9 初期語連鎖から文へ・・・その形式面・・・ 【要約】 1語による談話(“1語文”)のつぎに、二つの語を連鎖した談話が現れてくる。しかしこれは本格的な文の段階にはいったことを意味せず、1語談話のいろいろな特性を残している。このような原始的な語連鎖から文形成の初歩への特異な...
ふと、昔のことを思い出した。昭和43年(23歳)のことである。当時、私は小学校助教諭の初任時代、4年生の担任であった。学年は3クラスで、私の担当は1組。学年主任の話。「手のかかる子、問題のある子はみんな自分のクラスに入れたから、1組は《つぶよりのクラス》、安心して指導に当...
タブレット純は、知る人ぞ知る、女装のお笑い芸人である。かつて歌手・田渕純として「和田弘とマヒナスターズ」に属したこともあったが、解散後、浅草東洋館に出演する時にタブレット純と改名した。「ムード歌謡漫談」というジャンルを開発し、昭和世代根強い人気がある。語り口は女性的で、小...
「東京新聞」朝刊(4面・国際・総合)に《不安な世界 兵役手放せず ウクライナ侵攻受け 軍人求める》という見出しの記事が載っている。冷戦後、欧州を中心に徴兵制廃止の動きが加速したが、2014年、ロシアのウクライナ南部クリミア半島併合で流れが一転、リトアニア、スウェーデンなど...
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9 初期語連鎖から文へ・・・その形式面・・・ 【要約】 1語による談話(“1語文”)のつぎに、二つの語を連鎖した談話が現れてくる。しかしこれは本格的な文の段階にはいったことを意味せず、1語談話のいろいろな特性を残している。このような原始的な語連鎖から文形成の初歩への特異な...
■“対話”における母親の役割 【要約】 サンガー(Sanger,1955)は、何人かの母親の、乳児に対する音声による働きかけの細部を数ヶ月にわたり追跡観察した結果、母親、とくに“良い母親”は、子どもの目覚めている間は、ほとんど子どもに話しかけ、子どもを“音声にひたらせる”...
《言語訓練の意義》 【要約】 喃語活動における母親の役割、音声模倣における母親の役割と同じことが、母子間の 命名についての音声接触でもあてはまる。まず母親からの積極的な音声的働きかけがある。実物のイヌのいるところで、母親がいつでもイヌと発声する。子どもがこの音声の特性に注...
■言語訓練(教育的態度) 【要約】 人格化と同一視は、“教育的態度”によってチェックされている。これは、子どもの現在達している水準に適合する仕方で行われる発達促進のための言語訓練の基礎となっている。 《言語訓練の様式》 人間以外の生活体では、母子関係は純粋に生得的な親和...
19 育児者の役割 【要約】 発声活動の言語化が、育児者からの影響に主として依存することは明白である。ラインゴールドら(Rheingold and Bayley,1959)の実験的研究によると、発声の十分な活発さは、ひとりの養育者のもとではじめて期待でき、多数の養育者が交...
■幼児語 【要約】 “かたこと”には2種類がある。一つは、成人語とは系統のまったくちがう“語”であり、もう一つは成人語からの音韻転化によってできている語である。子どもが最初に形成するのは、ほとんどが前者であり、前者をふくまない子どもはないのであるから、発生論的な見地からは...
1966年に静岡県で起きた「袴田事件」の再審判決が9月26日に下りるという。検察側は、被害者遺族の「事実を精査し、真実を明らかにしてほしい」という意見陳述書を読み上げ、袴田巌氏の「死刑」を求刑したそうだが、あくまで袴田氏の有罪を主張するつもりらしい。袴田氏は死刑囚として4...
16 成人語の形成過程 【要約】 少なくとも現代の文明国では、子どもの最初の言語習得がその社会の成人の間で用いられている語形(成人語)を用いることからはじまることはない。はじめ子どもは“かたこと”を用いる。そのなかには、喃語発声、音声模倣に発生的な因果関係をもっているもの...
8 幼児語から成人語へ 【要約】 幼児語が成人語へ変化していく過程は、1歳のある時期に急速に進められる。この期に、ワンワンはイヌとなり、マンマががゴハンとなり、tick-tackがclockになり、miawがcatとなる。この変化が成人の子どもに対する訓練と、子ども自身の...
■機能語(助詞) 《助詞機能の分化》 【要約】 日本語の助詞が、文ないし談話できわめて重要な役割を果たすことはいうまでもない。“山は高い”というとき“山”や“高い”はそれぞれ外延と内包をもっているが、助詞“は”にはそれがない。助詞は、同じ文の中のほかの語を規定したり、文を...
■動作語 【要約】 一定の動作に伴って生じる一定の発声、あるいは“かけ声”は比較的早く慣用型の音声に近づき、よく分節している。これを“動作語”とよぶことにする。 自分の動作に伴う発声として、物を投げるときのパイ、ものを持ち歩くときのヨイヨイ、などが1歳3ヶ月までに生じ、...
