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夢見の箱 http://yaonbilibli.seesaa.net/

純愛系、切ない系の創作小説。全年齢対象なので、BL801好きならどなたでもどうぞ^^

 純愛系、切ない系の創作小説。もう一つの性描写濃い目のサイトとは違い、全年齢対象です。BL801好きならどなたでもどうぞ^^

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2010/07/10

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  • 海の泡沫 7

    少年の長い髪と持ち物を売ってお金を得たおかげで、しばらくは漁師の男の家は食べる物に困らないで済みそうでした。 丸く焼きあがった素朴なパン、野菜のスープに、貝と魚を焼いたもの等——町で買った食料品が加わった料理が、漁師の家の木の食台に上がりました。 漁師の男が作ったそれらは手間をかけない素朴な料理で、贅沢とは言いがたいものでしたが、それでも新しく手に入れた小麦粉や卵、調味料が入った事で、いつもの質素な食事より良いものになっていました。 人間の食物の良し悪しを知らない少年も、何となく食べ物の量や種類が増えた事は分かり、喜んでそれらに噛り付いていました。 し..

  • 13人目の男 後編

    そして今、若い看守は完全に椅子にされている。 囚人の男は、ふいにベッドから立ち上がった。 それは日常の自然な動作だったので、看守は男がトイレに行くか飲み物でも取りに行くのかと、そんな行動を想像して立ち上がった姿に目をやったが、そのどちらも外れていた。 一度立った男は日常の当たり前の事をするような動作で、看守の身体の間に自分の腰を下ろして座り直してしまった。 男の横で肩幅程度に足を開いて座っていた看守の足の間を座椅子に、そして胴部を背もたれにする状態だ。 それは看守の胸をリクライニングシートのように使った、さながら人間椅子のような扱いだっ..

  • 13人目の男 前編

    その男は部屋を訪ねて行っても、嫌な顔も嬉しそうな顔もしない。 部屋と言ってもそこは鍵付きの檻の中だ。 他の地域と比べると比較的自由な規則で管理されている刑務所の独居房。 それが今の男の住処だった。 聞かれてもいないのに、「ここのところ忙しくて来れませんでした」と言い訳しながらその独室に入る。 それに対して特に男の反応はない。 首を扉の方に巡らせて、ちらりと振り返っただけだった。 立場とは逆に敬語になってしまうのは、囚人の男との年齢差のせいか、それとも看守になってまだ日の浅い新人だから..

  • 海の泡沫 6

    気候が悪く漁に出れない朝、漁師の男は干した魚介類や、少年から得た髪と装飾品を荷物に纏めました。 それらを町で売ってお金に換えるつもりなのでした。 そして、男は少し迷いましたが、少年も連れて行くことにしました。 少年が漁師の元にやって来てから数日、その浮世離れした様子を目の当たりにしていた男は、家に一人で留守番をさせておくのも不安に感じるのでした。 男が少年にも持てそうな軽い荷物を渡すと、さっそくそれを嬉しそうに振り回しています。 はしゃぐ少年をいさめながら、男は面倒を見ることに疲れた顔になって町に向かうのでした。 町は港の近..

  • 海の泡沫 5

    少年が漁師の男の元にやって来て、その次の日。 男はさっそく、少年に漁の手伝いをさせるための準備に取りかかりました。 漁師の朝は早く、日が昇って辺りが明るくなる頃に起き出します。 少年は男に起こされて、目をこすりこすり昨夜と同じ質素な食事をとりました。 漁の仕事を教える前の下準備に、少年の長すぎる髪は邪魔になりますから、男はうなじの長さで短く切り揃えてやりました。 少年が着ている服も、あまりに継ぎ接ぎだらけの粗末なものだったので、漁師の男が子供時代に着ていたお古に着替えさせます。 男のすることに大人しく従っていた少年でしたが、散髪..

  • 海の泡沫 4

    見知らぬ少年がずっと自分の後をつけて来るので、漁師の男は困惑していました。 男は海の近くの小さな家に一人で住んでいましたが、そこに帰る間も少年はにこにこ笑ってついて来るのです。 どこかに行くように言っても、言葉の分からない少年にはいっこうに通じません。 男はもう相手をするのも嫌になって、漁の道具を仕舞い終わるとさっさと自分の家に入って戸を閉めてしまいました。 少年はその様子をきょとんと眺めていましたが、自分も男が入っていった建物に入れてもらいたくてその戸に近付いていきました。 そして、木でできた戸を小さな音でトントン、トントンと叩きます..

  • 海の泡沫 3

    落ち行く日の橙色の世界の中で、人魚は途方に暮れていました。 海ではいつも仲間たちに囲まれていた人魚でしたが、地上では何の頼りも探す当ても無いのです。 ぐるぐると砂浜を回って、その慣れない人間の足は棒のように重くなっていました。 疲労に歩くことも辛くなった人魚は、砂浜の上に座り込んでぼーっと海を眺めておりました。 漁師の男が見つからないとなるとこれからどうしたらいいのだろうと、いつもは明るい人魚の心は沈んでいくばかりなのでした。 気持ちと同じように薄暗くなっていく海を人魚が虚ろにぼんやりと眺めていますと、海面のある地点に影を見つけました..

