始まりの木(小学館文庫)夏川草介小学館夏川草介といふ作家の名前は以前から知つてゐた。『神様のカルテ』といふ作品は映画にもなり、それが人気のある原作に基づいてゐるといふことも何となくは知つてゐた。しかし、その映画も原作も見たり読んだりしようとは思はなかつた。主人公を演じてゐるのが櫻井翔といふあまり好きではない俳優だからかもしれないし、医療ドラマといふだけであまり気が乗らなかつたからかもしれない。理由は特にはないが、気が向かなかつたといふことである。では、なぜ今回この夏川の小説を読んだのか。これが良くも悪くも日本人的私の生き方であるが、知人に紹介されたからである。年若き青年二人から、夏川草介を愛読してゐると言はれ、では読んでみるかと重い腰を上げた次第である。読了第一号が、この『始まりの木』である。ずゐぶん批評...夏川草介『始まりの木』を読む