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Side Y紙袋を持って入り口まで行くと、クッションに夢中になって俺の存在に気付いてない様子のこいつ。「おい」後ろに立って声を掛ければ、大袈裟に肩を跳ねさせて振り向く。「わっ、あああすみません!このクッション凄くふかふかで、つい!」名前は忘れたが何かのお菓子をモチーフにした丸い形のそのクッション。それを、触ってみろと言わんばかりに目の前に差し出されたから仕方なく触ってみる。少し弾力があるその触り心地は...
男にしては几帳面で綺麗好き。大人しい奴なのかと思えば自分の好き嫌いはハッキリ言うし、なかなかの負けず嫌い。仕事も真面目に取り組んでいるけれど、それ以外のことでは結構抜けているところがあって鈍臭い。それが一週間と少し、一緒に住んで分かってきたあいつの性格。「ご馳走さまでした!」「どう、美味しかった?」「すっごく美味しかったです!あんなに美味しいオムライス、初めて食べました。また来たいです」「ありがと...
「わあ…っ」目の前に運ばれてくる料理たち。料理を持ってきてくれたスタッフの人とチョンさんが何か話していたから、知り合いなのかと思って聞いてみれば、ホテルの方からヘルプで来たのだと言われた。僕も会釈をすれば、その人は愛想の良い笑顔を浮かべてカウンターの方に戻って行った。「食べてもいいですか!」出来たての料理を目の前にして、これ以上待つことなんてできない。チョンさんはデミグラスソースのハンバーグ。僕は...
車で走ること約15分。チョンさんに連れられてやって来たのは、最近オープンしたばかりの大きな商業施設。初めて来たけれど、テレビで特集をやっているのをちらっと見たことがある。ショッピングも食事もこの辺のエリアでは最大級の規模で、オープンしてから連日多くの人たちで賑わっているのだとか。車で意外と近い場所にあったのが驚きだ。あの後、車の中で盛大にお腹が鳴ってしまった僕を憐れんでか「先に飯にするか」とチョンさ...
こんばんは、SHE管理人のニカです。今月ブログを復活させましたが、大変ありがたいことに沢山の方々にお話を読んでいただきまして、なんと本日2万拍手達成致しました…!復活しても誰も気付かないんじゃないかと不安だったのですが、心なしか復活してから前より多くの方がブログに訪問してくださっているようで、本当に本当に感謝の気持ちでいっぱいです( ; ; )そこで、お礼を兼ねて後日お話を更新させていただきますが、それと...
寝癖がなかなか直らないからアイロンで必死に伸ばして、洋服だって鏡の前でああでもないこうでもないと何回も取っ替え引っ替えして。結局ゆったりめの青いVネックのニットにジーンズを合わせるという無難な格好に落ち着いたのだけれど、準備が終わって時計を見れば、チョンさんから言われていた「30分以内」は、とっくに超えていた。ベッドの上にはクローゼットから出した洋服が散らかっていてぐっちゃぐちゃ。デートの時の女の...
「おかあさん!」小さい子供が叫ぶ。その声に振り向いたのは…あれ、僕のお母さんじゃないか。着ている花柄のワンピースには見覚えがあった。昔、僕のお父さんから褒められて、気に入っているのだと嬉しそうに言っていた…。おいで、と手を広げて優しい笑顔を浮かべる綺麗な人。じゃあ、お母さんに向かって駆けて行くあの子供は僕?抱っこされて嬉しいのか、お母さんの腕の中でキャッキャっと無邪気にはしゃいでいる。「ねえ、チャン...
My Sweet…13のおまけ。「ユノ様、資料をお待ち致しました」「様付けすんな、気持ち悪い」眉をひそめてそう言えば、シウォンがいたずらをする子供のように笑った。シウォンは親父の秘書だけれど年も近いせいか話す機会が多く、こうして時々頼み事をしたりもする。「あ?何だそれ」シウォンから封筒を受け取り、中身を確認する。けれどまだ手に何か持っているのが見えたから聞いてみた。「いいだろ。可愛い家政婦さんから貰ったんだ...
「ん、いい焼き色」オーブンを開けるとふわりと漂ってきた甘い香りに、思わず顔が綻ぶ。「チョンさん、食べてくれるかな…」僕がいつも書いているレシピノート。その一番最初のページ、僕のものではない少し丸みを帯びたその文字を見るたびににやけてしまう。作ったのは、いちごとホワイトチョコのマフィン。チョンさんがいちごが好きだと教えてくれたから、そのままでもいいのだろうけれどお菓子が作りたくて考えた結果、マフィン...
