実は私はあまり料理が得意ではありません。いえ、無能を自称しているだけはあって、そもそも大体が不出来ですが特に味見という行為が苦手過ぎてダメなのですよね。調理中は私の猫舌っぷりがしょちゅう邪魔しますし、そもそも味を他の人より薄く感じちゃってる...
長く寝たきりになっていた少女がある日、起き上がった。 それは、とても奇跡的なことである。 それだけで誰もかもが幸せになる、それはそんなに素敵なことだったのだ。 だがしかし、当の本人である寝たきりであった今は健康そのものである少女、金沢真弓は
星の光一つさえあれば、綺麗は決して闇の中に沈まない。長き髪は散り散りに光を反射し、白く淡色の頬は黒と正対して艶を見せる。 そんな風にして日田アヤメは月光浴びて輝かんばかりに見目を夜に晒しながら、しかし心からの苛立ちに歪ませて吐き捨てるように
永劫の幽霊、不滅の一枚レイヤ。木ノ下紫陽花は、実のところそのように定義された存在である。 何より静物に似た映像。しかし彼女は幽かにも終わった形であったとしても世界に触れた。だからこその、幽霊。そんな稀など、当然この世に一つきりだった。 だが
木ノ下紫陽花という少女は、お化けとして足りないところばかりだった。 尖っていないし、醜くないし、血も溢れていない。むしろ整ったそのままで、ずぶ濡れていた。幽霊、とはいえそれはあまりに人間的だ。 『寒いなあ……』 毎年白磁の肌に白雪が積もって
たとえ二人の心に隙間がなかろうが、物理的な距離が大いに空いているとその関係に影響する場合があった。 人は、基本的には触れ合い擦れ合いに心温めるものであって、それを失すると仄かな程度の愛では心燃し続けるのは存外難しい。 世の恋愛ごとが遠距離に
火膳ふようの父、火膳有樹は昨今管理職という仕事に振り回され続けているサラリーマンである。でっぷりした体格に反して嫌に清潔でこざっぱりとした印象の、しかしどこにでもいるような男性だ。 彼は残業を含めて帰りは遅く、またそもそも彼にとって家は寝起
既に壊れていて、もうすぐ亡くなってしまうことが決まっている、そんな生き物を存分に可愛がるのはどうすればいいのか、そんなこと頭でっかちなふようでなくても悩むことだろう。 透けて見えるほどに薄命。でも、少女はずっと笑顔のままで。 きっと、そんな
愛とは、連綿と親から子に伝えられるべき概念である。温かさ、優しさなどがそこから生まれるものであるとするならば、それは最早生きるに要るものとすら言えた。 けれども、人というものが不定の生き物であるのであれば、外的要因などで失伝という悲しいこと
樋口三咲は、お姉ちゃんである。そして、それ以外には特に特徴的がない人間だと、三咲本人は思っていた。 「ユイ! ダメでしょ、勝手にハサミで遊んじゃ! もし手を切っちゃったら危ないんだからねっ」 「うー……」 「うー、じゃないの。ごめんなさいで
第X話 のーまるえんど/END OF THE PROLOGUE
『もし、世界が終わってしまうとしたら、あなたはどうする?』 その問いかけに、意味はない。だから、あなたが答える必要なんて、なかった。 それは終わりの前の一瞬の残影。電源を切った後の画面に残った僅かな眩さ、その感覚。 記憶にも残らない、しこり
水野葵は奇跡そのものである。そして、奇跡に選ばれてしまった者でもあった。 甘ったるい、チョコレートの見目。淡く細かいレイヤ。全てが愛されるばかりの必然。葵はそんな麗しさを纏った乙女。 そんな葵はしかし、どうしようもなく簡素な内面をしていた。
あたしにとって、月野椿という女の子は、憧れに近いものであったのかもしれない。 とても綺麗でお金持ちで健康で、そして何より色々大っきい。とても高いところから、彼女はあたしを見下ろしていたのだ。 人を踏んづけて、幸せになる。対象があたしであるこ
「はぁ……」 砂時計は逆さにすれば再び動き出すけれど、零れた水は戻らない。そんなこんなを、時間と共にぽろぽろ落ちてく命を参考に改めて理解しながら、あたしは秋晴れの下に曇った心を抱えて歩く。 指先一つ動かすのもおっくうな身体を、未だ死体でない
