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  • 詩人の珈琲 【珈琲游人の旅<第2回>】

    朝、一杯のコーヒーを淹れる。至福のひととき。コーヒーの淹れ方は、故郷の町の画廊喫茶の店主の方法を習得した。そのオヤジは苦みばしった渋い男で、詩人で、元・左翼運動の闘士だということだったが、普段は物静かで、はにかんだような笑顔で若者たちに接してくれた。顔に刻まれた深い皺、肩まで垂らした長い髪、時々鋭い光を放つ眼などが、画廊と喫茶とが連結された空間によく似合っていた。まだ二十代前半だった私たちは、その店に通いつめ、絵のこと、文学のこと、音楽のこと、酒やコーヒーに関する薀蓄などを聞かされ、学んだ。豆は、市販の浅煎りの豆が入手できればそれでよろしい。手挽きミルが理想的だが、電動ミルでも、挽きながら目盛りを段階的に変化させ、粉が不ぞろいになるように加減して挽けばよい。紙フィルターに一杯の粉を入れ、その粉全体が漏斗状...詩人の珈琲【珈琲游人の旅<第2回>】

  • 秘渓の沢辺で珈琲を一杯 【珈琲游人の旅<第1回>】

    誰にも教えたことのない秘渓に入り、沢辺に車を乗り入れる。途中で一度、小橋の上から覗いてみて、20センチ級の立派なヤマメが泳いでいるのを確認した。――よし、今日はあいつを釣ろう。と入渓地点を決定し、まずおにぎりを食べる。旨い。清流の水音を聞きながら食べるおにぎりこそ山旅の最高のご馳走である。世の中全体ではコメ騒動が続いているが、通り過ぎてきた棚田や谷沿いの小さな田んぼにまで、青々と稲苗が成長し、早場米は穂を膨らませているものもある。食料不足は農家の問題ではなく消費者すなわち都市生活者の問題なのである、とは、農民作家として半世紀前の農業の課題を提起した山下惣一氏が述べている。林間から摘んできた野生の茗荷の葉に乗せたおにぎりを食べながら、この国の農業政策の行き詰まりと、それを視野に置きながら、変わらずに「農」の...秘渓の沢辺で珈琲を一杯【珈琲游人の旅<第1回>】

  • 夏のヤマメは釣れにくい/真夏の秘渓を歩いた極上の一日【九州脊梁山地ヤマメ幻釣譚<25ー13>】

    全身を襲った神経痛に悩まされて二ヶ月ほど身体を動かせずにいたら、腕や足が細くなったような気がして心細くなった。――もう、冬の夜神楽探訪も、夏のヤマメ釣りもできないのではないか・・・この秋は何で年寄る雲に鳥松尾芭蕉最晩年の句が思わず浮かんで来たりするのである。人は皆、いつかは死ぬのである。人間にかぎらず、生きとし生けるものには寿命というものがあり、いのちが尽きれば土に還り、また新たな生命体が誕生する。その循環の法則の上に地球上の生物は存在するのである。そんなことは分かり切っているし、人類はその増えすぎた人口を戦争という殺し合いによって自ら減少させようとしている。漂泊の旅に生き、旅に死んだ芭蕉が上句を詠んだのは48歳の時である。それを考慮すれば私などはこの夏で77歳になるのだから、とっくに寿命は尽きていると考...夏のヤマメは釣れにくい/真夏の秘渓を歩いた極上の一日【九州脊梁山地ヤマメ幻釣譚<25ー13>】

  • 「夏男」薬草山神が再起動した【九州脊梁山地・薬草山人の森へ<9>】

    近隣の宮崎県西米良村でこの夏の最高気温38度超えを記録した昨日(7月6日)、中庭に神楽の絵の大作を持ち出して、仕上げをした。腰を屈めて物を取ったり、中腰で絵を描いたりすることは無理だが、前日まで作った即製のテーブルの上でなら、仕事が出来るところまで回復したのだ。思うように身体が動かせなかったこの二ヶ月の間は、もう、神楽の場に通って絵を描くことなどは無理かと思っていたのだが、これならば、養生すれば、使い物になるところまで回復できることが分かった。ありがたく、嬉しい。近隣地域で火山の活動が活発化し、地震が相次いでいるちょっと怖いぐらいの暑い夏、再起動できたことを、いまは心から喜んでおこう。カワトモ君が来て、草刈りをしてくれた。この暑い夏空の下、大汗を流して刈り続ける彼はまだ15歳だが、もう頼りになる青年の姿だ...「夏男」薬草山神が再起動した【九州脊梁山地・薬草山人の森へ<9>】

