この話は、今から6年前のことである。 ある日の午後、吾輩は水槽の岩の上で、のんびりと甲羅干しをしながらうたた寝をしていた。 すると、どこからともなく、不思議な音が聞こえてきた。 いや、音というよりも音色と呼ぶべきであろうか。 人間たちは、これを「音楽」と呼ぶらしい。 その音色は実に心地よく、春風が草原をなでるような柔らかさを持っていた。 しばらく聞いているうちに、何やらお尻の辺りがむずむずしてきた。 不思議なことに、吾輩のお尻は勝手に左右へ動き始めたのである。 「これは一体どうしたことだろう」 そう思いながらも、体は正直であった。 吾輩は半ば引っ込めていた首を伸ばし、音のする方向を見た。 する…