大島渚ブームである。 ドキュメンタリー作家の大島新さんの活躍もあるかもしれないが、大島渚が復活している。これには胸が躍る思いだ。 先日の『戦場のメリークリスマス』に続いて、大島作品の修復版として『愛のコリーダ』が上映された。実は東京で鑑賞予定だったが、どこもコロナで臨時休業となってしまったため、柏の葉キャンパスのららぽーとにあるMOVIX柏で鑑賞することにした。 この映画が話題になった頃、まだ中学生だった自分は映画館で鑑賞できず、ノーカット、ハードコアポルノという話題だけを聞いて悶々とする。その後数年経ってようやく見たビデオは肝心のシーンがカットされ、なにがなんだかわからない、という印象。当時…
東京で映画館が機能していないので、やむなく千葉の流山まで出向く。 きれいな街のきれいな映画館は連休の中日ということもあって閑散としていた。 見た映画は『街の上で』 昨年2月に鑑賞した『愛がなんだ』で評価の高い今泉力哉監督の2019年の作品。 成田凌さん以外はあまり見かけない俳優が中心となる学生映画のような内容。イメージの中心は読書。最初のシーンで何人かの人物が本を読むシーンが映される。これが実は学生の卒業制作であることがわかってくる。映画のイメージは読書だ。 一見冴えない弱々しい印象の主人公が、下北沢という狭いフィールドで繰り広げる恋愛もので、どろどろした展開もあるのだが基本的にはコメディであ…
オクトパスの神秘: 海の賢者は語る 今年のアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した傑作。 南アフリカの激流が交差する大西洋を目の当たりにする作者の家が舞台。マダコに恋をする男の話、しかもドキュメンタリーである。真実の物語。 このように貝の塊のように身を隠すマダコ。このタコを彼女と称して物語は進む。海の底に生きるタコの生涯は短く1年後には子供を産卵して自らの命を終える。そこに至るまで300日間。最初警戒していたタコが次第に人間に接触しよとしてくる。 マダコの生体に迫る映画で驚くべきことばかりだ。まずタコの意識が8本の腕にあって、かなり高い能力をもっていること。猫と同じ程度の知能があり、外敵…
www.youtube.com 『Ride or Die』が英語タイトルで、これはリドリー・スコットの『レルマ&ルイーズ』などを連想する。女性同士の愛を描いた映画というとパトリシア・ハイスミスの『キャロル』などたくさん印象深い映画が思い出されるが、最近だと『アンモナイトの目覚め』とか、昨年の『燃ゆる女の肖像』のクオリティがかなり高い。芸術性の高い作品が多く見られる。 本作は漫画「羣青(ぐんじょう)」が原作だそうだ。かなりきついドラマらしい。映画は原作をほぼ踏襲して、コンパクトにまとめた作りとなっているようだ。 様々な見方のできる映画で秀逸だ。冒頭の衝撃的なシーンも過激だ。血しぶきとワインなどの…
ボブ・マーリー ReMastered: Who Shot the Sheriff?
2018年にネットフリックスでリリースされたボブ・マーリーのドキュメンタリーを見た。 www.youtube.com ボブ・マーリーについてここで語ることはしないが、なんというか昨日の大島渚の映画が異常な反響を寄せていたりすることとボブ・マーリーが注目を浴びる現象は親しい気がする。政治もだめ、国民もだめ、メディアはクソだ。そんな時代に楔を打つという姿勢をどこか人々は忘れている。 例えば、 「日本が世界で最も報道の自由が失われた国である。」といえば「ウソつけ、北朝鮮のほうがひどいだろう。」と反応する愚か者がこの国に1億人いる、ということなのだ。何しろ「表現の不自由」を示す芸術にときの政治家が口を…
『アンモナイトの目覚め』 www.youtube.com 素晴らしい映画だった。一部では『燃ゆる女の肖像』の二番煎じみたいなことも言われているが、似ている部分はあるとして、この映画には全く違う価値が存在すると思う。 ケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナンというだけで映画館に行く価値のある映画なのだが、なんとこの2人は映画の中でほとんど会話をしない。特に前半は全く会話もしないし表情もない。お互いがそれぞれに”なにか”を抱えている。それをセリフ抜きで表現するというところがまずすごい。ケイト・ウィンスレットにとってはウディ・アレンの『女と男の観覧車』とは真逆の演技。シアーシャ・ローナンも『若草…
