「転落の解剖学」(3)
他殺か自殺か。裁判(初審)は自殺と判断した。ストーリーの「展開」に満足するだけの観客なら、この映画の結末は「腑に落ちない」だろう。すっきりしないだろう。「ああ、よかった」と満足しないだろう。しかし、映画に限らず、どんな作品であり、あらゆる評価は終わったところからはじまる。終わったところから受け手が何を考えるか。監督も役者も、もう動かない。観客を誘導しない。動くのは観客の考え(ことば)だけである。さて。私の考えるのは、こういうことである。男が自殺した。「事実」がそうであるとして、女(妻)は本当に自由になれるか。「無罪」判決が出たからといって、女は本当に自由になったのか、という問題が残る。簡単に言い換えれば、女には、なぜ自殺を防ぐことができなかったのか、夫をなぜ救えなかったのかという問題が残る。これは、たとえ...「転落の解剖学」(3)
2024/02/29 13:18