「夫のうれしい涙」
「夫のうれしい涙」うれしい時も、悲しい時も、涙は流れてくる。「人前では泣くな」「男は泣くな私の子ども時代には、そういわれて育った。「泣くな」、「泣くな」。どんな悲しいことがあっても、辛いことがあっても涙をこらえて泣かなかった。もっと正確に言えば、人前で泣かなかった。こらえた。小学低学年のころ、いじめにあった。不快感は残ったが、それだけのこと。しかし、同じようないじめが続けば、我慢ができなくなる。反撃に出る。相手を力でねじ伏せる。暴力によって相手を委縮させる。喧嘩は負けては意味がない。勝つために手段は選ばない。相手が泣いて悲鳴を上げるまで徹底的に痛める。それでいじめはなくなった。決して泣かない少年だった。それが崩れたのは、嫁いだ姉が亡くなった時だった。物言わぬ姉の顔を見て、こらえていた涙がとめどなく流れた。...「夫のうれしい涙」
2024/05/10 06:30