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ただ好きだという、この気持ち。 https://kisschoko.blog.fc2.com/

お仕事系BL小説ブログ。医療系シリーズ中心に更新中。基本あまあま、時々じれじれヒリヒリ。R18あり。

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2014/06/22

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  • with、◆伴走者(10)

    「・・・そうでしたね」 一瞬にして頭が切り替わって、元々の話題が蘇った。そんな長谷川へと、向井はもう一度笑ってみせた。「と、まあ、自己嫌悪にもかられてるけど。新たな発見もあったよ。・・・俺には、おまえに相談してみるっていう選択肢もできたんだって気づいた。対応策が思いつけない状態でも、相談して構わないんだ、って。・・・構わないんだよな?」「・・・・・・」 当然じゃないですかと、辛うじて返したものの。 またしても胸...

  • with、◆伴走者(9)

    「・・・ちょっと、先生」 一方の長谷川は、つい笑ってしまった。殊更に冗談めかした口調で、こう続ける。「先生に頼って甘えてばかりの僕の前で、そういうこと言いますか? 僕に比べたら先生は全然、弱っちくなんかないですよ」 だから安心してください、と軽く言ったら、向井からは意外なくらいに強い否定が来た。そんなことない、と断言されて、長谷川はぱちぱちと瞬きをする。 その様子をどう理解したものか、向井は慌てて言...

  • with、◆伴走者(8)

    患者さんのことなんですよね、と言葉を継ぐうちに、長谷川の中で悔恨の念がぐんぐんふくらんでいった。それに比例して、声も小さくなる。「だったら、こんなオープンな場で話題にするのは御法度ですよね。駄々こねて済みませんでした」 守秘義務、という、医師として絶対に忘れてはならないことが頭から飛んでいた。 ああ俺、まだまだ全然駄目だな。そう自省しつつ、それでもせっかくの向井との外食を台無しにしたくなくて、長...

  • with、◆伴走者(7)

    だが向井は、その場では切り出そうとはしなかった。 ここじゃ何だから、というのがその言い分だ。「帰ってから話すよ」 淡々とした口調でそう言って、また箸を動かし始めた向井を、長谷川は少しばかり恨めしげに見やった。「なんだかすごく気になるんですけど」「そうか?」「そうですよ。気になって気になって、もう食事が喉を通りません」「まあそう言わずに。ほら、天津飯、旨いぞ」 向井が取り分けてくれた皿の中身を、長...

  • with、◆伴走者(6)

    滅多にない『こんなこと』。それをもう少し詳しく云うならば、たとえば。 頼られる。 一人前に扱われる。もしくは、対等に。 いや違うな、と長谷川は自分でも思う。どれも語弊があるし正確じゃない。でも、他にうまい表現が見つからない。 ただ、確かなのは。 今までの多くの場合、フォローする側とされる側に分けるとしたら、前者は向井で後者は長谷川だった。 向井の意見は違うかもしれない。だが少なくとも長谷川に...

  • with、◆伴走者(5)

    向井の目が、メガネの向こうで軽く見開かれた。「え、何で?」 その表情も声音も、向井らしくもなく無防備で、だから長谷川は確信する。何かあったんだ。 すぐにでも問い詰めて聞き出したい気持ちを抑え、長谷川は微笑んでみせた。「そりゃ判りますよ。他はともかく向井先生に関することには、僕は超能力が働くんです。先生が言葉や態度に出してないつもりでも駄目なんですよ。空気だけでピンと来るので」 普段の向井なら、長...

  • with、◆伴走者(4)

    「倦怠期?」 その日は向井が日直勤務に当たっていたので、そういう週末の常として夕食は仕事終わりの向井と待ち合わせて外で食べた。 何が食べたいですかと、今日働いてきた人に尋ねたら、「餃子」と即答だった。なので、店名にも「ぎょうざの」と入っている有名チェーン店に入る。このテの店は大概どこにでもあって、味も安定しているので良いというのが、長谷川と向井の一致した意見だ。 生ビールとウーロン茶で、お疲れ様で...

