裏返しの人生

何をやってもダメなときってのがあるものだ。最近の僕がそれだ。何をやってもうまくいったためしがない。これまでの僕の人生は、六大学でも上位に位置する有名私立大学に一発合格。大手銀行にすんなりと就職。本社勤務であれよあれよと出世。主任、係長、課

日曜日に続く道

1.「なんだって?」リビングのソファに座って野球のTV中継に見入っていた高見俊介は、妻の言葉が聞こえなかったため、台所で洗いものをする妻の方に振り向いて言った。「今度の日曜日」妻の百合子は少し大きな声で言った。「日曜日?」「今度の日曜日は、

Body&Soul

1. 社員旅行の案内が掲示板に貼り出された。去年は伊勢で、あまりにも近すぎて面白くないと殆どの社員は愚痴まみれだったが、今年も伊豆だというので、掲出早々早くも社内は実行委員に対しての陰口に塗れた。名古屋本社の社員は全部で10名。隣の岐阜支

Sweet Rain

雨が嫌いだった。子供の頃は、朝起きて雨が降っているとおなかが痛いといって学校を休んだ。学校を出るときに雨が降っていると、帰りたくなくて体育館の大きな屋根の下でずっと雨のやむのを待っていた。大学受験の日は冷たい雨が降っていた。私は父親に会場

Love For Sale

「なんでそんなに飲むのよ」ってケイコはいつも聞くが、そんなことペンキ屋に向かって、なんで壁を塗っているんですか、と聞くようなものだ。答えようがない。そこに壁があるからだ、とでも言えばいいのか。そこに酒が置いてあるのがいけないのだと。酒を飲