回樹 作者:斜線堂 有紀 早川書房 Amazon 連作短編集。作者初のSF作品とのことだけど、いい意味で斜線堂さんお得意のジャンルという感じ。 テーマは愛。だと思う。私も大好きなやつですね。 「回樹」死体を取り込むとその人への愛情が転移する木。愛していなければ… 「骨刻」もし骨に文字を刻む技術があったら… 「BTTF葬送」映画には魂がある。古い映画を“葬送”しなければ新たに面白い映画は生まれないとしたらどうする? 「不滅」もし死体が永遠に“不滅”になったら…死体の置き場所はどうなる? どれもよかったけど、特に好きなのはこのへん。結局どうしようもなく愛の話をしておりそこが好きだなあ。 SFとして…
貸本屋おせん (文春e-book) 作者:高瀬 乃一 文藝春秋 Amazon #NetGalleyJPにて読了 女だてらに貸本屋を営むおせん。母は出奔、父は自死、当時は嫁き遅れと称される年齢にさしかかるも、一途な幼馴染・登の求愛を交わしつつ、今日も貸本をかついであちこちを回る。 きっぷのいいおせん、彼女を見守る地本問屋の喜一郎や長屋の住人、それに登。魅力的な登場人物が多く、一気に引き込まれました。特に登、結構いい男だと思うので、続編があればこのあたりの進展も見てみたいところ。 こちらが初単行本とのことですが、とてもそうは思えない完成度と読みやすさ。続編でも、新たな作品でも、ぜひ読んでみたいです…
とりどりみどり 作者:西條奈加 祥伝社 Amazon 「いいじゃないですか、とりどりみどりで」 鷺之介は数えで十一歳、裕福な廻船問屋の末息子。優しく思慮深い長兄は大好きだけれど、かしましく強すぎる姉三人には振り回される日々。 最初の長姉の嫁ぎ先の話で、姉の夫をただの嫌な奴で終わらせてしまわないところでぐっと引き込まれた。このバランス感覚というか、「塩梅」はラストまで続いていて、ずっと影の薄かった年中留守にしている父親が最後いいところを持っていくのがとてもよい。姉たちが強烈な話ではあるんだけど、父と兄の秘密のサシ飲みでぴしっと締まるというね。いつか鷺も加わって三人で飲めるといいね。 そういえば鷺…
黒蝶貝のピアス 作者:砂村 かいり 東京創元社 Amazon #NetGalleyJPにて読了同僚、上司、部下。 仲が良かったけれどしばらく会っていない大学の友達、学内では一緒だったけれどそれ以外では会わなかった友達。 気まずくなった高校の同級生、かつて一緒にステージに立った仲間。 かつて憧れたアイドル。かつて憧れのまなざしを向けてきた少女。 元ローカルアイドル・アゲハだったイラストレーター・菜里子。アゲハに憧れアイドルを目指していたことのある環。環が菜里子の会社に就職することで「再会」した二人と、それを取り巻く女性達との関係性が丁寧に描かれた作品。 ただただ明るいものとはいえない。でも、暗い…
君に光射す 作者:小野寺 史宜 双葉社 Amazon 「石村くんが人にたすけられてもいいんだと思うよ」 「え?」 「たすけるばかりじゃなくて、たすけられてもいいんだと思う」 「ああ」 「でね、こうも思った。その役をわたしがやるのもありかなって」 教師をやめて施設警備員になった主人公・石村圭斗の過去と現在が交互に語られる。 商業施設で見かけた置き引きをしようとした女の子。元同級生からのストーカー行為に悩む教え子の母親(シングルマザー)。 実際こういうとき、どうしたらいいんだろうね。 石村君は正しい。 けれど、教師を辞めるべきだったとは思わないけれど、やっぱり彼は危なっかしいとは感じる。じゃあどう…
朝星夜星 作者:朝井 まかて PHP研究所 Amazon 「料理人は朝は朝星、夜は夜星をいただくまで働くったい」 日本初の洋食屋を作った草野丈吉の妻、ゆきの物語。 夢を追いかける男とその糟糠の妻の話と言えばそうなんだけど、この丈吉の女癖にイライラしちゃってもう! 最初はね、本当においしそうに食べるゆきを見染めた丈吉を見る目のあるいい男だと思ったんですよ。 ところがどっこい、プロと遊ぶも本気にさせて手切れ金を払う、新しい店の店員にやる気ない愛人を入れる、挙句に三人の妾を囲う。 途中読むのが辛くなってくるも、松竹梅のあたりからいっそ笑えて来ちゃって。 どんなときも長崎訛りの抜けないゆきのおおらかさ…
夜が暗いとはかぎらない 作者: 寺地はるな 出版社/メーカー: ポプラ社 発売日: 2019/04/11 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 閉店が決まったあかつきマーケットのマスコット、あかつきんが物語のそばとか後ろとか見えないところで走ったり転んだり人助けしているような話。単純に言うとそのマーケットのある暁町で暮らす人々の連作短編集。 初読みの作家さん。登場人物が多いのでメモを取りながら読みました。繋がるのかと思ったところが繋がらなかったり、思わぬところが繋がったり。特別なことが起きるわけではないけれど、みんな色々あるけれど、基本優しく生きている人たちの話でほっとしました。 あ…
