「ごめん!散歩に連れて行かないと・・・」俺は適当な言い訳を思い付けずに、ミミちゃんの散歩を理由にした。だが、松沢くんは食い下がる。「あと一軒だけ。ダメですか?」「ごめんね。帰らないと」「21時まで!それなら大丈夫でしょう?」散歩は嘘だ。こんな時間にミミちゃんを散歩には連れて行かない。どうせ一日中部屋の中を走り回ってるんだし。でも言い訳にはちょうどいいと思ったんだよ。「ほら、汚したシートとか片付けて...
松沢くんがタワーマンションの話しに食い下がる事はなかった。色々と尋ねられても答えようのない俺は、それはありがたかったわけだけど。「片平さんちって、すっごいお金持ちなんですね」と言われた時は困ってしまった。 その後はMCの寺崎さんに注意された服の見せ方の話しになった。「服の見せ方、か。俺も正直言ってよくわかんないんだよね。純さんは学生時代から雑誌とか広告モデルをやっていたから心得があったと思うけど、...
退社時間になっても、純さんは戻って来なかった。年末のセールや福袋の準備は着々と進んでいるし、新年最初の放送に向けてこれからますます忙しくなる。 2課のテレビは朝からずっと通販番組を映している。他のアパレルメーカーの商品次第で、紹介する商品を変える事もある。商品が被っていた場合は次回の放送分と差し替えたり、他社の販売数を調べて販売数を変えたり。最後の出演の時に一緒だったMCさんの加本さんの賑やかな声...
結局、ランチ代の支払いは元セフレ社長に回されてしまった。純さんが食事する度に俺の分まで支払わされる元セフレ社長には、
『MIT-3』のタカシは、さすが芸能人だ。芸能人は大して珍しいわけではないけど、やはりオーラが違う。部屋にいる時はそうでもないけど、一歩外に出ると未知久の雰囲気がガラリと変わる事がある。そういう時はスイッチが入っちゃってるから、俺は10歩くらい後退するようにしている。 未知久はちょっとつり目で、顔立ちはクールな印象だ。ダンスは繊細で、どうすれば自分が一番カッコよく、美しく見えるか、指の先まで計算さ...
愛してその悪を知る・5【最終回】~『朧月夜にしくものぞなき』番外編
★今回前半部分は18歳未満閲覧禁止です。年齢に達しない方、表現がお嫌いな方は回れ右でお願いします!!(とはいえ、期待してはダメですよ!) バスタブの縁に手を付いた僕を、信吾さんが後ろから抱き締める。彼の熱い楔を後ろに受け入れて、僕は至上の幸せを噛み締めていた。「・・・ああっ」バスルームにシャボンの香りが充満している。僕のイヤらしい声が響く。バスルームの窓から見えるのは赤い満月だ。赤い月は僕を淫ら...
公園ですれ違う人とは、「おはようございます」と朝の挨拶を交わす。ウォーキングするご夫婦、ジョギングする人、犬の散歩をする人。犬種も様々で、中にはミニブタを連れた人もいた。普段ミミちゃんを散歩させているのは未知久だ。犬が
銜えたポッキーが無くなると同時に、僕たちの理性も無くなった。まだ片付け終えていない食器とか、グラスとかどうでも良くなって、絡まるようにしてソファーに転がる。信吾さんの襟を掴んだ僕は、「たくさん甘えたい」と言った。信吾さんは嬉しそうに微笑むと、僕の頬を両手で包む。「怜二がそう言うの、待っていたよ」「うん」「最近、帰りが遅いし」「ごめんね。納期が重なってて」信吾さんは不満そうに僕の頬にキスをした。僕...
おばあちゃんとお寿司を食べて、ホームまで送ってから俺は帰宅した。以前のように夜の7時に局入りして終わるのは翌日の夕方、とかいう変則な生活ではなくなった。それはありがたいんだけど、今一つ9時から5時までのサラリーマン生活に馴染んでいない俺は、通勤ラッシュ時の電車でへこたれそうだ。そこそこ混んでいる電車から降りた瞬間、深呼吸するのが日課になった。冷たい空気が肺の中に入り、一瞬で生き返る。 本格的な冬...
ゆっくりと食事をして、後片付けは2人で。いつもこうしているから食器を持って立ち上がったけど、信吾さんが止めた。「怜は座ってろ」「でも」「今夜は俺がやるから。プレゼントを開けたらどうだ?」「うん!そうだね。電話しないと」「怜!電話は後でいい。みんな仕事中だからね」「でも薫くんとか」「ああ、薫は電話してもいい」「どうして薫くんだけはいいの?」「薫は家にいるだろう?他の奴らには働いてもらわないと!特に...
