ちょっといっぷく34――ミエナイチカラ
幼いころ家が貧しかった。ろくに食べる物がなく、毎日腹をすかしていた。ひもじかった。そんなある夜、夢を見た。亡くなった祖父母が出てきて「ついておいで」と言う。言われるがままに後についていくと大きな料亭だった。中に入ると、すでに亡くなっている叔父や叔母、親戚の人々が集まって賑やかに食事をしている。祖父が「さあ、おまえも遠慮せんと、たんと食べ」。祖母が「これおいしいで」と言いながら次々と料理を勧めてくれる。空腹だったのでみんな食べた。久々の満腹感だった。朝になり目が覚める。「なんや、夢あったんか」しかし、なぜか満腹感は残っていた。それからは、食べるものがなくとも、ひもじいとは思わなくなったという。友人の話である。「蓮(はす)と鶏(にわとり)」(『金子みすゞ童謡全集』より)泥のなかから蓮が咲く。それをするのは蓮じ...ちょっといっぷく34――ミエナイチカラ
2022/08/31 09:19