森の案内人:森林インストラクター田所清のブログです。自然観察日記を書いてブログ歴10年目です。
森閑とした空気に包まれる森の中は神秘の宝庫。そこに息づく植物や虫・きのこなどを観ながら造形の不思議を想い自然の奥深さに感嘆しています。そして、それを感ずる自分がうれしい。だから伝えたい。
この株は雌株ですが珍しく2個の果実をつけている葉がありました。2つの果実をのせた葉
ハナイカダは新潟県の山地に広く見られる種ですがかなり分布にむらがあるようで、個体数が多い地域と少ない地域があるようです。経験的に魚沼や糸魚川地域に多いような感じです。ハナイカダ
こちらは雄株。果実はありません。雌株にも果実がない葉もありますが、葉だけでは雌雄を見分けることが難しいようです。ハナイカダの葉
里山では定番のケナシヤブデマリです。花の時期や果実の時期は越後の里山を彩る素敵な樹だと思います。でも「ヤブ」という名前名なんとなく格を下げてしまう印象です。改名をしてほしいものですね。ケナシヤブデマリ
装飾花が残っているだけで両性花はすでに散っていて若い果実が見られる段階。これがあの赤く丸い実になると思うとやっぱり不思議です。ケナシヤブデマリの花
日本海側に分布する種がケナシヤブデマリで太平洋側の種がヤブデマリということになっています。この逆のことが多い気がするのですが、この種に関しては日本海側の方が毛がありません。ケナシヤブデマリの葉
最初はマユミと思ったのですが、よく調べてみるとツリバナでした。マユミは全国の山地帯に見られる樹ですが八石山にも見らえます。ツリバナでも日本海側の種はエゾツリバナで葉がマユミに見ています。エゾツリバナ
マユミと思い込んでみると花序がおかしい。とても花軸が長いのです。これはツリバナの特徴です。エゾツリバナの花序
花弁はすでに落ちているものが多く残ているのごくわずか。5数性ですからツリバナの特徴です。ちなみにマユミは4数性。エゾツリバナの花
葉はヒロハツリバナにも似ていて広い葉です。エゾツリバナの葉
赤土がむき出しになっているような場所にノギランが見られました。この種は他の種との競合に弱く藪の中には生育できないようで、決まって裸地状態の場所に生育します。少なくとも自分にかぶさってくるような植物は苦手なようです。花径が葉腋から立ち上がっています。ノギラン
ノギランの花期は7月下旬から8月ですから、初夏の段階ではこんなつぼみが見られる程度。総状花序で小さな花が30はあるでしょうか。控えめな色彩のため人に知られることはほとんどありません。ノギランのつぼみ
ダイミョウセセリが舞い上がっては葉に止まるということを繰り返していましたのでカエラに収めてみました。セセリチョウらしからぬ蝶で翅を広げて止まります。小・中学生のころには蝶を追いかけていたのですが、いつしか草に移ってしまいました。思い返せば蝶の食草に気を取られてから今の道にはまってしまったようです。ダイミョウセセリ
木陰になっている少し湿った場所にはヘビイチゴが絨毯のように広がっていました。ヘビイチゴの絨毯
美味しそうに見えますが無味。毒はありません。ヘビイチゴの果実
近くにヤブヘビイチゴがありましたので果実をアップで切り取ってみました。果床は濃紅色です。ヤブヘビイチゴの果実
ヘビイチゴは白い部分があります。ヘビイチゴの果床
登山道の一角にノイバラが顔をだしている藪がありました。バラを好まれる方は非常に多く庭先に沢山栽培されていますがその原種ととなっているノイバラはあまり扱いは良くない気がします。それでも大株になってたくさんの花を見せていれば一見の価値はあります。ノイバラ
個人的には栽培のバラには綺麗だという感情はあるもののあまり興味を示すことはありませんでした。その流れをくんでかやたらと棘が多いこともありノイバラはスルーすることが多かった気がします。しかし、しっかり観察すれば「科」を代表する花でもあり整った形質をしていることが分かります。ノイバラの花
奇数羽状複葉。3~4対あります。つる性で日当たりの良い場所を好み雑草的な面もあります。ノイバラの葉
素朴な里山の野生ランでそれほど見た目があでやかでないためか盗掘されることも少なく林下腐植の多い場所に普通に見られます。個人的にはこの素朴さがどこか安心感がありホッとする感じです。サイハイラン
