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  • 國分功一郎『スピノザ』

    國分功一郎『スピノザー読む人の肖像』(岩波新書、2022年)。この17世紀の哲学者についてどう捉えたらよいか。自分が以前に主著『エチカ』を読んだかぎりでは、完全性(実体)は神にのみありそれは唯一のものだ/様態などひとつのあらわれに過ぎない/人間精神もまた様態のように不完全でしかありえない/不完全性を知ることが精神向上への唯一の道である/それをしないこと(無知)はドレイへの道である、といった思想だと理解した。本書は新書にしては厚めだけあってとても丁寧。無限の完全性がある以上「なにか他の体系としての外部」はあり得ないし、それどころか、身体の外部についても、混乱した観念しか獲得できないということになる。つまり我々の意識とは「身体の変状の観念の観念」であり、我々はひとまずはそれを通じてしか世界と関与できない。ルイ...國分功一郎『スピノザ』

  • 金澤英明「年末大仕事3~四つ巴」@中野スイートレイン

    中野のスイートレイン(2022/12/28)。HideakiKanazawa金澤英明(b)EiichiHayashi林栄一(as)YuseiTakahashi高橋佑成(p)NaokiTakahashi高橋直希(ds)<MaryHartman,MaryHartman>ではさみこむというドラマ的な展開にハコは盛り上がる。とはいえ仕掛けなどなくても林さんのアルトには圧倒される。レイドバックというのでもない、ここぞというタメを作って有無を言わさぬ音を放つ。なんて展開なんだという<Straight,NoChaser>、不穏なピアノからの<LoverMan>。響きにぐっとくるベースソロから、おそらく高校時代から吹いていたであろう<LonelyWoman>。アルトの擦れるような微かな倍音からの<YouDon'tKnow...金澤英明「年末大仕事3~四つ巴」@中野スイートレイン

  • 永田利樹+石田幹雄+外山明@なってるハウス

    入谷のなってるハウス(2022/12/27)。ToshikiNagata永田利樹(b)MikioIshida石田幹雄(p)AkiraSotoyama外山明(ds,balafon)フォービートからラテンまでさまざまなリズムの曲をプラットフォームに出す永田さん、過度に重厚でもなく、押し引きのバランスのなかで良い音を次々に見出してゆく感覚。どんな局面であろうと驚くようなフレーズを繰り出す石田さん、やはりどんな局面であろうと自分のリズムを場に浸透させる外山さん。これは幻惑される。FujiX-E2,XF60mmF2.4●永田利樹近藤直司+永田利樹+武田理沙@喫茶茶会記(2020年)ジョー・フォンダ+永田利樹@渋谷メアリージェーン(JazzTokyo)(2018年)藤井郷子オーケストラ東京@新宿ピットイン(2018年...永田利樹+石田幹雄+外山明@なってるハウス

  • People, Places and Things × Ex@小岩BUSHBASH

    小岩のBUSHBASH(2022/12/25)。YumaTakeshitaxHiroyukiUra竹下勇馬×浦裕幸KenichiKanazawaxMisakiMotofuji金沢健一×本藤美咲LiSong(fromUK)fuelphonic竹下勇馬×浦裕幸。竹下さんの機械が制御対象から自律へと向かい「言うことを聞かなくなる」ようで、このような世界をふたりが淡々と提示するのが奇妙に愉快。金沢健一×本藤美咲。金沢さんは大きな板に振動を与え、それによる音を提示するとともに、板上で金属やカップを躍らせ、粉からある種のパターンを描画する。面的な展開に対し、本藤さんはバリトンサックスのロングトーンで応じた。音に関してトポロジカルな共演であるように思えた。終演後、金沢さんは「僕は技術者ですよ」と話してくれた。LiSon...People,PlacesandThings×Ex@小岩BUSHBASH

  • 石原吉郎 - 野村喜和夫

    石原吉郎『望郷と海』(1972年)を再読、この機会に野村喜和夫『証言と抒情詩人石原吉郎と私たち』(白水社、2015年)も読む。シベリアに抑留された石原吉郎は、状況の苛烈さのためにことばの依拠する意義を失い、解放されてからことばを再発見せざるを得なかった。ことばを失ったのではなく、ことばを回復するために沈黙したのだった。また、その過程は証言ではなく詩的言語による表現であった。このことは野村さんが引用する石原吉郎のエッセイの一文にこわいほどに反映されている。―――詩は不用意に始まる。ある種の失敗のように。ひとまずは回復に成功したのも、石原吉郎が単独者であり、かつ他者に開かれていたからでもあった。それでもかれはアルコールに依存し、精神を病み、緩慢な死を選んだ。そしてこの野村さんの思索は、極限をみた詩人だけでなく...石原吉郎-野村喜和夫

