ジョンソン新内閣が発足した。ブレグジット強硬派で固められ、「戦時内閣」とも「ロッキー・ホラー・ショー」とも揶揄されるのだが、もう一つ特筆したいのは、主要ポストに4人のインド亜大陸系議員が任命されたことだ。(写真の左から)サジド・ジャビド新財相(49)、プリティ・パテル新内相(47)、アロク・シャーマ新国際開発相(51)、リシ・スナック新財務首席政務次官(39)だ。インドメディアは好感しているようだ。実際、彼らの、特にジャビド財相以外の、3名の任命でインドとの関係がことさら強化されるとは思えぬが、期待を抱かせる人事ではある。逆に、彼らでなくともジョンソン政権がインドとの関係を強化したいことは明ら…
インド株式市場:新付加税導入で外国ポートフォリオ投資家(FPIs)の利食いが続く
7月5日の新政府予算案に盛り込まれた富裕層への新付加税は、(政府にとっては多分、不本意ながら)外国ポートフォリオ投資家(FPIs)もその課税対象となった。非居住者のポートフォリオ投資は非法人形態の投資家だ。多くは「信託」の形態をとるため、インドの税法では個人扱いとなってしまう。昨年度までの税制では所得が1クロー(約$143,000)以上の富裕層には最高税率30%の付加税として15%が課税されていたが、新政府予算案では所得が2〜5クロー(約$286,000ー$715、000)の富裕層の付加税が25%に、同5クロー以上の富裕層の付加税が37%に引き上げられることになった。つまり、各カテゴリーの富裕…
「AIがもたらすチャンスを活かす準備が出来ている国」のランキングなるものが今年5月に発表された。Oxford Insights(英デジタル、AIコンサルティング)とカナダの国際開発研究センター(International Development Research Centre)が共同でまとめたものだ。査定対象国は194カ国にものぼる。イギリスのランクは意外なほど(失礼)高い。シンガポールに次ぐ2位だ。それもシンガポールに肉薄している。その下にドイツ、アメリカ、フィンランドと続く。日本は10位だ。インドは17位で中国が20位。査定基準は11項目、各国のガバナンス、インフラ、データ、技術、教育、政…
続報:英下院はどのように議会休会を阻止したか。それでも「合意なき離脱」を阻止できない理由
一部の日本メディアは「合意なき離脱」はジョンソンが議会を休会させて強行突破することで起こると報じているようだ。しかし、この選択肢は英下院が先手を打って阻止した。EU離脱とは関係のない法改正案を利用し、実質的に議会休会を不可能としたのだ。この改正案は超党派議員たちによって提出され、315対274の賛成多数で先週可決された。賛成票の一票は現政権のDCMS閣外大臣だったマルゴット・ジェームスだ。賛成票を投じるために辞任した。棄権した現職大臣たちもいる。フィリップ・ハモンド財務相、ディビッド・ゴーク法務相、ローリー・スチュワート国際開発相と、ビジネス、エネルギー、および産業戦略担当の国務長官グレッグ・…
イギリス:ボリス・ジョンソン首相誕生へ、「合意なき離脱」のシナリオは本当になくなったのか
予想通り、ボリス・ジョンソンが保守党党首に選ばれた。まあ、選ばれてしまったからには仕方がない。ロンドンからパリやフランクフルトやアムステルダムに移住したいとも思わない。彼の個人的利益とイギリスの国益が一致することを願うばかりだ。 周りにがパニックになっている様子はない。ポンド安にも救われて株は堅調、住宅価格も横ばいだ。業界の今年の住宅価格見通しは5%下落〜4%上昇と幅があるが、小幅上昇を予想する向きが多い。売り手が少ないからだ。イングランド銀行が「合意なき離脱"disorderly Brexit"」の場合は最悪30%、「大荒れの離脱"disruptive Brexit"」の場合は最悪14%の下…
続々生まれる”Soonicorn”にユニコーン、インドスタートアップに革命の予兆
インドのスタートアップセクターが激動しており、革命の予兆を感じさせる。評価額10億ドル以上の非上場ベンチャー、ユニコーン企業が続々と誕生している。今年これまでにユニコーンとなった8社の中には、グローサリー(食品雑貨)のBigBasket、ロジスティクス(物流管理)のRivigo、eコマース・ロジスティクスのDelhivery、ファンタジーゲーミングのDream11、ITヘルスケアのCitiusTechなどが含まれる。 Ola Electric Mobilityも今年華々しくユニコーンとなった一社だ。EVのレンタルとリースに焦点を当てるOla Electric Mobilityは、タクシー配車サ…
地域ごとの刺繍とプリント。地図上にあるのはほんの一部。 ユニクロが今秋、同時期にインドに3店舗をオープンすることは日印両国のメディアで大きく報じられた通りだが、10月頃にデリーに1号店がオープンするのに先駆けて、先週、現地で”LifeWare”のプレビューが開催された。その際、ユニクロR&D統括責任者、勝田幸宏氏がインドメディアのインタビューに答えている。印象的な言葉を勝手にまとめてみた。 まず、インド市場への進出については、「シンプルな服で人々が個性を発揮する一助となる」というユニクロのデザイン哲学がインドでも通用する、と自信溢れる内容。「服自体はそんなに主張(英文では"attitude")…
