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2023/10/13

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  • 第十八話 優しい魔法使いってなんですかい?

    夕日落っこちて、もう夜だ。結構暗いけど、そんなには暗くない。まあ、最低でも蘭を見逃してしまわないくらいには、この新月の夜もそこそこ明かりがあった。オレは結構夜目が利く。これでよく夜な夜な猫の会合に参加しににゃあにゃあ行っていたのだが、一度寝...

  • 第三十五話 私達のエッセンス

    レミリア・スカーレットは、愛によって生まれた。それに間違いはない。基本的に妖怪変化は木の股から生まれた訳ではなく、ただよからぬ噂怪談が転じて具体化したものばかり。コギト・エルゴ・スムではなく人間原理に連なる、あやかし。もっとも神域から堕っこ...

  • 第十九話 私の勝ちね

    混ざり合わない直線の交わりの永遠。チェック模様だらけの夢幻館。単色ばかりなんて許さない多色の綺麗をこそ容れるその器は、似たようなものばかりを秘めるようになっていた。天使の悪魔、メイドの悪魔、花の妖怪。彼女らはまるで、白と黒の組み合わせを言い...

  • 第十二話 魔物

    さて、オレは罪から逃げると決めた。皆を魔法少女にしたってのは、どうしようもないくらい悪いことだ。不可抗力、なんて言葉は救いにならない。オレは最悪死ぬほど酷い目に遭った大勢のために、同じくらいに酷い目に遭うべきだとは思う。「まあ、オレってそん...

  • ワガママなの

    「ふぅ……」灼熱が、己の中で燃える。走る者たちは夏を大体嫌うもの。辛いは耐えられても熱を堪えるのは難しいから、それも当然なのだろう。「いい、感じっ!」だが、そんな当たり前なんて――――のように突飛なウマ娘には関係ない。踏み込みに視界が揺れる...

  • 第十一話 謝罪

    「あむ」何時だって、プラセボは甘いだけ。でも白くて粉っぽいそれをもぐもぐしながらオレは蚊帳の外できゃっきゃうふふを見る。自罰の他所で花は咲くもの。ちょっと両方とも大ぶりで華美な感じがあるが、まあ綺麗所が仲良くしてる。「へー。おっきいゆきちゃ...

  • 番外話② 樋口結

    樋口結は、埼東ゆきの幼馴染みである。そして、ゆきに魔法少女を伝染された最初の被害者でもあり、政府公認の伝染なき魔法少女として俗に言うところの《《魔法少女パンデミック》》を防いだ英雄だった。「わたしなんて、怖いから他の子やっつけてただけなのに...

  • 第三十四話 友情なんて

    青が黒に至る隙間の時間。夕に焼ける黄昏に、赤は存外溶けない。そんなことを、一人博麗霊夢は知る。「趣味の悪い建物」思わず彼女が発したそれは、眼前に鎮座する紅魔館を目撃した大多数の感想の代弁。赤に朱に、紅。建物に塗布するには赫々と燃える炎のよう...

  • 第十話 差異

    色々と悩み尽きない身分であるが、それでも時が経てばさざ波治まるのは自然の理。自分が何だかは正直よく分からないが、それはそれとしてオレは居候をするのだと言い張る家なき娘である【埼東ゆき】をひとまず案内することにした。「ここが書斎だ」「わあっ、...

  • 第九話 自他

    「むぅ……」どうも寝心地が、悪い。オレはそこそこ鬱なので身体に余計な緊張が走りがちでその分疲れやすくはあるが、流石に寝るときくらいはマシだったのに。むしろ、全体に圧すら感じる動けなさがある。おまけになんか暑苦しい。布団の柔らかな拘束とは明ら...

  • 第八話 代入

    この世はプラスの生き物ばかり。何だかんだ互いに文句ばっかつけてるが、どんなものだって結局生み出して、創って壊してそんなのばっかって意外と輝きを帯びた素敵達なのだ。しかし、プラスの反対のマイナスだってひょっとしたらどこかにあるのかもなって、オ...

  • 第七話 犠牲

    魔法とは、過程を乗り越えて道理を欺瞞することで望ましき結果ばかりを得る、願いだ。全ては意思を超えた己に対する祈祷によって顕現する。オレから端を発した力は何時しか魔法と名付けられ、遍く全ての教えに対する反逆だと、宗教を含む様々な学者達から大い...