  • 大石始『南洋のソングラインー幻の屋久島古謡を追って』

    大石始『南洋のソングラインー幻の屋久島古謡を追って』(キルティブックス、2022年)がおもしろい。レラ抜きの琉球音階はいまの沖縄が中心で、たとえば奄美大島の民謡などはずいぶん雰囲気が異なっている。だが、それは1か0かではない。沖縄よりもかなり北の屋久島にも琉球音階が伝わっていた。薩摩から先島までを行き来する官吏、漁民、あるいは商人がマージナルマンであった。人は移動とともにうたを持ってくる。大石始『南洋のソングラインー幻の屋久島古謡を追って』

  • 鶴見俊輔『柳宗悦』

    鶴見俊輔『柳宗悦』(平凡社ライブラリー、原著1976年)を読む。はじめからなにか既成のカテゴリーとして民藝運動があったわけではない。かれが受容したブレイクもホイットマンも、セザンヌさえも、日本においてはまだ真っ当に評価される対象ではなかった。民藝も同様にラディカルな思想だった。柳が京都の朝市で買ったものは、売り手のおばあさんたちに言わせると「下手物」、すなわちごく当たり前に生活の中にあるもの。柳はそれを自分の実用生活の中に「蒐集」を通じて取り込み、運動とした。ごく普通にあるものや模倣に価値を見出すことは、鶴見によれば、ヨーロッパ近代文明へのアンチテーゼでもあった。おもしろいのは白樺派の系譜にあるこまやかな文体や、「たやすくうちあけばなしをせず、根拠をはっきり示し、推論の途中をとばさずに順序をたててゆっくり...鶴見俊輔『柳宗悦』

  • サムライ茶会記 茶会記が瞠目する10人10枚10日特集

    新宿にサムライという奇妙なバーがあって、そこで長野の茶会記クリフサイドの主人・福地史人さんが指名した10人がそれぞれ10枚を選び、福地さんが流すという企画を続けている。僕の回は12月6日。以下の盤を氏に託した。●沖至トリオ+1、藤川義明『LiveatJazzSpotCombo,Fukuoka,1975』(1975年)フランスに渡っていた沖至が一時帰国したときの記録。沖さんのトランペットは蝶のようにファンタジックで、広い空間をイメージさせる。サックスの藤川義明さんはいま藤堂勉として活動しており、このときすでに激烈なブロウをみせている。翠川敬基さんのチェロにはなまめかしいほどの色気があり、いまもライヴに行くとそれを体感できる。去年発掘されてCD化され、ライナーノーツを書いた。●ホッパーズ・ダック(林栄一、川端...サムライ茶会記茶会記が瞠目する10人10枚10日特集

  • Non-Confined Space 非/密閉空間『Meta, Construct Within’ Spaces』(Taiwan Beats)

    >>Non-ConfinedSpace(非/密閉空間)の第2作『Meta,ConstructWithin’Spaces』アルバムレビュー-TaiwanBeats●謝明諺サックス奏者謝明諺(シェ・ミンイェン)インタビュー(TaiwanBeats)(2022年)ジャズと詩の新境界:『爵士詩靈魂夜ASoulfulNightofJazzPoetry』(TaiwanBeats)(2021年)『爵士詩靈魂夜ASoulfulNightofJazzPoetry』(JazzTokyo)(2021年)陳穎達『離峰時刻OffPeakHours』(JazzTokyo)(2019年)謝明諺+レオナ+松本ちはや@Barsubterraneans(JazzTokyo)(2019年)豊住芳三郎+謝明諺@Candy(2019年)謝明諺+秋...Non-ConfinedSpace非/密閉空間『Meta,ConstructWithin’Spaces』(TaiwanBeats)

  • 田辺和弘@上尾BarBer富士

    上尾のバーバー富士において、田辺和弘さんのコントラバスソロ(2022/12/5)。KazuhiroTanabe田辺和弘(b)楽器「ライオンヘッド」はフランスのガン&ベルナーデル商会による、バール・フィリップスから齋藤徹さんの手を渡ってきた19世紀のものである。聴いてやはり驚いた。同じ楽器であっても弾き手によってこうも違うものか。弓を微細にずらしながらグラデーションを描く音も重厚な指弾きも硬い芯が入っているように聴こえる。邦楽のようにも、琉球音階のようにも思える局面があり、またモンゴルの馬頭琴や喉歌を思わせる豊かな倍音も聴くことができた。FujiX-E2,XF60mmF2.4,7Artisans12mmF2.8●田辺和弘齋藤徹生誕祭@横濱エアジン(2022年)TheBassCollectivemeetsJe...田辺和弘@上尾BarBer富士

  • 幽けき刻@成城学園前Cafe Beulmans

    成城学園前のCafeBeulmans(2022/12/4)。KanonAonami蒼波花音(as)FumiEndo遠藤ふみ(p)ToruNishijima西嶋徹(b)類をみないサウンドを提示するグループだが、今日の演奏を通じて、それは方法論の模索からはじまっているように思えた。静かな中で減衰音をいとおしむように次の音を出すありよう、西嶋さんの曲名<Interdependence>に象徴されるように個々の演者の音ではなくそのあわいを引き出そうとするありよう、あるいは蒼波さんの<うつろい>では重なりのグラデーションをためすありよう。それらを通じてのコミュニケーションへの絶望と信頼の取り戻し。様式への従属には陥らないにちがいない。FujiX-E2,7Artisans12mmF2.8,XF60mmF2.4●蒼波花...幽けき刻@成城学園前CafeBeulmans

