加わるようにと切望あそばされた。 辞しがたくて、 一振りゆるゆる袖を反《かえ》す春鶯囀の一節を源氏も舞ったが、 だれも追随しがたい巧妙さはそれだけにも見えた。 左大臣は恨めしいことも忘れて落涙していた。 「頭中将はどうしたか、早く出て舞わぬか」 次いでその仰せがあって、柳花苑《りゅうかえん》という曲を、 これは源氏のよりも長く、 こんなことを…

  • 紫宸殿の桜の宴🌸【源氏物語117 第八帖 花宴 1】探韵《たんいん》をいただいて詩を作った。源氏は春という字を賜った

    🌸二月の二十幾日に紫宸殿《ししんでん》の桜の宴があった。 玉座の左右に中宮と皇太子の御見物の室が設けられた。 弘徽殿《こきでん》の女御は 藤壺の宮が中宮になっておいでになることで、 何かのおりごとに不快を感じるのであるが、 催し事の見物は好きで、東宮席で陪観していた。 日がよく晴れて青空の色、 鳥の声も朗らかな気のする南庭を見て親方、 高級官人をはじめとして詩を作る人々は 皆|探韵《たんいん》をいただいて詩を作った。 源氏は、「春という字を賜わる」と、 自身の得る韵字《いんじ》を披露《ひろう》したが、 その声がすでに人よりすぐれていた。 次は頭中将《とうのちゅうじょう》で、 この順番を晴れがま…

  • 藤壺 立后【源氏物語116 第七帖 紅葉賀18 完】若宮のお顔はご生育あそばすとともに源氏に似てくる。

    🌸この七月に皇后の冊立《さくりつ》があるはずであった。 源氏は中将から参議に上《のぼ》った。 帝が近く譲位をあそばしたい思召《おぼしめ》しがあって、 藤壺の宮のお生みになった若宮を 東宮にしたくお思いになったが将来御後援をするのに適当な人がない。 母方の御|伯父《おじ》は皆親王で 実際の政治に携わることのできないのも不文律になっていたから、 母宮をだけでも后の位に据えて置くことが 若宮の強味になるであろうと思召して 藤壺の宮を 中宮《ちゅうぐう》に擬しておいでになった。 弘徽殿の女御がこれに平《たい》らかでないことに道理はあった。 「しかし皇太子の即位することはもう近い将来のことなのだから、 …

  • 貴公子二人 前夜の騒ぎを思い出す💦【源氏物語115第七帖 紅葉賀17】源氏と頭中将は詰所で会う。真面目な顔を作りつつも 源典侍の事もあって目が合うと微笑まれる。

    🌷昼近くになって殿上の詰め所へ二人とも行った。 取り澄ました顔をしている源氏を見ると中将もおかしくてならない。 その日は自身も蔵人頭《くろうどのかみ》として 公用の多い日であったから至極まじめな顔を作っていた。 しかしどうかした拍子に目が合うと互いにほほえまれるのである。 だれもいぬ時に中将がそばへ寄って来て言った。 「隠し事には懲りたでしょう」 尻目《しりめ》で見ている。 優越感があるようである。 「なあに、それよりもせっかく来ながら無駄だった人が気の毒だ。 まったくは君やっかいな女だね」 秘密にしようと言い合ったが、 それからのち中将はどれだけあの晩の騒ぎを言い出して 源氏を苦笑させたかし…

  • 熟女を巡って貴公子二人 大騒ぎの夜【源氏物語114 第七帖 紅葉賀16】源典侍は昨日の指貫や帯を、頭中将は 破けた源氏の直衣の袖を、源氏は頭中将の帯を持ってくる。

    🌹源氏は友人に威嚇《おど》されたことを残念に思いながら 宿直所《とのいどころ》で寝ていた。 驚かされた典侍は 翌朝残っていた指貫《さしぬき》や帯などを持たせてよこした。 「恨みても 云《い》ひがひぞなき 立ち重ね 引きて帰りし 波のなごりに 悲しんでおります。 恋の楼閣のくずれるはずの物がくずれてしまいました」 という手紙が添えてあった。 面目なく思うのであろうと源氏はなおも不快に昨夜を思い出したが、 気をもみ抜いていた女の様子に あわれんでやってよいところもあったので返事を書いた。 荒《あれ》だちし 波に心は騒がねど よせけん 磯《いそ》を いかが恨みぬ とだけである。 帯は中将の物であった…

  • 源氏‥まさかの間男状態💦【源氏物語113 第七帖 紅葉賀15】顔を隠した頭中将に踏み込まれ 着物抱えて隠れる源氏‥わくわくしながら暴れる頭中将 拝む源典侍‥すでにカオス💦

    自分であることを気づかれないようにして去ろうと 源氏は思ったのであるが、 だらしなくなった姿を直さないで、 冠《かむり》をゆがめたまま逃げる後ろ姿を思ってみると、 恥な気がしてそのまま落ち着きを作ろうとした。 中将はぜひとも自分でなく思わせなければならないと知って 物を言わない。 ただ怒ったふうをして太刀《たち》を引き抜くと、 「あなた、あなた」 典侍は頭中将を拝んでいるのである。 中将は笑い出しそうでならなかった。 平生|派手に作っている外見は相当な若さに見せる典侍も年は五十七、八で、 この場合は見得《みえ》も何も捨てて 二十《はたち》前後の公達《きんだち》の中にいて 気をもんでいる様子は醜…

  • 頭中将 暴走🏃‍♂️💨【源氏物語112 第七帖 紅葉賀14】源典侍と過ごしていると、頭中将は顔を隠して乱入する。源氏は典侍の恋人の修理大夫と思い直衣を抱えたまま隠れる‥頭中将は屏風をバタバタ大暴れ‥

    🌸源氏は女と朗らかに戯談《じょうだん》などを 言い合っているうちに、 こうした境地も悪くない気がしてきた。 頭中将は源氏がまじめらしくして、自分の恋愛問題を批難したり、 注意を与えたりすることのあるのを口惜《くちお》しく思って、 素知らぬふうでいて源氏には隠れた恋人が幾人かあるはずであるから、 どうかしてそのうちの一つの事実でもつかみたいと常に思っていたが、 偶然今夜の会合を来合わせて見た。 頭中将はうれしくて、こんな機会に少し威嚇《おど》して、 源氏を困惑させて懲りたと言わせたいと思った。 それでしかるべく油断を与えておいた。 冷ややかに風が吹き通って夜のふけかかった時分に 源氏らが少し寝入…

  • 源典侍‥源氏のアラフィフの恋人 【源氏物語111 第七帖 紅葉賀13】頭中将も源氏も源典侍の恋人になった。雨上がりに美しく琵琶を弾く源典侍 源氏は催馬楽を歌う。

    🌷頭中将《とうのちゅうじょう》の耳にそれがはいって、 源氏の隠し事はたいてい正確に察して知っている自分も、 まだそれだけは気がつかなんだと思うとともに、 自身の好奇心も起こってきて、 まんまと好色な源典侍の情人の一人になった。 この貴公子もざらにある若い男ではなかったから、 源氏の飽き足らぬ愛を補う気で関係をしたが、 典侍の心に今も恋しくてならない人はただ一人の源氏であった。 困った多情女である。 きわめて秘密にしていたので頭中将との関係を源氏は知らなんだ。 御殿で見かけると恨みを告げる典侍に、 源氏は老いている点にだけ同情を持ちながらも いやな気持ちがおさえ切れずに長く逢いに行こうともしなか…

  • 源氏 イケてる熟女との恋💖【源氏物語110 第七帖 紅葉賀12】源典侍とのやりとりを父帝に見られ 不釣り合いな恋だと笑われる。 御所では意外な恋だと噂になる。

    はなやかな絵をかいた紙の扇で 顔を隠すようにしながら見返った典侍の目は、 瞼《まぶた》を張り切らせようと故意に引き伸ばしているが、 黒くなって、深い筋のはいったものであった。 妙に似合わない扇だと思って、 自身のに替えて源典侍《げんてんじ》のを見ると、 それは真赤《まっか》な地に、青で厚く森の色が塗られたものである。 横のほうに若々しくない字であるが上手に 「 森の下草老いぬれば駒《こま》もすさめず刈る人もなし」 という歌が書かれてある。 厭味《いやみ》な恋歌などは書かずともよいのにと 源氏は苦笑しながらも、 「そうじゃありませんよ、 『大荒木の森こそ夏のかげはしるけれ』で盛んな夏ですよ」 こ…

  • 恋は人を若くする‥源典侍【源氏物語109 第七帖 紅葉賀11】源氏は還暦前ではあるが 才女で良い家の出の源典侍と恋人関係になった。美貌を讃えられた女人だが、多情な性質は困りもの

    🌷御所にまで二条の院の新婦の問題が聞こえていった。 「気の毒じゃないか。左大臣が心配しているそうだ。 小さいおまえを婿にしてくれて、 十二分に尽くした今日までの好意がわからない年でもないのに、 なぜその娘を冷淡に扱うのだ」 と陛下がおっしゃっても、 源氏はただ恐縮したふうを見せているだけで、何とも御返答をしなかった。 帝《みかど》は妻が気に入らないのであろうと かわいそうに思召した。 「格別おまえは放縦な男ではなし、 女官や女御たちの女房を情人にしている噂《うわさ》などもないのに、 どうしてそんな隠し事をして 舅《しゅうと》や妻に恨まれる結果を作るのだろう」 と仰せられた。 帝はもうよい御年配…

  • 源氏のお出かけを紫の君は寂しがる【源氏物語 108 第七帖 紅葉賀10】紫の君を愛おしく思い 外出をやめる源氏だが、左大臣家では どんな女性なのだろうと女房達は噂した。