  • 薬草山人の夏/【九州脊梁山地・薬草山人の森へ<8>】

    大好きな暑い夏がきて、少しずつ、活動を再開している。全身に出ていた神経痛から、劇的に回復している部分もある。昨日までの三日間を振り返っておこう。一日目(三日前)、中庭に出て、落葉を片付ける。まず、スコップで1杯、掬い取って一輪車(猫車ともいう、手押しの運搬車)に積み込む。そして2杯目を入れた所で休憩。そのあと、3杯、5杯と投げ入れ、家の前の広場に運んで、薬草の周りに敷きつめる。これを2回繰り返した所で、止めた。中腰になったり、しゃがみこんだりする時に痛みが出るのだ。無理は禁物。二日目、隣接する倉庫から建築廃材を運び出してきて、即製のテーブルを作ることにする。古材を乗り越えたり、分解された建具の部材を運び出したりする。かなりの回復度が認められる。鋸や金づち、釘などを持ち出して苦手の工作を始める。小学5年生の...薬草山人の夏/【九州脊梁山地・薬草山人の森へ<8>】

  • 緑陰のギャラリー「友愛の森ギャラリー響界」にて/「武石憲太郎展」始まっています。 【第四期:空想の森アートコレクティブ企画<´25-32>】

    約20年間「祈りの丘空想ギャラリー」として運営し、その後約5年間「友愛の森空想ギャラリー」として引き継いできた旧・教会を改装したギャラリーを「友愛の森ギャラリー響界」と改名しました。企画や展示などは従来通りです。今後はこのネーミングと企画・運営方針で、参加してくれる人を待ちます。ただし、経済性は低く、来場者も多くはないのに、一年を通じて毎日朝晩、鍵の開け閉めをし、年間を通じた企画展を開催するなどの活動が必須となります。それでも、五月の鯉のぼりの頃からヒメボタルの舞う時期、晩秋の銀杏並木が黄葉する季節には多くの人が訪れてくれ、名所化しつつあり、石井記念友愛社出身の人などが「〇年ぶりに帰って来た」と言って立ち寄ってくれることもあります。大切な場として育てあげていきたいと思っています。現在、「武石憲太郎展」が開...緑陰のギャラリー「友愛の森ギャラリー響界」にて/「武石憲太郎展」始まっています。【第四期:空想の森アートコレクティブ企画<´25-32>】

  • 薬草山人の庭で/回復期に入った体調のこと【九州脊梁山地・薬草山人の森へ<7>】

    二ヶ月余り続いていた身体中の痛みが、少しずつ軽減してきた。回復期に入ったと理解しよう。久しぶりに中庭に出て、冬の間に落ちて溜まった枯れ葉を燃やす。小山のような落葉の下部は、すでに腐葉土と化している。それを焚き火の灰と混ぜ合わせて、移植してある日向当帰や芽生えてきたばかりの決明子などの根元に蒔くのだ。これが山里の極上の肥料。ヒュウガトウキは、険しい岩場にも生えているから逞しい植物だと思われるが、水分や養分も欲しがる性質も併せ持っているらしい。心配されたリウマチのデータは出なかったがまだ健康体とはいえないから、今後は、野草と薬草の力を借りながら、気長に治してゆこう。まずは、毎年の夏の恒例になっているこのシーンの再現だ。冬の間に描き溜めた神楽のスケッチの大作が仕上げを待っている。これから書き込むべき文章も神楽の...薬草山人の庭で/回復期に入った体調のこと【九州脊梁山地・薬草山人の森へ<7>】

  • 薬草山人の庭を歩く/ヤブカンゾウ(藪甘草)の花が咲いた【九州脊梁山地・薬草山人の森へ<6>】

    遠い椎葉の山河と九州脊梁山地の山々を回想しながら、庭を歩く。庭と言っても、古墳や茶畑、農地などが広がる広大な茶臼原台地の東端の森に囲まれた一角だから、いろいろな野草や薬草が自生している。藪甘草(ヤブカンゾウ)の花が咲いていたので、少しだけ採集。周囲にいつのまにか姫檜扇水仙(ヒメヒオウギスイセン)が進出してきており、草藪一帯が華やかな緋色の花園となっている。ヒメヒオウギスイセンにも薬効があるが、今回は採集しない。・本文は作業中。薬草山人の庭を歩く/ヤブカンゾウ(藪甘草)の花が咲いた【九州脊梁山地・薬草山人の森へ<6>】

  • リウマチ・膠原病などのデータは無という検査結果/薬草「仙人」の呼称は撤回し薬草「山人」としたこと【九州脊梁山地・薬草山人の森へ<5>】

    昨日(6月30日)、一週間前の検査をふまえた診察を受けるために病院へ行った。その結果、心配されたリウマチや膠原病など、厄介な病気のデータはなし、という結果を告げられた。とりあえず、すぐに死んだり、寝た切りになるという心配は消えたわけだ。リウマチの怖さは、祖母が5年近く病み、最後は手足の骨が曲がったまま、昼夜を問わず痛み続けるという苦しみの末に亡くなったから、知っているのだ。当時、私は小学生だったから、60年以上前のことになる。山仕事をして家計を支え、薬草や茸のある秘密の場所を私たちに教えてくれた山の女であった。詳しくは書かないが、家族で介護をした当時は、生き地獄を見た思いであった。それゆえ、家族に見守られ、静かに息を引き取った時、私は――これで家族も本人も楽になる・・・と、心底ほっとしたものだ。現代医学は...リウマチ・膠原病などのデータは無という検査結果/薬草「仙人」の呼称は撤回し薬草「山人」としたこと【九州脊梁山地・薬草山人の森へ<5>】

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