イギリス:デジタル・文化・メディア・スポーツ省、英印スタートアップ支援へ
今週頭に掲載された、英DCMS(デジタル・文化・メディア・スポーツ省)からのプレスリリースは、英印両国のテクノロジーセクターのコラボ推進のためのイニシアチブを告知する内容だ。メイ、モディ両首相により2018年4月に発表された、英印テック・パートナーシップの一環だが、英印関係強化への英政府の決意の表れ、とインドでも好感されたようだ。”Go Global India”と呼ばれ、インドのスタートアップをイギリスの叡智が支援する、といった内容らしい。 DCMS担当大臣、ジェレミー・ライト曰く、「インドは、フィンテックやeコマース、テレコミュニケーションの発展により、テクノロジーセクターが急成長を遂げて…
おめでとうございます!住友不動産、ムンバイのBKC区画を落札
map2019.hatenablog.com 地元業者に「クレイジー」と言わしめたお値段で落札。締めて、3エーカーに2,238クロー(約325百万米ドル、358億円)。住友不動産が獲得した延床面積は約9万3000平方メートル(約2万8000坪)だ。MMRDA(Mumbai Metropolitan Region Development Authority:ムンバイ都市開発公社)によると、海外企業の州不動産セクターへの投資としては最大規模だということだ。世界の投資家に道を開く、住友不動産とMMRDAにとって”win-win”の取引だと。 地元メディアは当初、Sumitomo Corporatio…
今年上半期のIPO(initial public offering:新規公開株)は8社のみ(調達総額5,509クロー)。前年同期の24社、30,960クローに比べるとかなり少ない。2017年は年間36社、67,200クローだった。総選挙前の軟調地合があったとはいえ、ガックリ落ちたものだ。今月末以降、市場に戻ってくるらしい。国内メディアによると、今のところ予定されているIPOは次の6社。調達総額10,000クローに達する見込。 <1クロー=14万5000米ドル> Sterling and Wilson Solar(4,500クロー) - Shapoorii Pallongi Group(太陽光発…
インドとイギリス、二国間貿易のワーキング・グループ設置へ、共同AI開発への布石か
昨日、インドとイギリスは、ロンドンで開催されたJETCO(Joint Economic and Trade Committee)において、二国間の貿易障壁を克服するため、三つのワーキング・グループを立ち上げることに合意した。食飲料品、ヘルスケア、データサービスの各セクターのワーキング・グループは、UKIBC(UK Indian Business Council)、CII(インド産業連盟:the Confederation of Indian Industry)、FICCI(インド商工会議所連盟:Federation of Indian Chambers of Commerce and Indu…
太陽光発電セクターで”Make in India”に参入すべし
インドは、化石燃料への依存から脱却すべく、再生可能エネルギーの開発に努めているが、政府は、中でも、太陽光発電に将来の可能性を見出そうとしている。ISA(International Solar Alliance:国際太陽光連盟)は2015年にモディ首相と当時の仏オランド大統領が始めたイニシアチブで、2017年に国際機関としての地位を取得した。本部はインド、ハリヤーナー州のグルグラムにあり、現在、日本を含む75カ国がその定款を定めた枠組み協定に署名し、その内、日本を含む54カ国が批准している。昨年3月、第一回創設サミットがニューデリーで開催された。モディ首相は、このISAをパリ協定後の最も重要で有…
シンガポール政府傘下の投資会社、Temasek(テマセク・ホールディング)がインド投資を拡大する方向だ。Temasekのシニア・マネジング・ダイレクターがインド国内メディアのインタビューに答えた。Temasekのインド投資は15年前に始まり、インドポートフォリオはTemasekグローバル・ポートフォリオ(3130億米ドル)の5%に達するという。消費関連セクターにかなり焦点を当てており、その投資分野は小売、金融、保険、テクノロジー、ヘルスケア、医薬品など多岐にわたる。過去5年間は、年間10億米ドルのペースでインド投資を進めてきたが、今後そのペースを速めたいと表明。 インタビューでは、投資対象とし…
イギリス次期首相、秒読み段階のボリス・ジョンソン、英印関係を公約に
