運転

前回のパリ滞在時に、K君はひどく貧しく暮らしていましたが、それは親のためでした。 無理をかさねて生活を切り詰め、父親の借金を肩代わりして...

飽きたのかも

久代はK君を好きです。 恋愛感情はなくても愛情はあると思っています。 でも物足りないのです。飽きたのかもしれません。 ...

月の砂漠

K君は立ち上がってキッチンのほうへ行きました。 コーヒーの支度をする音がしました。 彼はフランスの伝統的なコーヒーポットを...

ダメなりに

久代が有能な主婦でないのは事実です。 何年パリで暮らしても、フランス語も相変わらず不自由なままです。 新聞も読まず...

母のように

動物的な強さでは祖母に負けても、母は懐の深い、愛情豊かな人でした。横暴な父にたいしてもはがゆいくらい従順でした。いろんな人が相談事をかかえて母のところに来...

ダメ人間

考えてみれば結婚して以来「ダメだ、ダメだ」と言われつづけた気がします。 いや、子供時代からそうでした。この子は意志が弱いに始まって、努力...

本気で・・・

K君は母親を知らずに育った人です。 病気だった母親とは3歳で死別。顔の記憶はないけれど、母親のヒザに抱かれたときの背中に感じた感触だけが...

疲れ

週に一度の木曜日が積み重ねられ、体を触れあうことにも慣れ、季節が冬から春へと移行する時期になって・・・・。 時間的にはじゅうぶん寝たのに...

ピアス

「ピアスに興味あるんだけど・・・・でも私は・・・・」 そのくらいのフランス語なら会話に問題はないのですが、プレッシャーめいたものに押され...

気持ちがうごいて

このころ久代はピアスの穴をあけました。 若い頃から肩こりがあり、首や肩に負担のかかるネックレスは、どんなに綺麗でも、つける気にはなれませ...

守られて

久代が恐れたのは、この関係が外部にもれることでした。 ちょっとした断片でもパリの狭い日本人社会に広まれば、尾ひれがついて拡大され、何を言...

画策

週に一度の「空白の時間」を作り出すのは大変でした。 主婦の生活感覚からすれば、何もしない架空の時間、いわば存在しない時間。この日のために...

週に一度

週に一度。久代はK君のための時間を作るようになりました。 木曜日が「K君のため」の時間。 自分自身のためであれば、...

反応

夫には不評でした。 「なんで化粧なんかするの？何もしないほうがいいよ。自然のままのほうがずっといいよ」 夫は結婚当初から、...

化粧で・・

この日から、久代はていねいに化粧するようになりました。 K君のために綺麗になりたいのはもちろんですが、久代はエネルギーを必要としていたの...