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梨野礫・エッセイ集 https://nasino.muragon.com/

古稀を過ぎた老人が、これまでに綴った拙い文章の数々です。お読み捨てください。

梨野礫・エッセイ集
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2016/06/23

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  • 戦後文学の思想と方法・戦後文学とは何か・Ⅰ・《8》

    それでは両者の欠落させていたものとは何か。それをひとくちでいえば、「戦後状況」の正当な認識と、文学上の方法論という二つの問題である。それは同時に、彼らが共に小市民的インテリゲンチャの意識で、いわゆる一般大衆の意識をとらえようとしたことを意味する。佐々木基一の言葉を思い出し...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後文学とは何か・Ⅰ・《7》

    さて、私はこれまでひととおり、戦後文学がどのように規定されているかということについてみてきたわけだが、はたしてそういう規定は適当であるか否か、という問題に私なりの検討を加えたいと思う。 私には、いわゆる様々な戦後文学の論争上の混乱は、正にそれを規定する段階での混乱に起因...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後文学とは何か・Ⅰ・《6》

    ところで、このような「戦後文学」観に否定的な考えもある。 〈こういうことはないだろうか。「戦後文学」あるいは「戦後の文学」といった用語・・両者の間には用法によってそれ相応のひらきが在るわけだが・・には敗戦という契機が当然そこに含まれているはずである。ある意味からは戦後の...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後文学とは何か・Ⅰ・《5》

    〈「戦後文学」或いは「近代主義」といわれるこの一派に属する人々は、すべdて小市民的インテリゲンチャであった。(勤労者出身の椎名麟三もその観念においてはインテリゲンチャである。)また、多かれ少なかれ戦争の被害者であった。戦争に積極的に協力した者は一人もいない。しかしまた、戦争...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後文学とは何か・Ⅰ・《4》

    佐々木基一はそれについて次のように書いている。 〈文学史の任務は、ある文学現象がどのような社会的背景をもって生まれてきたかを解明すると同時に、文学に描かれた世界は社会と文学の発展の見地からどのような意味をもつか、またこの発展の特定の段階を文学者は如何に描きだしているかを...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後文学とは何か・Ⅰ・《3》

    瀬沼茂樹は次のように述べている。 〈戦後文学史とは何をいうのか。普通に、昭和20年以後の文学を漠然と「戦後」の文学と呼び、その歴史的叙述について、便宜のために「戦後文学史」というのである。〉(「戦後文学史論」(瀬沼茂樹)・『国文学』・学燈社・第10巻13号・8頁) 〈...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後文学とは何か・Ⅰ・《2》

    1 文学通史的にみれば「戦後の文学」はそれ以前の文学に対するものとして明確に存在する。そしてそれが新しい意味と内容をもつこともまた自明である。ただ問題は、いわゆる「戦後派文学」が内容的に質的に「戦後の文学」を代表しうるものであり、それに新しい意味を与えているか否かというこ...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後文学とは何か・Ⅰ・《1》

    ・・・戦後文学は、わたし流のことば遣いで、ひとくちに云ってしまえば、転向者または戦争傍観者の文学である。・・・(「戦後文学は何処へ行ったか」(吉本隆明) 戦後文学とは何か、という問いかけに答えようとするとき、それによって明らかになることはいったい何なのであろうか。思...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後の状況・Ⅱ・《9》

    さてそれでは、いわゆる大衆の社会意識、生活意識を原点とするとはどういうことなのであろうか。もとより大衆もしくは大衆意識などというものがア・プリオリに存在するわけがない。それは私たちひとりひとりが自己の生活を見つめ、そのことによってひとつの意識を思想まで高めるという、きわめ...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後の状況・Ⅱ・《8》

    これまで述べてきたことを要約すれば次のようになるであろう。 戦前における日本人の意識は、《醇風美俗》を基礎にして、その上に《国体観念》を構築し、またはさせられていたが、それが敗戦によって天皇制権力機構が崩壊するとともに、《国体観念》は人々の意識から忘れ去られ消滅した。し...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後の状況・Ⅱ・《7》