花色には少し変化があるのですが大体白濁色をベースにくすんだあずき色。花びらは全開することもなく印象は地味な感じがします。サイハイランの花
長楕円形の葉が1枚。山野では比較的見かける種ですが栽培はとても難しい種だという話もあります。山野草は野に置くのが良いですね。サイハイランの葉
低木のウリノキです。里山では比較的出会う種です。とはいえ個人的感想では分布にはムラがあるように思います。個体数密度が多い地域と全く見られない場所があって普通種のように感じません。しかし、分布図を見ると例えば新潟県内では広く自生が確認されています。ウリノキ
開花直前の花です。開花すると花弁がくるくる巻いて独特の形状になります。ウリノキの開花直前の花
葉にはとても毛の多いタイプがあるのだそうです。ビロウドウリノキとかいうそうです。八石山ではそういうタイプは気づきませんでした。ウリノキの葉
ダイコンソウです。これも里山植物の代表です。登山道わきの草むらに顔を出していました。ダイコンソウ
花弁はめしべ・おしべは多数。バラ科ダイコンソウ属に分類されます。ダイコンソウの花
帰化種を含めいくつかの類似種があります。高山種のタテヤマウツボグサは生育していいる環境を含めて毎年一度は見てみたい種です。薬草としても利用価値があるようです。ウツボグサの葉
画像が悪いのですがめしべの先がS字に曲がっています。もっと果実が成長してくるとはっきりするのですが・・。めしべの先が曲がっています
「ダイコン」と言われる根拠がこの根生葉です。確かにダイコンの葉に似ています。ダイコンソウの根生葉
ツヅラフジ科のコウモリカズラです。これも里山植物といえるでしょう。身近にあってあまり意識しない種の一つ。灌木に巻き付いていてどの葉が本体なのかもよく見ないとわかりません。コウモリカズラ
穂状に花穂が付いていました。つぼみかと思いきやよく見ると開花中の花です。雌雄異株の種ですからこの花は雄花になります。果実は核果で秋には黒く熟します。コウモリカズラの花
葉は特徴的で、葉柄は葉の端に楯状につきます。縁は大きく波打ちます。コウモリカズラの葉
少し荒れた場所にノビルが見られました。全土の畑や道ばた・土手などにと言われるものの雑草に紛れていると案外見逃してしまいます。ノビル
花序は球状。開花しているものはなく咲きそうなつぼみが見られました。ノビルのつぼみ
球状の花序がそっくりむかごで覆われていて花が一つもありません。ノビルの戦略は種子を作るより、むかごを作って無性的に繁殖するほうに重点を置いているようです。ノビルのむかご
丸い茎や葉ならアサツキ、凹んでいればノビルといわれます。ノビルも花径の一部分は断面が丸い部分もあります。ノビルの葉
ちょっとしたフタリシズカの群生地に出会いました。山の斜面で雑木が覆いかぶさっているような環境です。フタリシズカの群生地
花が咲いているという感じはしない花でつぼみかな?と疑うような状態。これでも開花中なのですから不思議です。もっともこの種には花びらはなく白いものはおしべ。センリョウ科のチャラン属という人を食ったような名前の属に区分されます。フタリシズカの花
4枚の輪生のように見えるのですが対生する葉が接近しているためです。フタリシズカの葉
ナス科のつる植物。八石山の登山口に見られました。花の時期には少し早いのでつぼみすら見えていません。秋には赤く小さな実が沢山付いて藪にぶら下がっているのを見かけますが、実が付いていないとその存在にはなかなか気づきません。ヒヨドリジョウゴ
成長を初めて早いころの葉はどれも深い切れ込みがある独特な形質をしています。成長しきった花や実の時期の上部の単葉を見ているとまるで別の種のようです。かなり毛深い植物で葉や茎には毛が多くもこもこした触感です。ヒヨドリジョウゴの葉
同じ葉の裏側です。裏側の方が毛の多さが顕著です。ヒヨドリジョウゴの葉裏
中越地区の柏崎地内に八石山(標高518m)という低山があります。春に散策した資料がありますのでしばらくはこの山塊の花を載せていきます。いくつかの登山口とピークもいろいろある低山ですがいろいろな植物を楽しむことができました。八石山初夏
ウの花が咲く頃の散策です。登山口には大株のウツギがあってまだつぼみの状態のものが多いのですが、一部は咲きだしています。ウツギ