『戦場のメリークリスマス』 公開された1983年も見たし、その後映画館やビデオなどで何度も見た。 そしてまた今回、この映画を映画館で鑑賞して多くのシーンに涙する。 www.youtube.com ほとんどたけしさんがこの映画をリードしているとしか思えない。たけしさんの下手くそな演技がこれほどマッチしている映画が存在するのか?デヴィッド・ボウイもトム・コンティも素晴らしいのだが、当時ド素人のたけしさんと坂本龍一さんでないとこの映画は成立しない。今見ても、この2人の演技にハラハラする。あまりにも下手すぎて。 でも、 それでもこれは間違いなく歴史に残る傑作である。 そして同じ時代にこの映画を何度も見…
いやぁ、ついに見てしまった!『JUNK HEAD』 www.youtube.com ストップモーションの怪獣映画やSF映画は過去にいくつも作られた。そして昨今は3Dの時代となり、近々公開される『コングvsゴジラ』だって全部コンピューターだ。そんな時代に敢えてストップモーションで長編映画を作るという姿勢がまずすごい。 そしてなんと7年という歳月をかけて作られた映画は、これまで想像したことのない未来。1980年代にリドリー・スコットが突きつけた『ブレードランナー』の世界をさらに超越させたドラマとして仕上げているのだ。 日本映画なのに全編字幕というのも刺激的だ。 今回の大ヒットで3部作の続編も予定さ…
『フェアウェル』を見に行ったとき、大島渚の特集がシネマヴェーラ渋谷で行われると聞いて、1本ぐらいは見に行こうと思っていた。この日の夕方に落語の予定があったので、その前に見るのこの『大東亜戦争』となる。日本テレビで放映されたノンフィクション劇場からの作品だ。初見だ。 いくつか驚くことがあるが、最も驚いたのは会場の熱気である。大勢のお客さんがぎっしり。 この大勢のお客さんがこのドキュメンタリー映像を真剣に見ている空気に圧倒される。この映画(ここではこれを敢えて映画と称する)は、当時のニュース映像をそのままつないでいるだけで、これらの映像に何もコメントしない。作り手の意見や、この映画が作られた時代(…
隔たる世界の2人 Two Distant Strangers
Two Distant Strangers 隔たる世界の 2人 32分 www.youtube.com アカデミー賞の短編部門でノミネートされている。キーワードはジョージ・フロイドだ。すごいのは、このフロイド事件が起きた昨年5月のあと、2ヶ月で企画があがり4ヶ月後の9月に5日間で撮影したというから驚く。短編とはいえ、映像や音、音楽など工夫が施されていて美しい。 要するにタイムリープものである。 『時をかける少女』や『アバウト・タイム 愛おしい時間について』とここは大きく変わらないのだが、『See You Yesterday』がしっくりくる。主人公の少女の兄が何度も何度も警察に殺される。なんとか…
素晴らしい映画だった。『ノマドランド』はこれまで見たことのない世界。映画なのかドキュメンタリーなのか、これはいったい何なのか?Nomadland 冒頭のテロップは衝撃だ。ある街の企業が不況で倒産して、地図から”郵便番号が消される”という恐ろしい事実を伝える。 家と夫を失ったファーン(フランシス・マクドーマンド)が放浪しながら行く街で臨時の職業で働いて、次の街へと進んでゆく。そのときに写されるアメリカの大地と自然がときに希望をほのめかし、ときに残酷に押し寄せてくる。 ときは2010年頃の話。ここがポイントだ。 それは2008年のリーマンショックがアメリカ全土の不動産を始めとする資産をクラッシュさ…
夫唱婦随。 ベン・ファルコーンが奥さんのメリッサ・マッカーシーを主演にしたスーパーヒーロー映画『サンダーフォース』。いつもの通りしょうもないギャグ連発のしょうもない映画だ。正直言うとこの耐え難いしょうもなさにも最近次第に慣れてきて、少し前に見た『ザ・キッチン』というDCコミックス系の映画などはメリッサの別の面を感じさせた。 しかも今回は、オクタビア・スペンサーとの共演ということで、この二人が出ているというだけで見逃すわけにはいかない。 物語は幼馴染のガリ勉黒人女性とおおらかな白人女性が大人になってスーパーヒーローとなり、悪と戦うという話。極めて単純でばかっぽい話。科学の進化で肉体を改造して、ス…
『武士の家計簿』という名著は森田芳光監督により映画になった。(森田監督についてはいつかまた書こう。)『殿、利息でござる!』もまた磯田氏の原作がベースになっているようだ。実に面白かった。武士の年収を現在価値に代え、江戸末期の武士が収入の2倍の借金を抱え、高利の支払い続けていたことが示されていた。(江戸幕府は下級武士の力をそぎ落とすことで維持されてきたのである。)しかしこれ、奴隷のように会社に帰属するサラリーマン家庭と何ら変わりない。 原作者の磯田道史氏は浜松在住で親近感がある。そして『武士の家計簿』などの著書が示すとおり、磯田氏は徹底して江戸時代以前の経済を現在価値に置き換えて検証している。そこ…
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