3月の卒業記念ライブに出演予定のバンドでは、唯一学校OBとして、僕が「イトコの兄貴」やら「隣の兄貴」だのと呼ぶ従兄率いる高校生バンド、『なんとかウィザード』の…
Scene269 もしステージを降りちまったら、お前が本気で救えるのは、たったのひとりだけなんだ
「どうだったカミュ。なかなかに盛り上がったろ」逆立てた短い髪を、軽音の後輩部員が手渡したバスタオルで乱雑にゴシゴシ拭きつつ、鈴本タツヤが、へし曲げた唇の端で笑…
Scene268 でも彼女は無理だ。今日のライブには来れないと思う
昨日ね。北口のデパート行ったらさぁ、ものすごく可愛いワンピースがあってね……受話器の向こう、そんな調子で浅倉トモミは嬉しげに喋(しゃべ)りはじめた。けれど、僕…
→ 前回のストーリー舞台めがけて、一直線にピンスポットの眩(まばゆ)い光が照射されると、汗でくすんだ白塗りメイクは、落武者のごとき不気味さばかりを強調した。と…
→ 前回のストーリー一九八四年六月某日吹きわたる湘南の海風。クリーム色した校舎の外壁は、潮の結晶で幾層にもコーティングされ、太陽のきらめきを眩(まばゆ)く弾…
Scene265 好きよりも、ありがとうの言葉だけしか彼には伝えられないわ
→ 前回のストーリー400人近い卒業生らの放つ熱気が、すこぶる天井の高い館内に蔓延(まんえん)していた。全ての窓を分厚い暗幕で閉ざされた体育館。人為的に製造…
→ 前回のストーリーおよそ40分遅れで開演された卒業記念ライブ午後の部。短い黒髪をスプレーで逆立てたアロハスターのベーシスト、鈴本タツヤ率いる即席バンクバン…
Scene263 レッド・アンブレラ&リトル・トゥインクル・スター
→ 前回のストーリーアロハスターのベーシスト、鈴本タツヤ率いる即席バンクバンド。予想をはるかに下回る演奏のひどさが、反って暗がりの観客たちを大いに沸かした。…
あの日、運命に奪われた命の重さと、運命が与えた哀しみの深さ(改)
《哀悼の想いを込めて、昨年公開した作品の内容に一部加筆致しました。》清らかに透き通った真水で喉(のど)の乾きを潤(うるお)し、太陽のもたらす季節の香りを深く吸…
Scene262 テレビなんかじゃ全然伝わらないからですよ。心を震わす音楽の凄さが
→ 前回のストーリー雨の滴(しずく)を霧状に振りまく雲は、澄んだ夜空に吐息のそっと浮かぶよう、繊維が薄っすら柔らかだった。だんだん海が近づくにつれ、相模湾の…
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