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  • 【2830冊目】マーク・オーエンス&ディーリア・オーエンス『カラハリが呼んでいる』

    カラハリが呼んでいる (ハヤカワ文庫NF) 作者:マーク オーエンズ,ディーリア オーエンズ 早川書房 Amazon 本書は、先日読んだ『ザリガニの鳴くところ』の著者ディーリア・オーエンスが、夫のマークとともに若き日々を過ごした7年間の記録です。その舞台は、アフリカはボツワナ、カラハリ砂漠。「バックパック二個、寝袋二つ、携帯テント一つ、小さな調理器具一式、カメラ一台、着替えを一揃いづつと六千ドル」が全財産の貧乏フィールドワークの日々が、みずみずしくも細密に綴られています。 そこにいたのは、まだ人間を怖がることを知らない、1970年代のカラハリ砂漠の動物たち。特にライオンとの交流には驚きました。…

  • 【2829冊目】松田行正『眼の冒険』

    眼の冒険 ――デザインの道具箱 (ちくま文庫) 作者:松田 行正 筑摩書房 Amazon 直線、面、形、文字。 ありとあらゆる視覚情報をこきまぜて、「見えること」と「見ること」の間隙を突く一冊です。 ★★★ まずは「相似」の話から。 雑誌『遊』で展開された「似たもの同士カタログ」を紹介し、モンドリアンのアートとコンピューターの集積回路と曼荼羅図を重ねるのは、まだ序の口です。 相似は、文化や歴史でも重要です。 たとえば、縦ストライプの服。 日本でも西洋でも、当初は身分の低い者しか着用できませんでしたが、後に斬新なデザインとして人気となり、アメリカやフランスの国旗デザインにまでつながりました。 あ…

  • 【2828冊目】アンソニー・ホロヴィッツ『ヨルガオ殺人事件』

    ヨルガオ殺人事件 上 (創元推理文庫) 作者:アンソニー・ホロヴィッツ 東京創元社 Amazon ヨルガオ殺人事件 下 〈カササギ殺人事件〉シリーズ (創元推理文庫) 作者:アンソニー・ホロヴィッツ 東京創元社 Amazon 前作『カササギ殺人事件』では、前代未聞の「入れ子状ミステリ」に驚愕しました。 ミステリの中にもうひとつのミステリを仕込むなんて、こんな仕掛けが可能であること自体が驚異でしたが、だったらこの『ヨルガオ殺人事件』は、どう評すればよいのでしょうか。 なにしろ本作は二度目の「入れ子状ミステリ」であって、しかも前作を上回る(と私は感じた)面白さなのです。 ★★★ メインの登場人物は…

  • 【2827冊目】泡坂妻夫『しあわせの書 迷探偵ヨギ ガンジーの心霊術』

    しあわせの書―迷探偵ヨギガンジーの心霊術 (新潮文庫) 作者:妻夫, 泡坂 新潮社 Amazon 著者は推理小説家にしてマジシャンとして知られる作家ですが、本書はどちらかというと「マジシャン」としての手際があざやかな一冊です。 推理小説の中には、トリックのために物語が作られているものも少なくありませんが、それにしても、それをここまで徹底した本はめずらしいと思います。 実際、正直言って、物語としてはそれほどぱっとしない印象でした。 にもかかわらず、多分この本のことを忘れることはないでしょう。 これは、そういう本なのです。 これ以上はどうやって書いてもネタバレになってしまうので、今日はこのへんで。…

  • 【2826冊目】ディーリア・オーエンス『ザリガニの鳴くところ』

    ザリガニの鳴くところ 作者:ディーリア・オーエンズ 早川書房 Amazon 世界中で1000万部以上売れたという本書は、なんと70歳の動物学者が書いた初めての小説だそうです。 でも、それも読んで納得。 確かにこれは、動物学者でなければ書けない小説です。 ★★★ 本書はディテールが際立っています。 沼地の自然の描写の美しさに、カイアの研究する沼地の生物のありよう。 随所に、動物学者としての目が活きています。 そんな「沼地」の包み込むような存在感があってこそ、この物語は光り輝いているのでしょう。 ★★★ 物語はなんとも切なく、痛ましく、それでいて、とても美しいものでした。 一方でチェイスという青…