  • 海の泡沫 2

    人魚が陸の世界に上がることを伝えると、明るく純真な人魚は海の住民たちに好かれていましたから、それは大層悲しまれました。 それでも、海の仲間たちは人魚のためにそれぞれ別れの品を用意して、温かく見送ることにしようと話し合いました。 魚たちは群れで情報を集めて、漁師の男の船が見かけられる陸の方向を調べてきました。 人魚は長い銀髪をふわふわと身に纏わせているだけでしたので、人魚の仲間たちは周辺の海を泳ぎ回って、船の帆の破れた端っこや人間が捨てた布切れなどの漂流物を拾い集めます。 そして、それらを縫い合せると、人間の服のように似せて継ぎ接ぎの衣..

  • 海の泡沫 1

    若き人魚は、今日も海面から首を伸ばして、青い瞳できょろきょろと周囲を見渡していました。 少し前に自分を助けてくれた船と、その持ち主である人間の男をずっと探し続けているのでした。 自分が網に捕まって苦しんでいた地点を毎日うろうろと泳いでいましたが、やはり海は広大なのです。 あの人間の小さな漁船と人魚が、また巡り合うことは大変に困難なことでした。 人魚は好奇心旺盛な性格をしていましたので、人間とその乗り物のことをもっと知りたくて興味津々なのでした。 そもそも網に絡まってしまったのも、住み慣れた海の世界にない変わった物だと触っているうち、鱗がかか..

  • 海の泡沫 プロローグ

    貧しい漁師の男は、網を引き上げるとその顔を曇らせました。 男は数日前、漁の網を海に仕掛けておいたのですが、今日確認してみると重い手応えがあったのでさぞや大漁であろうと期待していたのです。 しかし、重さに苦労してようやっと海から網を引き上げたものの、その中に男の生活の糧となる魚は一匹も獲れていませんでした。 その代わりに何とも不思議な——上が人、下が魚の尾という腰から半身ずつが繋がった、見たこともない珍しい生き物が網に絡まっていたのでした。 それは、まだあどけなさの残る小さな顔をしていて、その青い海の瞳は怯えたように引き上げられた..

  • 人を飼う 七日目

    僕は学校の部活や委員等は何も入っていないので、通常であれば6限の授業が終わったら、ただのんびり家まで帰るだけである。 大学の進路ももう決まっているから、本屋で暇を潰したり、何を買うでもなく友人達と街をぶらつく。そんな呑気な身分だった。 だが、最近の僕のスケジュールは少々忙しいものになっている。 学校が終わると、急いで繁華街のファーストフード店へアルバイトに向かう。 このアルバイトは、時給は安いけど消費期限の過ぎた食品がもらえるし、店のスタッフもみな良い人達なので気に入っている。 ほんの数日前に、ミミちゃんの食費や病院代の足しに始めた事だった。 ..

  • 人を飼う 六日目

    今日は、ミミちゃんを病院に連れて行った。 獣医さんのアドバイスのおかげで、フードもちゃんと食べるようになったミミちゃんは、体重を測定してもらったところ少し増えていた。 まだ痩せ気味だけど、その他は病気等の問題もなく健康であると獣医さんに診断してもらい、僕はひとまず安心する事ができた。 診察の時も予防注射の時も、ミミちゃんは本当に大人しかった。 診察を嫌がって暴れる他のペット達を尻目に、怯えてじっとしているだけかもしれないけど、この子はけっこう賢い子なんじゃないだろうかと思ってしまう。 待合室で会った鳥型のペットを連れたおばあさんの飼い主さんにも、「..

  • 人を飼う 三日目

    ミミちゃんをソファから持ち上げる。 その途端、怯えたように身を竦ませるのを宥めるように抱きかかえてダイニングへ。 ミミちゃんの身体には大きな椅子とテーブルだけど、座らせて目の前にフードを準備する。 昨日とは、反応が違った。 髪の隙間からキョロキョロと大きな瞳が、準備されたフードと僕の方を行き来する。 こちらの顔色を伺っているような姿に、「食べていいよ。これ、ミミちゃんのごはんだよ」と優しく促してやる。 やはり、昨日も禄に食べていないし、お腹が空いていたのだろう。 恐る恐るといった様子で一口。その後は、勢い良く食べ始めてくれた。 ..

  • 人を飼う 二日目

    人間の名前は「ミミ」とつけた。 無愛想で痩せっぽちな貧相な人間だが、長めの髪を上げてみると白くて丸っこい耳が覗く。 その部分に少しだけ愛嬌を感じて思いついた名前だった。単純だとは思うけど。 以前、飼っていた子がミイ、ミウだったし(二頭の頭分の名前だ)、前の子達のように仲良くなれたらという希望も込めて、一字違いの名前にした。 でも、残念ながら仲良くなるのは、まだまだ時間が掛かりそうだ。 やはりまだ、この家にも僕にも慣れない。 ミミちゃんは水を少し飲んだだけで餌には手をつけず、小さく丸まって僕の動向を伺うように見ているばかりだ。 少しも鳴..

  • 人を飼う 一日目

    そもそも店に寄った理由は、ショーウィンドウから見えたペットが昔飼っていたやつに似ていた為だった。 人間なんかに、用も興味も無かった。 四足で双頭、それぞれの頭から氷と炎を吐く。勿論それは外敵に対しての攻撃であり、主人には忠実な番犬として、この世界では人気のペットだ。 昔飼っていたその種のペットを失くして、もう飼う事は止めようと思っていたのだから。 ただ、懐かしい気持ちで店に入ってしまっただけだったのだが、飼い手がつきそうも無い哀れなそいつが目に留まってしまった。 「最悪の場合は処分されるかもしれない」という、店員の一言に情け心が出たばかりに、とん..

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