心を白紙に、物語に身を任せて 〜「ナミヤ雑貨店の奇蹟」東野圭吾
日々の暮らしで、つい肩に力が入り、いつの間にか疲れているとき、心の重さを解き放ってくれるのもフィクションが持つ力の一つです。 「ナミヤ雑貨店の奇蹟」(東野圭吾、角川文庫)を読み終えて、わたしは久しぶり清々しい気持ちになりました。心がぎすぎすしているとき本を読むと、つい「そんな展開、リアルではあり得んだろ」と突っ込みを入れたくなるものですが、この小説、気づけば心地よく物語に身を任せていました。 繁華街から外れた1軒の雑貨店。廃業して久しく、看板の文字もようやく判別できる元店舗兼住宅の一軒家です。 ネットも携帯もない時代、ここには妻を亡くし、老いた店主が独りで暮らしていました。雑貨店としてより、密…
2024/06/30 12:48