【SS】:よせてはかえす
ひとけのない冬の海は鈍色に濁り、朝の陽の光を弱々しく跳ね返していた。波打ち際をあるく蒼羽はつよい風を避け、マフラーに首をうずめる。それでも舞い上がった砂粒がぴしぴしと頬を打つ。 かちん、とトングを鳴らした。金属音でリズムを取りながら、小学生のころにはやった男性ボーカルの曲を口ずさむ。足元と、手で鳴らすリズム、自分の声に意識を集中させる。だからだろうか、背後から声をかけられるまでひとの気配に気がつ...
2024/12/30 10:16
2024年12月 (1件〜100件)
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