未知久はドラマの撮影とプロモーションで忙しい。京都と東京を行ったり来たりの生活だ。ドラマ撮影にレコーディング。テレビ出演も多いし、今はライブの準備に入っていて、休みは週一あればいい方だった。ドラマ撮影の為に未知久が新幹線で移動しているのを知ったファンが駅で待ち構えていて、毎回警備が大変らしい。と、純さんが教えてくれた。「真央ちゃーん」俺が帰り支度をしていると、純さんがニコニコしながら俺の手を両手...
食事の前に本家に電話をして、洋子さんにお料理のお礼と今日伺えなかったお詫びを伝えた。洋子さんは「明日はもっと美味しい料理を作って待っておりますよ」と言ってくれた。「本当にありがとうございました」「怜二、電話はもういいから!天ぷらは熱々のうちに食べよう」信吾さんがスマホに横から割り込んで、洋子さんに聞こえるように大声で言った。本当に大人気ない。「ちょっと待ってて」信吾さんを押し退けようとするが、信...
例のコスプレの翌々日、松沢くんは出勤するなり俺に「すみませんでしたっ!」と頭を下げた。「はあ?」いやいや、謝るのは俺の方だよ、松沢くん。うちのバカ久がすみませんでした。「車を回しますと言ったのに、俺」「俺は・・・その、大丈夫だったよ?」いや、ここで疑問符はおかしいかな?松沢くんが首を傾げた。純さんと、よーーーくうち合わせておくべきだったな。「片平さんはオオカミ男と一緒に帰宅したと、社長にお聞きし...
★皆さま、こんばんは。ポッキーの日改め、怜二くんの誕生日11月11日がやって参りました。すみません、10日までに書き上げる事が出来ませんでした。以前よりも書くのが遅いですwww前はSSなら2、3時間で書いてたんだけどなあ・・・。怜二くんは「歳はとらない」予定です(笑)まあ、信ちゃんの主張もないと寂しいかしら?と思いました。ご笑納ください。(注)何歳になったの~?という疑問は捨ててください!!怜二くんは...
ミミちゃんは運転席に座った未知久の膝の上。窓枠に前足を置いてちょこんと顔を出し、人間なら「ふふん」と鼻でも鳴らしそうな顔だ。赤いマントを着せてもらって、ミミちゃんは大満足だ。それと言うのも俺が置いて行かれて、未知久と2人でお出掛けとでも思っているのだ。「じゃあ、先に行くよ」「うん。純さんには電話してあるから」未知久がミミちゃんを助手席に移すと、そこに大人しく座った。誇らしげな表情で俺を見るミミち...
一緒に朝食を食べたのは、1週間振りだった。白いご飯と玉子焼きと味噌汁。玉子焼きは以前、未知久が料理人の役をした時に習ったのを作ってくれた。あの頃は毎食、玉子焼きだったな。綺麗に焼けるようになるまで未知久はこだわり続け、ひたすら焼き続けた。おかげで玉子焼きは玄人はだしだ。「うん!未知久の玉子焼き、美味ーい!」久し振りの玉子焼きを箸で掴んで、綺麗に巻かれた断面を見ると毎回感心してしまう。「そうか?久...
「も、勘弁して」「えーっ!もう?まだ脱がしてないんですけど?」未知久は、赤ずきんちゃんの衣装を脱ぐなという。赤いドレスはすでにドロドロのヨレヨレで、パニエだけがシャンシャンしているのが笑える。「もう、って・・・未知久、マジで、寝ようよ」こいつの体力は底抜けだ。さすが、歌って踊って3時間のライブをこなすだけはある。って感心してる場合じゃない。「明日は休みだろう?」「休みだけど、俺、おばあちゃんに会い...
「お、おま、バカじゃ、ないのか!?」未知久は俺をベッドにうつ伏せにした。「さっさと、それ、脱げよ!」暑いに決まっているのに、未知久は着ぐるみを脱ごうとはしなかった。「オオカミさんは、これから赤ずきんちゃんを美味しく頂くのです」「それはわかったって!わかったから!食われてやるから、自分で脱がせてくれ!」「ダーメッ!それはオオカミさんのお楽しみなのだ!」そうだ。変態未知久は、脱がせるのが好きなのだ。「...
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