  • 番外話① マーガレット・モア

    マーガレット・モアはイギリス、コッツウォルズの田舎町に生まれた少女である。湖水地方の丘陵地帯。旧さに止まった村々にて、庭にしばしば現れるウサギやハリネズミを見つける度に笑顔で追い回していた、そんな自然に馴染んだ箱入り娘。大好きな父が撫でるに...

  • 第六話 乗算

    新島の誕生。それは初期の報道では日本近海にて海底火山の活発化、地盤の隆起等の複数の発生要因が奇跡的に重なったことで出来た火山島とされていた。名前の用意もなくひと月の短期で海上に突出したその地は、しばらく紅く燃え続けて範囲を広げた後に黒く治ま...

  • 第五話 母性

    実のところ、子供のオレに科せられた義務などそうはない。サンプルとしての血液の採取の必要と基本的に用意された家から出ないという契約は交わしている。すると、オレが魔法少女の世間への理解と埼東ゆきという少女の価値を認めて貰うために、見識深い教授へ...

  • 第四話 欺瞞

    オレの魔法を求める人は、過去沢山いたのは違いない。死から遠ざけることを得意とするそれを、オレも半ば無秩序に与え続けて、日々の終わりはぐったりしてた時期もあったのだ。だが、まあオレから伝染して魔法を得た少女たちが起こした問題が社会を揺るがして...

  • 第三話 最優

    『いたいのいたいの飛んでいけ』オレが初めて、つまりそれこそこの世界で初めて魔法を使ったのは友達の傷の手当てからだ。それは今思うと酷く単純で効果の弱いもの。膝小僧を擦りむいたお転婆な女の子の膝にいたいのいたいの飛んでいけ、と昔してもらった大人...

  • 第二話 感染

    「ふぅ」子供には広すぎる部屋を出れば、更に空虚なまでに長い廊下。飾り気も人気もなくただ清潔にばかり保たれたそれは決して好みではない。むしろオレには静けさが、最早耳に痛いくらいだ。だが、オレという魔法少女はいっそ辟易する程人から隔離されなけれ...

  • 第一話 夢見

    『……まだ、まだっ』これが夢だと分かるのは、世界の中心が《《オレ》》ではなく彼女であるからだろう。懐かしき高い視点、視界の端に映る大ぶりな身体的特徴。それがひらひらした衣類をまとっているからには、これがオレと違うと判断するのは自然だった。ま...

  • 救えない魔法少女・目次

    <最古の魔法使い>こと転生TS魔法少女埼東ゆきちゃんが、<最強の魔法使い>こと異世界の本来の埼東ゆきさんに出会い、大変に粘着されるお話です。魔法を伝染させた原初の魔法少女と、世界を救えなかった最強の魔法少女が揃った時、世界はどうなるのでしょうか?

  • 第三十三話 友達なんだ

    時知らず向き合う、サンライトイエロー。向日葵とは太陽の花。そんなの多くが自然に持つ認識であるからには、ここ幻想に至ってしまえばその結びつきは尚強まる。「っ」「辛そうね」そう、ただの向日葵の妖精でしかなかった筈の幽香はひたすらに勝ち続けること...

  • 第三十二話 素敵な一日

    氷の妖精チルノにとって、住まう湖の周囲の霧の色が変わろうとも大したことでなかった。自然の権化である多くの妖精は変化を気にするものだが、永遠の氷華である彼女には背景色の変化程度で怖じる心なんてない。故に此度の紅霧異変においても、遊び呆けるため...

  • 第三十一話 背中を一目見て

    空を見れば、ひたすらに青いばかり。明瞭な快晴に曇りなどどこにもない。しかし、地べたのありとあらゆるものが、不可思議な霧の赤さに染まってしまえば、見渡す限りの蒼穹すら大変にくすむ。多くが美しき天辺を見上げることなく、現の異常事態にてんやわんや...

  • 第三十話 私の方がよほど

    上白沢慧音は、この前七つ程度の夜を人里の外で過ごした旅から帰った。孤児達の勉強をみてあげるのだって必要だし、そろそろ寺子屋の完成も近くあるからには、慧音も忙しなさに翻弄される日々を送ることになる。読書を嗜む暇もろくになければ、書き物を続けて...

  • 羽根はなくても

    日差しというものは直線的であっても熱に足りなければどこか柔らかだ。しかし、時期によって極まったそれは痛みすら錯覚させるほど力に満ちていた。「暑いな……」夏の候。これまで若さという振り返ってみればひどく頼りないものを用いてそれを乗り越えてきた...