    それでは。《醇風美俗》の方はどうであったか。 〈いうまでもなく《醇風美俗》の故郷は農村にあった。戦後の農地改革によっても旧地主あるいは新興ボスによる村秩序の支配がほとんど打ち破られなかったところに、醇風美俗の実質的な社会的・経済的基盤があった。(略)さらに注意すべきこと...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後の状況・Ⅱ・《6》

    村上一郎はそのことを裏づけるかのように次のように書いている。 〈ラジオが詔勅の声を流したとき、泣くものが多かった。が、泣いたのは、実は敗けてもよいと思ったものであった。ぼくらは泣かなかった。天皇そのもののことは別に考えていなかった。天皇には政治はないように思っていた。天皇...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後の状況・Ⅱ・《5》

    一方、アメリカ占領軍の戦後支配の目的は、すでにみたように、「二つの世界」の出現という世界的な経済的矛盾に対処するために日本を極東における反共の砦として利用することにあった。そしてその基本的な方法をひとくちでいえば、要するに戦前の日本における社会構成(支配・被支配の関係)を...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後の状況・Ⅱ・《4》

    ここではそうした意識の違いが、戦前派知識人と一般大衆の違いとして述べられている。だが「8月15日」意識の違いは、単にそうしたいい方では説明でき得るものではなく、むしろその内容において千差万別であったのだ。なぜというのに、「8月15日」意識とは、今述べたような、それ以前の戦...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後の状況・Ⅱ・《3》

    また日高は、戦前社会における《国体観念》と《醇風美俗》の関係について次のように述べている。 〈人間関係は身分的秩序の枠のなかでとらえられ、恩恵と奉仕、分の自覚、和と忍従が主要な徳目となる。しかもそれらの徳目をささえる社会的単位は、家秩、同族団秩序、部落(村)秩序など順次...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後の状況・Ⅱ・《2》

    五味川純平は、それを裏打ちするものとして、マルサス主義と「大アジア主義」をあげている。 〈日本の国土は狭く資源は貧しい。しかも人口は多い。このまま進んだら日本民族はほろんでしまう。滅亡がいやなら外に向かって進出するほかはない。(略)満州を中国から取りあげて日本将来の発展...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後の状況・Ⅱ・《1》

    【ぼくはこんど戦争があったら、やはり戦争にゆくであろう。そしてきれいに死のうとするであろう。》(「戦中派の条理と不条理」・村上一郎)】 私は前の章において、「戦前」から「戦後」への歴史的転換を、政治・経済的」な視点からながめた。いったい1945年8月15日を境として、日本...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後の状況・Ⅰ・《10》

    〈第一。生産過程以外からの収奪。最大限利潤(注・資本主義の基本的経済法則)は、まず「その国の住民の大多数」を搾取することである。これは直接的な生産過程における労働者にたいする搾取以外に、農民、小生産者、商人および一部の資本家・・アメリカ独占資本と直接に関係がなく、国家機構を...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後の状況・Ⅰ・《9》

    さて、8月15日以後、日本の戦後は出発する。それはひとくちにいってアメリカと民主主義への出発であった。そして前者は、それがアジアにおける植民地支配競争の勝利者としてあった以上、日本資本主義にとっていわば必然的な帰結ではあったが、後者はいわばひとつの偶然であったといっても過...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後の状況・Ⅰ・《8》

    次にその戦後過程を見てみたいと思う。 〈戦争と戦争経済とは、日本資本主義に内在する諸矛盾を発展させ、敗戦によって日本資本主義の国家制度、社会制度が打撃をうけたたときに、もはや何らかの改革なしにすませることができない程度に達していた。戦後の虚脱といわれた状態の底流にあった...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後の状況・Ⅰ・《7》

    〈日本資本主義の運動は、けっきょく、資本主義の世界的体制の生成、発展、衰退、死滅の過程に組みこまれてゆかざるをえない。〉(『日本資本主義講座』・Ⅳ・前出・3頁) 〈この場合(注・世界における戦後過程)直接的に世界資本主義体制の危機をいっそう深めることになった事情として注...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後の状況・Ⅰ・《6》

    井上清は、日本の敗北について次のように規定している。 〈その第一は日本帝国主義は中国およびそのほかのアジアの反帝国民族独立勢力に敗北したということである。そしてそれはたんに日本帝国主義の敗北だけではなく、東アジアにおけるすべての帝国主義の敗北のはじまりとなった。(略) ...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後の状況・Ⅰ・《5》

