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  • どうしてサボっちゃうの? その11

    夏休みが終わるまでに宿題をやればいいと思っていると、新学期が始まる直前にあわてて始めることになります。いつでもできると思ってしまうからですね。 何かを実行するコツは日時と場所と具体的な行動を決めてしまうことです。 例えば、子どもに対するときでも、「今週中に来週までの宿題を終わらせなさい」と言うよりも、「水曜日の夜8時からリビングのテーブルで算数の宿題をやりなさい」と言うほうが、実行する割合を高めます。さらに、短時間で終わることもわかっています(※1)。 ※1 実行意図 implementation intention,Golwitzer & Brandstatter 1997 瀬戸内海 大崎上…

  • どうしてサボっちゃうの? その10

    誘惑に負けないために、ルールを決めるというやり方もあります。 例えば、帰ってきたら30分だけ宿題をしてから遊ぶとか、起きたら計算問題を5問だけ解くなどと決めます。 つまり、個人的にルールを決めたり習慣づけたりすることによって、ある状況になったらある行動をするようにしてしまうのです。心理学的には、「状況的手がかりと適切な反応を直接的につなげる」「ショートカット方略」(※1)と言います。なんだか、実験室のモルモットみたいな気もしますが、個人的には自分もそうしています。朝起きたら一時間弱仕事をしてからご飯を食べるとか、歯を磨く前に洗濯物を干すなど、大きなことでも細かいことでルールを決めておくとスムー…

  • どうしてサボっちゃうの? その9

    マラソンのコツに、あの電柱までがんばろうというのがあります。あと何キロあると思うとくじけそうになるけれど、電柱までならがんばれる。それを繰り返すのです。 これは「目標をより具体的で低次なレベルで解釈する方略」(※1)の一種です。 何十キロという抽象的なものに対して、人間はがんばれないのですが、電柱まで走るという具体的で低次なレベルならがんばれる、というわけです。 住宅ローンを勧める銀行員が、何十年お金を払って下さいと言わず、一月に○万円だけですよと言うのも同じことです。 勉強するときも、あと何時間やらなければならないとか、何ページとか考えるとうんざりしがちですが、とりあえずこの問題を30分やっ…

  • どうしてサボっちゃうの? その8

    「このゲームをしても、何か自分のためになるわけではない」とか、「後で宿題などをする時間がなくなってしまう」などと、「誘惑(遊び)の価値を低く再評価する方略」(※1)も有効です。 私自身のケースで言えば、麻雀というゲームの複雑さが好きになった時期がありましたが、4人でするものであり、お金をかけるギャンブルの側面もあるので、結構、人の嫌な面を見ることもあります。「このゲームをしても人の嫌な面を多く見ることになるだけだ」と思い始めると、少しずつ足が遠のきました。結果的にこの方略を使っていたようですね。 ※1 Duckworth et al.(2019) 瀬戸内海 下蒲刈島 朝鮮通信使庭園内

  • どうしてサボっちゃうの? その7

    「勉強しようとしているのに、あるいは勉強する必要があるとわかっているのについ遊んでしまうということは、自分の心が弱いからだ」とか、「誘惑に負けてしまうということは、人間よりも動物に近くなっている」などというように、『誘惑をより抽象的で高次なレベルで解釈する方略」もあります(※1)。 人によっては効果があり、私自身も中高生の頃はこのように考えて勉強することがありました。 他のいくつかの方略(※2)と同様に、心の持ち方や人生観に影響があるので、強制は望ましくないと思います。 ※1 Fujita, Trope, Liberman, & Levin-Sagi, 2006;Thaler & Shefri…

  • ちょうどいいレベルの問題を!

    あまりに難しい問題に当たるとやる気を失うことがあります。 塾に通っているのに国語ができないと言われるお子様の何割かは、塾の問題が難しすぎて苦手意識を持っています。受験するにしても、発達段階にふさわしい問題というものがあります。そのあたりの配慮も必要です。 逆に、自信を持たせる目的で、簡単すぎる問題を与えるのもよくありません。子供が「こんな問題もできないと思っているんだ」と感じて、信頼関係が壊れてしまうからです。 したがって、子供をよく知り、どのようなレベルの問題を与えるかについてを、最初に知っておく必要があるのです。 認知心理学の一つに、認知カウンセリングという、家庭教師のような手法があります…