  • 第二十一話 夢見る少女に優しくされていた

    そのたとえようもなく白く細いたおやかな指には、花弁が一つ摘まれている。濃い青紫色のそれを持つ女神は力任せに躙らず、ただ眺めながらこう溢す。「あの花は、どこまで開けば満開なのかしらね」さあ極まりの上で開いた花は、見る人に緊張感を与える程強かに...

  • 第二十九話 形だけ

    空をふわりふわりの隣で、地べたを一歩一歩。達者な足取りは、しかし永遠に続くものではない。とはいえ、何だか懐かしくすら思える道のりを踏破するのが面白く、上白沢慧音は気づかず汗を額から垂らして石の階段を登り続けていた。「っと」「そういえばけーね...

  • 【PCノベルゲーム】製品版:皆に攻略される百合さんのお話【百合・終末】

    「終末に希望を見つける百合ゲー」である「皆に攻略される百合さんのお話」。その大まかな様子と購入場所の案内としてのページとなります。どうか、何かに感じるものがありましたら一読していただけますと幸いです。

  • 【ゲーム制作】 ティラノスクリプトにおける真エンド作成の一例について【ノベルゲーム】

    ティラノスクリプトを用いているプログラミング初心者にとって厄介な「if文」。それの特にシナリオ分岐に関わる書き方をピックアップしてお伝えしております。この記事がゲーム作成に悩む皆様のお役に立てたら幸いですねー。

  • 走るのが好きだ

    「はぁ……はぁ」走るのが好きだ。そんな想いの発端がウマ娘を走るに賭けさせた。――――という少女も、それは同じ。だからこそ、彼女は走る。「たの、しい!」生きるのは急ぐことではなく、一歩一歩を踏みしめて確かに進むことであるのかもしれない。でも、...

  • 第三十四話 百合は、トップアイドルに

    偶像を前に、妖怪は縮こまる。そんな理想を、しかしカシマレイコのみは信じさせてくれない。何せ、いと麗しき天元とされた美貌は神々しさすら帯びていて、並大抵のアイドルなんかでは並びもしない程の異物。彼女は耳にしただけで死に繋がる冒涜の裏返し。余所...

  • 第二十八話 貴女の友達

    魔たるものは、浮き世と離れているのが当然なのか。ドレスとマント。白と赤。両の中間といったような衣類を纏った天上の造作の女性がその場に浮かんで落ちない。当たり前の重力の遮断。彼女の威を前に、あらゆる力の殆どは無意味なのだろう。思わず頭を垂れて...

  • 【グラブル】また一人でグラブルフェス2024に向かった感想など【ぼっちフェス】

    グラブルフェス2024に一人で向かったその感想と、こういう注意があるよ、といった程度のレポートです。グラブルの展示で楽しかった嬉々のおすそ分けであり、拙文ですが皆様が楽しまれるきっかけになれば幸いと思わずにはいられません。

  • 第二十一話 位置エネルギーは二重丸

    野球は頭を使うものだっていう言葉、私は聞いた覚えがあるわ。別に、それに異論なんてない。伯仲した試合の中で読み合いが大切になることなんてしょっちゅうでしょうし、せっかく各々位置エネルギーも高く掲げている頭を使わないなんて勿体ないもの。当然のよ...

  • 第四十四話

    さて、春夏秋冬の花々が一斉に咲いた、此度の異変は魔梨沙の活躍により終焉した。ただの体当たり。痛み一つない抱擁、優しき愛なんかで墜ちてしまった幽香は照れてしまったのか随分と少女の隣に居辛そうにしていたが、開き直ってからはむしろべったり。「幽香...

  • 第二十七話 私に降って

    人はかすがいを増やすことで安堵する生き物である。友達家族に、上司に部下に好きな相手に嫌いな相手。または先生など。そのような比較対象を近場に置くことで確かに地に足を付けて歩めるのが人間という存在。生半可に切ったところで付いてくる、ありとあらゆ...

  • 【終末百合アドベンチャーゲーム】皆に攻略される百合さんのお話【新・体験版】

    【終末・百合・アドベンチャーゲーム】皆に攻略される百合さんのお話【体験版】のブラウザゲーム版です!イラストなど刷新の上、番外話まで遊べるようになりました!お楽しみ下さいー。

  • 第二十六話 消えずに燃えて

    歴史とは足跡であり、それを失くした者に信頼などそう得られるものではない。そんなのは、上白沢慧音は新しく歴史を始めてからこの方ずっと痛感していたことだ。だからこそ、これからを歩み続けなければならないのだけれども、彼女は凍える今夜を人知れず逃げ...