■要求語 【要約】 《初期発声》 不快、とくに空腹に連合して生じる最初の音声は[ma ma ma...]というような型であることが古くからいわれている(Jespersen.1922;Gesell and Amatruda,1947;Lewis,1948)。しかし、単母音[...
■状態語 【要約】 “状態”とは、個体の側の内的な状態のことである。特殊な状態に対応する特殊な語が“状態語”であり、イタイ、ウツクシイ、カワイイなどがこれである。個人の内的な事象が表示されなければならないという点で、対象語の形成の過程とはかなり異なる。 “痛い”という状...
7 語の発生と分化(略) 14 初期の品詞分化 《発達論と品詞分類》(略) 《初期の語の性質》(略) 《対象語》 【要約】 1歳児の語彙は、はじめは感嘆詞であり、つぎにそこから名詞が派生し、つぎに動詞、形容詞、副詞がこの順に生じるといわれてきた(Stern u.Stern...
13 場面と談話 【要約】 場面の性質のちがいが同一人物の談話の性質や量を規定すること、場面の変化が談話に変化をもたらすことは、成人にも幼児にも共通した事実である。われわれの言語行動の特徴の一つは、現実場面による拘束からの離脱にあるけれども、それからの全面的な離脱は、(統...
《初期の質問の形式と機能》 子どもに“疑似質問”といえるものが存在する。真の質問と疑似質問との間の判別は容易ではないが、その基準のおもなものはつぎのようである。 ⑴ 子ども自身がその名を知らないものについて質問する。 ⑵ 答えてやると、その答を反芻する。 ⑶ 答えてやると...
《“質問期”》 【要約】 シュテルン(Stern u. Stern,1907)は、1歳6カ月の子どもに、あらゆる椅子を一つ一つ指示しながらその名をたずね、部屋中を駆け回る時期があったと報告し、初期質問は、名をたずねることであり、これは子どもが“すべてのものには名がある”と...
■質問 《質問の機能》 【要約】 質問は“特定の明白な目的と、独自の聴覚的音声形式と、思考交流における重要な役割とをもつ、特殊な言語的伝達”(Reves,1956)である。質問は、質問者が自分の知らない情報を最も有効・迅速に知るためのすぐれた手段である。 質問が子どもの...
■談話的指示 【要約】 対人的な場面での指示行為の機能は、主題の伝達ということである。場面にある特定の刺激事象を場面から分離し選択的にそれを表示することもふくむが、それが完全に行えないということも意味している。一つの指示行為は、主題がその人であることは表示できても、その人...
殺害容疑で江戸川区の中学教諭が逮捕されてから1週間が経った。しかし、事件の真相は一向に明かされない、教諭自身が黙秘を続けているからである。新聞報道(東京新聞5月17日付け朝刊)によれば、教諭と被害者の「二人にどんな接点があったのか、なかなか見えてこない」と警視庁の捜査幹部...
信じられないことだが、中学校教員の殺人容疑は深まったようだ。本人は取り調べに対して黙秘しているそうだが、もし無実ならば堂々と応じればよいのだから・・・。 そして、これもまた信じられないことだが、その教員が10年以上も特別支援教育に携わってきており、しかも校長から教員の「...
自宅はT字路の突き当たりに建っているので、2階の窓から、こちらに向かってくる道路を、人が往来する姿を見ることができる。いつものことだが、朝七時を過ぎると、二人の幼児を両手につないだ若い母親がやってくる。母親は幼児を保育園に送りながら、勤めに出向く途中なのだろう。休日には、...
東京新聞5月11日付け朝刊23面に、衝撃的な記事が載った。「中学教諭 殺人疑い逮捕」という見出しである。にわかには信じがたいが、今年の2月、江戸川区の住宅で、住人の男性が刃物で切りつけられ、殺害された事件の容疑者として中学教諭が昨日10日に逮捕された、ということである。そ...
昭和35年以降、日本の家庭にはテレビが爆発的に普及、老いも若きもその魅力に取り憑かれた。とりわけカラーテレビが出現することによって日本人の「色彩感覚」は一変したと思う。私の父は、多くの子どもたちがその画面を食い入るように見つめている様子を見て「これで日本はダメになる」と呟...
中学2年が終わる春休み、私はK君、H君と三人で、郊外・深大寺周辺の風景を写生しに行った。私以外は、油絵の具、イーゼル持参、本格的な装備だった。裏手の草原(今の神代植物園の辺り)で、楽しく絵を描き、弁当を食べ終わった頃であろうか、向こうの彼方に五、六人の人影が見えた。何気な...