開花したての花。卯の花として有名です。里山にある定番の種です。ところで「ウツギ」という名前が混乱をもたらせている部分があって、ウツギとタニウツギを同じグループと思っている方が私の近くにいました。また「ウツギ」という名前を持つ種も多いため類縁が全くないにもかかわらずすべて同類項になっていました。「ウツギ」は「空木」で茎が空洞になっていることから言われる名前です。ウツギは近年アジサイ科のウツギ属という新しい区分にされています。ウツギの花
硬い毛を持ちざらざらした質感で対生しています。ウツギの葉
大江湿原の中ほどに小高い丘があって長蔵小屋で馴染みのある尾瀬開拓で名高い平野家三代の墓があります。その近くにはヤナギランが見られたり立派なハリブキが見られます。ハリブキ
色鮮やかな大きな房のハリブキの果実です。鮮烈な赤い色はあまりにも目を引くのでカメラに収めてみました。近づきがたい難い棘だらけの種ですがこの果実だけは例外です。ハリブキの果実
大江川湿原の中ほど川が流れていますがその橋を渡るあたりの岸に大きな葉をつけたオタカラコウの一群が生育しています。広い湿原内のほとんどは草丈の低い種が優先していますが、大江川の両岸を中心に川沿いに大型の草本が目立っています。オタカラコウ
木道から離れた位置ですから望遠にしてもあまりいい画像にはなりません。5・6枚の舌状花が確認できます。オタカラコウは福島県以西に分布する種だそうです。尾瀬あたりは分布の北限に近いところということになりますが、高山で見かける種ですから東北にないのが少し不思議な気がします。オタカラコウの花
葉は三出複葉で、小葉は丸めの楕円形で深緑にみえます。よく似たヤブヘビイチゴは細長い楕円形の小葉で明るい緑色。ヘビイチゴの葉
湿原の中に咲く青い花はサワギキョウです。サワギキョウは山地の湿った草原などによく見られる種で群生することも時々ありますが、大江川湿原ではあまり多くありませんでした。新潟県内の分布は少し変わっていて長岡以北の山地の湿地と尾瀬の平が岳近辺の高山湿地に観察されていて他からの報告がないのです。津南当たりの湿地にも見かけてことはありますが、ありそうでないのがサワギキョウです。少し県外に出ると時々見かけるのですがなぜか新潟県内では見かけません。丁寧に探せばもっと出てくる可能性もありますが、「じねんじょ会」の調査結果ではとても偏っているのです。サワギキヨウ
サワギキョウはキキョウ科のロベリア属に分類されます。水田雑草のミゾカクシなどと同じ形質の花です。比較的高性の種で花もたくさん付くので山野草としては見栄えのする素晴らしい花です。サワギキョウの花
経験的に中部地域では高山草原の定番の種でしょうか。ここは尾瀬の大江川湿原ですが、点々と自生しています。しかし、もっとあっても良いような気がしています。全国的には日当たりの良い山地に見られるものとなっていますが、新潟県内では平地での確認は少なく群馬県境の高山草地を中心に個体数は多いようです。ワレモコウ
ワレモコウはバラ科ワレモコウ属の種。蜜になっている穂状花序で花は上から下へ向かって順に咲く有限花序になっています。ワレモコウの花
木陰にミヤマタニタデを見つけました。タニタデに比べかなり小型で地面を覆っていました。アカバナ科のミズタマソウ属の一種です。調べてみると新潟県内ではミヤマタニタデとタニタデは分布域が重なっていることが多く意外な印象です。経験的には両種を一緒に見かけてことはなくタニタデは山地や低所にミヤマタニタデは高所にや北地に偏っているものという思い込みがありました。ミヤマタニタデ
花は小さく白い花です。果実がミズタマソウ属の特徴がよく出ています。水滴がたまるとまさに水玉です。ミヤマタニタデの花
ミズギクの見られた場所から少し離れた場所にミズチドリが見られました。ラン科ツレサギソウ属の種ですがこのグループの中では花や花序が大きく見ごたえがあります。経験的には高所の湿地で時々出会いましたが、調べてみると低海抜でも自生しているようです。県内では新潟平野の湿地に採集された記録があります。決して多くはありませんからこの花に出会うととても満たされた気分になります。ミズチドリ
チドリかどうかは分かりませんが、花は小鳥が舞っているように見えます。ミズチドリの花
最下部の葉が大きめなのはこの属の特徴の一つのようです。ミズチドリの葉
湿原に咲く黄色い花はミズギクです。尾瀬で見られるものはオゼミズギクと言われるものでしょうか。木道近くにあまりなく細かな点を記録するための撮影ができていません。ミズギク