ベルリンは晴れているか (単行本) 作者: 深緑野分 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2018/09/26 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (3件) を見る 1945年のベルリン。米国の兵員食堂で働くドイツ人少女アウグステは、かつての恩人クリストフが遂げた不審な死に関わっている疑惑を向けられる。彼は青酸カリ入りのアメリカ製歯磨き粉を口に含んで亡くなった。その訃報を彼の甥に伝えるため、アウグステは陽気な泥棒カフカを道案内としてその行方を探す旅に出る。 ミステリー部分以外が秀逸。過酷な状況の中でいつも清く正しくなんてきれいごとだけど、懸命に生きる人々。現在と幕間として描かれるアウ…
草々不一 作者: 朝井まかて 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2018/11/22 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 福袋 作者: 朝井まかて 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/06/21 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 最近読んだ本など。「草々不一」が初朝井作品だったのですが、表題作が良かったので続けて読んでみました。 「福袋」は暮れ花火の修吉が良かったなあ~! 不器用な男の純情、いいですね…。 それぞれに味わいのある短編集なんですけど、結構合う合わないがあったというか、個人的には純愛や家族の愛がにじむ話が好みだったので、今後朝井作品を読むな…
傲慢と善良 作者: 辻村深月 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2019/03/05 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る この人は――とても鈍感なのだ。 架の婚約者・真実が消えた。思い出されるのは二か月前、彼女が「ストーカーが家にいる」と怯えて電話をかけてきた夜のこと。 真実の行方、そしてストーカーの正体を探るべく彼女の周辺や過去を調べ始める架だが、やがて意外な真実が見えてきて――という話。 前半はサスペンス風味。真実が地元でしていた婚活の描写が妙にえぐくてウッと胸が詰まりそうになる。ことの「真相」はわりとわかりやすく伏線が散りばめてあるので察しがついた。 それが明らかに…
あなたの愛人の名前は 作者: 島本理生 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2018/12/14 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 「気づいてさ。金って、愛があるからじゃなくて、関わりたくないときに渡すもんだって」 どれも少しだけ繋がっている連作短編集。その中でも「あなたは知らない」「俺だけが知らない」は対になっています。 婚約中の瞳さんとあいまいな関係で体を重ねる浅野さんは、優しいけれど、恋とか愛とかがわからないと思っているし、瞳さんも何となくそれがわかっている。それでも少しずつ心を通わせる二人。 瞳さん視点の浅野さんは本当に魅力的でやわらかくて、彼も何らかの想いを向けてくれ…
恐ろしく放置しましたが何事もなかったように更新。 水は海に向かって流れる(1) (KCデラックス) 作者: 田島列島 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2019/05/09 メディア: コミック この商品を含むブログを見る ……君はさ 本当に いい子なんだね 家から遠い高校に通うためおじさんちに下宿することになった直達を迎えに来てくれたのは榊さんという女性だった。おじさんは会社をやめて漫画家になっていて、シェアハウスで暮らしていたのだ。直達もおじさんも知らなかったけれど、実は榊さんは直達の父親と深い関わりがあって……という話。 前作「子供はわかってあげない」よすぎていまかいまかと待っていた…
滋賀で食べたごはんと、おみやげについて。