柔らかに、風が草を撫でる音がする。そして、そんな音色を気にも留めずに歩を進めるざわめきも。そこで、遅ればせながらあたしは気配を察する。 あたしたちの会話の隣で人が居た。そのことに、今更気付いてあたしはそちらへと振り向く。 エノコログサの傾ぎ
【グラブル】一人でグランブルーファンタジーフェス2023に向かった感想など【ぼっちフェス】
グラブルフェス2023に一人で向かったその感想と、こういう注意があるよ、といった程度のレポートです。 グラブルの展示で楽しかった嬉々のおすそ分けであり、拙文ですが皆様が楽しまれるきっかけになれば幸いと思わずにはいられません。
暑気をまだまだ感じる秋の候。でも風は涼しくなってきたなと思いながら、あたしはお昼休みに校庭をぶらぶら。浮けない程度の軽い身で色んなものをのぞき見た。 猫の足跡、忘れられたラインカー、お空を覆ういわし雲。どれもこれもが面白くって、あたしの中に
『この芸人さん、本当に美味しそうに食べるねえ。ボク、彼のこと気に入っちゃった!』 「紫陽花ちゃんって、食べ歩き番組観るの好きだねー」 『そういえば……何時も一緒に観てくれてるけど百合ちゃんはこういうの観ててつまらないとか、そんなことはないの
お庭のなすびがぱんぱんに張ってきた今日この頃。日差しの強さよりも空気の暑さの方が気になる時節に、珍しくもあたしは外出をしていた。 青空には、随分と成長した入道雲が遙か遠くに。何に遮られることもなくぎらぎらと輝く太陽が、あたしを容赦なく攻め立
「そろりそろり……」 『すいすいー』 妹に黙って幽霊を家に入れるという隠し事のために、百合は抜き足差し足忍び足。まとまりきらない薄色の髪の毛がそれに合わせて上下する。 軽いその身をそろりとすれば、床に音など立ちはしない。綿のような総身をつま
「あれ?」 「百合……」 「どこか痛いの、百合ちゃん?」 儚い水の軌跡がぽろぽろと。煌めきながら頬から流れて哀を描く。丸みを伝って落ちた雫は、少女の小さな手のひらの中で弾けて消えた。 そう。百合が久しぶりに椿とふようと共に喫茶店でホットミル
日田百合は酷く身体が弱いが、存外風邪や流行性疾患に罹ることは少ない。 それは普段、なったら下手したら命に響くからと手洗いうがいに衛生方面での頑張りを欠かさない故の結果であるが、とはいえ意外と風邪に悩まされがちの椿辺りにはうらやましがられたり
休日を楽しむことって、あたしにはちょっと難しいことだ。 休みはアヤメと一緒に貯まった洗濯物やら外から始めるお掃除やらの家事に追われることでくたくたになってしまうあたしは、家事以外では本当に空いた時間を身体を休める時間に充てるだけ。 特にどこ
淡色で町を飾った桜散り、緑ざわめく五月の頃。あたしは 西郡《にしこおり》高校からの帰り道をのんびり歩いていた。 ほどほど辛い坂道を、えっちらおっちら。道中高低差のあるこの町を上から下から望んで、あたしは微笑む。 春の装いだった町並みも、夏に
空が綺麗になるのが夜ならば、昼は世界が綺麗になる時間であると、あたしは思う。 燦々と輝く一遍。何時もの光景を普通と人は言うけれど、それでもやっぱり皆が当たり前にあってくれることは嬉しい。 それを、あたしは最近痛いくらいに思い知っているだけ、
愛に肢体は要らない。誰がそんなつまらないことを言い出したのだろう。 心だけでは足りない。あたしは彼女の全てが好きだった。 亜麻色の柔らかなその髪に、チョコレート色の肌がお似合いの、芳しき伽羅の少女。水野葵はそんな女の子だった。 日向にあって
ゲームは主人公のバッドエンドで終わり。でも、残りの世界は終末に至れどもそう簡単には消え去らない。 主人公水野葵に愛された日田百合は、末期に残ったヒロインたちにも愛されるけれどもそもそも彼女に残った時間すら希少。 幽かな程の命で、彼女らはどんな花を咲かせるのだろうか。
「っ、くうっ!」 「はいっ、一夏くん残念ー」 「うわっ!」 どすん、というよりもずどん。そんな音とともに地面に突き刺さり、機械と人で出来た奇妙なオブジェと化した一夏を冷然と見下ろし、ロシアの第三世代ISのカスタム機、ミステリアス・レイディを