  • 第二十五話 貴女のために

    妖怪とは、陰陽思想で言うところの陰である。 そして、陽の存在に人間を当てはめるとするならば、幻想郷は果たして外の世界よりも明らかにくっきりと影深い地であるのかもしれなかった。 傷病老死、愛別離苦、怨憎会苦、求不得苦、五蘊盛苦。 四苦八苦に塗

  • 第三十三話 貴女と私は違うから

    人影数多ありながらもすれ違うばかりの、一面。 地べたを通う誰もが互いに意識していないかと思えば避け合うことばかりは皆上手であるから不思議だ。 せかせかした足の動きに、思わずつられそうになる心地を、彼女はスモークガラスの奥からじっと堪える。自

  • 水無月の空に啼いた

    ――――がここのところ空元気でずっといることなんて、エルコンドルパサーは当然気付いていた。 存外彼女は役者であるようだけれども、しかしエルコンドルパサーとて仮面を被る者である。 一枚の奥の少々臆病な内心から覗いてみると――――の笑顔は以前と

  • 第二十四話 幻想にもあり得ては

    竹林の迷いは永遠へと繋がる。露わになったのはそんな詩歌のような幻想の体現。 迷いの竹林の中に佇む永遠亭は古式ゆかしい和風建築の趣であるが、一体それが何時何処の流行りのものであったのかは判然としない。 よくよく見れば灼けず錆びずにその材の真新

  • 十六話 太陽/あなただけを見ていれば間違いないから

    神代小蒔は、空には太陽以外に要らないと言い切れる人である。 月はあまりに冷たい色をしていて、星星は暖を取るにはあまりに微か。 ならば、ついうとうとしてしまいたくなるくらいのお天道様こそ大事に、想い思って愛していた。 「私は――星に願いません

  • 【メモ代わり】チョコザップでするトレーニングについて

    メモ代わりにチョコザップで何をやったほうがいいか、というものを他ブログを参考に書いたものとのなります。 リンクを辿ってどうか参考ブログ様へと向かってみて下さい!

  • 第十七話 親友なんてヤダってなんですかい?

    イクスは光彦の家、白河家の屋根裏に住み着いてる。 いや、以前見た光景を思い出すに、屋根裏にて大量の漫画本の隙間にて過ごしているといった方が正しいのかもしれない。 千の次の単位は、確か万だったよな。きっとそれくらいは漫画の数はあったろうし、何

  • 第二十三話 知識のために

    先生。 それはここ幻想郷の人里において小さな寺子屋などを運営する教師達の呼称としてよく用いられているものだ。 そして、この頃新たに先生と呼ばれるようになったのは、稗田の家お抱えの賢者とされる上白沢慧音。 里の中程に新設された寺子屋にて彼女は

  • 番外話⑥ 恋模様はこうやって

    抜けるような蒼穹。自然こそがこの世の美しさのベーシック。だがある日、それはナンバーツーに堕した。 「よくないよねー」 世界に天井があることがつまらないというのは、一般人杉山ゆずだからこそ考えることだろうか。 いや、それとも彼女が天を射抜かん

  • 第二十二話 私は変わりたい

    アリス・マーガトロイドは魔界生まれの少女である。 そのため生まれつき魔法使いである彼女には、本来衣食住に対する意識は希薄であっても良い筈だった。 だが、神綺という魔界の神を手本にした彼女曰く子供達同士の相互扶助により大いに学んだアリスは心に

  • 親知らず抜歯における上顎洞との交通の発生について

    親知らず後に鼻から口まで空気の流れを感じたならばどうすべきか。 それに対してまずは対応医への相談を自分はお勧めいたします。 その理由、結論に至った流れを羅列しますので、どうか判断の一助にして下さい。

  • 第三十二話 ジゴクノカマノフタ

    町田百合というのは最低値、いやそれこそマイナスから開始した小さき命である。 実親ならまだしも余所人が愛するには些か地獄的に過ぎていた子。 踏みしだかれるべき最低値、哀れまれるべき地獄の蓋はだがしかし。 『トップアイドルになるですぅ!』 地獄