一月も半ばにさしかかろうとしていますが、あけましておめでとうございます。 間があきましたが滋賀の旅行記事の完成と、あとは年始に京都に旅行をしていたのでそのことを書けたらなと思っています。 京都へは有給がとれたのと、高島屋の浅田真央ちゃん展にどこかで行きたいなあと思っていたので(地元にはこない…)、思い立って行ったのですが、新年早々の京都というのは初めてだったので、妙に楽しかったです。 皆さん衣装見ながらだいたい「ほそっ…」と呟いてるのが面白かったです笑 意外と男性のお客さんが多かったのと(二人組の若い男性をよく見かけました)、真央シアターで最初から最後まで皆さん映像を真剣に見られているのが印象…
ajik.hatenablog.com 1日目の続きです。京都で念願の瓢亭別館で朝粥を頂いた後、電車で浜大津に向かいました。
「旅と本」というタイトルなのに、一度も旅の記事を書いていなかったので、今年の初夏に行った滋賀の記録など。
今クール見ているのは、民衆の敵、監獄のお姫さま、刑事ゆがみ、陸王、それからセトウツミ。 もともと映画になった時に気になっていたんだけど、アマゾンプライムでいつでも見られるかと放置してたので、映像化は初見。第一話の会話のぎこちなさにこりゃダメだと切ろうとしたんですが、だらだら流している間になんか、妙にツボに入ってきた。 二人ともぺらぺらと喋らないのがなんかリアル男子高校生のようで、その上だんだん上手くなってきてる気がする。特にハツ美ちゃんが出てくると内海との謎コンビネーションとツッコミに回らざるを得ない瀬戸がとても面白くて一人でニヤニヤ笑ってます。今度映画も見てみよう。 セトウツミ 発売日: 2…
ごくせん 1 (クイーンズコミックスDIGITAL) 作者: 森本梢子 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2013/06/25 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る いわずと知れた有名作なんであらすじ省略。まあ簡単に言うと極道の三代目の孫娘が教師になって、生徒たちや家族と巻き起こすドタバタコメディ。 なんだけど多くの読者が私と同じように爆笑しながらもラブコメとして楽しんでいたんじゃないかと思う次第。久美子に惚れ込んでく慎、篠原先生に憧れながらも慎を頼りにし出す久美子、そして篠原先生の真意と将来、このあたりはなんだかんだすごく丁寧に描かれてました。 が、いざ恋愛モード突入と…
政略結婚 作者: 高殿円 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2017/06/24 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 「…………はい」 呆然としたままタカさんは言った。ようやく声が出た、といった風に見えた。 「すべて、貴女のおっしゃるとおりにします」 三つの時代を生きた女性の、政略結婚を巡る話。 と、言っていいのかどうか。タイトルと表紙の雰囲気に惹かれて読み出したんだけど、実際あんまり政略結婚関係ない。「お家」というものに縛られながらも前向きにまっとうにいきいきと生きた女性たちのお話ではあると思います。 正直このタイトルで、縁のある女性たちを繋ぐ九谷が描かれた趣向とし…
校閲ガール トルネード (角川書店単行本) 作者: 宮木あや子 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店 発売日: 2016/10/27 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (2件) を見る 「いいよ。今日の夜空いてる? 飯食おうぜ」 「なんでよ、いま取りに行くか、あとで届けてよ、なんであんたとご飯食べなきゃいけないの」 「接待用に開拓しときたい店があんだよ、ひとりで行くのもかっこつかないから、おまえ付き合え。俺のおごりで東京いい店たかい店だぞ」 「ゴチになります!」 間髪入れず答えた悦子に、ゲンキンだなー、と呆れた顔を見せたあと、貝塚は「じゃああとでな」と言って何故か…
ダマシ×ダマシ (講談社ノベルス) 作者: 森博嗣 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/05/08 メディア: 新書 この商品を含むブログ (5件) を見る 「こうやって、事件のことをああでもないこうでもないって、小川さんと話すのが楽しくて、ああ、これが僕の青春だったんだなって、今わかりました。だから、うーん」 「だから、何なの?」 「だから、もう充分かなって」 Xシリーズ六作目にして完結編。 綺麗に終わっているな、という印象。色々な人たちの再スタートの話。 小川さんがとても好きだった。 「青春だった」という台詞が少し切なかった。 私恐らく本筋であるS&Mよりも、VやGシリーズのほ…
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