第三話泥棒村つけ火の捕縛に活躍した、三之丞と田島牛乃進の親交が深まり、その一年後の元禄三年同じ師走のことであった。三之丞は鍵屋長屋東北角の厠を使い、露地右に折れて井戸に向かう。長屋の木戸の方角から、小男が,師走の寒い風を避けるように、北西の奥に向かっていくのを見ていた。三月ほど前にも確か、あの男は大圓寺の裏門、北西角の家にきたような気がする。竹のぶらしで歯をすすぐと、ゆっくと木戸入口右側の自宅へと向かう。北の方角から、強い風が吹き長屋の路地に土埃が舞う。「おいとさん。これはお頭からの、例のものでござんすよ。まあ村内でも試してみましたが・・なかなか使う量が難しい。簡単に、誰かに試すわけにもいかないからね。私も少しやってみたんですがね・・意識が朦朧として、そのまま寝込ンじめえましたよ。若い筏師の連中は、うなり...全文掲載江戸元禄人模様寺子屋師匠菊池三之亟事件控え第三話火つけ・・前篇