  • with、◆伴走者(3)

    あの頃はさ、と続けた声は妙に明るくて、自分でも少し驚いた。 だがそれは微笑っているからだとすぐに気づいて安堵した。その笑みに、嘘が少しもないことにも。 大きな瞳を更に見開いて、こちらを見つめているなつめへと真っ直ぐに視線を返し、改めて微笑む。「そりゃあもう悲壮だったよ。駄目になるのは当然のことなんだから、そうなっても向井先生を恨んだり憎んだり絶対にしないでおこう、って自分に言い聞かせてね。代わり...

  • with、◆伴走者(2)

    「倦怠期・・・俺と向井先生に?」 鸚鵡返しの質問で時間を稼ぎながら、長谷川は考える。倦怠期・・・、「無い、かな。とりあえず俺の方では」「今のところは、ってこと?」 一方、なつめは追及の手を緩めない。落ち着いた口調のまま、それでも間髪入れず突っ込んでくる。 だがそれは決して興味本位からではなく、裏に隠された真摯な気持ちがあることを、長谷川はよく知っていた。「今のところは。それにこれからも」 だから真面目に...

  • with、◆伴走者(1)

    「百合絵ちゃんのママがね、言ったんだって。大人には倦怠期ってものがあるのよ、って」 元から大人びたところのあったなつめは、この春から中学生になって、大人っぽさに更に磨きがかかってきたと長谷川は思う。 現に、最近のトピックスを尋ねた長谷川に対する返答がこれだ。倦怠期、か。「百合絵ちゃんのママね、今、百合絵ちゃんを連れて実家に帰ってるの。だから百合絵ちゃん、今、通学に時間がかかって大変そう」 そう続け...

  • 【覚え書き】ありふれた風景33

    【初出】2019.02.24-2019.04.29 拍手お礼ページに掲載************ いつもの向井×長谷川、というより向井×ひろきですね。SS入れ替え告知時のmemoにも書いてましたが(笑)。 向井先生はモノに対して執着がないというイメージです。 特に消耗品の場合は、壊れたらあっさり捨てて新しいのを買うタイプだと思うんですが、このボールペンだけは! 別なのです! そもそも、モノに名前をつけるなんて、生まれて初めてだったんじゃな...

  • ◆ありふれた風景33(9)◆

    「もういいです。判りました。ひろきも本望だと思います、向井先生にそんなに愛されて」 厭味たっぷりの諦め口調で言ったつもりだったのに、この言葉は自分の耳にも甘く響いた。ついでに右手を挙げて、向井の頬をそっと包む。 すると向井も、手を重ねてきた。ごめんな、ともう一度謝られる。「ほんと、なんかいろいろ、・・・ごめん」「いいですってば」「インクは出ないけど、ひろきは明日からも病院に連れてくから。白衣のポケッ...

  • ◆ありふれた風景33(8)◆

    「それで今ひろきはどこにいるんですか」 そう問い詰めると、向井はスーツの上着をひらいて内ポケットを示した。 そこからちょこんと顔を覗かせている小さなシャチのマスコットに、長谷川は大きく嘆息する。心なしか塗装が少し薄れていて、それさえもなんだか小憎たらしい。「そんなとこに大事にかくまって・・・そもそも、向井先生ってそんな人でしたか? モノに対して執着したり感情移入したり、そういうことは一切しないタイプ...

  • ◆ありふれた風景33(7)◆

    長谷川としては、それ以外言いようがない。一方の向井は、ますます深くうなだれてしまう。「ごめんな。ひろきとまた仕事がしたかったのに。バネをなくすなんて、替え芯以前の問題だ。最悪だ。・・・ごめん」「ちょっと、先生、」 こみあげてきた笑いの衝動を、長谷川は懸命に抑え込んだ。誠実な口調になるよう努力しつつ、言葉を探す。「そんなに深刻にならなくても。というか、まだあのボー・・・じゃない、ひろきを使おうとしてくれ...

  • ◆ありふれた風景33(6)◆

    この名前やっぱり抵抗があるなあ、という思いは押し隠しつつ尋ねた長谷川に、向井は答えた。相変わらずうつむいたまま、悲しそうな声で。「随分前から、インクが出なくなってたんだ。替えの芯を買いにいかないと、と思いながらも取り紛れてそのままになってて」 向井がぼそぼそと語ったところによると。 1.今日は長谷川も遅くなるというし、仕事も割に早く片付いたので、まず夕食を摂ってから文房具店に行った。 2.あらか...