IS学園第三アリーナ。遮蔽フィールドによって、存分に戦闘行動を採ることが出来るこの場。逆に言うならば檻の如くに閉じられて空へ向かうこと難しいそんな閉鎖空間にて、大空の自由を体現する一機があった。 旧いそれ――打鉄――は最新の機体の狭間、攻撃
シャルル・デュノア、いいや本名シャルロット・デュノアは、IS学園で送る日常の酷く穏やかなことに、驚いていた。 生徒の大概が朗らかで人当たりが良く、特に同居人でもある一夏は言動にどきどきするところもあるが悪心からほど遠い人柄で、シャルロットは
本人はあまりそう思っていないが、霊夢とて現代っ子の端くれである。むしろ、ISという最先端のマストアイテムに日頃から触れられている彼女の今は、流行りに敏感な女の子達の理想と何ら変わらない。 とはいえ、最新の飛行パワードスーツに対しては造詣が深
クラス対抗戦。本来ならば、専用機持ちの生徒ばかりが注目されるこの大会にて、今回本命と目されている少女は、どこの国にも企業にも専用機を譲り受けて貰っていない一般生徒だった。 その名は博麗霊夢。こと、一年生の間で絶対の最強と噂されているのが、彼
なんだかIS学園は騒がしくてあまりゆっくり出来ないな、と霊夢は思う。 時に理沙が遊びに来たりもするが、我が家たる神社の軒下にて茶を呑みながら年離れた義母や義父と共にのんびりと過ごしていたあの日々が今や懐かしい。 ここでは霊夢は教室は勿論のこ
今再びの第三アリーナ。IS学園一年1組2組の生徒達が固唾を呑んで見つめる中、対峙し浮かんでいるのはただ二つ。 赤を主とした第三世代型ISを纏う凰鈴音は、目の前のありふれた白き第二世代ISを身に着けふよふよとしている霊夢を強く睨みつける。 専
篠ノ之箒にとって、織斑一夏は唯一つの光だった。 それこそ盲目になってしまうほど心の底から想った相手であるし、何なら振られた今でも未だに大好きな男の子でもある。 とんでもなく外見が格好いいところとかはまあ、箒もそこに惹かれている部分も多々ある
博麗霊夢はIS学園の生徒である。そうであるからには制服を着用せずにはいられず、当然露出度の高いISスーツを着込むことだって義務付けられていた。 「水着みたいよね、これ……恥ずかしいわ」 ぴたりと肌に張り付く学校指定の薄一枚。肌触りがやたらと
『日本には満を持して、という言葉もあるようですが……少し、待たせ過ぎではありません?』 『主役は遅れてやってくるっていうだろ? まあ正直に言うと……博麗が 一次移行《ファースト・シフト》も済ませていない機体で戦うのはどうかって言ってさ。少し
セシリア・オルコットは、勤勉である。 授業で持ち帰った学びを都度復習するのは当たり前。暮らしの中、異国の言葉で不明だったところを使い込んだタブレットで自室にて調べることはしょっちゅう。 入部して熟しているテニスの素振りの型を繰り返してみたと
「はぁ。撒くのに苦労するわね。そんなに純和風な私の容姿が珍しいのかしら。もっと珍しい外の人間だってちらほら居るってのに」 今日も今日でゆっくり出来ずにげんなりしながら、霊夢はだだっ広いIS学園を歩む。 それも、半ばファンとなりつつある幾らか
世界は奇跡を失伝した。 神は死に、魑魅魍魎は根絶され、光は単なる明かりで闇はただの暗がりとなる。 昔々のお話は寓話となり、恋ですら分泌物の次第とされた。今や殆どの人はあり得ないを信じない。 神がかるのは科学ばかりで、なら人の望みは即物的にな
博麗霊夢は、現し世にどうしても慣れない。 高校の入学式、周囲にきゃぴきゃぴと萌える若さの中で何とはなしに窮屈な感を覚える。自分もあれらと年は同じであるはずなのに、何かおかしいのだよな、と首をかしげながら。 そして、紫檀の髪に乗っかった、友達
インフィニット・ストラトスと東方Projectのクロスオーバー二次創作作品。 たった一人、IS学園に入学することになった博霊霊夢さん。ハイスピード学園バトルラブコメに付いていく気もない彼女は自分勝手に意見して皆を惹きつけていきます。 きっと彼女のおかげで皆は少しだけ自由になるのでしょう。 ――しかし幻想は楽園は、果たしてどこに?