    🌷保曾呂倶世利《ほそろぐせり》というのは変な名の曲であるが、 それをおもしろく笛で源氏が吹くのに、 合わせる琴の弾き手は小さい人であったが音の間が違わずに弾けて、 上手になる手筋と見えるのである。 灯《ひ》を点《とも》させてから絵などをいっしょに見ていたが、 さっき源氏はここへ来る前に出かける用意を命じてあったから、 供をする侍たちが促すように御簾《みす》の外から、 「雨が降りそうでございます」 などと言うのを聞くと、紫の君はいつものように心細くなってめいり込んでいった。 絵も見さしてうつむいているのがかわいくて、 こぼれかかっている美しい髪をなでてやりながら、 「私がよそに行っている時、あな…

  • 源氏は藤壺の宮から返事をもらう【源氏物語107 第七帖 紅葉賀9】西の対の若紫のところに行くと拗ねている。自身は笛を吹きながら琴を教える。

    💠源氏は二条の院の東の対《たい》に帰って、 苦しい胸を休めてから後刻になって左大臣家へ行こうと思っていた。 前の庭の植え込みの中に何木となく、何草となく青くなっている中に、 目だつ色を作って咲いた撫子《なでしこ》を折って、 それに添える手紙を長く王命婦《おうみょうぶ》へ書いた。 「よそへつつ 見るに心も慰まで 露けさまさる 撫子の花 花を子のように思って愛することはついに 不可能であることを知りました。」 とも書かれてあった。 だれも来ぬ隙《すき》があったか命婦はそれを宮のお目にかけて、 「ほんの塵《ちり》ほどのこのお返事を書いてくださいませんか。 この花片《はなびら》にお書きになるほど、少し…

  • 帝は若宮を慈しむ【源氏物語106 第七帖 紅葉賀8】実は藤壺の宮と源氏の子である新皇子。罪の意識から藤壺も源氏も心が乱れる。

    💠新皇子拝見を望むことに対しては、 「なぜそんなにまでおっしゃるのでしょう。自然にその日が参るのではございませんか」 と答えていたが、無言で二人が読み合っている心が別にあった。 口で言うべきことではないから、そのほうのことはまた言葉にしにくかった。 「いつまた私たちは直接にお話ができるのだろう」 と言って泣く源氏が王命婦の目には気の毒でならない。 「いかさまに 昔結べる契りにて この世にかかる 中の隔てぞ わからない、わからない」 とも源氏は言うのである。 命婦は宮の御|煩悶《はんもん》をよく知っていて、 それだけ告げるのが恋の仲介《なかだち》をした者の義務だと思った。 「見ても思ふ 見ぬはた…

  • 藤壺の宮が源氏の子を出産【源氏物語105 第七帖 紅葉賀7】藤壺の宮の出産は大変遅れたが、二月に王子がご誕生になった。源氏に生写しである

    💠源氏の参賀の場所は数多くもなかった。 東宮、一院、それから藤壺の三条の宮へ行った。 「今日はまたことにおきれいに見えますね、 年がお行きになればなるほどごりっぱにおなりになる方なんですね」 女房たちがこうささやいている時に、 宮はわずかな几帳《きちょう》の間から源氏の顔をほのかに見て、 お心にはいろいろなことが思われた。 御出産のあるべきはずの十二月を過ぎ、 この月こそと用意して三条の宮の人々も待ち、 帝もすでに、皇子女御出生についてのお心づもりをしておいでになったが、 何ともなくて一月もたった。 物怪《もののけ》が御出産を遅れさせているのであろうかとも 世間で噂《うわさ》をする時、宮のお心…

  • 夫婦の溝は 埋まらない【源氏物語104 第七帖 紅葉賀6】左大臣も恨めしく思うが 会えば恨みを忘れ 源氏にかしずくことが幸福のようである

    💠源氏は御所から左大臣家のほうへ退出した。 例のように夫人からは 高いところから多情男を見くだしているというような よそよそしい態度をとられるのが苦しくて、 源氏は、 「せめて今年からでもあなたが暖かい心で 私を見てくれるようになったらうれしいと思うのだが」 と言ったが、 夫人は、二条の院へある女性が迎えられたということを聞いてからは、 本邸へ置くほどの人は源氏の最も愛する人で、 やがては正夫人として公表するだけの用意がある人であろうとねたんでいた。 自尊心の傷つけられていることはもとよりである。 しかも何も気づかないふうで、 戯談《じょうだん》を言いかけて行きなどする源氏に負けて、 余儀なく…

  • 女の恨みは買ってはならぬ【源氏物語129 第九帖 葵 2】先の東宮と六条御息所の女王が伊勢斎宮に選定。六条御息所は斎宮と共に伊勢に下ろうと考えていた。桐壺院は源氏にお小言をお言いになった。

    🌸あの六条の御息所《みやすどころ》の生んだ前皇太子の忘れ形見の女王が 斎宮《さいぐう》に選定された。 源氏の愛のたよりなさを感じている御息所は、 斎宮の年少なのに托《たく》して自分も伊勢へ下ってしまおうかと その時から思っていた。 この噂《うわさ》を院がお聞きになって、 「私の弟の東宮が非常に愛していた人を、 おまえが何でもなく扱うのを見て、私はかわいそうでならない。 斎宮なども姪でなく自分の内親王と同じように思っているのだから、 どちらからいっても御息所を尊重すべきである。 多情な心から、熱したり、冷たくなったりしてみせては 世間がおまえを批難する」 と源氏へお小言《こごと》をお言いになった…

  • 源氏の子が東宮に【源氏物語 128 第九帖 葵 1】藤壺の宮と源氏の密かな子は東宮となり、院は源氏に後見を命じた。

    🌸天子が新しくお立ちになり、時代の空気が変わってから、 源氏は何にも興味が持てなくなっていた。 官位の昇進した窮屈《きゅうくつ》さもあって、 忍び歩きももう軽々しくできないのである。 あちらにもこちらにも待って訪《と》われぬ恋人の悩みを作らせていた。 そんな恨みの報いなのか源氏自身は中宮の御冷淡さを 歎《なげ》く苦しい涙ばかりを流していた。 位をお退《ひ》きになった院と中宮は 普通の家の夫婦のように暮らしておいでになるのである。 前《さき》の弘徽殿《こきでん》の女御《にょご》である新皇太后は ねたましく思召《おぼしめ》すのか、 院へはおいでにならずに当帝の御所にばかり行っておいでになったから、…

  • 雛遊びに夢中の紫の君【源氏物語103第七帖 紅葉賀5】犬君に壊された家を直している。雛人形の中の源氏を綺麗に装束させて参内の真似をして遊ぶ

    💠母方の祖母の喪は三か月であったから、 師走《しわす》の三十日に喪服を替えさせた。 母代わりをしていた祖母であったから除喪のあとも派手にはせず 濃くはない紅の色、紫、山吹《やまぶき》の落ち着いた色などで、 そして地質のきわめてよい織物の小袿《こうちぎ》を着た元日の紫の女王は、 急に近代的な美人になったようである。 源氏は宮中の朝拝の式に出かけるところで、ちょっと西の対へ寄った。 「今日からは、もう大人になりましたか」 と笑顔をして源氏は言った。 光源氏の美しいことはいうまでもない。 紫の君はもう雛《ひな》を出して遊びに夢中であった。 三尺の据棚《すえだな》二つにいろいろな小道具を置いて、 また…

  • お互いに女にしてみたいと思う兵部卿の宮と源氏【源氏物語102 第七帖 紅葉賀4】源氏は藤壺の宮の自邸へ。その時 兵部卿の宮がおいでになった。

    💠藤壺《ふじつぼ》の宮の自邸である三条の宮へ、 様子を知りたさに源氏が行くと王命婦《おうみょうぶ》、 中納言の君、中務《なかつかさ》などという女房が出て応接した。 源氏はよそよそしい扱いをされることに不平であったが 自分をおさえながらただの話をしている時に 兵部卿《ひょうぶきょう》の宮がおいでになった。 源氏が来ていると聞いてこちらの座敷へおいでになった。 貴人らしい、そして艶《えん》な風流男とお見えになる宮を、 このまま女にした顔を源氏は かりに考えてみても それは美人らしく思えた。 藤壺の宮の兄君で、また可憐な若紫の父君であることに ことさら親しみを覚えて源氏はいろいろな話をしていた。 兵…

  • 訪れぬ夫を恨めしく思う妻【源氏物語101 第七帖 紅葉賀3】源氏は一人で悩んでいる態度が嫌で つい浮気な心になるが、心では尊重している。

    💠それがあってから藤壺の宮は宮中から実家へお帰りになった。 逢う機会をとらえようとして、源氏は宮邸の訪問にばかりかかずらっていて 左大臣家の夫人もあまり訪わなかった。 その上 紫の姫君を迎えてからは、 二条の院へ新たな人を入れたと伝えた者があって、 夫人の心はいっそう恨めしかった。 真相を知らないのであるから恨んでいるのがもっともであるが、 正直に普通の人のように口へ出して恨めば自分も事実を話して、 自分の心持ちを説明もし慰めもできるのであるが、 一人でいろいろな忖度をして恨んでいるという態度がいやで、 自分はついほかの人に浮気な心が寄っていくのである。 とにかく完全な女で、欠点といっては何も…