    ところで、一般に私たちは、「戦前」「戦中」「戦後」などという言葉を使うが、そのときの「戦」とはいったいどの戦争を指すのであろうか。 〈わたしたちが日ごろ「戦争」というとき、それはほとんど太平洋戦争をさしており、太平洋戦争は対米英戦争にほかならないとされている。そのような...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後の状況・Ⅰ・《4》

    日本の天皇制は、古典的絶対主義とはおのずから性質を異にしていた。すでに世界の資本主義が帝国主義段階に移行しつつある中で日本の資本主義が自立するためには、帝国主義と絶対主義が奇妙な形で混合せざるを得なかった。 〈「日本において支配している層は帝国主義者である。がしかし特殊な...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後の状況・Ⅰ・《3》

    いうまでもなく、日本の近代は明治維新にはじまる。そしてそれは同時に絶対主義的天皇制の出発点でもあった。 〈古典的な絶対主義は、封建社会の胎内に資本主義が成長してきて、封建性は不安定になり地主階級はよろめいているが、しかもブルジョアジーもまだ地主階級を圧倒することができず...

  • 戦後文学の思想と方法・戦後の状況・《2》

    私たちは1945年8月15日以前を、ひとくちに「戦前」とよぶことになれている。だが「戦前」という言葉の中には、様々な生活意識から発した、生活史、個人史的なエレメントが多分に含まれており、それをただ論理的に解明しようとすることは不可能である。だがともかくも、「戦前」という言...

  • 戦後の状況・Ⅰ・《1》

    いったい日本の社会は、1945年8月15日を一つの軸として、どのような歴史的転換をみたのであろうか。それを境として変わったものは何であり、変わらなかったものは何なのか。私にとっての戦後の状況とは、そういった問題に答えようとすることによって、はじめて明らかになるのだと思われ...

  • 戦後文学の思想と方法・序・「憂鬱なる党派」(高橋和巳)覚書

    この世の崩壊を目撃し、なおかつ不幸にも生きのびた者の、とるべき道は三つある。 その一つは、崩壊したそれゆえに再建不能なそれを土台とした、いかにももっともらしく、健康な生命力の象徴ででもあるかのようないつわりの復興を、徹底的に憎悪をこめて破壊せんとすること。「いっさいはま...

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・40

    3 国語教育と言語理論 【要約】 中学校、高等学校で文法を教えるという、教育の現場からいくつかの問題が提出されている。その一つ二つについて考えてみる。 その一つは、文法の教育ということをどう理解しどう実践するかという問題である。文法が法則的な学問であり、文法を習うことは...

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・39

    2 日本語改革の問題 【要約】 これまで、漢字の制限、かなづかいの改正、むずかしい語をやさしい語に変えること、標準語の確立、敬語の整理などについて多くの論議が行われ、改革が実行されてきた。 軽率な改革が全体の混乱を招かないように慎重に考えなければならない。 かなづかい...

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・38

    第五章 言語と社会 1 言語の社会性 【要約】 言語についての基本的な考え方のちがいは、言語の社会性についての理解に大きな影響をもたらす。頭の中に抽象的にとらえられた表現上の社会的な約束を「言語」あるいは「言語の材料」と考えるなら、言語はどこまでも思想をつたえる道具として...

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・37

    4 文章に見られる特殊な表現構造 字数を制限された場合は、特殊な文章が使われる。 ● 六ヒユケヌヘンマツタロウ ● 売邸渋谷南平台環良地一一二付建坪二六坪七五瓦水完交通便手入不要即安価面談仲介断48二0六0木村 この電報の「ヘン」は返事、案内広告の「瓦」はガス、「水」は...

  • 「日本語はどういう言語か」(三浦つとむ著・季節社・1971年)通読・36

    3 文章といわれているものの本質 【要約】 (a) ああ。(感嘆) (b) 火事。(呼びかけ) (c)起立。(命令) これらは一語文である。これらのほかに、一語文でありながら、それ自体がぬきさしならぬふさわしい表現と考えられているものがある。それは文章の《題名》である...

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