皐月賞のその日、サイレンススズカはトレーナー、そしてチームの皆に連れられて応援に来ていた。あまりの歓声に一時耳を畳みながら、彼女は彼女を思う。 その応援相手は当然我らがチームスピカにおける新星、スペシャルウィーク。奇しくも同室の、輝かんばか
開始記号はさり気なく。 歓声に紛れた合図。それを敏に察せたのは、誰よりそれを待ち望んでいたからか。 連符の付いた彼女の耳は、響きを感じて全身を発奮させる。 「っ!」 つまり開いたゲートをドンピシャで察した――――。青の空の下、踏み出した彼女
最も速い。それは、多くの競走者が望む称号。心より一番を望むなら、決して避けてはいけない夢。 しかし距離の適性に調子や年齢、そしてウマソウルの加護の度合い等、一律に速さというものを決めるのは中々に難しいことである。 だが、クラシックには最も速
可愛らしいものは、大なり小なり好かれるもの。 だからウマ娘全体が愛らしい見目、整った顔に心をしているのは、きっと偶然ではない。 種族特性ともされる優しさや美しさは、端から彼女らが愛されるべきであると神が丹念に捏ね創ったからではないか。そうま
レースにおいて一位でなければそれは敗北と同義。 手と手を繋いでゴールなんていうお遊戯のようなことは出来ない真剣だからこそ、勝敗には強い意味合いが出るものだ。 とはいえ、別段上位に価値がないという訳でもない。 重賞で十着、そうでなくても八着以
サバイバーズ・ギルト。それは、生き残ってしまったことに関する罪悪感となります。 そして、私は生き残ってしまいました。見知らぬ勇気ある彼ではなく、賢しく逃げ通した私が。 ずっと下を向いていたそんな私が前を向く、これはそういうお話になります。
たとえ彼女が心に鉛のような重みを感じ続けていたとしても、時計は勝手にぐるりと廻る。 今日も銀色目覚まし時計は、毎日欠かさず朝に騒ぐ。起きなさいと、まるで命へと急かすように。 「ん……起きないと」 細く靭やかな指先が優しくボタンを押して、ジリ
話は、少し前から遡る。 それは、彼女がはじめて登校したその朝から。 彼女は見定めるかのように、彼女を見つめていた。 どの学校だろうと転入生というのは話題になりやすいもの。 それがまた、ある種実力主義のトレセン学園での転入生であるならば、尚の
「こりゃあ、ゴルシちゃん大ピンチって奴だぜ……」 その日、ゴールドシップは焦っていた。 それには勿論、来年のカレンダーの日付に星印を付け忘れたことや、マックイーンに対して高カロリーしりとりをけしかけ損ねたことは関係ない。 ましてやさっき、一
「うぅ、ん……」 それは慣れない枕に依るものだろうか、はじめて寮にて寝入ったスペシャルウィークはその夜奇妙な夢を見た。 はじまりは、靄。その深き中から注目すべき光を、少女は見つける。 「あの子……」 スペシャルウィークが発見したのは一人のウ
自分の他のウマ娘すら見かけたことのないくらいの田舎、広大な北海道の片隅にてスペシャルウィークという名を掲げる少女は過ごしていた。 同じ道内といっても、そこは札幌やら富良野やら有名観光地があるような場所でもない。 あるのは、牛と農地と、木々ば
時は、まだ冬休みも終わっていない一月七日の昼過ぎ。 そういえば購買はまだやっていないのだと遅れて気づき、食事を近くのコンビニで買ったパン三つで終えたばかりの若きトレーナーは、しばしトレーナー室(チームを作成していないトレーナー達が共有してい
年を越えたばかりの冬の候。吐息の軌跡が白となり、凍える指先が赤くかじかむそんな日。 痛いくらいの冬を駆け回るのは、子供だけではなかった。 学生であるからには年末年始を遊びに費やす者も多くて正しい。 だが、年始めの休暇をかけっこの練習に当てる