  • 藤壺の宮から返事が来る【源氏物語100 第七帖 紅葉賀2】行幸の日、源氏が舞う時 かざしにした葉数の減った紅葉を左大将が白菊の花に差し替えた。

    💠翌朝源氏は藤壺の宮へ手紙を送った。 「どう御覧くださいましたか。苦しい思いに心を乱しながらでした。 物思ふに 立ち舞ふべくも あらぬ身の 袖うち振りし 心知りきや 失礼をお許しください。」 とあった。 目にくらむほど美しかった昨日の舞を 無視することがおできにならなかったのか、宮はお書きになった。 から人の 袖ふることは 遠けれど 起《た》ち居《ゐ》につけて 哀れとは見き 一観衆として。 たまさかに得た短い返事も、受けた源氏にとっては非常な幸福であった。 支那《しな》における青海波の曲の起源なども 知って作られた歌であることから、 もう十分に后らしい見識を備えていられると源氏は微笑して、 手…

  • 源氏と頭中将の青海波🌊【源氏物語99 第七帖 紅葉賀1】朱雀院の行幸の 歌舞の演奏の試楽が行われた。源氏は青海波は美しく帝は落涙された。

    朱雀《すざく》院の行幸は十月の十幾日ということになっていた。 その日の歌舞の演奏は ことに選りすぐって行なわれるという評判であったから、 後宮の人々はそれが御所でなくて 陪観のできないことを残念がっていた。 帝も藤壺の女御《にょご》に お見せになることのできないことを 遺憾に思召《おぼしめ》して、 当日と同じことを試楽として御前でやらせて御覧になった。 源氏の中将は青海波《せいがいは》を舞ったのである。 二人舞の相手は左大臣家の頭中将《とうのちゅうじょう》だった。 人よりはすぐれた風采《ふうさい》のこの公子も、 源氏のそばで見ては 桜に隣った深山《みやま》の木というより言い方がない。 夕方前の…

  • 末摘花は紅花 赤いはな🌷【源氏物語98 第六帖 末摘花18完🌸】若紫とひな遊びや絵を描いたりする中 源氏は 鼻を赤く塗ってふざけていた

    「春になったのですからね。今日は声も少しお聞かせなさいよ、 鶯《うぐいす》よりも何よりもそれが待ち遠しかったのですよ」 と言うと、 「さへづる春は」 (百千鳥《ももちどり》囀《さへづ》る春は物ごとに 改まれどもわれぞ古《ふ》り行《ゆ》く) とだけをやっと小声で言った。 「ありがとう。二年越しにやっと報いられた」 と笑って、 「忘れては夢かとぞ思ふ」 という古歌を口にしながら 帰って行く源氏を見送るが、 口を被《おお》うた袖の蔭《かげ》から 例の末摘花が赤く見えていた。 見苦しいことであると歩きながら源氏は思った。 二条の院へ帰って源氏の見た、 半分だけ大人のような姿の若紫がかわいかった。 紅《…

  • 末摘花の生活も持ち直す【源氏物語97 第六帖 末摘花17】末摘花の姫のところに来た源氏。屋敷も普通の家らしくなり 姫君も 源氏の贈った衣装で現代風になった。

    三十日の夕方に宮家から贈った衣箱の中へ、 源氏が他から贈られた白い小袖の一重ね、赤紫の織物の上衣《うわぎ》、 そのほかにも山吹色とかいろいろな物を入れたのを 命婦が持たせてよこした。 「こちらでお作りになったのがよい色じゃなかったという あてつけの意味があるのではないでしょうか」 と一人の女房が言うように、だれも常識で考えてそうとれるのであるが、 「でもあれだって赤くて、重々しいできばえでしたよ。 まさかこちらの好意がむだになるということはないはずですよ」 老いた女どもはそう決めてしまった。 「お歌だってこちらのは意味が強く 徹底しておできになっていましたよ。 御返歌は技巧が勝ち過ぎてますね」…

  • 源氏の返事は赤い花の歌🌷【源氏物語96 第六帖 末摘花16】命婦はおかしくて笑った。宮家では女房達が集まって手紙を読んだ

    「くれなゐの ひとはな衣《ごろも》 うすくとも ひたすら朽たす 名をし立てずば」 その我慢も人生の勤めでございますよ」 理解があるらしくこんなことを言っている命婦も たいした女ではないが、 せめてこれだけの才分でもあの人にあればよかったと 源氏は残念な気がした。 身分が身分である、 自分から捨てられたというような気の毒な名は 立てさせたくないと思うのが 源氏の真意だった。 ここへ伺候して来る人の足音がしたので、 「これを隠そうかね。 男はこんな真似も時々しなくてはならないのかね」 源氏はいまいましそうに言った。 なぜお目にかけたろう、 自分までが浅薄な人間に思われるだけだったと恥ずかしくなり …

  • 末摘花の手紙と贈り物🎁【源氏95 第六帖 末摘花15】装束は古めかしく 薫香付きのゴツい紙に上手でない歌であった。源氏は末摘花の歌を書く、末摘花はベニバナ 赤い花(鼻)である

    💠その年の暮れの押しつまったころに、 源氏の御所の宿直所《とのいどころ》へ大 輔《たゆう》の命婦《みょうぶ》が来た。 源氏は髪を梳《す》かせたりする用事をさせるのには、 恋愛関係などのない女で、 しかも戯談《じょうだん》の言えるような女を選んで、 この人などがよくその役に当たるのである。 呼ばれない時でも大輔はそうした心安さから よく桐壺へ来た。 「変なことがあるのでございますがね。 申し上げないでおりますのも意地が悪いようにとられることですし、 困ってしまって上がったのでございます」 微笑《ほほえみ》を見せながらそのあとを大輔は言わない。 「なんだろう。私には何も隠すことなんかない君だと思っ…

  • 常陸宮の姫を支えていこうと思う源氏【源氏物語94 第六帖 末摘花14】頭中将がこの結婚をどう批評するだろうと救われ難い気がする源氏。姫は素直に喜んだ。

    💠車の通れる門はまだ開けてなかったので、供の者が鍵《かぎ》を借りに行くと、 非常な老人《としより》の召使が出て来た 。 そのあとから、娘とも孫とも見える、子供と大人の間くらいの女が、 着物は雪との対照で あくまできたなく汚れて見えるようなのを着て、 寒そうに何か小さい物に火を入れて袖の中で持ちながらついて来た。 雪の中の門が老人の手で開《あ》かぬのを見てその娘が助けた。 なかなか開かない。 源氏の供の者が手伝ったのではじめて扉が左右に開かれた。 『ふりにける 頭《かしら》の雪を 見る人も 劣らずぬらす 朝の袖かな』 と歌い、また、 「霰雪白紛紛《さんせつはくふんぷん》、幼者形不蔽《えうしやはか…

  • セーブル毛皮を着る宮の姫君🌷【源氏物語93 第六帖 末摘花13】見事な美しい長い髪。しかし耐えられない寒さだからと源氏は気の毒に思う。

    💠頭の形と、髪のかかりぐあいだけは、 平生美人だと思っている人にもあまり劣っていないようで、 裾《すそ》が袿《うちぎ》の裾をいっぱいにした余りが まだ一尺くらいも外へはずれていた。 その女王の服装までも言うのはあまりにはしたないようではあるが、 昔の小説にも女の着ている物のことは 真先《まっさき》に語られるものであるから書いてもよいかと思う。 桃色の変色してしまったのを重ねた上に、 何色かの真黒《まっくろ》に見える袿《うちぎ》、 黒貂《ふるき》の毛の香のする皮衣を着ていた。 毛皮は古風な貴族らしい着用品ではあるが、 若い女に似合うはずのものでなく、ただ目だって異様だった。 しかしながらこの服装…

  • ついに常陸宮の宮の姫君の顔を見た🐘🌷【源氏91 第六帖 末摘花12】髪は美しいが 顔も身体も鼻も長い。特に鼻の先は垂れて赤くなっている。源氏は呆然とした。

    💠先刻老人たちの愁《うれ》えていた雪が ますます大降りになってきた。 すごい空の下を暴風が吹いて、 灯の消えた時にも点《つ》け直そうとする者はない。 某《なにがし》の院の物怪《もののけ》の出た夜が 源氏に思い出されるのである。 荒廃のしかたはそれに劣らない家であっても、室の狭いのと、 人間があの時よりは多い点だけを慰めに思えば思えるのであるが、 ものすごい夜で、不安な思いに絶えず目がさめた。 こんなことはかえって女への愛を深くさせるものなのであるが、 心を惹《ひ》きつける何物をも持たない相手に 源氏は失望を覚えるばかりであった。 やっと夜が明けて行きそうであったから、 源氏は自身で格子を上げて…

  • 清貧の常陸宮家の生活【源氏91 第六帖 末摘花11】 古ぼけた几帳や支那製であるが古ぼけた食器。女房達は ぼやきながら 古めかしい姿で寒さに震えている。

    💠常陸の女王のまだ顔も見せない深い羞恥を 取りのけてみようとも格別しないで時がたった。 あるいは源氏がこの人を顕《あら》わに見た刹那《せつな》から 好きになる可能性があるとも言えるのである。 手探りに不審な点があるのか、 この人の顔を一度だけ見たいと思うこともあったが、 引っ込みのつかぬ幻滅を味わわされることも思うと不安だった。 だれも人の来ることを思わない、まだ深夜にならぬ時刻に源氏はそっと行って、 格子の間からのぞいて見た。 けれど姫君はそんな所から見えるものでもなかった。 几帳《きちょう》などは非常に古びた物であるが、 昔作られたままに皆きちんとかかっていた。 どこからか隙見《すきみ》が…