Side Y今日は予定していた会議がスムーズに終わったから、珍しく早い時間に会社を出ることができた。多少仕事は残っていたけれど、大したものではなかったから家でやることにした。どうせあいつもまだ夕食の準備はしていないだろうから、その間に終わらせればいい。急かす必要もないから、連絡を入れずにそのまま帰ってきたのだけれど。「…シム?」玄関の扉を開ければ中は薄暗く、いつも俺が帰ると奥から「おかえりなさい」と顔を...
あれから数日間、僕はご飯を作る度にチョンさんに味の加減はどうか聞きまくった。その度に、うぜえ、なんて面倒くさそうにチョンさんは言う。けれど、たまにもう少し濃い方がいいとかお肉をもっと入れて欲しいとか要望も言ってくれたりする。そうして少しずつチョンさんの好みも分かってきたとは思うけれど、相変わらず好きなメニューは教えてくれないからいまだに分からないまま。「だから今必死にチョンさんの好みを探ってるとこ...
「花火が上がるまでまだ時間あるし、何か食べよう」会場には着いたけれど、まだ打ち上がるまで30分位時間がある。俺たちと同じように何か食べながら花火を見ようという人が多くて、どの屋台も結構人が並んでいて賑わっている。「チャンミン何食べたい?」「んー、焼きそばと…チヂミも食べたいです」目移りしているのか左右を見渡して目を輝かせるチャンミンが小さな子供のようで、思わず笑ってしまう。「じゃあ俺チヂミ買ってくる...
いつものようにご飯を2人で食べて、漫画を読みながらチャンミンのベッドの上でくつろいでいる時。「あ…そういえば次の土曜日花火大会じゃん…」「花火?どこでですか?」ふと思い出して呟いた言葉に反応したのは、ベッドに寄りかかりながら座ってゲームをしているチャンミン。…そうか、チャンミンは今年引っ越して来たから知らないのか。「この近くから見えるよ。屋台も結構出るし」「へええ…!」振り向いて俺を見上げたその瞳はき...
野菜たっぷりのチゲに、ビビンバとサラダ。チョンさんの好みが分からないから、全体的に少し辛さは控えめ。それらをリビングのテーブルに並べて、僕が料理をしている間少しだけ仕事をすると言って部屋に篭ったチョンさんを呼びに行く。「チョンさん、ご飯出来ましたよ」控えめにノックをすれば、ああ、という返事のあとチョンさんはすぐに出てきた。「どうぞ。お口に合わなかったらすぐに言ってください」「…お前は?」リビングの...
「早く終わらせろよ」「…家で待ってていいって言ったじゃないですか」夜ご飯を作ろうとして、近場のスーパーの場所を聞くのを忘れたことに気が付いたのはつい1時間前のこと。スーパーの名前さえ教えてもらえれば自分で調べて行くつもりだったのに、どういうわけかチョンさんが帰ってきてくれたのだった。帰ってくるなり「お前まだいたのか」と言われた時はカチンと来たけれど、わざわざ仕事を早く切り上げて来たようだったから文句...
Side Yーこんな若い男で大丈夫か?それがあいつ、シム・チャンミンに対する第一印象だった。待ち合わせの時間は13時だったけれど、それより少し前にマンションに戻ってきた。どこで待つべきかと考えていると、ゲートの前に背の高い男が立っているのがタクシーの中から見えた。このマンションには不釣り合いなラフな格好をしていたから、こいつが今日から家政婦として来る男なのだとすぐに分かった。タクシーを降りて近付くにつれて...
「…何かあるか?」一通り、チョンさんからそれぞれの部屋を案内してもらって、掃除に使う用具や消耗品が置いてある場所なんかを教えてもらった。「あの、あそこの部屋は…?」チョンさんの後ろを指差す。一部屋だけ案内してもらっていない部屋があったからチョンさんに尋ねれば、ああ、と視線だけそちらに向ける。「俺の寝室。会社の書類とかもあるから絶対に入るなよ」「あ…分かりました」素直に頷けば、チョンさんの声が低くなる...
