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  • 起ちていでよ

    若人(わかうど)よ、起ちて野にいでよ。野には今わか葉のかをり満ち漂ふにあらずや。新装成らんとする林の樹々動くことなくして炎のごとくしきりに躍る。小川に蛙むれ、大空に雲雀くるふ。光やはらかに風はかるし。ああこのみどりの野にそむきて、人くさき衢(ちまた)の息(いき)に蒸され、もろもろの騒音に耳をかすなどは、余りにも心なきわざならずや。友よ、地の果よりの歌をなんぢは聴かずや。永遠を、神を、なんぢは思はず...

  • 信頼

    神に対する我らの信頼は屡々彼によって試みられる。何処まで我らは彼を信頼し、何処から彼を疑ふべき乎。我ら彼を信ずると称しながら、大抵その信頼の極限をもつて居る。或る種の甚だしき問題が起れば遂に神を疑はざるを得なくなるはその証拠である。併しながらほんたうの信頼とはどんなものであらう乎。いはゆる「皮をもて皮に換ふる」までは忍び得るも「骨と肉とを撃たるる」に至ては誼ふのほかなきが如き心が真実の信頼であらう...

  • 患難の感謝

    秋たけて霊感ますます豊かである。一夜月下に靄ふかき武蔵野を歩んで、感恩のおもひ尽くるところを知らず、衣も装も滴るばかりに冷き夜つゆを浴びて帰つた。私の感謝は主として患難の経験にある。私が若し僅少ながらそれらのものに遇はなかつたならば如何(どう)であらう乎。神は涙の谷に於て最も鮮かに御自身を私に顕はしたまうた。イエスは私を誘うて荒野にみちびき、其処にてみこころの深きところを私に語り給うた。私は患難の...

  • 人は家にイエスは山に

    かくて各々己が家に往けり。されどイエスはオリブの山に往けり。――ヨハネ七の五三、八の一――何人の筆ぞ、無雑作なる一抹のスケッチの中に斯くも大なる真理を現はせるは。宮に於ける一日の活劇は終りて、人みな其帰るべき所に帰り往いた。但し各々は己が家に、イエスは独りオリブの山に。誠に彼には枕する所が無かつたのである。併し乍ら此世の家に代へて、彼には静かなる山があつた。オリブの樹蔭、ヱルサレムの街を眼下に望む所、...

  • 彼の信仰的立場 (4)

    偽善なる教会と其信者とに対して絶えず強烈なる反抗の声を挙げ来りし者は自由思想家であった。而して彼は之等の自由思想家に対して深き同情を有する。彼等の正直と勇気とは彼の如何にしても愛せざるを得ざる所である。若し共に偽善なる正統派信者の前に立つならば、彼と自由思想家との之に対する態度は外的にも内的にも殆ど一致するであらう。併しながら其故を以て彼は自由思想家の友となる事が出来ない。偽善に対する感情を均しく...

  • 彼の信仰的立場 (3)

    斯の如く彼の立場は全然聖書本位である。然らば彼は所謂正統派(orthodoxy)に属するものであらうか。若し此語を本来の意味に解釈するならば、彼は確かにその一人であると信ずる。併し乍ら歴史的の意味に於ては、彼は果して此名称を以て呼ばるべき者であるかどうか甚だ疑はしい。少くとも正統派の教会に重んぜらるる神学者教役者若くは平信徒の言説行動等にして彼の共鳴を促すもの極めて乏しきは如何ともすべからざる事実である。...

  • 彼の信仰的立場 (2)

    而して聖書に対する信頼は勿論その全体に対する信頼である。聖書旧新約六十六巻、前後千五百年に亙り、数十人の記者によりて、各々特殊の場所と境遇とに於て記録せられしもの、然るにその目的その精神その主題に於ては首尾一貫、整然として一大有機的組織を成し、全体を以て間然する所なく永遠の真理を伝ふるは、誠に驚歎すべき偉観である。即ち天地の創造より新天地の出現に至るまで、人の救贖と万物の完成とに関する神の経綸は、...

  • 彼の信仰的立場 (1)

    彼は自己に就て語る事を少しも好まない。出来るならばその見苦しさより免れたく思ふ。併しながら兎に角一個の公人として自己の信仰的立場を一応明かにするの必要だけは彼も之を認めて居る。彼の立場を表はすに最も簡単にして且明白なる語を選ぶならば「聖書本位」といふが其れであらう。旧新約聖書を以て彼は己が立つべき唯一の根拠と為すものである。但し彼は決して聖書の権威を外より吹き込まれて何でも之には従はざるべからずと...

  • 真理発見のよろこび (2)

  • 真理発見のよろこび (1)

    ○真理に対する理解と熱情との衰弱は甚だしいかな。今の人は享楽を愛しスポーツを味ひ、経済を解し商売を好む。併し真理の貴ぶべく愛すべきを彼らは知らない。真理といふ声を聞いても、彼らは往年のピラトのやうに、「真理とは何ぞ」と言ひ棄て、ただちに踵をめぐらして去りゆくのである。○ただに世の人々のみではない。基督者とみづから称するものまでがさうである。否、真理に対する彼らの無感覚は却て一層烈しい。彼らに比べては...