  • 若紫を二条院に迎える【源氏90 第六帖 末摘花10】若い公達は行幸の日を楽しみに舞曲の勉強をしている。源氏も含め皆 稽古に忙しい。若紫を二条院に迎えた。

    💠夜になってから退出する左大臣に伴われて源氏はその家へ行った。 行幸の日を楽しみにして、 若い公達《きんだち》が集まるとその話が出る。 舞曲の勉強をするのが仕事のようになっていたころであったから、 どこの家でも楽器の音をさせているのである。 左大臣の子息たちも、平生の楽器のほかの大篳篥《おおひちりき》、 尺八などの、大きいものから太い声をたてる物も混ぜて、 大がかりの合奏の稽古《けいこ》をしていた。 太鼓までも高欄の所へころがしてきて、 そうした役はせぬことになっている公達が 自身でたたいたりもしていた。 こんなことで源氏も毎日|閑暇《ひま》がない。 心から恋しい人の所へ行く時間を盗むことはで…

  • 源氏の朝寝を怪しむ頭中将【源氏89 第六帖 末摘花9】頭中将は 御所で楽と舞の役の人選で忙しい。源氏は、姫に夕方手紙を出すことができたが、訪ねなかった。

    💠二条の院へ帰って、源氏は又寝《またね》をしながら、 何事も空想したようにはいかないものであると思って、 ただ身分が並み並みの人でないために、 一度きりの関係で退《の》いてしまうような態度の取れない点を 煩悶《はんもん》するのだった。 そんな所へ頭中将《とうのちゅうじょう》が訪問してきた。 「たいへんな朝寝なんですね。なんだかわけがありそうだ」 と言われて源氏は起き上がった。 「気楽な独《ひと》り寝なものですから、 いい気になって寝坊をしてしまいましたよ。御所からですか?」 「そうです。まだ家《うち》へ帰っていないのですよ。 朱雀《すざく》院の行幸の日の楽の役と舞《まい》の役の人選が 今日ある…

  • 源氏 強行突破💦【源氏物語88 第6帖 末摘花8】源氏は常陸宮の姫に声をかけても返事がない。見かねて侍従という女房が代わりに返事をする。源氏 強引な手段に出る

    「いくそ度《たび》 君が沈黙《しじま》に 負けぬらん 物な云《い》ひそと 云はぬ頼みに 言いきってくださいませんか。 私の恋を受けてくださるのか、受けてくださらないかを」 女王の乳母の娘で 侍従という気さくな若い女房が、 見かねて、女王のそばへ寄って女王らしくして言った。 「鐘つきて とぢめんことは さすがにて 答へまうきぞ かつはあやなき」 若々しい声で、 重々しくものの言えない人が 代人でないようにして言ったので、 貴女《きじょ》としては甘ったれた態度だと源氏は思ったが、 はじめて相手にものを言わせたことがうれしくて、 「こちらが何とも言えなくなります、 「云《い》はぬをも 云ふに勝《まさ…

  • 宮の姫君 無言の行💦【源氏87 第六帖 末摘花7】源氏が宮家を訪ねる。化粧をした源氏は ことさら艶である。姫のかすかな衣被香の香り

    💠八月の二十日過ぎである。 八、九時にもまだ月が出ずに星だけが白く見える夜、 古い邸《やしき》の松風が心細くて、父宮のことなどを言い出して、 女王は命婦といて泣いたりしていた。 源氏に訪ねて来させるのによいおりであると思った命婦のしらせが 行ったか、 この春のようにそっと源氏が出て来た。 その時分になって昇《のぼ》った月の光が、 古い庭をいっそう荒涼たるものに見せるのを 寂しい気持ちで女王がながめていると命婦が勧めて琴を弾かせた。 まずくはない、もう少し近代的の光沢が添ったらいいだろうなどと、 ひそかなことを企てて心の落ち着かぬ命婦は思っていた。 人のあまりいない家であったから 源氏は気楽に中…

  • 命婦は手引きを考える【源氏物語86 第六帖 末摘花6】源氏は常陸宮の女王に手紙を送るが返事はない。訪ねる者のいない草深い女王の屋敷に出入りする者はなかった

    秋になって、 夕顔の五条の家で聞いた砧《きぬた》の 耳についてうるさかったことさえ 恋しく源氏に思い出されるころ、 源氏はしばしば常陸の宮の女王へ手紙を送った。 返事のないことは秋の今も初めに変わらなかった。 あまりに人並みはずれな態度をとる女だと思うと、 負けたくないというような意地も出て、 命婦へ積極的に取り持ちを迫ることが多くなった。 「どんなふうに思っているのだろう。 私はまだこんな態度を取り続ける女に出逢ったことはないよ」 不快そうに源氏の言うのを聞いて命婦も気の毒がった。 「私は格別この御縁はよろしくございませんとも言っておりませんよ。 ただあまり内気過ぎる方で 男の方との交渉に手…

  • 中将も参戦💦【源氏85 第六帖 末摘花5】頭中将はちゃっかり常陸宮の姫に手紙を送る。源氏は中将をじらすが自分も返事が来ていないのは同じ

    💠「常陸の宮の返事が来ますか? 私もちょっとした手紙をやったのだけれど何にも言って来ない。 侮辱された形ですね」 自分の想像したとおりだ、 頭中将はもう手紙を送っているのだと思うと源氏はおかしかった。 「返事を格別見たいと思わない女だからですか、 来たか来なかったかよく覚えていませんよ」 源氏は中将をじらす気なのである。 返事の来ないことは同じなのである。 中将は、そこへ行きこちらへは来ないのだと口惜しがった。 源氏はたいした執心を持つのでない女の 冷淡な態度に 厭気《いやき》がして捨てて置く気になっていたが、 頭中将の話を聞いてからは、 口上手な中将のほうに女は取られてしまうであろう、 女は…

  • 源氏と頭中将は一つの車に乗って左大臣家に🌿【源氏物語84 第六帖 末摘花4】二人の貴公子は 荒れ屋敷の琴の音を思い出す。

    源氏にも頭中将にも第二の行く先は決まっていたが、 戯談《じょうだん》を言い合っていることがおもしろくて、 別れられずに一つの車に乗って、 朧月夜《おぼろづきよ》の暗くなった時分に左大臣家に来た。 前駆に声も立てさせずに、そっとはいって、 人の来ない廊の部屋で直衣《のうし》に着かえなどしてから、 素知らぬ顔で、 今来たように笛を吹き合いながら 源氏の住んでいるほうへ来たのである。 その音《ね》に促されたように 左大臣は高麗笛《こまぶえ》を持って来て源氏へ贈った。 その笛も源氏は得意であったからおもしろく吹いた。 合奏のために琴も持ち出されて女房の中でも 音楽のできる人たちが選ばれて弾《ひ》き手に…

  • 🌹源氏を尾行する頭中将【源氏83 第六帖 末摘花3】帝は源氏が真面目すぎて困ると仰る。庭に出たら、源氏を変装してまで 尾行してきた頭中将に遭遇。

    「あまりにまじめ過ぎるからと 陛下がよく困るようにおっしゃっていらっしゃいますのが、 私にはおかしくてならないことがおりおりございます。 こんな浮気なお忍び姿を陛下は御覧になりませんからね」 と命婦が言うと、 源氏は二足三足帰って来て、笑いながら言う。 「何を言うのだね。品行方正な人間でも言うように。 これを浮気と言ったら、君の恋愛生活は何なのだ」 多情な女だと源氏が決めていて、おりおりこんなことを面と向かって言われるのを 命婦は恥ずかしく思って何とも言わなかった。 女暮らしの家の座敷の物音を聞きたいように思って 源氏は静かに庭へ出たのである。 大部分は朽ちてしまったあとの少し残った透垣《すい…

  • 🌸宮家訪問 琴を聴く【源氏82 第六帖 末摘花2】源氏は常陸宮邸を訪問して 命婦に姫の琴が聞きたいと望む。命婦は姫に琴を聞かせてほしいと頼む。源氏は姫との交際を望む。

    源氏は言っていたように十六夜《いざよい》の月の 朧《おぼ》ろに霞《かす》んだ夜に命婦を訪問した。 「困ります。こうした天気は決して音楽に適しませんのですもの」 「まあいいから御殿へ行って、 ただ一声でいいからお弾《ひ》かせしてくれ。 聞かれないで帰るのではあまりつまらないから」 と強《し》いて望まれて、 この貴公子を取り散らした自身の部屋へ置いて行くことを 済まなく思いながら、 命婦が寝殿《しんでん》へ行ってみると、 まだ格子《こうし》をおろさないで 梅の花のにおう庭を女王はながめていた。 よいところであると命婦は心で思った。 「琴の声が聞かせていただけましたらと 思うような夜分でございますか…

  • 🌸不遇な姫の話を聞く【源氏81 第六帖 末摘花1】源氏は夕顔の女君を失った悲しみを忘れることができない。源氏は縁のあった女を忘れない。乳母子の大輔の命婦から 気の毒な常陸宮の姫君のことを聞く。

    源氏の君の夕顔を失った悲しみは、 月がたち年が変わっても忘れることができなかった。 左大臣家にいる夫人も、六条の貴女《きじょ》も強い思い上がりと 源氏の他の愛人を寛大に許すことのできない気むずかしさがあって、 扱いにくいことによっても、 源氏はあの気楽な自由な気持ちを与えてくれた恋人ばかりが 追慕されるのである。 どうかしてたいそうな身分のない女で、可憐《かれん》で、 そして世間的にあまり恥ずかしくもないような恋人を見つけたいと 懲りもせずに思っている。 少しよいらしく言われる女にはすぐに源氏の好奇心は向く。 さて接近して行こうと思うのにはまず短い手紙などを送るが、 もうそれだけで女のほうから…

  • 🌸若紫は源氏に懐く【源氏80 第五帖若紫23 完】若紫(女王)が行方不明になり父宮は悲しむ。すっかり馴染んだ若紫は 源氏が帰ってくる時は誰より先に出迎えいろいろ話をする。