ミジョンさんに寮の退去をお願いされてから、僕は目まぐるしい日々を送っていた。今まで担当していた顧客様の情報の引き継ぎもしなくてはいけなかったし、寮に帰ったら帰ったで荷造りをしたり掃除をしたり。寮にはもともと最低限の家具家電は揃っていたから、追加で買ったものは少ない。物欲がもともとあまりない僕の荷物は、大学の卒業旅行で使うために買った大きめのキャリーケースに充分入る量だった。「はあ、緊張する…」まだ...
「あと、それに伴ってもう一つお願いがあって」テーブルを挟んで向こう側、ミジョンさんが首を傾げて僕を見上げる。ミジョンさんは僕の母親くらいの年齢の筈なのに、童顔も相まってまるで少女のような可愛らしい雰囲気を持つ人だ。僕がもう少しミジョンさんと年齢が近かったら、今の仕草にだってドキッとしたかも知れない。けれど僕はミジョンさんのその笑顔に別の意味でドキッとした。「ほら、もうすぐ新入社員が来るじゃない?」...
「顧客様からいただいた紅茶なの。良かったら飲んで?」事務所から出て行ったミジョンさんが、紅茶とクッキーを持って戻って来る。「あ、ありがとうございます」僕は手に持っていた資料を一旦置いて、それらに手を伸ばす。普段はコーヒーを飲むことが多いから紅茶はあまり飲まないのだけれど、すっきりとした酸味が美味しい。きっと高い茶葉なんだろう。丸く絞って真ん中にジャムが入っているクッキーもサクサクしていて美味しい。...
目の前にはそびえ立つのは、地価がとんでもなく高いと言われているこの一帯の中に最近建てられてニュースにも取り上げられていたタワーマンション。見上げれば背が高い僕でも首が痛くなるくらい。ビルとビルの間から見える澄み渡るような青空に、張り詰めていた僕の気持ちも少し楽になりそう。「・・・すごい」思ったより大きな声で一人言を呟いてしまって、あわてて自分の口を手でふさぐ。きょろきょろと周りを見渡してみるけれど...
おはようございます。SHE管理人のニカです。今後の更新の仕方についてお知らせいたします。当初はブログそのものを新しくし、お話もそちらの方に移行させるつもりでいました。しかし無駄な手間がかかってしまうこと、読者様からいただいた拍手やコメントがなくなってしまうことを踏まえて、このままこのブログで加筆修正を行っていきたいと思います。今後の更新については、加筆修正するお話を一度非公開にし、順番に新しくアッ...
「チャンミン、おはよう」俺の日課。朝起きたら、写真立てに入れてベッドの横に飾っているチャンミンの写真に挨拶をすること。勿論、ただいまとかおやすみとかも言っている。チャンミンが今何をしているのかは気になるし、姿だって毎日見たいけれど、盗撮は趣味じゃない。だからこの飾っている写真だって、チャンミンの交友関係を調べて、そいつがSNSに載せていた写真をプリントしたもの。飲み会の時の写真で、ほろ酔いなのか少し...
それから数日間、僕はまたあの男が現れるんじゃないかと常に警戒していた。 家を出る時だって外に人がいないか確認してから扉を開けるようになったし、家から駅までの道のりだって後ろを振り返ったりして周りに怪しい奴がいないか確認しながら歩いている。…これじゃあまるで僕の方が怪しい奴みたいだ。けれども僕の心配は杞憂に終わり、特にこれと言った変化もなく、僕にストーカーという存在がいることを知る前の生活となんら変わ...
午前8時20分。規則正しい生活を送る僕は、毎日決まってこの時間に家を出る。朝はギリギリまで寝ていたいから、前日の夜に次の日仕事で使う資料なんかをまとめて準備しておく。お弁当もできるだけ夜のうちに下準備をして、朝は簡単に調理するだけで、もうお弁当箱に詰めれば完成する状態にしてある。我ながらきちっとした性格をしていると思うけれど、恋人なんて勿論いない。可愛い彼女に起こしてもらって、朝ご飯も出来ていて、2...
こんにちは、管理人のニカです。私生活で時間を取ることがなかなか難しく、予定していた期日をとっくに過ぎてますがまだ完全に再開はできなさそうです。もはや楽しみにしてくださっている方がいるのかも怪しいですが( ; ; )でもこのまま再開しないのも嫌ですし、明日から待ちに待ったSMTがありますので、今日の夜中もしくは明日、いずれ長編にする予定のお話を少しだけアップしようかと思います。楽しみにしていただけますと幸...
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