「ふぅ……」 朝、鏡を前に顔を洗う。彼女はあまりこの時間が好きではない。 とはいえ、目麗しいウマ娘という以前に年頃の少女。洗顔は念入りであって当然であり、また個人的な理由で《《マスク》》を常につけている彼女にとって不潔は天敵。 それこそニキ
――――は、関東、引いては東京の摩天楼に馴染んだウマ娘である。 たとえ旅行で色んなひなびたところへ行ったとしても、その土地土地の面白さより結局は自宅マンション周辺のコンビニやデパート、食事処が纏まった利便性の方を大事にしてしまう。 遠くの美
「ふぅ……」 ――――の担当トレーナーである彼は、緊張のあまり細い息を漏らした。だが、それでも全身が強ばるほどに入った力の全ては抜けない。 大人の一員となって少し。仲間と一緒に酒を口にすることだって慣れてきた。最近は、一人麦酒を嗜んでいる今
サイレンススズカにとって、――――というウマ娘は、正直によく分からない子だった。 「ふぅ……」 その優しさ故に酷く厳しい指導を行うチームトレーナーの視線から逃れるように、一人ターフを駆け抜けることを試みていると、その少女が独り走っているのが
生きることは、燃やすことである。そして、死に向かうことでもあるだろう。 また、生まれてから死ぬまで、その間隙が酷く美しければ誰かの記憶に深々と残ることもあった。 それはたとえば活躍した競走馬の魂の形。綺麗に綺麗に彼らの活躍はラッピングされる
その日も、空は高かった。綺麗な青が、白すら含まずひたすらに天を作り上げている。 それこそ人の手には掴めないとひと目で理解できてしまうくらいには、今日の天蓋は遠く澄んで抜けていたのだ。 「ふぅ……」 でも、そんな小利口な理解なんてものを嫌い、
少し暗い雰囲気になりもしたが、主にセイウンスカイと仲良くした一日は――――にとって楽しく過ぎた。 喫茶店の後は公園に移動して、久方ぶりに芝を楽しんだり、二人で花を愛でる。 その際に来年には飛び級してトレセン学園に入るのだと話すニシノフラワー
勝つ、ということは相手を負かすことである。 そして、何度も何度も蹄鉄の下にて踏みにじられた過去を知っている――――は、勝つことでしか認められないものがあることを重々知っている少女は、敗北の悔しさを過ぎるくらいに知ってた。 だから、負けないよ
「はぁ……はぁ……」 走る、走る。――――は、疲労に止まらず、ただひたすらにダートを駆け続けていた。 柔らかい土に、左右に揺れる足首。重心も、次第にぶれてきていた。それでも、前へ。 自分をいじめるとは、このことか。それはまるで、怪我をするた
アメリカ生まれのグラスワンダーというウマ娘にとって、日本というのは絵画の中の世界だった。 遠く、そしてどこか違う知らないところ。美しい、優れた誰かの筆致。 そんな国が大好きな母に寝物語の代わりに聞いた覚えを大切に、グラスワンダーは憧れに次第
――――は、里山遠い、都会に生まれた。 昔から彼女にはブッポウソウの鳴き声よりも、カラスの騒ぎが耳に慣れていて、野良など望めずただ、美しく並んだ木々ばかりを見上げていた。 ぬかるみよりも整地ばかりの周囲にて、しかし、元より彼女はウマの娘。ヒ
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実は私はあまり料理が得意ではありません。いえ、無能を自称しているだけはあって、そもそも大体が不出来ですが特に味見という行為が苦手過ぎてダメなのですよね。調理中は私の猫舌っぷりがしょちゅう邪魔しますし、そもそも味を他の人より薄く感じちゃってる...