    「書きそこねたわ」 と言って、恥ずかしがって隠すのをしいて読んでみた。 『かこつべき 故を知らねば おぼつかな いかなる草の ゆかりなるらん』 子供らしい字ではあるが、将来の上達が予想されるような、ふっくりとしたものだった。 死んだ尼君の字にも似ていた。 現代の手本を習わせたならもっとよくなるだろうと源氏は思った。 雛《ひな》なども屋根のある家などもたくさんに作らせて、 若紫の女王と遊ぶことは 源氏の物思いを紛らすのに最もよい方法のようだった。 大納言家に残っていた女房たちは、 宮がおいでになった時に 御挨拶のしようがなくて困った。 当分は世間へ知らせずにおこうと、源氏も言っていたし、 少納言…

  • 🌼若紫の機嫌を取る源氏【源氏79 第五帖 若紫22】女王は「もう乳母と寝てはいけないよ」と源氏に言われ悲しがって泣き寝をする。源氏は 面白い絵や道具を持ってきて女王の機嫌を取っていた。

    「少納言の所で私は寝るのよ」 子供らしい声で言う。 「もうあなたは乳母《めのと》などと寝るものではありませんよ」 と源氏が教えると、悲しがって泣き寝をしてしまった。 乳母は眠ることもできず、ただむやみに泣かれた。 明けてゆく朝の光を見渡すと、建物や室内の装飾はいうまでもなくりっぱで、 庭の敷き砂なども玉を重ねたもののように美しかった。 少納言は自身が貧弱に思われてきまりが悪かったが、 この御殿には女房がいなかった。 あまり親しくない客などを迎えるだけの座敷になっていたから、 男の侍だけが縁の外で用を聞くだけだった。 そうした人たちは新たに源氏が迎え入れた女性のあるのを聞いて、 「だれだろう、よ…

  • 🌸若紫は不安で泣く【源氏78 第五帖 若紫21】寝ていた女王を抱き上げて連れていく。困惑する少納言であったが同行する。不安になった若紫の女王は泣く。

    源氏は無心によく眠っていた姫君を抱き上げて目をさまさせた。 女王は父宮がお迎えにおいでになったのだと まだまったくさめない心では思っていた。 髪を撫《な》でて直したりして、 「さあ、いらっしゃい。宮様のお使いになって私が来たのですよ」 と言う声を聞いた時に姫君は驚いて、恐ろしく思うふうに見えた。 「いやですね。私だって宮様だって同じ人ですよ。鬼などであるものですか」 源氏の君が姫君をかかえて出て来た。 少納言と、惟光《これみつ》と、外の女房とが、 「あ、どうなさいます」 と同時に言った。 「ここへは始終来られないから、気楽な所へお移ししようと言ったのだけれど、 それには同意をなさらないで、ほか…

  • 🌸若紫を迎える【源氏77 第五帖 若紫20】兵部卿の宮が女王を迎えに来ることになった。源氏は左大臣家に行っていたが 惟光からその事を聞いて 女王を二条院に迎える。

    「宮様のほうから、にわかに明日迎えに行くと言っておよこしになりましたので、 取り込んでおります。 長い馴染《なじみ》の古いお邸《やしき》を離れますのも 心細い気のすることと私どもめいめい申し合っております」 と言葉数も少なく言って、 大納言家の女房たちは今日はゆっくりと話し相手になっていなかった。 忙しそうに物を縫ったり、何かを仕度したりする様子がよくわかるので、 惟光《これみつ》は帰って行った。 源氏は左大臣家へ行っていたが、 例の夫人は急に出て来て逢《あ》おうともしなかったのである。 面倒な気がして、 源氏は東琴《あずまごと》(和琴《わごん》に同じ)を 手すさびに弾《ひ》いて、 「常陸《ひ…

  • 祖母が亡くなり悲しむ紫の君【源氏76 第五帖 若紫19】父宮は 女王を慰めるものの、祖母が亡くなって深い悲しみに沈んでいる。源氏の代わりに 惟光が宿直をする。

    「なぜそんなにお祖母様のことばかりをあなたはお思いになるの、 亡くなった人はしかたがないんですよ。お父様がおればいいのだよ」 と宮は言っておいでになった。 日が暮れるとお帰りになるのを見て、心細がって姫君が泣くと、 宮もお泣きになって、 「なんでもそんなに悲しがってはしかたがない。 今日明日にでもお父様の所へ来られるようにしよう」 などと、いろいろになだめて宮はお帰りになった。 母も祖母も失った女の将来の心細さなどを女王は思うのでなく、 ただ小さい時から片時の間も離れず付き添っていた祖母が 死んだと思うことだけが非常に悲しいのである。 子供ながらも悲しみが胸をふさいでいる気がして 遊び相手はい…

  • 源氏 女人に無視こかれる【源氏75 第五帖 若紫18】源氏、兵部卿の宮は荒れた邸にいる女王に心動かされる。

    近ごろ隠れて通っている人の家が途中にあるのを思い出して、 その門をたたかせたが内へは聞こえないらしい。 しかたがなくて供の中から声のいい男を選んで歌わせた。 『朝ぼらけ 霧立つ空の 迷ひにも 行き過ぎがたき 妹《いも》が門かな』 二度繰り返させたのである。 気のきいたふうをした下仕《しもづか》えの女中を出して、 『立ちとまり 霧の籬《まがき》の過ぎうくば 草の戸ざしに 障《さは》りしもせじ』 と言わせた。 女はすぐに門へはいってしまった。 それきりだれも出て来ないので、帰ってしまうのも冷淡な気がしたが、 夜がどんどん明けてきそうで、きまりの悪さに二条の院へ車を進めさせた。 かわいかった小女王を…

  • 女王に寄り添う源氏❄️【源氏物語74 第五帖 若紫17】外は みぞれが降る夜。宿直をするということで女王に寄り添い 優しく話しかける。

    「いくら何でも私はこの小さい女王さんを情人にしようとはしない。 まあ私がどれほど誠実であるかを御覧なさい」 外には霙《みぞれ》が降っていて凄《すご》い夜である。 「こんなに小人数で この寂しい邸《やしき》にどうして住めるのですか」 と言って源氏は泣いていた。 捨てて帰って行けない気がするのであった。 「もう戸をおろしておしまいなさい。 こわいような夜だから、私が宿直《とのい》の男になりましょう。 女房方は皆|女王《にょおう》さんの室へ来ていらっしゃい」 と言って、 馴《な》れたことのように女王さんを帳台の中へ抱いてはいった。 だれもだれも意外なことにあきれていた。 乳母は心配をしながらも 普通…

  • 女王の祖母が亡くなる【源氏物語72 第五帖 若紫15】女王の祖母の尼君がなくなる。源氏は弔意品を送る。少納言の君は幼い女王の立場を思い泣く。

    この十月に朱雀《すざく》院へ行幸があるはずだった。 その日の舞楽には 貴族の子息たち、高官、殿上役人などの中の優秀な人が舞い人に選ばれていて、 親王方大臣をはじめとして音楽の素養の深い人は そのために新しい稽古を始めていた。 それで源氏の君も多忙であった。 北山の寺へも久しく見舞わなかったことを思って、ある日わざわざ使いを立てた。 山からは僧都《そうず》の返事だけが来た。 先月の二十日にとうとう姉は亡《な》くなりまして、 これが人生の掟《おきて》であるのを承知しながらも悲しんでおります。 源氏は今さらのように人間の生命の脆《もろ》さが思われた。 尼君が気がかりでならなかったらしい小女王はどうし…

  • 都に戻った尼君のお見舞いに行く【源氏物語71 第五帖 若紫14】源氏のところに女王が姿を現す。子どもらしく愛らしい。藤壺への恋心がつのり 縁故である上を引き取りたいという望みが膨らんでいく。

    「私は病気であることが今では普通なようになっております。 しかしもうこの命の終わりに近づきましたおりから、 かたじけないお見舞いを受けました喜びを 自分で申し上げません失礼をお許しくださいませ。 あの話は今後もお忘れになりませんでしたら、 もう少し年のゆきました時にお願いいたします。 一人ぼっちになりますあの子に残る心が、 私の参ります道の障《さわ》りになることかと思われます」 取り次ぎの人に尼君が言いつけている言葉が隣室であったから、 その心細そうな声も絶え絶え聞こえてくるのである。 「失礼なことでございます。 孫がせめてお礼を申し上げる年になっておれば よろしいのでございますのに」 とも言…

  • 懐妊した藤壺を寵愛する桐壺帝【源氏物語70 第五帖 若紫13】秋の末、源氏は 女王の祖母、按察使大納言の北の方の屋敷を訪問する。尼君は病気で弱っている。

    初秋の七月になって宮は御所へおはいりになった。 最愛の方が懐妊されたのであるから、 帝のお志はますます藤壺の宮にそそがれるばかりであった。 少しお腹《なか》がふっくりとなって 悪阻《つわり》の悩みに 顔の少しお痩せになった宮のお美しさは、 前よりも増したのではないかと見えた。 以前もそうであったように 帝は明け暮れ藤壺にばかり来ておいでになって、 もう音楽の遊びをするのにも適した季節にもなっていたから、 源氏の中将をも始終そこへお呼び出しになって、 琴や笛の役をお命じになった。 物思わしさを源氏は極力おさえていたが、 時々には忍びがたい様子もうかがわれるのを、宮もお感じになって、 さすがにその…

