私はいつもの集いに行くようになってから、何人もの認知症の方と知り合いになった。 私のそれ以前の認知症についての認識は、極めて貧弱だった。 「物覚えが悪くなる」「記憶が抜け落ちる」といったことは知っていたが、それ以外のことはあまり知らなかった。 私が文字や伝聞で知った認知症の症状は、その概要でしかなかった。 実際に接してみて初めて知るという事柄はいくつもあった。 その中で最も大きな点は「認知症の人は、その病識がゼロである」ということである。 これは私がまるで想定していないことだった。 「あらゆる病気には、当人には病識がある」というのが私の認識だった。 病気になる⇒当人は辛い⇒当然病識はある⇒辛い…