月はいよいよ澄んで美しい。夫人が、 氷とぢ 岩間の水は 行き悩み 空澄む月の 影ぞ流るる と言いながら、外を見るために少し傾けた顔が美しかった。 髪の性質《たち》、顔だちが恋しい故人の宮にそっくりな気がして、 源氏はうれしかった。 少し外に分けられていた心も取り返されるものと思われた。 鴛鴦《おしどり》の鳴いているのを聞いて、 源氏は、 かきつめて 昔恋しき 雪もよに 哀れを添ふる 鴛鴦《をし》のうきねか と言っていた。 寝室にはいってからも 源氏は中宮の御事を恋しく思いながら眠りについたのであったが、 夢のようにでもなくほのかに宮の面影が見えた。 非常にお恨めしいふうで、 「あんなに秘密を守…