  • 祝福の十年

    親しかりし者の詛ひの中に船出したわが小舟よ、きのふの如く鮮やかなるその日も早や十年の昔とはなつた。わが棹は折れ、わが帆は破れた。わが妻は斃(たふ)れ、わが父は倒れた。私自身もまたいたく傷ついて。然れども十年孤独の航海、何ぞ祝福の豊かなりしや。夜な夜な無窮の大空に真理の星を仰ぎのぞむことの何ぞ楽しかりしや。その時永遠の国の光明は私を撃つた。その時私のさかづきは谷間の泉のやうに溢れた。その時私は舟を忘...

  • ペンは一度び手より落ちたり

    読者諸兄姉の同情ある祈のうちに記憶せられし彼女は遂に召されました。彼女なくして本誌はなかつたのであります。「来るべき者の来らん時まで、又はペンが著者の手より落ちん時まで」、とは創刊当時に於ける私の告白でありましたが、今や来るべき者の来らざるに先だちペンは一度び私の手から落ちました。本誌は茲に一先づその職分を終つたものと思はれます。併しながら私の霊は彼女と共に天に移されながら、私の肉はなほ地上に遺さ...

  • 私は言葉の人か

    世には私の文章を何とかいふ人があるとのこと。曾て或る宗教雑誌は私を嘲笑していうた、「藤井さん、徒らに美辞麗句をつらねて人をごまかさうとしても駄目ですよ云々」と。失敬きはまる言分である。併し世間や敵などが何と言はうと、それは先方の勝手である。私は別に問題にはしない。ただ聞き流しにできないのは、友人たちの言である。或る友人は或るとき壇上に私を紹介して言うた、「藤井君の福音は文学的であつて美はしい」と。...

  • 消息

    雑誌が何号を重ねたといひ、何年続いたといふことに、私自身は余り興味をもたない。それは一つには自分の心がいつも今日現在の事に集中してゐるからであらう。併しもつと大きな理由は自分の仕事に対する私の気持にある。目下のところ、『旧約と新約』の著述は私の唯一の事業であるが、私は曾て之を自分の仕事と思ったことはない。私は毎月「今度は是を書け」といふ声を聴いて、さうしてそれを聴いたままに伝へてゐるに過ぎない。さ...

  • 私は何のために書く乎

    私は読者の要求に応ぜんがために書かない。私は読者を慰めんがために書かない。勿論私は読んで貰はんがために書かない。私は書かざるを得ざるが故に書く。書けと神命じたまふが故に書く。真理の故に私は書く。私の書くところは或は読者の心に訴へるであらう、或は全く訴へないであらう。併しそれによって私の書くところは変らないのである。私の言葉は或は人を光明に導くであらう。或は導かないであらう。併しそれによって私の言葉...

  • 日本の現実と理想

    私は日本人である、私は近代人である。而して私は肉に於て近代日本人と共通の多くのものを持て居る。併しながら霊に於て理想に於て、私は自分と彼等との間に殆ど交渉を見いだすことが出来ない。彼等の求むるところは私のねがふところと互に反対の方向に走る。彼等の笛は私を踊らせず、私の歎きは彼等を胸うたしめない。然るにも拘らず、日本は私のあこがれである。私の内にあるキリストの霊は日本をおもふ心をして私を食はしめる。...

  • 新秋

    朝風、膚にひややかに、虫声、野に満ちて雨のふりそそぐがやうである。天の国をおもふ思ひはさらに強い。讃美の心おのづから湧き起る。愛すべきは苦熱の後の新秋である。世の避暑客の知らざる更生的経験である。哲学を好むと称して思索することを知らず、宗教を喜ぶが如くにして信ずることを知らず、金銭を愛し、恋愛を愛し、形式的文化生活を愛し、不義と浅薄とに於ては何れの国民にも譲らざらんとする現代日本国民よ、汝ら人間と...

  • 孤独の必要性

    ○我らに人の面を見て歩けと注意してくれる人がある。その親切を私は感謝する。併し如何せん、私のやうな者にとってそれは無理な注文である。私は人に対しては既に死者である。私の目は人には既に閉ぢられてゐる。今更にこれを見ひらいてまた誰の面を見ようや。乞ふ、徒らに死者を悩ますをやめよ。死者をして生者のお相伴(つきあひ)をさせないで下さい。無益です。藤井はもうそんな世界にはゐないのですから。○「我いま人に喜ばれ...

  • 空し

    ○霊の糧を取らずして肉のパンを食(は)むは空し。○人の顔を見て神のみかほを忘るるは空し。○信ずることなくして口を開くは空し。○環境の整理によって罪を処分せんとするは空し。○朽つべきもののために労するは空し。○表面をつくろふは空し。○新しきを追ふは空し。○愛に報をのぞむは空し。○真理に打算を交ふるは空し。○伝道に数をかぞふるは空し。○映画とラヂオと婦人雑誌と教会とに空しからざる何程のものありや。○コーヘレスいは...

