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ことばを食する https://www.whitepapers.blog/

私の主観による書評、ブックレビューです。小説のほか美術書、ノンフィクションなど幅広く扱います。ベストセラーランキングもチェックします。

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2019/05/27

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  • 澄んだ水脈に 心ひたすような 〜「月まで三キロ」伊与原新

    気づいたら、泣いていましたーと、文庫本の帯にあったけれど、なるほど泣くかどうかは別にして、いい短編集だと思いました。「月まで三キロ」(伊与原新、新潮文庫)です。 表題作を含め7篇が収めてあり、どれも冷たい渓流の流れを掬って飲むよう。飲んで初めて、自分は喉が渇いていたのだと気づく澄んだ味。 世の中、味付けと効能に工夫を凝らし、ときには奇抜で怪しげな飲料さえ溢れています。そんなドリンク類や酒に慣れてしまうと、喉が渇いているなどと思いもしない。ところが実は....と、はっと気づかせてくれました。 もちろんいま、飲料に例えて小説の世界について話しています。 新しい表現や世界観に挑むのが芸術の最先端だと…

  • 不忍池 上野公園を歩いて

    仕事を通じて知り合い、20年来の友になった4人で2泊3日、東京への「お上りさん」を楽しんできました。帰宅したらブログに書こうと思っていたのに、昨夜キーボードを叩いて記したのは、なぜか駅で買った古本のことでした。あれ。 「お上りさん」は、年に1回の庶民の贅沢なのです。出発駅のホームに立ったときはすでに、缶ビールを1本消費しており。花の東京に着けば、友人が苦労して探し出した銀座の安ホテルにまず荷物を預け、近くで和食のランチ。ビールも飲んで4000円以下は、昨今の物価高と場所を考えればリーズナブルなのかな。 しっとり薄味の上品な食事でした。 夜は神宮球場、ビールで唐揚げパクつきながら、ヤクルトの4番…

  • 本との出会い、そして古本屋さん

    週末にかけて東京に出かけ、両国、翌日の夜は銀座の端で、友人たちと飲みました。2泊して夕方の新幹線で富山駅に帰着。改札を出ると、駅の南北をつなぐ自由通路で恒例の古本市<BOOK DAY とやま>が開かれていました。年数回、地元の古本屋さんたちがこぞって出店する催しです。 ローカル線との接続時間の合間に慌ただしく見て回り、2冊を衝動買い。どちらも初めて知った本です。夜、部屋でちびちび飲みながら、それぞれの表紙を眺め、ぱらぱら拾い読みし、巻末の奥付けで刊行年月日を調べ。古本との出会いを楽しむわけです。 「ベケット・放浪の魂」(堀田敏幸、沖積社、2017年刊)。定価3,500円が、1,600円。 「安…

  • 風景を描き始めて

    このところ、本を読むより絵を描く時間が多いのです。わたしにとって「描く」とは、自分の感性とか、絵画的な効果を考えるとか、そうした類のあらゆる人為的なフィルターを排除すること。 愚直に写実です。描く対象(モチーフ)を見続けて、それが現実に存在することの当たり前、その凄さに、すべてを委ねた絵が理想。どんな細部であれ、形態や色彩に素人の芸術家気取りの改変などあり得ない。 描くに当たって自己の感性を否定すると、これがなんとも清々しい。同時に、自分の技量のなさに常にがっかりして、モチーフに申し訳ない。モチーフを生かすために、わずかでもスキルを高めたいと思います。 もちろん、素人であっても具象、抽象、どん…

  • 日常を破壊する現代の童話 〜「砂の女」安部公房

    「白雪姫」をはじめ、童話や昔話の原典をたどると実は残酷な話が多い....というのは、けっこう知られていると思います。 では、残酷な童話を現代小説として創作すればこうなるのではないか。 安部公房の「砂の女」(新潮文庫)を読んで、最初に思ったのがそれでした。ただし、母が娘の美しさを妬んで殺そうとするとか、内臓を食ってしまいたいとか、グリムのような素朴な残酷は出てきません。 広大な砂浜の寒村。都会から昆虫採集にきた平凡な教師の男が、足元の砂が崩れるように、深い穴の底の異世界に閉じ込められます。そこに暮らす一人の女。 残酷とは、簡略化すればわたしたちの常識から外れた行為、もしくは出来事です。そして童話…

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