畑98 / 月見
朝、畑へ行く途中、百姓仲間が里芋を洗っている。「えらい早いこと掘るねんなあ?」と言うと、「今日は月見やさかいに、自分とこ用や!」夏のような暑さ続きで忘れていた。旧暦の八月十五日、十五夜、仲秋の名月だった。名月を愛でながら管弦の遊びを楽しんだのは高貴なお方たち。専業農家だった我が生家では、里芋と薄アゲを炊いたのと、俵型のおにぎりを縁側に供え、我々子どもが河原でとってきたススキを飾るだけという、ひっそりとした祭り事だった。農家にとっては稲の豊作を願う大切な祭りだったが、子どもにとっては夕食に里芋、次の日の朝食にも里芋という、けっこううんざりな祭りだった。そんなことを思い出して、ならばと、我が畑の里芋の試し掘り。四月に親芋の逆さ植えをして、茎を四本伸ばしたうちの二本を収穫。ほんとうの収穫にはまだ一ヶ月早いので、...畑98/月見
2023/09/29 19:05