私はエッチなことが苦手です。いえ、勿論そういったものが人々の繁殖に必要なことであるからには大いに推奨したいところではあるのですが、個人的にはちょっと恥ずかしすぎました。普段隠している部分を最も大事に、それでいて刺激的にハッスルするなんて、想...
私にはスーパーお金持ちな知り合いがいます。まあ、お金だけでなく殆どありとあらゆるものを保有している男ですが、そいつはでも随分と変わり者であって吝嗇家でもあるのですね。いや、けちというか、自分の目的には全部差し出せても、それ以外のことに無頓着...
私のお隣の埼東ゆきちゃんはポメラニアンのワンちゃんを飼っています。そして、私は一年ほど前から首狩りウサギのミリーちゃんを飼っているのですね。生の人参と採れたてのきゅうりを用いた冷や汁が大好物の、ふわふわ綿あめみたいな改造動物さんです。普通の...
なんだかイザナミだのテュポエウスだので拡張型人間や改造人間や魔法使いみたいなちょっと人間やめてる能力者が多い「錆色の~」シリーズ世界。まあ前世の私が読んでても誰が一番強いんだよ、いや、あんた強そうなのにここで負けるのかよとなっていたのですが...
私はこの世界の大本たるお話をテキスト方式で知っています。右も左も分かっていれば、横断歩道の確認も楽ちんであるのと同じように、私はだからこそ結構危ないこの「錆色の~」シリーズ世界を渡って来れたのでしょう。まあ、実のところは悪のトップをやってる...
この世界には【イザナミ】という組織があります。世間一般には正義の組織とされている、「錆色の~」シリーズ主役の海山宗二君が所属しているとある研究所を母体として発生した団体ですね。名前はあの国生みの【イザナミ】様から採ったのでしょう。随分大仰な...
私はこの世に生じる前、ずっと『ゴミ捨て場』を眺めていた。始められたのは、ミノタウロスの伝説と多少の混合があった私は、迷宮の主としての権能だって僅かに持っていたからのことである。だが、それを続けたのは私の意志だ。おかげで捨てるべき何もかもにだ...
あまり読者様方にこう言うのは自慢をしているようで気恥ずかしいのですが、実際私は前世そこそこの天才でした。一度勉強をすれば殆どを学びきりますし、以前の学びと結びつけるのだって得意な方で、強いて言うならば発展を望むのが少し苦手でしたね。むしろ、...
さて、私はこの世界の大本が読まれるためにあるひとつなぎであることを識っています。ならば、この二次派生的な世界、ひいては私も読まれていると考えるのが自然でしょう。ただどこが最初の切れ目なのか無知な私には分からないので、今日も再びに自己紹介を重...
単純で勧善懲悪な小説の世界にTS転生しちゃった主人公さんが、私全部知ってるよとうそぶきながらなんでか全体複雑にしっとりさせちゃうお話です!ギャグがメインの架空原作に入り込んだ原作ファンが織りなす原作ブレイクぶりをお楽しみ下さいー。
この世には昔『牛の首』という怪談があった。そして、それはもうない。何故なら、その怪談を聞いたもの全てがあまりの恐ろしさに直ぐ死んでしまうからだ。そして、私はそれそのもの。終わりと同義の存在だから、故に終末の今それを物語るために生まれてしまっ...
「……ほろ、ぶ……せ、かぃ」未熟にて生まれた私は、産声よりも先に必死になってこう伝えた。これで死んでしまっても本望だからと目も見えないままに発した私の『予言』は、しかし懸命に私を生かそうとする医療現場の人間たちの騒々しさにかき消されてしまう...
