監督 侯孝賢 1984年 台湾 卒業生たちが歌う「仰げば尊し」、東京駅にそっくりな建物、国鉄時代のもののように見える駅と列車など、日本人にとっては何もかもがノスタルジックな郷愁に満ちている。中でも、蝉や蛙の声に彩られた緑豊かな田舎の風景は、まるで日本人の考える少年時代の夏の日の象徴そのものだ。人々の服装も60年代頃の日本を連想させるし、おじいさんの家にはちゃんと畳の部屋まであるではないか。 そんな叙情的で...
監督 エドワード・ヤン 1991年 台湾 希薄な物語……というべきか、それともあまりにも多彩な物語、というべきか。『牯嶺街少年殺人事件』は様々な人の様々な生の交錯を描き、ささやかな物語性を維持しつつも物語から逃れ、見事に映画となっている。 そのため前半部は観客が内容を理解することが難しい。外国人である我々からすれば「小四」「小公園」などは人名なのか、場所なのか、小学四年生ということなのかも分からないし、...
監督 溝口健二 出演 入江たか子 1933年 サイレント映画 戦前の溝口作品を知っている人は「サイレント時代こそ溝口のピークである」と言うが、その評価の源を垣間見られるのがこの映画だ。泉鏡花の『義血侠血』が原作で、当時人気絶頂だった入江たか子の入江ぷろだくしょんが制作している。溝口は雇われ監督といったところだが、その企画は最初から彼を念頭に置いていたのか、必然性のない恋愛感情を核にした物語という題材は、...
監督 イングマル・ベルイマン 1958年 スウェーデン この映画はキリスト教的な価値観がバックボーンとなっている。ブニュエルやタルコフスキーなどの作品にも見られる傾向だが、この手の映画は日本人からすると、あまり馴染みのない問題意識が反映されていて、今ひとつピンとこないところがあるかもしれない。しかし勿論、映画自体には普遍的な面白さもあり、作品内のキリスト教的要素にも宗教に特有の普遍性が内在している。 ...
監督 ロマン・ポランスキー 1988年 アメリカ この映画はアメリカの娯楽映画としては非常に地味な印象で、ポランスキーの経歴の中でもあまり目立たない作品かもしれない。『チャイナタウン』のような重厚さや緻密さはなく『戦場のピアニスト』のような強いモチーフも感じさせない。もしかしたら彼としても前作『パイレーツ』の興行的失敗を踏まえて、得意のサスペンスもので少し名誉を回復しておこうという程度のつもりだったの...
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』ゴジラ映画として
監督 マイケル・ドハティ 2019年 アメリカ ゴジラ映画にとって、映画としての評価はあまり重要ではない。一般論として言うなら、ほとんどのゴジラ映画は「荒唐無稽な子供騙し」ということで終わってしまうだろう。しかし、それでもゴジラ映画は大人気であり、1954年以来何十本と作られ続け、アメリカでも何度も映画化されヒットしている。映画としての出来など関係なく、ゴジラ映画として面白いかどうかが全て、という訳だ。 ...
『ELEVATED / エレベイテッド』観客を惑乱する傑作スリラー
監督 ヴィンチェンゾ・ナタリ 1996年 カナダ 意外性と緊迫感に溢れた傑作短編映画。新人監督の作品としては衝撃的だ。退屈な2時間より充実した20分の方がずっと有意義である、という当たり前のことを知らしめてくれる。案の定、映画界がその才能を放っておくはずもなく、監督のヴィンチェンゾ・ナタリは翌年には『CUBE / キューブ』で長編デビューして日本とフランスを筆頭に世界中で成功を収めている。 ホラーらしく密室と女...
「ブログリーダー」を活用して、ぱこぺらさんをフォローしませんか?
指定した記事をブログ村の中で非表示にしたり、削除したりできます。非表示の場合は、再度表示に戻せます。
画像が取得されていないときは、ブログ側にOGP(メタタグ)の設置が必要になる場合があります。