  • 禁断の狂おしい恋の虜【源氏物語69 第六帖 若紫12】逢瀬を重ね 藤壺の宮は懐妊。夢占いで夢を現実にまざまざ続き恐怖を覚える。

    源氏の恋の万分の一も告げる時間のあるわけはない。 永久の夜が欲しいほどであるのに、逢わない時よりも恨めしい別れの時が至った。 見てもまた逢ふ夜|稀《まれ》なる夢の中《うち》にやがてまぎるるわが身ともがな 涙にむせ返って言う源氏の様子を見ると、 さすがに宮も悲しくて、 『世語りに 人やつたへん 類《たぐ》ひなく 憂《う》き身をさめぬ 夢になしても』 (※ 音読に際し、「つたえん」と読まねばならぬところを 「つたへん」と読んでいました。お詫びします🙇‍♀️) とお言いになった。 宮が煩悶《はんもん》しておいでになるのも道理なことで、 恋にくらんだ源氏の目にももったいなく思われた。 源氏の上着などは…

  • 藤壺の宮との密かな逢瀬【源氏68 第五帖 若紫11】藤壺の宮は身体の調子がすぐれず自邸に。罪悪感を持ちつつも 王の命婦に手引きをさせ密かな逢瀬を重ねる

    ↑源氏物語68の間違いです🙇 「少納言の乳母《めのと》という人がいるはずだから、 その人に逢《あ》って詳しく私のほうの心持ちを伝えて来てくれ」 などと源氏は命じた。 どんな女性にも関心を持つ方だ、姫君はまだきわめて幼稚であったようだのに と惟光は思って、真正面から見たのではないが、 自身がいっしょに隙見《すきみ》をした時のことを 思ってみたりもしていた。 今度は五位の男を使いにして手紙をもらったことに 僧都は恐縮していた。 惟光は少納言に面会を申し込んで逢った。 源氏の望んでいることを詳しく伝えて、そのあとで源氏の日常の生活ぶりなどを語った。 多弁な惟光は相手を説得する心で 上手にいろいろ話し…

  • 恋しい人の面影を追う源氏【源氏物語67 第五帖 若紫10-2】藤壺の宮に縁故があり、恋しい人の面影を持つ少女を引き取りたいという思いが深まり、惟光を北山に遣わす。

    就寝を促してみても聞かぬ人を置いて、 歎息《たんそく》をしながら源氏は枕についていたというのも、 夫人を動かすことにそう骨を折る気にはなれなかったのかもしれない。 ただくたびれて眠いというふうを見せながらも いろいろな物思いをしていた。 若草と祖母に歌われていた 兵部卿の宮の小王女の登場する未来の舞台がしきりに思われる。 年の不つりあいから先方の人たちが 自分の提議を問題にしようとしなかったのも道理である。 先方がそうでは積極的には出られない。 しかし何らかの手段で自邸へ入れて、 あの愛らしい人を物思いの慰めにながめていたい。 兵部卿の宮は上品な艶《えん》なお顔ではあるが はなやかな美しさなど…

  • 頭中将 公達と酒盛り🍶【源氏物語 66 第5帖 若紫10】頭中将 公達らが北山に源氏を迎えにくる。酒盛りや音楽を楽しむ。女王は源氏を美しいと思う

    ちょうど源氏が車に乗ろうとするころに、 左大臣家から、 どこへ行くともなく源氏が京を出かけて行ったので、 その迎えとして家司《けいし》の人々や、子息たちなどがおおぜい出て来た。 頭中将《とうのちゅうじょう》、左中弁《さちゅうべん》 またそのほかの公達《きんだち》もいっしょに来たのである。 「こうした御旅行などにはぜひお供をしようと思っていますのに、お知らせがなくて」 などと恨んで、 「美しい花の下で遊ぶ時間が許されないで すぐにお帰りのお供をするのは 惜しくてならないことですね」 とも言っていた。 岩の横の青い苔《こけ》の上に新しく来た公達は並んで、 また酒盛りが始められたのである。 前に流れ…

  • 源氏 姫の御簾に入る【源氏物語73 第五帖 若紫16】女王は 直衣を着た方が来られていると聞いて父宮かと思ったが源氏の君であることを知る。

    「そんなことはどうでもいいじゃありませんか、 私が繰り返し繰り返しこれまで申し上げてあることを なぜ無視しようとなさるのですか。 その幼稚な方を私が好きでたまらないのは、 こればかりは前生《ぜんしょう》の縁に違いないと、 それを私が客観的に見ても思われます。 許してくだすって、この心持ちを直接女王さんに話させてくださいませんか。 『あしわかの 浦にみるめは 難《かた》くとも こは立ちながら 帰る波かは』 私をお見くびりになってはいけません」 源氏がこう言うと、 「それはもうほんとうにもったいなく思っているのでございます。 『寄る波の 心も知らで 和歌の浦に 玉藻《たまも》なびかん ほどぞ浮きた…

  • 病から回復した源氏【源氏物語 65 第5帖 若紫9】僧都は饗応に心を尽くし 源氏のために尼君に 女王ことをお願いする

    夜明けの空は十二分に霞んで、 山の鳥声がどこで啼《な》くとなしに多く聞こえてきた。 都人《みやこびと》には 名のわかりにくい木や草の花が多く咲き多く地に散っていた。 こんな深山の錦《にしき》の上へ 鹿が出て来たりするのも珍しいながめで、 源氏は病苦からまったく解放されたのである。 聖人は動くことも容易でない老体であったが、 源氏のために僧都の坊へ来て護身の法を行なったりしていた。 嗄々《かれがれ》な所々が消えるような声で 経を読んでいるのが身にしみもし、 尊くも思われた。 経は陀羅尼《だらに》である。 京から源氏の迎えの一行が山へ着いて、 病気の全快された喜びが述べられ 御所のお使いも来た。 …

  • 幼い女王を将来の結婚相手として望む【源氏物語 64 第5帖 若紫 8】姫を将来の結婚相手として引き取りたいと申し出る源氏 戸惑う尼君

    「そうだね、若い人こそ困るだろうが私など、まあよい。 丁寧に言っていらっしゃるのだから」 尼君は出て行った。 「出来心的な軽率な相談を持ちかける者だと お思いになるのがかえって当然なような、 こんな時に申し上げるのは私のために不利なんですが、 誠意をもってお話しいたそうとしておりますことは 仏様がご存じでしょう」 と源氏は言ったが、 相当な年配の貴女が静かに前にいることを思うと 急に希望の件が持ち出されないのである。 「思いがけぬ所で、お泊まり合わせになりました。 あなた様から御相談を承りますのを前生《ぜんしょう》に 根を置いていないこととどうして思えましょう」 と尼君は言った。 「お母様をお…

  • 源氏は僧都の山荘に泊まる【源氏物語 63 第5帖 若紫7】貴族的な良い雰囲気の中 源氏は 尼君に姫君のことで相談を持ちかける

    奥のほうの室にいる人たちも起きたままでいるのが 気配《けはい》で知れていた。 静かにしようと気を配っているらしいが、 数珠《じゅず》が脇息《きょうそく》に触れて鳴る音などがして 女の起居《たちい》の衣摺《きぬず》れも ほのかになつかしい音に耳へ通ってくる。 貴族的なよい感じである。 源氏はすぐ隣の室でもあったから この座敷の奥に立ててある二つの屏風《びょうぶ》の合わせ目を 少し引きあけて、人を呼ぶために扇を鳴らした。 先方は意外に思ったらしいが、無視しているように思わせたくないと思って、一人の女が膝行《いざり》寄って来た。 襖子《からかみ》から少し遠いところで、 「不思議なこと、聞き違えかしら…

  • 北山の少女は藤壺の姪🌸【源氏物語 62 第5帖 若紫 6】源氏は、姫君が 按察使大納言の姫君と兵部卿の宮の間にできた子であると知る。藤壺の宮の姪になる

    「その大納言にお嬢さんがおありになるということでしたが、 それはどうなすったのですか。 私は好色から伺うのじゃありません、まじめにお尋ね申し上げるのです」 少女は大納言の遺子であろうと想像して源氏が言うと、 「ただ一人娘がございました。 亡くなりましてもう十年余りになりますでしょうか、 大納言は宮中へ入れたいように申して、 非常に大事にして育てていたのですがそのままで死にますし、 未亡人が一人で育てていますうちに、 だれがお手引きをしたのか兵部卿《ひょうぶきょう》の宮が 通っていらっしゃるようになりまして、 それを宮の御本妻はなかなか権力のある夫人で、やかましくお言いになって、 私の姪《めい》…

  • 💠若紫との出会い【源氏物語 61 第5帖 若紫5】源氏は僧都の山荘に移る。可憐で美しい少女に心を奪われる。祖母は按察使《あぜち》大納言の未亡人

    僧都がこの座敷を出て行く気配《けはい》がするので 源氏も山上の寺へ帰った。 源氏は思った。 自分は可憐な人を発見することができた、だから自分といっしょに来ている若い連中は 旅というものをしたがるのである、そこで意外な収穫を得るのだ、 たまさかに京を出て来ただけでもこんな思いがけないことがあると、 それで源氏はうれしかった。それにしても美しい子である、どんな身分の人なのであろう、 あの子を手もとに迎えて逢《あ》いがたい人の恋しさが 慰められるものならぜひそうしたいと源氏は深く思ったのである。 寺で皆が寝床についていると、 僧都の弟子が訪問して来て、 惟光《これみつ》に逢いたいと申し入れた。 狭い…

  • 北山で美しい少女と出会う【源氏物語 60 第5帖 若紫4】「雀の子を犬君が逃しつる」源氏は 美しい少女と出会った。少女は 恋しい藤壺の宮様に似ている

    「雀《すずめ》の子を犬君《いぬき》が逃がしてしまいましたの、 伏籠《ふせご》の中に置いて逃げないようにしてあったのに」 たいへん残念そうである。 そばにいた中年の女が、 「またいつもの粗相《そそう》やさんが そんなことをしてお嬢様にしかられるのですね、 困った人ですね。 雀はどちらのほうへ参りました。 だいぶ馴《な》れてきてかわゆうございましたのに、 外へ出ては山の鳥に見つかってどんな目にあわされますか」 と言いながら立って行った。 髪のゆらゆらと動く後ろ姿も感じのよい女である。 少納言の乳母《めのと》と他の人が言っているから、 この美しい子供の世話役なのであろう。 「あなたはまあいつまでも子…