心とは金剛石のように頑なでなくても良い。別段飛沫すら含んだスポンジのように柔く感じたって構うまい。擦り切れて役に立たなくなるまでに使われるそのことにもし、愛があったのなら。蝶とはひどくぶよぶよとした腹を持つ生き物である。綺麗とされる色づきが...
どう読み上げようとも世界は終わる。なら、地平に立ってみようと彼女は決めました。これはどうあっても救われない神なし世の中での、ホラーの後に残った終末にて語られる愛のお話。
「ふぅ……」一人ぼっちには、ため息が似合う。だがキングの私がするようなことではないのに、と思いながらも止められなかったことが少女の疲れの証。本日はレース後の休養に充てられた日。平素はそこそこドライな自身のトレーナーにかけられた、今はまず身体...
硬質な材の廊下に降ろされるは、靴下に包まれた柔らかなつま先。よって特に忍んでおらずとも音も立てることなく彼女は残骸としたばかりの出入り口を背に進む。背負うコウモリの羽根が骨ばかりになっているとはいえ、空を行くことが出来る少女が階段へと伸ばす...
風はどこか冷たさを帯びていながら、日差しは熱そのもの。そんなこの頃の秋の天気のもとに、優駿ばかりがくつわではなく肩を並べて競い合う。炎天に長く伸びすぎたため刈られて整ったばかりの街路樹が風に撫でられざわめいた。良バ場で行われる9月20日、日...
「ウララ……起きて」「うう……――ちゃん。分かったよお……」柔らかで心地よい、ハスキーボイス。それを何時も明日の朝の楽しみにしながら少女は寝て、起きる。ぴこぴことピンクの耳はすぐ近くの彼女の心音をすら探ろうしているかのように動く。やがてここ...
百合は、町田百合ですぅ。ちょっと前までトップアイドルってのを目指してましたぁ。そして、ちょっと前になれたんですねぇ。らくしょー……ってわけじゃなくって結構頑張らなきゃだったのが悔しいですがぁ、でもなんとかなったのは嬉しかったですぅ。これで、...
メモ代わりにチョコザップで何をやったほうがいいか、というものを他ブログを参考に書いたものとのなります。 リンクを辿ってどうか参考ブログ様へと向かってみて下さい!
イクスは光彦の家、白河家の屋根裏に住み着いてる。 いや、以前見た光景を思い出すに、屋根裏にて大量の漫画本の隙間にて過ごしているといった方が正しいのかもしれない。 千の次の単位は、確か万だったよな。きっとそれくらいは漫画の数はあったろうし、何
先生。 それはここ幻想郷の人里において小さな寺子屋などを運営する教師達の呼称としてよく用いられているものだ。 そして、この頃新たに先生と呼ばれるようになったのは、稗田の家お抱えの賢者とされる上白沢慧音。 里の中程に新設された寺子屋にて彼女は
抜けるような蒼穹。自然こそがこの世の美しさのベーシック。だがある日、それはナンバーツーに堕した。 「よくないよねー」 世界に天井があることがつまらないというのは、一般人杉山ゆずだからこそ考えることだろうか。 いや、それとも彼女が天を射抜かん
アリス・マーガトロイドは魔界生まれの少女である。 そのため生まれつき魔法使いである彼女には、本来衣食住に対する意識は希薄であっても良い筈だった。 だが、神綺という魔界の神を手本にした彼女曰く子供達同士の相互扶助により大いに学んだアリスは心に
親知らず後に鼻から口まで空気の流れを感じたならばどうすべきか。 それに対してまずは対応医への相談を自分はお勧めいたします。 その理由、結論に至った流れを羅列しますので、どうか判断の一助にして下さい。
町田百合というのは最低値、いやそれこそマイナスから開始した小さき命である。 実親ならまだしも余所人が愛するには些か地獄的に過ぎていた子。 踏みしだかれるべき最低値、哀れまれるべき地獄の蓋はだがしかし。 『トップアイドルになるですぅ!』 地獄