  • ◆ありふれた風景33(5)◆

    「・・・・・・」 問いかけから答えが返るまでには、これまでもわずかの間が空いていた。だが今度の間は少し長かった。 それでも長谷川が視線を外さずに待っていると、向井はいきなりうつむいてしまった。ぽつり、と一言だけ、言葉を落とす。「・・・ひろきが」「僕? ですか?」 いきなりファーストネームを口にされ、長谷川は照れるより先に面食らった。向井はというと、うつむいたままふるふるとかぶりを振った。「いや、ボールペン...

  • ◆ありふれた風景33(4)◆

    見れば向井はまだスーツ姿のままだった。離れたところにコートが放り出されていて、更に離れたところに鞄も投げ出されている。 その他、ソファまわりも心なしか乱れているようだ。まるで、引っ繰り返しては戻すことを繰り返したかのような雰囲気。 それらを一通り見て取ってから、長谷川は向井の傍らに膝をついた。 全身状態を素早く観察する。身体的な異常はなさそうだ。着衣の上からだから確定はできないが。それより問題...

  • ◆ありふれた風景33(3)◆

    「む、かい・・・先生?」 玄関は暗く、そこから続く廊下も暗かった。ただ、その奥からぼんやりと灯りがもれていて、リビングにいる人の存在を伝えていた。 瞬間的に、長谷川の脳裏をありとあらゆる嫌な予想が駆け巡る。 あの短い返信メールも、いつものことだと油断して――いや、それどころか脳天気かつ都合よく幸せ気分に浸ったりしていたけれど、本当は何か重大な、「先生!?」 思わず声を張り上げてしまいながら、長谷川はそこ...

  • ◆ありふれた風景33(2)◆

    かくて。 その日、長谷川は予定通り医局会にも勉強会にも出て、配られた豪勢な弁当も有り難く完食した。 その後で病棟に上がって回診と指示出しとカルテ入力を済ませたら、予想していたよりも更に遅い時間になってしまったので、慌てて帰途につく。 途中で向井にメールで現状を伝えたところ、「了解」と一言だけ返ってきた。 必要最小限のことしか打ってこないのは向井のクセだ。歴代の元カノとはそのことで毎回喧嘩になった...

  • ◆ありふれた風景33(1)◆

    その日はあらかじめ、帰宅が遅くなると向井には言ってあった。 月に一度の医局会がある日だったし、その後で引き続き行われる製薬会社主催の勉強会にも出るつもりだった。 医局会はともかく、勉強会は強制参加ではないので、長谷川も出たり出なかったりしている。が、「今回のはちょっと気になるテーマなので」 そう言った長谷川に、向井は屈託なげに笑ってこう答えた。「じゃあ俺も、晩メシは適当に済ませてくるよ」 製薬会...

  • 【覚え書き】ありふれた風景32

    【初出】2018.12.23-2019.02.23 拍手お礼ページに掲載************ 「with、」シリーズに引き続き、ハルヒナの拍手御礼SSでした。 缶スープの話、懐かしいなあ! SS入れ替え時のmemoでは、つぶ入りのスープのつぷが最後まで飲みきれない、という話もしてましたねー私。 あの時知った裏技は、結局試せないまま季節が変わってしまいました。 や、寒い季節じゃなくても缶スープって自販機で売ってるのかな? いやいや、売ってい...

  • ◆ありふれた風景32(6-2)◆

    決まってるじゃん、とまた言いたくなったのをこらえて、俺も答える。「ハルタさんの」「じゃあ、」 とハルタさんは何でもないような口調で続けた。「これも店のメニューに加えようか」 途端に俺は、言葉につっかえてしまう。「えっ・・・と、んんん・・・こんなに美味しいんだから、そうだよね・・・」 スープに視線を落として、意味もなくスプーンでぐるぐる掻き混ぜていると。 急に頭のてっぺんがフワリとあったかくなった。見なく...

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