  • 明石の入道の話を聞く源氏【源氏物語 59 第5帖 若紫3 】源氏は 明石の女人に興味を覚える。北山に滞在中、源氏は 例の山荘で愛らしい少女を見つける

    「でもどうかね、どんなに美しい娘だといわれていても、 やはり田舎者らしかろうよ。 小さい時からそんな所に育つし、 頑固な親に教育されているのだから」こんなことも言う。 「しかし母親はりっぱなのだろう。 若い女房や童女など、京のよい家にいた人などを何かの縁故からたくさん呼んだりして、たいそうなことを娘のためにしているらしいから、それでただの田舎娘ができ上がったら満足していられないわけだから、 私などは娘も相当な価値のある女だろうと思うね」だれかが言う。 源氏は、「なぜお后にしなければならないのだろうね。それでなければ自殺させるという凝り固まりでは、ほかから見てもよい気持ちはしないだろうと思う」な…

  • 縁なくば 海に身投げせよと育てられた姫【源氏物語 58 第5帖 若紫2 】源氏は 明石の変わり者の入道の娘の話を聞く。

    源氏は寺へ帰って仏前の勤めをしながら昼になると もう発作が起こるころであるがと不安だった。 「気をお紛《まぎ》らしになって、 病気のことをお思いにならないのがいちばんよろしゅうございますよ」 などと人が言うので、後ろのほうの山へ出て今度は京のほうをながめた。 ずっと遠くまで霞《かす》んでいて、 山の近い木立ちなどは淡く煙って見えた。 「絵によく似ている。こんな所に住めば人間の穢《きたな》い感情などは 起こしようがないだろう」 と源氏が言うと、 「この山などはまだ浅いものでございます。 地方の海岸の風景や山の景色をお目にかけましたら、 その自然からお得《え》になるところがあって、 絵がずいぶん御…

  • 病の源氏は北山の聖人に祈祷してもらう【源氏物語 57 第5帖 若紫1】散歩に出た時 若い女房や女童がいる僧都の屋敷を見つけた

    源氏は瘧病《わらわやみ》にかかっていた。 いろいろとまじないもし、 僧の加持《かじ》も受けていたが効験《ききめ》がなくて、 この病の特徴で発作的にたびたび起こってくるのをある人が、 「北山の某《なにがし》という寺に 非常に上手《じょうず》な修験僧《しゅげんそう》がおります、 去年の夏この病気がはやりました時など、 まじないも効果《ききめ》がなく困っていた人が ずいぶん救われました。 病気をこじらせますと癒《なお》りにくくなりますから、 早くためしてごらんになったらいいでしょう」 こんなことを言って勧めたので、 源氏はその山から修験者を自邸へ招こうとした。 「老体になっておりまして、 岩窟《がん…

  • 大腸がん検診は必ず受けましょう🏥🌟ワタクシ無自覚無症状でしたが、どでかいポリープ育ててました(´;ω;`)

    少納言👩、実は先週、大腸ポリープの手術で入院しておりました🏥 そもそも、便秘も下痢もあまり経験もなく、消化器系は丈夫ᕦ(ò_óˇ)ᕤ とはいえ、夫の健保組合から検診受けたか?検診受けろ🩺と言ってくる。 検診は家族も受けることができることもあり、 全身の健診を含め、乳がん検診 子宮がん検診 ピロリ菌検査まで受けていた。 しかし、大腸がん検査だけは何故かめんどくさくて受けてなかったのよ😅 それが背の君👨‍💼にバレて、 やいやい言われて今回大腸便潜血検査受けたわけ💩💩 めんどくせえ奴(背の君👨‍💼)黙らせるために仕方なく検体💩💩を提出。 どーせ、大丈夫に決まってんじゃん(。・ω・。) しかし‥ 二つ…

  • 順徳院(100番)🍃百敷(ももしき)や 古き軒端(のきば)の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり

    順徳院(100番)続後撰集 雑下・1205 🍃 百敷(ももしき)や 古き軒端(のきば)の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり 〜時代を経て古びてしまった建物の軒の端に、 しのぶ草が生い茂っている。 それを見るにつけ、 朝廷が栄えた昔のよき時代が しのばれて懐かしく思われることだ。 💠 順徳院 💠 じゅんとくいん (1197~1242) 後鳥羽天皇の第3皇子 14歳で第84代の天皇に即位。 「承久の乱」に破れ、佐渡へと流されました。 父の後鳥羽院と同じく歌の名手 歌学書「八雲御抄(やくもみしょう)」 を残しています。 💠少納言チャンネルは、聴く古典として動画を作っております。ぜひチャンネル登…

  • 【後鳥羽院】(99番)🌊人もをし 人も恨めし あぢきなく 世を思ふ故に もの思ふ身は

    【後鳥羽院】(99番)続後撰集 雑・1199 🌊 人もをし 人も恨めし あぢきなく 世を思ふ故に もの思ふ身は 〜ある時は人々を愛しく思い、 またある時は恨めしいとも思う。 この世はどうにかならないものだろうが、 それゆえに物思いをする私であるよ。 💠 後鳥羽院 💠 ごとばいん (1180~1239) 高倉天皇の第四皇子。 源平の戦が終わり、 平氏が安徳天皇を奉じて西へ下った年に5歳で即位。 翌年鎌倉幕府が成立。 19歳で位を譲り院政をしきましたが幕府と対立し、 3代将軍源実朝暗殺事件の後、 承久3年に北条義時討伐に失敗(承久の変)。 隠岐へ流され、19年そこで暮らして後、崩御。 藤原定家らに…

  • 🍀藤原家隆(98番)そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける

    🍀藤原家隆(98番) 新勅撰集 夏・192 風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける 〜楢の葉を揺らすそよ風が吹き、 夕暮れは秋のように涼しい。 しかし、上賀茂神社の境内を流れる 御手洗川で 行われるみそぎの光景を見ると、 やはりまだ夏なのだなあ。 💠 藤原家隆 💠 ふじわらのいえたか 💠 従二位家隆 💠 じゅにいいえたか (1158~1237) 権中納言だった藤原光隆(みつたか)の息子 後鳥羽院の時代の代表的な歌人 寂蓮法師(じゃくれんほうし)の家に 婿として入る。 藤原俊成に歌を学びました。 家隆殿の義父です🌿 家隆殿の師匠です🌿 💠少納言チャンネルは、聴く古典動画を…

  • 【権中納言定家 藤原定家】(97番)🌊来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや 藻塩(もしほ)の 身もこがれつつ

    【権中納言定家 藤原定家】(97番)新勅撰集 巻13・恋3・849 🌊来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや 藻塩(もしほ)の 身もこがれつつ 〜待っても来ない人を待つ私 松帆の浦の浜辺で 焼いている藻塩の煙がなびいているが、 この身も恋の思いにこがれていく、 そんな気持ちなのだ。 💠 藤原定家 💠ふじわらのさだいえ(ていか) 💠 権中納言定家 💠 ごんちゅうなごんさだいえ (1162~1241年) 平安末期の大歌人 藤原俊成の子 新古今集、新勅撰集の選者 「小倉百人一首」を選んだ人として知られている。 藤原定家は能の演目にもなっています🌿 北国から京の都に上った旅の僧の一行が、千本(今出川…

  • 【藤原公経(入道前太政大臣)(西園寺公経)】 (96番)花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは 我が身なりけり

    【藤原公経(入道前太政大臣)(西園寺公経)】 (96番)新勅撰集 雑・1054 花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは 我が身なりけり 〜桜を誘って散らす激しい風が吹く庭。 そこに散り敷くのは雪かと思う。 しかしふる(降る)のは雪ではなく、 実は古びていく私自身なのだ 💠 藤原公経 💠ふじわらのきんつね 💠 西園寺公経 💠 さいおんじきんつね 💠 入道前太政大臣 💠にゅうどうさきのだいじょうだいじん (1171~1244) 藤原実宗(さねむね)の息子 源頼朝の妹婿・一条能保(よしやす)の娘を妻にしました。 定家の義弟。 承久の乱の時、 計画を知って幽閉されましたが、 幕府に漏らして乱を失…

  • 【前大僧正慈円】(95番) おほけなく うき世の民に おほふかな わがたつ杣(そま)に 墨染(すみぞめ)の袖🍃

    【前大僧正慈円】(95番) 千載集 雑中・1137 おほけなく うき世の民に おほふかな わがたつ杣そまに 墨染すみぞめの袖🍃 〜身のほどをわきまえないことだが、 このつらい世の中を生きる人々に 覆い掛けるのだ。 比叡山に住み、 修行の道に入った私の僧衣の袖を。 そして人々のために祈ろう 💠 前大僧正慈円 💠 さきのだいそうじょうじえん (1155~1225年) 藤原忠通(ふじわらのただみち)の息子。 37歳の時に天台宗の座主となる。 (比叡山延暦寺の僧侶の最高職で首長) 法名が慈円でおくり名が慈鎮(じちん)。 日本初の歴史論集「愚管抄」の作者。 〜『愚管抄』(ぐかんしょう)は、鎌倉時代初期の…