ウマ娘達がその速さを競うということは、人が薄氷を渡ることと似ているのかもしれないと、彼は思った。 そもそも遅ければ氷の下に堕ちてしまうだろうし、そしてほんのちょっと力を入れすぎただけで氷は脆くも砕け散って足を取られてしまう。 最悪没した先に
前衛的を通り越した狂的。赤の強弱だけでどうして美観を創れたのか見るものが見たら唸ること間違い無しの紅魔館。 今日も今日とて湖の霧に包まれた館の底。地下を居住地として構え、むしろ館をただの日光を遮る蓋と捉えている出不精の魔女は手近に居た悪魔に
百合は、ひゅ、と緊張に喉からよく分からない音が出たことを感じた。 それが唐突に乱入し楽曲を中断させた招かれざる客に向けられた、数多の視線の物理的に迫る程の印象の圧力によるものであるのは、語るまでもない。 沈黙の中知らずぎゅ、っと握ったマイク
幼少の妄想。人を殺めかねない不安。崇め立てるべき神聖。 それらは妖怪、怪人、神等など。彼ら発生が空想信仰に依る者どもは、空から生まれた単一であるからこそ、多くが親愛など知らない。 だからその存在が絶対であろうがなかろうが、殆どを対面のみで済
紅美鈴というよく分からない妖怪は、出自を辿ると神獣へと行き着く。 ドラゴン、龍。大いなる自然の具現で、混沌たる力の根源。少し傾けば善となり、反対に向いてしまえば悪となる。そんな、茫漠とした上澄み。 そこから誕生したのが、紅美鈴という妖怪だっ
夢幻。それは、創造に至らぬ想像。とりとめもない、不確か。 夢は消えるもので、幻だってそれと同じ。だがしかし、強度が違うばかりで、ひょっとしたら現実もそれらと変わらないものではないか。 胡蝶の夢。邯鄲の夢。主体は果たしてゆらゆらと、思考を待っ
蝶よ花よの言葉はあれども、誠に野花の生は辛いもの。 日に灼かれて虫にたかられ、水を蓄えることすら難儀する。そもそも、身を委ねた地に命を預けることすら生半可な生き物であっては出来ないこと。 だが、それでも花は咲く。歪であっても汚れていようが、
「はっ、今日も生きるには丁度いい天気だっ」 独り言つ、晴天に白を混じえた黒き一線。 逃げゆく金の長髪を魔女帽で押さえながら昼に忘れた闇夜を空に描くように飛翔しているのは、魔法使いの少女霧雨魔理沙だった。 彼女は霧雨店のお嬢様を辞めて久しく、
全てに見上げられるためにある輝き。何よりも美しく刺激的な、一つ星の形象。 それを計る数字になど欠片の意味もなく、どこまでも幻想的なその決めつけにこそ価値があった。 曰く、最強。 別段三千世界にて比べあったことすらないというのに、その個体はそ
人において分かりやすい証というものは、名前と立場であるだろう。 こと現世においては名刺にでかでかと書かれた名前と所属により、その人を信頼する場合も往々にしてあった。 しかし、幻想に捨てられた際全て忘却してしまった少女には何も存在せず、故にサ
時を止めてしまえば止めた人だって動けない。 そう、時間を止めてしまえば従属する空間だって凍る。そんな中を泳げる人間なんて果たして存在するのだろうか。 勿論、ただの人がそんなことを可能にするのはきっと難しい。また、粒ごと固定された全てを退かす
その銀の少女が人里に現れたのは、酷く暗ったい夜も更けた頃合いであったようだ。 少女は、幻想郷では珍しくもない木造の家屋の間をきょろきょろと驚きに怯えながら歩いていたらしい。 酔いに酔った、問屋の番頭が赤ら顔で目抜き通りを歩んでいたところ、そ
彼女、〇〇は己が稀なる血の先祖返りであるということは知っていた。 それもそうであるだろう、こんなシルバーブロンドの自毛を生やした日本人なんて、他にはいない。祖父が厳しく話すのを聞くまでもなく、自分が他と違うことくらい分かっていた。 「でも、