「イギリスとインドの関係は通商関係を超えた深いものでなければならない。」とは、今週頭に報道されたボリス・ジョンソンの言葉だ。イギリスの前外相にして元ロンドン市長、そして、次期首相としては秒読み段階にあるジョンソンが公約したのは、インドとの「新しく、改善された」通商関係の構築だ。対立候補である現外相、ジェレミー・ハントがインド系保守党員に支援を求めると、遅ればせながらジョンソンも「モディ首相とは個人的な関係を築いている」とアピール(そんな関係、初耳なんですけど)、「首相になった暁にはインドと特別な関係を構築する」と。 彼は続けた、「EU28カ国が、十数年以上もの間、インドとの自由貿易協定の締結を…
タタ・モーターズ傘下のジャガー・ランドローバー(JLR)は先週、バーミンガム近郊のカッスル・ブロムウィッチ(Castle Bromwich)にジャガーEV(電気自動車)の工場を設立すると発表した。2019年の"World Car of the Year"であるジャガーの高級SUV、I-PACEの設計・開発を担当したチームでXJのEVを生産するということだ。現地メディアによると投資額は約10億ポンド、2700人の雇用が確保される見通しとか。ブレグジットを控えるイギリスに朗報だ。 ジャガーCEOによると、EVの売り上げを伸ばすには「利便性とお手頃感」が必須で、バッテリーをイギリス国内で製造すること…
時代は汎用CPU/GPUを使用したソフトウェアから、企業ニーズに合わせた高度に特殊化したチップの設計へと移行しているが、中でもIoT(Internet of Things:モノのインターネット)に実装するAIチップの開発競争が激化している。アップルのiPhone、グーグルのPixel、アマゾンのGraviton(クラウド専用の独自チップ)などがすぐに思いつくが、彼らだけでなく、フェイスブック、アリババ、サムソン、マイクロソフトと皆、特殊チップの設計にしのぎを削っている。Cadence Design Systemsという、半導体業界にソフトウエアツールを提供する世界有数の企業があるが、そこの社長…
インドの新予算案が発表された。その中で個人的に目に留まったのが、「今年度中に、Credit Guarantee Enhancement Corporation(目的は債券発行にあたっての信用保証)を設立する」というものだ。特に、社債市場のインフラ強化で債券市場の発展を目指す。RBI(インド準備銀行)とSEBI(インド証券取引委員会)と協働し、トライパーティ・レポ市場でAA格の社債を担保として受け入れる方針も発表した。 レポ取引(短期の債券売買取引。貸借取引ではない)とは、債券の買い戻し条件付き売却取引のことをいう。有価証券を利用した短期の資金調達手段だ。トライパーティ・レポでは仲介業者が間に入…
想像に容易いと思うが、インドでは日本と韓国の長年の軋轢を知る人々は多くない。今回の日本の韓国向け輸出規制をインドの国内メディアがどう報道するのかが気になった。案の定、歴史的な背景を丁寧に綴るメディアはほとんどない。日本にとって、同じ歴史問題を抱える中国を抜いて、世界最大の人口となる国インドの世論を味方にしない手はないのだが、安倍さん、河野さん、インド世論対策はどうなってるんでしょうか? 短い記事はTHE HINDUから。「両国の軋轢の背景は今回の日本政府の声明には含まれなかった」と投げ打ち(それでも報道機関か)、「韓国最高裁が第二次世界大戦中の強制労働に対する賠償金の支払いを日本企業に命じ、そ…
非居住者の、それもごく一般的な外国人が思い浮かべることができる世界の超一流大学の数はさほど多くはない。世界広しと言えど、固有名詞が浮かぶ大学が存在する国の数もそう多くない。イギリスのオックスブリッジ、アメリカのハーバード、MIT、スタンフォードとその他一部のアイビーリーグなど。果たして、日本の東大や京大は非居住者の一般外国人にピンくるだろうか?インドで言えば、かの有名なIIT(Indian Institute of Technology:インド工科大学)くらいだ。インド政府の問題意識は高かったようだ。 リライアンス・インダストリーズというインド最大のコングロマリットがある。ムンバイに本社を置き…
インドNPS(National Pension Scheme:国民年金制度)の債券ファンドが絶好調だ。ベストパフォーマーは、LIC年金基金(生命保険法人、Life Insurance Corporationの年金基金)の国債ファンドでこの一年で20%のリターンとなっている。昨年まで2年間のリターンが、国債ファンドで2%未満、社債ファンドでも4%未満だったことからすると、随分風向きが変わった。この一年のNPSの国債ファンドの平均リターンは10台後半だ。社債ファンドの方は同平均12.5%のリターンとなっている。 株式市場は昨年10月下旬の底値から順調に回復し、今年に入って最高値を更新したが、過去一…
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