  • 【2825冊目】吉村萬壱『ボラード病』

    ボラード病 (文春文庫) 作者:吉村萬壱 文藝春秋 Amazon 村田沙耶香『地球星人』を紹介した際、ある人からオススメいただいた一冊。やっと読めました。 『地球星人』を受けてのリコメンドという時点で、相当ヤバいことが想像されるわけですが、 読んでみたら予想以上のヤバさ。 『地球星人』ほどの破壊力はありませんが、じわじわとこちらの精神を蝕んでいくような小説です。 海塚市という架空の町が舞台。一人の少女の視点で綴られています。 この少女自体もいろんな意味で生きにくさを抱えていて、妄想癖があったり、母との関係もだいぶ病んでいたりするのですが、 読んでいくとそれよりも、舞台の海塚市自体の気持ち悪さが…

  • 【2824冊目】國分功一郎『中動態の世界』

    中動態の世界 意志と責任の考古学 (シリーズ ケアをひらく) 作者:國分功一郎 医学書院 Amazon ケアをめぐる良書を量産されておられる「シリーズ ケアをひらく」の一冊です。とはいえ、内容はかなりガチの思想書、あるいは思想史に近いものになっています。登場する名前も、アリストテレス、バンヴェニスト、デリダ、ハイデッガー、ドゥルーズ、ハンナ・アレント、そしてスピノザと、名前を見るだけで恐れ入ってしまうようなメンツがずらりと並んでいます。にもかかかわらず、本書に書かれている内容は、ケアの現場にも深く関係するものです。そのことがよくわかるのが、冒頭に出てくる「ある対話」です。おそらく依存症と思わ…

  • 【2823冊目】小山聡子『もののけの日本史』

    もののけの日本史-死霊、幽霊、妖怪の1000年 (中公新書) 作者:小山 聡子 中央公論新社 Amazon もののけ(本文中では「モノノケ」)と言えば、多くの人が思い出すのは映画『もののけ姫』でしょう。 でも、そもそも「モノノケ」ってなんなんでしょうか。 この世の栄華を極めた藤原道長が、モノノケを恐れるがあまり錯乱状態になっていた。 本書は、そんな話から始まります。 それくらい、当時のモノノケは、人に病気や死をもたらす、リアルに恐ろしい存在でした。 かつて「モノノケ」は「物気」と書かれていたそうです。 「物」とは今でいう物体のことではなく、「神を成す元、あるいはその力」を意味していました。 一…

  • 【2822冊目】遠藤周作『海と毒薬』

    海と毒薬(新潮文庫)作者:遠藤周作新潮社Amazon 戦時中に起きた米軍捕虜の生体解剖実験を扱った、遠藤周作の代表作のひとつです。本書に出てくる人々はみな、どこか不気味です。生体解剖というとんでもないことをしようとしているのに、全員が「なんとなく流されて」その行為に参加する。色恋や出世欲が複雑に絡んでいるものの、それを超える「倫理」は、ついに登場することはありません。著者は、そうした姿を典型的な日本人像として描こうとしています。それと明確に対比されているのが、ヒルダというドイツ人女性の描き方でしょう。「病人の恥ずかしさや気づまりに気がつか」ず、「男の子のように大股で病院を歩き」、「ビスケットを…

  • 【2821冊目】宇佐見りん『かか』

    かか (河出文庫) 作者:宇佐見りん 河出書房新社 Amazon 『推し、燃ゆ』が芥川賞となった宇佐見りんさんのデビュー作です。 そういえば最近、最新作も出ましたね。 この現代日本で、新刊がこんなに話題になる作家なんて、他には村上春樹くらいなのではないでしょうか。 さて、本書ですが、 19歳で書かれたとは信じられないほど、すでに独自の世界というか、空気感をもっています。 まず、全体が、「おまい」(お前)に向けた語りかけからなっています。 『推し、燃ゆ』の畳みかけるような怒濤の一人語りとは違う、ゆったりとして落ち着いたテンポですが、 それでもやはり、読み手を巻き込んでいくような独特のパワーがあり…

  • 再開に向けた口上、というか言い訳

    ええと、3ヶ月ぶりくらいでしょうか。久々に、再開したいと思います。3ヶ月間、何をしていたかと言いますと、インスタに走ってみたり、ツイッターの読書垢を作ってみたり、読書メーターをいじってみたり、noteに手を出してみたり、まあとにかくあれこれ試していました。で、その中でいくつか手応えのある試みができたので、「主戦場」であるコチラで実践してみようかと思ったワケです。よく言えば、充電期間ということになるでしょうか。思えばこの読書ノート、前からお読みいただいている方はご存じのとおり、しょっちゅう中断しています。でも、最近思うのですが、頻繁に中断しているからこそ、こんなに長く続いている、ということもあり…

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