今から半世紀以上も前のことになるが私が学生だった頃に、思想家の吉本隆明が「共同幻想」という言葉を敷衍させたように記憶している。われわれの社会は共同幻想というある種の思い込みによって成り立っていると言うのである。その共同幻想の最たるものが国家であろう。もともとは共通の神話を信じる者同士の集まりに過ぎなかったものが、法律や行政制度を整え縄張りとしての国境を画定すれば、そこにあたかも実体的な国家というものが存在すると誰もが信じるようになる。しかも、それは各個人に対して強制力を持つようになる。例えば、日本に生まれた子供は一定の年齢に達するとみんな学校へ通い出す。言わばみんなの思い込みによって成立した国家が、今度は膨大な約束事を通じて私たちの生活全般にいわゆる「社会生活」というものを課してくるのである。現代社会では...共同幻想としての国家、通貨