  • 藤原雅経 参議雅経(94番)み吉野の 山の秋風 小夜(さよ)ふけて ふるさと寒く 衣(ころも)打つなり

    藤原雅経 参議雅経(94番) 🍃『新古今集』秋・483 🍂 み吉野の 山の秋風 小夜(さよ)ふけて ふるさと寒く 衣(ころも)打つなり 〜昔、都だったこの里では 寒さもいっそう身にしみて、 砧(木や石の台)に置いた 衣を打つ音が寒々と聞こえてくる。 💠 藤原雅経 💠 ふじわらのまさつね 💠 💠参議雅経 💠 さんぎまさつね (1170~1221) 藤原頼経(よりつね)の子 新古今集の撰者の一人。 蹴鞠(けまり)の元祖 、 飛鳥井(あすかい)家の先祖。 和歌と蹴鞠の才能に恵まれた 雅経 、頼朝の猶子となり、 大江広元の娘を妻にしました。 💠少納言チャンネルは、聴く古典として動画を作っております。ぜ…

  • 🌱鎌倉右大臣(93番)🌿世の中は 常にもがもな 渚(なぎさ)漕ぐ 海人(あま)の小舟(をぶね)の 綱手(つなで)かなしも

    🌱鎌倉右大臣(93番) 新勅撰集 羈旅・525 🌿世の中は 常にもがもな 渚なぎさ漕ぐ 海人あまの小舟をぶねの 綱手つなでかなしも 〜変わりやすい世の中ではあるが、ずっと平和であってほしいことだ。 この海辺は平穏で、渚を漕ぎ出す小舟が 引き綱を引いている光景が、 しみじみと愛しく心にしみることだ。 💠 源 実朝 💠みなもとのさねとも 💠 鎌倉右大臣 💠 かまくらのうだいじん (1192~1219) 鎌倉幕府を開いた源頼朝と北条政子の次男 繊細で鋭い感性を持ち、百人一首の撰者・定家の指導で和歌に親む。 1203年12歳で3代鎌倉幕府将軍となる。 28歳になった1219年の正月、 鶴岡八幡宮への参…

  • 二条院讃岐(92番)わが袖は 潮干(しほひ)に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね 乾く間もなし

    二条院讃岐(92番)千載集 恋2・760 🌊 わが袖は 潮干(しほひ)に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね 乾く間もなし 〜私の袖は、まるで潮が引いたときでさえ 姿を現さない沖の石のように、 いくらあの人が知らないなんて言ったって、 涙で乾く間もないのですよ。 🌸 二条院讃岐 🌸 にじょういんのさぬき (1141~1217年) 源三位頼政(げんさんみよりまさ)の娘。 はじめ二条院に仕えた後、 藤原重頼(しげより)と結婚。 その後、後鳥羽天皇の中宮、 宜秋門院任子 (ぎしゅうもんいんにんし)にも仕える。 晩年は以仁王の挙兵事件の関係で出家しました。 二条院讃岐様のお父上は鵺退治で有名な源頼政公です。…

  • 🍂後京極摂政前太政大臣 藤原良経(91番)🍁きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む

    🍂後京極摂政前太政大臣 藤原良経(91番)新古今集 秋・518 🍁きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む 〜こおろぎが鳴いている、霜の降りるそんな肌寒い夜。 寒いばかりか、粗末なむしろの上に 片袖を敷いて 独りぼっちで 寝るのだろうか。 💠 藤原良経 💠ふじわらのよしつね 💠後京極摂政前太政大臣💠ごきょうごくせっしょうさきのだいじょうだいじん (1169~1206) 関白藤原兼実(かねざね)の子、 和歌に優れ 10代の頃の歌が 千載集に7首載せられています。 新古今和歌集の仮名序(かなじょ)を書く。 号は、秋篠月清(あきしのげっせい) 祖父は、百人一首76番法性寺忠通…

  • 殷富門院大輔(90番) 🌊見せばやな 雄島のあまの 袖だにも 濡れにぞ濡れし 色は変はらず

    殷富門院大輔(90番)千載集 恋・884 🌊 見せばやな 雄島のあまの 袖だにも 濡れにぞ濡れし 色は変はらず 〜あの人に見せたいものよ。 雄島の漁師の袖でさえ、どれほど波しぶきで濡れに濡れたとしても 色が変わらないというのに、 私の袖はもう涙ですっかり色が変わっている。 🌸 殷富門院大輔 🌸 いんぷもんいんのたいふ (1131頃~1200頃) 藤原信成(のぶなり)の娘 後白河天皇の第一皇女 亮子(りょうし)内親王 (式子内親王の姉で、後の殷富門院) に仕えました。 💠上リンクより引用若い頃から後白河院の第1皇女・殷富門院(亮子内親王)に出仕、それに伴い歌壇で長年にわたり活躍した。俊恵が白川の…

  • 式子内親王(89番) 🌹玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの よわりもぞする

    式子内親王(89番)新古今集 恋一・1034 🌹玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの よわりもぞする 〜我が命よ、 絶えてしまうのなら絶えてしまえ。 このまま生き長らえていると、堪え忍ぶ心が弱ってしまうと困るから。 🌸式子内親王🌸 しょくし(または、しきし)ないしんのう (生年未詳~1201年) 後白河院の第三皇女で、「大炊御門斎院(おおいのみかどいつき)」と称される。 賀茂斉宮(かもさいぐう)などを務めました。 実兄の以仁王(もちひとおう)が、源頼政(みなもとのよりまさ)が 平氏に対して挙兵し失敗した事件に連座。 1197(建久8)年頃に出家しました。 新古今集時代の代表的な女…

  • 【皇嘉門院別当】88番 難波江の 芦のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき

    【皇嘉門院別当】88番 千載集 恋三・807 🌊難波江の 芦のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき 〜刈ったあとの一節の根のように 短い仮寝の一夜だけのために、 難波江の名物「みをつくし」でもあるまいに 私は身を尽くして 一生恋することになるのでしょうか。 🌸 皇嘉門院別当 🌸こうかもんいんべっとう (12世紀ごろ) 太皇太后宮亮(たいこうたいごうぐうのすけ) 源俊隆(としたか)の娘。 崇徳院皇后(皇嘉門院)聖子(せいし)に仕えた。 生没年は不詳 澪標(みおつくし)とは 船の安全のため、河口などで浅くて船の航行が不可能な場所を示すために、船の航路の指す澪(みお)と境界に並べて設…

  • 【寂蓮法師】(87番) 村雨(むらさめ)の 露もまだひぬ 槇(まき)の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ🍁

    【寂蓮法師】(87番)新古今集 秋・491 村雨(むらさめ)の 露もまだひぬ 槇(まき)の葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ🍁 〜にわか雨のしずくが、まだ乾かずに とどまって輝いている槙(まき)の葉に、 霧が谷間から涌き上がってくる 秋の夕暮れの光景よ🌇 💠 寂蓮法師 💠 じゃくれんほうし (1139~1202) 俗名は藤原定長(さだなが) 藤原俊成(としなり)の弟・阿闍梨俊海(あじゃりしゅんかい)の息子 俊成の養子。 30歳過ぎに出家した。 💠少納言チャンネルは、聴く古典動画を作っております。ぜひチャンネル登録お願いします🌷 「私もばか者の話を一つしよう」中将は前置きをして語り出した。 「私がひ…

  • 【西行法師】86番🌙嘆けとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな

    【西行法師】86番 千載集 恋・926 🌙嘆けとて 月やはものを 思はする かこち顔なる わが涙かな 〜月が私を悲しませようとでもしているのか、いやそんなはずはない。 しかしそうとでも思いたくなるほど、月にかこつけるようにして 涙が流れてしまうのだ。 💠 西行法師 💠 さいぎょうほうし (1118~1190) 俗名、佐藤義清(のりきよ) 鳥羽上皇に北面の武士として仕えていましたが、 23歳の時に家庭と職を捨てて出家、 京都・嵯峨のあたりに庵をかまえ西行と号しました。 出家後は、陸奥(東北地方)や四国・中国などを旅した。 数々の歌を詠み、漂泊の歌人として知られる。 歌集に「山家集」があります 西…

  • 【藤原清輔】84番🍃 ながらへば またこの頃や しのばれむ 憂しと見し世ぞ  今は恋しき

    【藤原清輔】84番 🍃新古今集 雑・1843 ながらへば またこの頃や しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき 〜もしこの世に生き永らえていたら、つらい今が懐かしく 思い出されることもあるのだろうか。かつてつらかったあのときも、 今思い返すと恋しく懐かしく思われるのだから。 💠藤原清輔💠ふじわらのきよすけ(1104~1177) 百人一首79番の藤原顕輔(あきすけ)の次男 博学で歌学(和歌の研究)に優れていた。 💠少納言チャンネルは、聴く古典動画を作っております。ぜひチャンネル登録お願いします🌷 源氏にも頭中将にも第二の行く先は決まっていたが、戯談《じょうだん》を言い合っていることがおもしろくて…

  • 【皇太后宮大夫俊成 藤原俊成】83番 世の中よ 道こそなけれ 思ひいる 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる🍃

    【皇太后宮大夫俊成 藤原俊成】83番 千載集 雑・1148 世の中よ 道こそなけれ 思ひいる 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる🍃 〜この世の中には、 悲しみや辛さを逃れる方法などないものだ。 思いつめ 分け入った この山の中にさえ、 哀しげに鳴く鹿の声が聞こえてくる。 💠皇太后宮大夫俊成💠 こうたいごうぐうのだいぶとしなり 💠藤原俊成 ふじわらのとしなり(しゅんぜい) (1114~1204) 藤原俊忠の子 百人一首の撰者、定家の父。 西行法師と並ぶ、平安末期最大の歌人。 正三位・皇太后宮大夫となった。 藤原俊成殿は、藤原定家の父🌟 後鳥羽院、式子内親王、藤原良経、俊成卿女‥素晴らしい歌人達の師匠でした…

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