  • こんなに幸せ

    ウマ娘達がその速さを競うということは、人が薄氷を渡ることと似ているのかもしれないと、彼は思った。 そもそも遅ければ氷の下に堕ちてしまうだろうし、そしてほんのちょっと力を入れすぎただけで氷は脆くも砕け散って足を取られてしまう。 最悪没した先に

  • 第二十一話 運命は何一つ

    前衛的を通り越した狂的。赤の強弱だけでどうして美観を創れたのか見るものが見たら唸ること間違い無しの紅魔館。 今日も今日とて湖の霧に包まれた館の底。地下を居住地として構え、むしろ館をただの日光を遮る蓋と捉えている出不精の魔女は手近に居た悪魔に

  • 第三十一話 マイナス

    百合は、ひゅ、と緊張に喉からよく分からない音が出たことを感じた。 それが唐突に乱入し楽曲を中断させた招かれざる客に向けられた、数多の視線の物理的に迫る程の印象の圧力によるものであるのは、語るまでもない。 沈黙の中知らずぎゅ、っと握ったマイク

  • 第十八話 家庭訪問

    幼少の妄想。人を殺めかねない不安。崇め立てるべき神聖。 それらは妖怪、怪人、神等など。彼ら発生が空想信仰に依る者どもは、空から生まれた単一であるからこそ、多くが親愛など知らない。 だからその存在が絶対であろうがなかろうが、殆どを対面のみで済

  • 第十七話 背水の陣

    紅美鈴というよく分からない妖怪は、出自を辿ると神獣へと行き着く。 ドラゴン、龍。大いなる自然の具現で、混沌たる力の根源。少し傾けば善となり、反対に向いてしまえば悪となる。そんな、茫漠とした上澄み。 そこから誕生したのが、紅美鈴という妖怪だっ

  • 第十六話 夢幻

    夢幻。それは、創造に至らぬ想像。とりとめもない、不確か。 夢は消えるもので、幻だってそれと同じ。だがしかし、強度が違うばかりで、ひょっとしたら現実もそれらと変わらないものではないか。 胡蝶の夢。邯鄲の夢。主体は果たしてゆらゆらと、思考を待っ

  • 第十五話 弱っちい

    蝶よ花よの言葉はあれども、誠に野花の生は辛いもの。 日に灼かれて虫にたかられ、水を蓄えることすら難儀する。そもそも、身を委ねた地に命を預けることすら生半可な生き物であっては出来ないこと。 だが、それでも花は咲く。歪であっても汚れていようが、

  • 第二十話 あんたはあんた

    「はっ、今日も生きるには丁度いい天気だっ」 独り言つ、晴天に白を混じえた黒き一線。 逃げゆく金の長髪を魔女帽で押さえながら昼に忘れた闇夜を空に描くように飛翔しているのは、魔法使いの少女霧雨魔理沙だった。 彼女は霧雨店のお嬢様を辞めて久しく、

  • 第十四話 負けないで

    全てに見上げられるためにある輝き。何よりも美しく刺激的な、一つ星の形象。 それを計る数字になど欠片の意味もなく、どこまでも幻想的なその決めつけにこそ価値があった。 曰く、最強。 別段三千世界にて比べあったことすらないというのに、その個体はそ

  • 第十三話 もしもの時は

    人において分かりやすい証というものは、名前と立場であるだろう。 こと現世においては名刺にでかでかと書かれた名前と所属により、その人を信頼する場合も往々にしてあった。 しかし、幻想に捨てられた際全て忘却してしまった少女には何も存在せず、故にサ

  • 第十二話 めでたし、めでたし

    時を止めてしまえば止めた人だって動けない。 そう、時間を止めてしまえば従属する空間だって凍る。そんな中を泳げる人間なんて果たして存在するのだろうか。 勿論、ただの人がそんなことを可能にするのはきっと難しい。また、粒ごと固定された全てを退かす

  • 第十一話 サクヤ

    その銀の少女が人里に現れたのは、酷く暗ったい夜も更けた頃合いであったようだ。 少女は、幻想郷では珍しくもない木造の家屋の間をきょろきょろと驚きに怯えながら歩いていたらしい。 酔いに酔った、問屋の番頭が赤ら顔で目抜き通りを歩んでいたところ、そ