  • 川内倫子『M/E 球体の上、無限の連なり』@東京オペラシティアートギャラリー

    東京オペラシティアートギャラリーにて、川内倫子さんの写真展『M/E球体の上、無限の連なり』(2022/12/4)。ハイキーで光が溢れる写真群、やはり魅力的。フォロワーが似たようなオシャレ写真を撮ったところできっとこの世界は作れない。触れそうで触れないもの、常に形をかえ続けるもの、いのち。●川内倫子川内倫子『Therainofblessing』@Gallery916川内倫子『M/E球体の上、無限の連なり』@東京オペラシティアートギャラリー

  • 中藤毅彦『NOCTURNE PARIS 2011-2019』@小伝馬町MONO GRAPHY

    小伝馬町のMONOGRAPHYで中藤毅彦さんの写真展『NOCTURNEPARIS2011-2019』最終日。パリの夜を撮ったものが展示のコンセプトとのこと。光のコントラストがもともと高い状況でのハイコントラストな中藤写真ゆえ、思いがけず透明感がある。フランスのFunnyBonesEditionsから出された『パリ』を持っているが、それとはずいぶん異なる印象でおもしろい。在廊なさっていたら裸のラリーズ撮影のことなど聴きたかったところ。そういえば2016年、スーパーデラックスで、氏がグンジョーガクレヨンだかINCAPACITANTSだかを撮影していたのを見たことがあるが、このことについても。●中藤毅彦「街の記憶・建物の記憶」@檜画廊中藤毅彦『Berlin1999+2014』中藤毅彦『STREETRAMBLER...中藤毅彦『NOCTURNEPARIS2011-2019』@小伝馬町MONOGRAPHY

  • インプロヴァイザーの立脚地 vol.2 高橋佑成(JazzTokyo)

    >>インプロヴァイザーの立脚地vol.2高橋佑成–JazzTokyo●高橋佑成瀬尾高志+松丸契+竹村一哲+高橋佑成@公園通りクラシックス(2020年)秘密基地『ぽつねん』(2019年)秘密基地@東北沢OTOOTO(2019年)謝明諺+高橋佑成+細井徳太郎+瀬尾高志@下北沢Apollo(2019年)森順治+高橋佑成+瀬尾高志+林ライガ@下北沢APOLLO(2016年)インプロヴァイザーの立脚地vol.2高橋佑成(JazzTokyo)

  • スティーヴン・ガウチ+サンティアゴ・レイブソン+ウィリアム・パーカー+タイショーン・ソーリー『Live at Scholes Street Studio』(JazzTokyo)

    >>#2223『スティーヴン・ガウチ+サンティアゴ・レイブソン+ウィリアム・パーカー+タイショーン・ソーリー/LiveatScholesStreetStudio』–JazzTokyoStephenGauci(ts)SantiagoLeibson(p)WilliamParker(b)TyshawnSorey(ds)●スティーヴン・ガウチスティーヴン・ガウチ+サンディ・イーウェン+アダム・レーン+ケヴィン・シェイ『LiveattheBushwickSeries』(-2019年)BushwickimprovisedMusicseries@BushwickPublicHouse(2017年)スティーヴン・ガウチ+クリス・デイヴィス+マイケル・ビシオ『Three』(2008年)スティーヴン・ガウチ(BassoCon...スティーヴン・ガウチ+サンティアゴ・レイブソン+ウィリアム・パーカー+タイショーン・ソーリー『LiveatScholesStreetStudio』(JazzTokyo)

  • 高瀬アキ+ダニエル・エルトマン+内橋和久+中山晃子『複数の時間』@ゲーテ・インスティトゥート東京

    青山一丁目のゲーテ・インスティトゥート東京(2022/12/2)。AkiTakase高瀬アキ(p)DanielErdmann(sax)KazuhisaUchihashi内橋和久(daxophone,g)AkikoNakayama中山晃子(alivepainting)高瀬アキさんには覚悟とか別の世界に入るとかいう概念はないのだろう、開演の瞬間から迷いを1ミリも感じさせない。ダニエル・エルトマンの巧いサックスとは対照的ながら、音楽家として自分のもつものにより世界と対峙する点では共通している。一方の内橋さんはあまりにも柔軟に世界を自分の延長としてつくりあげていくすごみがある。はじめのダクソフォンは東洋人の声かと錯覚した。●高瀬アキシュリッペンバッハ・トリオ+高瀬アキ「冬の旅:日本編」@座・高円寺(2018年)高...高瀬アキ+ダニエル・エルトマン+内橋和久+中山晃子『複数の時間』@ゲーテ・インスティトゥート東京

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