なべて世の 哀ればかりを 問ふからに 誓ひしことを 神やいさめん と斎院のお歌が伝えられる。 「そんなことをおとがめになるのですか。 その時代の罪は皆 科戸《しなど》の風に追 ってもらったはずです」 源氏の愛嬌《あいきょう》はこぼれるようであった。 「この御禊《みそぎ》を神は (恋せじとみたらし川にせし 御禊《みそぎ》神は受けずもなりにけるかな) お受けになりませんそうですね」 宣旨は軽く戯談《じょうだん》にしては言っているが、 心の中では非常に気の毒だと源氏に同情していた。 羞恥《しゅうち》深い女王は 次第に奥へ身を引いておしまいになって、 もう宣旨にも言葉をお与えにならない。 「あまりに哀…