  • 第十話 〇〇〇〇の幻想入り

    彼女、〇〇は己が稀なる血の先祖返りであるということは知っていた。 それもそうであるだろう、こんなシルバーブロンドの自毛を生やした日本人なんて、他にはいない。祖父が厳しく話すのを聞くまでもなく、自分が他と違うことくらい分かっていた。 「でも、

  • 第九話 †

    「むにゃむにゃ……」 パイプ椅子に背を寄りかからせて、ぐっすり。その赤い髪おさげを垂らしながら、赤き彼女は眠っていた。 つるりつるりが継ぎ目なく。そして少女の周りで時折キラキラ星空のように瞬く原色が、出来損ないのサイエンスフィクションのよう

  • 第八話 虹

    上白沢慧音は、戸惑っていた。 昨今人里に見受けられる妖怪への恐怖を忘れがちな風潮を憂い、人里にて自らの寺子屋を作るという目標のための方々への根回し、そして子供達と顔を合わせていく内に、最近しょっちゅう耳に入るようになった名前。紅美鈴。 人側

  • 第七話 どうして貴女は

    月は分厚い雲間に消えて、幻想の地は蕩けるような、闇の中。多くが寝入る夜に、レミリア・スカーレットは幻想の空気を初めて吸い込んだ。 すぅ、と花蕾の唇は開かれて、喉が動いて涼を嚥下する。人工の飛沫は完全に除かれた、暫くの間味わうことすら出来なか

  • 十五話 天泣く程に恋しくて

    たとえ雨に心地が乱れたとしても、失くしてこの世は恵まれない。 ただ気圧によるものか時に頭がずくんと痛む。思わず庭の先に巌を望めどそこに救いなどはなく。 そんな私事を気にするのはらしくないと彼女は思えども、それでも視線は度々空へ向いた。 雨粒

  • 第六話 レミリア・スカーレットの幻想入り

    レミリア・スカーレットは吸血鬼である。それも、彼女はドラキュラの祖であるヴラド・ツェペシュに連なる家系に生まれたのだとされた程の、生粋の血を啜るもの。 父曰く、実際にかの串刺し公との繋がりは薄いそうであるが、それでもレミリアは生まれつき強力

  • 第五話 べびーしったー

    朧月夜に影二つ。まるでそのものと見紛うばかりの見事な人の形に、球の集い重なりのような不可思議な形状の黒。そんな二つが並んで空を往く。 仲良く、というには一方が少し先導しているような感もあるだろうか。空飛ぶ人間のようなものが、闇を引き連れてい

  • 第四話 私の方が

    博麗神社を祟る怨霊。いや纏わり付き過ぎた挙げ句に御霊信仰に巻き込まれたのか今や博麗神社の主神のようにすらなってしまっている、魅魔。彼女にとって紅美鈴という妖怪は奇々怪々な存在である。 魅魔はこれまで永き間、人の隣で呪っていた精神である。横か

  • 第三話 可愛い妹

    「はっ!」 透過する、薄青に紅。朝霧に乗せた人魚の歌声響く中、霧の湖の畔にて、踊るものが一人。いや、それは舞にしては武骨であっただろうか。美しくも鋭い、それは演武となって霧を裂いていく。 優れた形の移り変わりはあまりに素早い。そこそこな長駆

  • 第二話 代わりじゃないよ

    蒼穹に立ち昇った、残滓の煙、白一筋。神社の境内から振り返り見たその景色ばかりが記憶に残る。 博麗霊夢はその日、人里にて行われた盛大な葬礼に、深く感じることはなかった。 可哀想に、頑張るんだよ、上から投げつけられるそんな言葉を下から聞いて、た

  • 第一話 おかーさん?

    布団の代わりに柔らかに繁茂した草。天井代わりに天の川に星々を散らす天上。木の根に横たえた顔の隣で跳ねた、バッタに笑う。 これは家なき子の、野宿。けれども、野を家とするのは、別に苦痛ではないと、紅美鈴は思う。 「何しろ、昔はこんなのばかりだっ

  • 美鈴おかーさん・目次

    東方Projectの紅美鈴さんが主役の二次創作小説です。 妖怪の彼女が人と妖怪の間を行ったり来たりしながら母のごとくに少女らの心を和ましていく小説となります。 日向に安堵する妖怪、闇を知る人の子。白と黒は果たしてどちらに。

  • 第三十話 逃げ出してはいけない

    ドームのゲスト室から望めるのは、空きを埋め尽くす夥しいまでの人の数。 五万を超える人波がうねるように一人を求めるその様は、まるで蜘蛛の糸のお話に出てくる地獄をすら想起できる。 そして、実際彼らはアイドル鹿子という少女一人に天国を覚えている者