  • 「事畢りぬ」 十字架研究余録

    イエスは十字架上の苦難を味ひ尽したのち、大声にて「事畢(をは)りぬ」と呼ばはつた。それは偉大なる宣言であつた。人類の救贖、宇宙の完成の基礎となるべき「事」は既に畢つたとの意味である。勿論彼の全き服従の功績によつてである。従て彼に信頼する者の生涯は「事畢りし」生涯である。基督者にとつて未解決の問題は一つもない。すべてが定まつて居る。その霊性は完全に潔めらるべく定まつて居る。その身体は復活すべく定まつ...

  • 「ヨハネ黙示録略解(七つの教会)」 ラオデキヤの教会(5) 完

    「勝ちをうる者には、我さきに勝ちを得て我が父と共に、その位に座するが如く、我と共に我が位に座することを許さん」これは驚くべきことである。キリストは、すでに勝ちを得て、大権の右に挙げられ、父なる神と共にみ座に坐しておられるが、やがて再臨の時には、この世に主として臨まれる。そのキリストと共にみ座に坐し、私たちもまた王として世を治めることができるのである。今まで七つの褒賞が各教会にそれぞれ約束されていて...

  • 「ヨハネ黙示録略解(七つの教会)」 ラオデキヤの教会(4)

    「すべて我が愛する者は、我これを責め、これをこらす。このゆえに汝励みて悔改めよ」兄弟姉妹よ、これまで神がなぜあなたをこらしめられるかを、よく考えて見よ。どうにかして、あなたにほんものを握らせたいばかりに、神はあなたをこらしめられるのである。そこで悔改めるためには、励むことが必要である。この神の愛のご配慮を思って、励んで悔改めなければならない。「見よ、我戸の外に立ってたたく。もし我が声を聞きて戸を開...

  • 「ヨハネ黙示録略解(七つの教会)」 ラオデキヤの教会(3)

    「なんじら自ら我は富み、かつ豊かになり、乏しき所なしと称えて、実は悩めるもの、憐むべき者、また貧しく、盲、はだかなるを知らざれば」自ら欺かれていることを知らないのである。自分は大変に恵まれていると思っているが、その実自分ほどあわれなものはないのである。貧しく、信仰が欠乏しているのである。愛なく、知恵すなわち霊魂をとらえる知恵に欠乏しているのである。また、盲人であり、盲人とは愛がないからである。信者...

  • 「ヨハネ黙示録略解(七つの教会)」 ラオデキヤの教会(2)

    「いわく。われ汝が冷かにも熱くもあらざることを、汝の行為によりて知れり。我汝が冷かなるか、あるいは熱からんことを願う。汝すでにぬるくして、冷かにもあらず、熱くもあらず、このゆえに我なんじを我が口より吐き出さんとす」これはお互いにしばしば味わうところである。兄弟姉妹たちも味わってみよ。また説教で聞いたこともあろう。しかし、今一度このみ言を深く心にとめなさい。前にも言ったように熱い泉と冷たい泉とあった...

  • 「ヨハネ黙示録略解(七つの教会)」 ラオデキヤの教会(1)

    最後に出て来るのは、ラオデキヤの教会である。「ラオデキヤ」とは、「民を悦ばす」との意味の言である。言いかえれば、人のご機嫌を取ることである。ラオデキヤの教会は、時代的にいえば、現今の教会であるが、現今の教会は堕落して、昔のニコライ宗とは、全く反対で、民主的となり、人のご機嫌を取るようになった。教会の主は神、キリスト、聖霊であるべきはずであるのに、ニコライ宗のように伝道者が主になって教権をほしいまま...

  • 「ヨハネ黙示録略解(七つの教会)」 ヒラデルヒヤの教会(4)

    「勝を得る者をば、我神の殿の間の柱となさん。これより再び出ることなし。我また我が神の名と我神の都すなわち、天より我が神のところより降る新しきエルサレムの名および我が新しき名をこれに記さん」柱とするとは、なんと大いなる言であろう。私たちは皆召されて神殿の材料となったのである。隅の首石は、キリスト、基礎は使徒で、私たちは各自その材料である。天井板にされるもの、壁になるもの、床にされるものなどいろいろあ...

  • 「ヨハネ黙示録略解(七つの教会)」 ヒラデルヒヤの教会(3)

    「汝わが忍耐の言を守りしにより、我もまた汝を守りて地に住む人を試みんがために、全世界に臨まんとする試練のときに、これを免れしむべし」神の言を信じるとは、砂糖をなめるようなことではない。ここにある全世界とは、ローマ帝国をいう。ローマの大迫害のときにも、格別の神の守護が加わることをいったのである。またかのエルサレムの滅亡のときにも二〇万からの人々が死んだが、キリスト信者はただの一人も死ななかった。これ...

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