ドリップコーヒーにナレーズ

「男は浮気をする生き物なのか」私はファミレスで一人、窓の外を眺めながらぼんやりと考えていた。私は浮気された事は無い。一度も。だっていつも私が浮気相手なんだもん。姉のフユ子に言わせれば、私は「妻帯者フェチの不倫専門家」らしい。意識して妻帯者を選んでいるつもりは無いが高校生の時、初めてバイトしたファストフード店の店長から始まり行きつけの美容師のオーナー、得意先の営業、ヨガ教室のインストラクター付き合ってきた男はみんな『たまたま』妻帯者だった。そして、今の彼氏の田村は「勤務先の上司」と言う、最もベタな不倫相手だ。「あんた毎回、二番手に耐えられないのって泣きながら別れるのに又不倫して、多分マゾだね～。もうこうなったら極めちゃいなよ」上司との不倫を話すと姉のフユ子は可笑しそうに笑った。「妻とはうまくいってない。もう何年も...ドリップコーヒーにナレーズ

黄色い帽子のおじさんにナレーズ

我が家の理想の母親像、それは「黄色い帽子のおじさん」だ。6才になる娘のナツは週末の朝の30分、テレビの前に釘づけになる。ナツのお気に入りのアニメ「おさるのジョージ」の時間なのだ。おさるのジョージを見ていると機嫌の良いナツ。私はその隙に、パソコンを開きイヤホンを耳にあて、大好きな「イケメン料理人のトスカーレ隼人」の動画を見る。イタリア人と日本人の間に生まれたトスカーレ隼人は、和食、フレンチ、イタリアンなどをごちゃまぜにした「トスカーレシピ」の考案者で、フォアグラや子牛の脳みそなど、近所のスーパーマルモトでは決して手に入らない食材をふんだんに使ったレシピを紹介してくれる。「何処で手に入るねーん！」と突っ込みを受けながらもイタリアンな甘いマスクの流し目で囁く「愛するあなたに食べさせたい」と言うキメめ台詞で全国の貧食妄...黄色い帽子のおじさんにナレーズ

サンタクロースにナレーズ

「サンタクロースって、ママでしょ？」11歳になる長女のハルが唐突に言った。ファミレスで二人で向かい合わせになってピザを食べていた私は固まった。ついに来たか。でも、唐突で何も用意できてない。「なんでそんな事聞くの？」動揺を隠して笑顔を作る。頭の中で様々な言葉が交錯する。まるで浮気を尋問されている男の様だ。「なんでそんな事聞くんだよ～？」浮気を疑う私に、別れた夫は上ずった声で聞いたっけ。結局あのバカ男は「遊びなんだ！相手は玄人だし！」と開き直った。「クローゼットの中にプレゼントが入ってた」ハルはフォークでハンバーグを弄びながらうつむいている。「ああ、あれね、サンタさんが持ってきたの」どうよこの言い訳。元夫の「いや、あの女が気分が悪いっていうからホテルで介抱しただけだっ！」とどっちが上手い言い訳だろうか。「へー、いつ...サンタクロースにナレーズ