  • 第二十九話 悪役令嬢

    譜を音にする。 それだけの慣れ親しんだ行為がこんなに緊張するとは思わなかったと、オーキッドプロダクションの若き編曲家、類村慎樹は三つ色で染めた短髪を指先で掻きながらそう述べた。 素直に音楽に仕立て上げる、それだけの本来そう過つことのないはず

  • 第二十八話 ハーモニー

    片桐朝茶子という少女は人界にあってしまった天国である。 そして、町田百合は人界に溢れ出ぬよう地獄を抑える蓋だった。 『そういえば結局、あの音楽家さん? あたし達の曲書いてくれなかったねー。どうしてだろ?』 「はっ、そりゃ心壊れた後に他人のこ

  • 第二十七話 片桐朝茶子

    この世に太陽が一つしかないというのは常識ではあるが、それは果たして何故だろうか。 生命が育まれるに丁度いいのがこの奇跡の恒星一強の環境であるが故に、大星は複数に並ばない。 だが、並べてそれと喩えてカシマレイコを太陽と呼んでいるばかりのアイド

  • 第二十六話 地獄じゃない

    七坂愛はこれまで姉という人を今ひとつ知らなかった。 なにせ、姉だという舞は自分のことをよく見てくれないし、直ぐお父さんお母さんと口喧嘩を始めるし、何よりお家に帰ってくることすら希なのである。 また寒そうな服に強い匂いを纏う目つきの悪いお姉ち

  • 第二十五話 星は星を知らない

    さき。それは、町田百合の数少ない友人、遠野咲希のアイドル名である。 名称のひらがな二文字で可愛さを全力アピールしているつもりの彼女は、2メートルにすら迫らん程の成長を見せる物理的大型新人。 彼女はアイドルって何だっけ、という程凄まじい身体能

  • 第二十四話 綺麗なものを壊すのが

    アイドル四天王というものが出来たのは、カシマレイコという天上に付き添うように高度化した少女たちをただのアイドルたちと纏めるのが不可能になった群集の心理に拠って撚られたためとされる。 だがそんな緊急退避的な称号が今や四様の篩のよう。彼女らの何

  • 悲鳴をすら

    「……美味しいです」 一人蕎麦屋のカウンター席に座して、一口いただいて直ぐにそう零したのは碧い目をした栗毛のウマ娘。 主人が少女のためにとせいろ蕎麦たっぷりと盛りに盛ったは十人前。だが、彼女にとってそれは腹八分目に収められる程度でしかないの

  • 第二十三話 とても、幸せだ

    「♪」 目隠し少女が歌った、踊った、微笑んだ。そればかりで華やぐのは、少女の実力が上等に至っているがため。 何もかもが見かけばかりのハリボテでもいい筈のアイドルというものの中で、つま先からてっぺんまで基礎から何までしっかりと詰まった希少な本

  • 番外話⑤ カシマレイコ

    遠野幹彦は、カシマレイコを見いだした栄誉からマネージャーという名のままになっている彼女専属プロデューサーである。 独立した後、社長業も行うというよく分からないことになっているが、それくらいに幹彦という男はカシマレイコというバケモノアイドルに

  • 第二十二話 曲に負ける歌なんて

    望遠鏡で空を覗いてみたところで神と視線が合わないように、人と神々とはあまりに遠すぎる。 だが、アイドルという人界の賑やかしの中にのみ、それは確かに近くあると多くにされて崇められてすらいた。 握手なんて以ての外。電子に載っかった顔と美声ばかり

  • 第二十一話 独りで唄ってない

    実力を天にまで示した。そして、それは網によって地べたに広く拡散されていく。 情報化社会においても遍く全てが、とはいかなくてもそれは少女が傑物であると世に知らしめるのには十分なもの。 それくらいに、初ライブの映像はしばらく多方面に注目された。

  • 第二十話 いいわね

    はじまりがあれば、終わりがあるのは自然。 また、その間隙に全力が賭されていたならば、そう長い間続くものではない。 町田百合の記念すべき初ライブは、駅前に熱狂をもたらしながら一時間足らずで彼女のばいばいと共に終わった。 虜となった聴衆に背を向

