安岡正篤『人間を磨く』を読む(後編)
「人間を知らない人間の作った世界」の不幸から人間を救い出すために。(「遊ぶいとまはある人の」)とはいえ、若い頃は仕事が忙しくて、とても学芸などに時間を割く余裕はない、という声が聞こえてきそうである。「働き方改革」が声高に叫ばれるのもその故だろう。この点でも古人の叡智は抜かりない。なかなかに遊ぶいとまはある人のいとまなしとて書読まぬかな本居宣長の歌である。宣長は35年かけて『古事記伝』44巻を著した。昼間は医者としての勤め、夜は弟子たちに古典の講義を行い、その暇(いとま)に古事記伝以外に三十六種九十八巻以上の著作を残した。安岡師自身も、自らの研究態度に関して、こう述べている。__________外出から帰宅したら、帽子もオーバーも着けたまま書斎に直行して調べものをすることがよくある。そういう時は、風呂に入り...安岡正篤『人間を磨く』を読む(後編)
2025/04/28 05:00