今日も屋上は寒かった。それでも、ここが僕等の世界で一番あたたかい場所のような気もする。風が吹いたり、雨が降ったり。雑草が生えたり、壁があったり。それはどこでも…
「シャボン玉、好きなの?」「うん……」僕の質問に答えると、美咲はまたストローを吹いた。5箇所ほど切込みを入れたストローの先から、虹色の液体が徐々に形を作ってい…
校長室からの帰り、読みかけだった本を読んでしまおうと図書室に寄った。それを読み終えた後、私は教室へと向かった。教室の電気は消えていて、誰もいない空間が広がって…
ここは 冷たい鉄と温かい木で出来ている 錆びた色と匂いに背中を押される そんな私を見ているのは数羽の鳥達だけあぁ、またあの人だ。 理奈は、向かい側のホームにい…
あー! 歩きにくいったらありゃしないわ。顔が映りこむほど綺麗に磨いたブーツも、ちょっと歩いただけでドロドロよ。傘は邪魔だし、コートは濡れてきた。手袋はどっ…
「もぅー!初めて本気で好きになったのにー!!」ジュリは、手に持っていたグラスを荒々しくカウンターに置くと、形のよい赤い唇を軽く噛み、今にも泣きそうな表情をした…
小さなダンボールの中に、また1通、飾り気のない封書が増えた。別にコレクションしてるわけじゃないけど、自然と溜まっていくんだからしょうがない。捨て時を逃しただけ…
「どうしたの? これ」エリが、私の右薬指に光るシルバーリングを見て尋ねた。お弁当を食べようと、箸を持ったために目立ったのだろう。「えへへ、かわいいでしょ? リ…
車内はとても暖かかった。うっかり薄着をしてきてしまった私には、いつも以上にそれがありがたく感じられた。「えぇっと……」手にした切符の記号を、つい声に出してしま…
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