中学に進学すると、昼食は弁当持参となった。裕福な家庭の生徒は魔法瓶にお茶を入れ、白米用の弁当箱の他に、卵焼き、鮭、ウインナーソーセージ、サラダなどの総菜用の弁当箱が加わった。リンゴ、ミカンなどのデザートを持参する者もいた。弁当が準備できない家庭の生徒は「パン券」を利用した...
中学校の音楽の授業は苦痛だった。先生は見るからに軍人上がりといった風貌で、雰囲気は厳格そのもの、課題曲の歌詞を長々と説明した後、ニコリともせずピアノを伴奏して生徒に歌わせる。集中力が薄れてざわつきでもしようものなら、たちまち「そこのお前、何をしているんだ!」という怒声がと...
東京新聞5月7日付け朝刊3面「この人」欄に「山谷で清掃活動を続ける元受刑者 藤澤丈明さん(73)」というタイトルで以下の記事が載っている。 〈東京・山谷でボランティアの清掃を約3年半、続けている。「路上のごみを拾って、見知らぬ人に感謝されると、うれしい」。週1回、空き缶や...
小学校時代から仲良しのK君が中学2年で新聞配達を始めた。彼は得た賃金で文庫本「次郎物語」を読んでいる。その姿がたまらなく魅力的でうらやましかった。「自分もやりたい」と私は父に懇願し承認を得た。さっそくK君に頼み込み、繁華街周辺の「夕刊配達」を始めた。「読売新聞」に混じって...
小学校の運動会は中学では「体育大会」、徒競走は100メートル走と名称が変わった。陸上競技部員だった私は、当然100メートル走で1着にならなければならない。クラスメートはそうなるものと期待して、私のスタートに注目していた。しかし、結果は意外にも着外、「ナーンダ」という侮蔑の...
中学1年生になり、私は陸上競技部に入部した。野球部、ハンドボール部などに比べて人気は薄く、新入部員は三人だけであった。初めての活動日、部長は私たち三人に向かって「まじめにやれよ、サボるなよ。」と言った。サボる?、練習するために入ったのだから覚悟はできている、と思ったが、い...
昭和32年4月、私は「学区外」の中学校に入学した。入学式は校庭で行われ、担任が新入生を一人一人、呼名する、呼ばれた生徒は「ハイ」と叫んで起立する。順番が回り、私も返事をして起立、不動の姿勢をとったが、その直後に「笑い声」が上がった。「コウタロウ」という名前が古めかしく、時...
昭和27年の大晦日に祖母を亡くし、父と私は文字通り「父子家庭」の生活を始めた。 申し込んでいた公団住宅が当たったので、これまでの間借生活は終了、他区に新築された鉄筋コンクリート4階建ての公団住宅に転居した。小学校3年生の時である。当然、転校しなければならないが、父は担任の...
小学校入学時から私の視力は弱かったが、四年生の頃から黒板の字が見えなくなった。メガネをかけたいと思ったが、恥ずかしくて言い出すことができなかった。クラスの誰ひとりメガネを装用していない。学校の視力検査でも「見えない」ことを隠したい。私は順番がくるまでに検査表の文字列を必死...
小学校時代の男児の遊びといえば野球、焼け跡の原っぱで、時間を忘れて興じたものである。春・秋には、父に連れられて信濃町の神宮球場に通った。当時の東京六大学野球はプロ野球と肩を並べるほどの人気があった。外野席の芝生に座って観戦することが多かったが、私は極度の近視のため、ボール...
戦後の小学生は、昭和33年頃まで給食で「脱脂粉乳」を飲まされた。喜んで飲む子どもは少なく、ほとんどが目をつむり鼻をつまんで一気に飲み干す。中には隠れて流しに捨てる子どももいた。当時の小学生は毎日、給食袋にアルミの皿、コップ、椀を入れて登校した。給食の献立は三品、コッペパン...
小学校の一学級は50名を超えていた。いずれも敗戦の中で生まれた子どもたち、父が戦死した母子家庭4人、養父1人、父子家庭3人など戦禍の傷跡が残っていたが、時代は「新生日本」に向かって第一歩を踏み出す。その息吹の中で、大人も子どもも希望に満ち溢れていた。私たちの学年は6年間、...
私は母方の祖母をメエ婆と呼んでいた。メガネをかけていたからである。彼女は、戦前から「祖父に分家させられて」、娘一人とともに下宿屋を営んでいた。近くにある旧制高校の学生が多く利用したという。私の父もその一人、母は下宿屋の娘ということである。父は成人して満州に渡り、母もその後...
静岡市の浅間神社では恒例の廿日会祭が四月初旬に開催される。小学生の私は、毎年春休みになると、亡母の実家がある静岡の祖母宅に帰省して、そのお祭りを楽しんだ。満開の桜が散り始める神社の境内では、神楽舞台の他、大衆芸能の余興用舞台、オートバイサーカス、お化け屋敷、見世物小屋など...