  • 第十六話 世界を変えちゃうかも

    高遠稲は、芸能事務所として老舗の域に入っている中堅どころ、オーキッドプロダクションのアイドルである。 子役として事務所入りしてから、カシマレイコに憧れてアイドルの道へ進んだ彼女。 今は亡きお婆ちゃんから貰った名前に芸名を被せることなく大切に

  • 第十五話 知らないのですぅ

    それは、ただ映るだけで世界を墜とせたというのに、彼女はあまつさえ歌って舞って、終いに笑んだ。 やがて世界は、彼女のために凝った。 そう、彼女こそとびきりのアイドルという偶像。 偶像を計るには、持つ権能を見ればいいのだろうが、生きとし生けるも

  • 番外話④ バレンタインデーそのよん

    「ふへぇ……意味分かんねぇですぅ……」 一日終わり、歩む目隠し少女は懊悩に首を傾げる。 毎年周ってくるバレンタインデーというものは、これまで町田百合の心を動かすのに足る一日にはなっていなかった。 そう、たとえ自分の作ったケーキを踏みつけられ

  • 番外話③ バレンタインデーそのさん

    輝田(きだ)プロモーションに所属するアイドルチーム、トゥインクルチアーズの吉野友実と言えば最近そこそこに知られるようになった存在である。 センター、でこそないがチームの中でもアイドルに必要なすべての技術が際立った一人であれば、自ずと目立つ。

  • 番外話② バレンタインデーそのに

    遠野咲希にとって、二月十四日というものは、近頃甘いより苦いイメージが強い。 咲希は、食べ物、ひいてはチョコレートが大好きである。花より団子という言葉があるが、花も団子もいらないからチョコを口いっぱいに含みたい、というのが咲希の本音。 特に幼

  • 番外話① バレンタインデーそのいち

    「ふあぁ……もう甘ったりぃ匂いがする気がしますねぇ……」 二月十四日はバレンタインデーであるという情報くらい、百合だって知っている。 コマーシャルに、誰かの話題、創作の一部。そこら辺が二月のはじめ頃から甘い茶褐色に切り替わっていくのだから、

  • 第十四話 トップアイドルに、なるですぅ

    炎は、燃焼している。罪科を薪として、かけがいのない命だったものを煤として、それでも彼女の内では無常が盛んに。 地獄というのは、本来何より空想であるべき代物である。末期の先の罰なんて、諭しのための道具でしかない方が良かった。こんなの、信賞必罰

  • 第十三話 これでもぉ

    「はぁ……どうしてオレったら、こんなに面倒なことばかりやらされるかねぇ……」 中井裕太は昨今流行りのアイドルマネージャーになって日が浅い男性である。 もともと手足の長さが自慢の彼は男性アイドル志望であったが、事務所に所属し年若くして重く下積

  • 第十二話 安心してね

    偶に幻想物質ではなく、タンパク質等を主にして創られてしまった地獄の蓋であるところの町田百合。 本来無機質であるべきなのに、熱情によって活動的に動いてしまっている彼女は、存外見目を気にしていた。 まあ、その目を開けばどんな格好をしていようが台

  • 第十一話 愛さえあれば

    遠野咲希は高身長に長い手足が特徴的で、そこに少し肉が付いてきてしまったことを気にする年頃の女の子だった。 そんな、体重計を蛇蝎のごとくに嫌う少女は、しかしトレーニングを欠かすことはない。 「一、二、三、一、二……」 美しく、コンパスのように

  • 第十話 勘違いヤローども

    町田百合は悪辣な視覚情報である。一度奥まで見れば、終わりを知る。最果ての地獄を孕んだ生き物など、蠢くべきですらないかもしれない。 そんなものが眼帯をつけて偶像になりきろうとしているのだ。当然、無理が出るというものである。 「あぐっ!」 地熱

  • 第九話 プリティサイズだから

    吉野友実という少女は、アイドルになるために生まれてきたような存在である。 見目は当然のように麗しく、運動神経も抜群で体躯はどこまでも柔らかく、目的のためには媚びることすら容易い精神まで持ち合わせていた。 笑顔なんて、意識するまでもなく人生の

  • 第八話 格好いいじゃない

    与田瑠璃花という元アイドルであるトレーナーにとって、町田百合という少女は不可解そのものだった。 稚児より下手な歩みで、驚くほどに音痴であり、笑顔を作ることすらぎこちない、そんな無才の全体で彼女はトップアイドルに本気で至ろうとしている。 この

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