オグルマ属の仲間で上向きの頭花です。舌状花が周囲に環状花が中央部に配置されているキク科特有の花序です。ミズギクの花
コオニユリです。尾瀬の湿原にはところどころ見られます。高所にきているのでクルマユリかと錯覚してしまうこともありますが、よく見ると葉が車状になって付いていないことなどでコオニユリであることが分かります。湿地に多く出てくるのですが崖などの荒れた場所などでも見かけます。低海抜から尾瀬などの比較的高所でも見られるので適応範囲は広い種です。コオニユリ
オレンジの花ですが黒い斑点がたくさん見られるのも特徴の一つ。クルマユリはこの斑点がほとんどみられません。コオニユリの花
花の雰囲気から愛すべき山野草の一つで稀にしか見られない種のような気がするのですが、意外に分布域は広く海岸から里山、深山と思いもかけないところで出会う種です。尾瀬地内にも自生していて湿原の縁の林の中で見かけました。ツリガネニンジン
近づいて観察してみると小さなつぼみが沢山付いていました。雄株です。マタタビのつぼみ
尾瀬地内の個体は花は白く里山などで見る薄い青い色の個体とは違っていました。もっとも花の色は個体変異の範囲ですから色づいているものもあるのかもしれません。ツリガネニンジンの花
ただ、尾瀬地内ではかたまって生育しているような場所は気づきませんでした。個体数はまばらで少ないようです。ツリガネニンジンの葉
オニアザミの亜種にジョウシュウオニアザミがありますが、新潟県と群馬県の県境周辺に見られるオニアザミをさらに荒々しくしたような印象の種です。尾瀬地内にはジョウシュウオニアザミが分布しています。ジョウシュウオニアザミ
そう思ってみるせいか頭花は大きく感じます。この仲間は花は下向きになります。2種を比較すると総苞片の違いもあるようですがそこまで見極める目を持っていません。ジョウシュウオニアザミの頭花
オニアザミも鋭い棘を持ちますが、ジョウシュウオニアザミはより一層棘が鋭く葉の切れ込みも顕著です。ジョウシュウオニアザミの葉
独特の雰囲気を持ったタチアザミの仲間が見られました。オゼヌマアザミと言い尾瀬周辺に特有なアザミとされています。類似種のタチアザミの亜種という話ですが個人的にはその違いを明確に判断できていません。オゼヌマアザミ
タチアザミの仲間は花は上向きで総苞片は太い針状で特徴があります。オゼヌマアザミの頭花
タチアザミとの違いと言えば葉の切れ込みが大きいように見える点でしょうか。いずれも湿地性の種です。オゼヌマアザミの葉
夏、桧枝岐方向から尾瀬に入った時の山野草です。木道脇に自生していたアオスズランです。チシマザサと競合しながら生育している様子でした。別名エゾスズランともいいますが、スズランとは類縁がなくラン科のカキラン属の種です。アオスズラン
カキランの花を緑色にしたような花です。カキランは湿地性の種ですがアオスズランは深山の林床に見られます。アオスズランの花
経験的に新潟県境の深山にまれに見かける種で決して多い種ではありません。アオスズランの葉
ささやかな庭の一角に紅葉を楽しみたくてマルバノキを購入し植栽してあります。紅葉もピークを過ぎたころふと気が付くと小さな花が目に止まりました。我が家のマルバノキ
こんな形のヒトデがいたような・・・。いやむしろキノコの仲間にイカタケというのがいますがそれに印象が似ているでしょうか。数㎜の暗赤色の5弁花ですが2個が裏表で対をなして咲いているので花弁が沢山あるように見えます。両性花ということになっていますが、花粉が出てきているのが分かりますがめしべはよくわかりません。マルバノキの花
少し裏側から花を見ると枝から延びている柄との関係がよくわかります。果実はまだですからもう少ししたら確認できるでしょう。2個の果実がくっついているようです。マルバノキの花を後方から
黄葉した葉は赤く綺麗です。マンサク科のマルバノキ属に分類される低木です。主に西日本の山地に自生が見られるようです。新潟県内には見られません。12月に入りました。例年のようにしばらくの間は冬ごもりです。これからしばらくは撮りためていた資料を基にこのブログを続けていくことになります。季節的には飛び飛びの話になりますがご理解ください。マルバノキの葉
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