あの人はわたしのすべてだった 〜「冷静と情熱のあいだ」江國香織
純粋、切ない、優しい、強い。弱い、かたくな、そして残酷。 どれも、「冷静と情熱のあいだ」(江國香織、角川文庫)の主人公<アオイ>について考えたとき、思い浮かんだ言葉です。そして全部、だれしもが持つ人の本性かもしれません。 単行本帯のキャッチコピーによれば「今世紀最後の、最高の恋愛小説」。1999年刊行なので25年前、20世紀の終わりですね。 <アオイ>は、イタリアのミラノに暮らし、ナイーブなアメリカ人と付き合っています。舞台はおしゃれだけれど、小説の雰囲気は冒頭からさみしげで、イタリアというより北欧の静かな短調の調べ。当時、すでに普及し始めていたメールは出てこなくて、手紙の世界です。 読み進み…
2024/09/26 23:49