  • 習い事と能力

    能力・知能には様々なものがあります(MI)(※1)。 下の表は、主な習い事と能力の関係です。タテ枠が主な習い事、ヨコ枠がその習い事で活かせる能力・知能です(◎は「とてもよく活かせる」、○は「よく活かせる」)。 まず子どもが様々な学習材料や活動に触れされる機会をつくり、多様な学び方を経験してもらうと同時に、子どもが自発的に選んで取り組むものを見つけ、その能力を伸ばしてあげるときの参考にしてください。 藤井聡太さんは、幼児の時に将棋に出会って夢中になったそうですが、自発的に取り組むものが見つかった一つの例ですね。 ※1 2021-11-07のブログ参照 ※「空間把握能力」とは、物の形や、物がある方…

  • 習い事と能力

    能力・知能には様々なものがあります(MI)(※1)。 下の表は、主な習い事と能力の関係です。タテ枠が主な習い事、ヨコ枠がその習い事で活かせる能力・知能です(◎は「とてもよく活かせる」、○は「よく活かせる」)。 まず子どもが様々な学習材料や活動に触れされる機会をつくり、多様な学び方を経験してもらうと同時に、子どもが自発的に選んで取り組むものを見つけ、その能力を伸ばしてあげるときの参考にしてください。 藤井聡太さんは、幼児の時に将棋に出会って夢中になったそうですが、自発的に取り組むものが見つかった一つの例ですね。 ※1 2021-11-07のブログ参照 ※「空間把握能力」とは、物の形や、物がある方…

  • どうしてサボっちゃうの? その5

    今回は小学校高学年以上向けです。 まず目標を立てます。 志望校合格という目標であれば、なぜ志望校に合格したいのかという、目標の意味や重要性を考えることで、サボりたいとかゲームをしたい、遊びたいとかいう誘惑に勝ちやすくなります。これを「目標意味確認方略」(※1)と言います。例えば、志望校に合格することによって自分の望む職業に就きやすくなるなどというのはよく聞きますね。受験に限らず、どのような目標でも、その意味と重要性を考えることによって誘惑を避けやすくなります。 注意点が二つあります。一つは、目標達成が難しいと考えていると効果がないことです。最初から自分にできるはずがないと考えている場合には効果…

  • どうしてサボっちゃうの? その6

    「誘惑」(遊び等)に負けずに「目標」(勉強等)にとりくむための方法、その6は、「誘惑について考えない」です。この方法は、どのような目標であっても効果があります(※1)。 当たり前ですが、ゲームが好きなら、ゲームのことを考えると、ゲームがしたくなります。したくなったら、そこから引き返すことは難しく、実際にゲームをする確率が高くなります。引き返すことが難しい地点にいかないようにする、という作戦ですね。 私は主に在宅のデスクワークですが、将棋などのボードゲームが好きで、今はネットでもすぐにできるので、ついやってしまい、よく後悔しています。対策として、できるだけゲームのことを考えないようにしています。…

  • 学習の個性化 MIとは?

    英才教育と呼ばれたりする早期の幼児教育には、別に述べた(※1)ように無理や無駄がつきまといます。 しかし、子どものレベルに応じて早く学習を始めたり進度を速くしたりする方が適切な場合もあります(※2)。 では、その「適切な場合」をどのようにして見分けたらいいのでしょうか? 子どもの学習に最適な時期、指導や学習の方法・内容は、個人によって異なります。得意、苦手、興味も異なります。従って、それぞれの子どもの個性に応じた学習内容・指導方法・学習時期を考えることが有効(※3)です。 従って、一人一人の子どものことを知ることが大前提となります。そのヒントになる観点の一つが「多重知能 multiple in…

  • どうしてサボっちゃうの? その4

    孟母三遷という言葉を学校で聞かされた覚えがあります。孟子が子どものころ、家が墓場のそばにあったので、孟子は葬式のまねばかりしていた。商店のそばに引っ越すと今度は商売のまねばかりして遊ぶ。そこで母親は、学校のそばに引っ越した。すると、孟子は勉強するようになったという話でした。 これを「目標に関連した対象への近接性を確保する方略(※1)」と言います。 孟子に勉強してもらうという目標に関連した対象(学校)への近接性を確保した(引っ越した)わけですね。 受験で言えば、あらかじめ志望校を見に行ったり、受験学年になる前に受験当日に会場に行って雰囲気を知ったりしておくと、やる気が出ると言われることがあります…

  • 色々やってみるのが脳の発達によいって本当?

    知能には多数の要素があるので、まんべんなく刺激する(色々やってみる)ことによって開発できる」と言われると、つい納得してしまいがちですが、これは「神話」にすぎません。 知能を扱う精神測定学では、知能の構造(しくみ・成り立ち)について、まだ多数の理論が乱立している段階で、それぞれの理論によって知能の要素(記憶力・言語能力・数の能力・推理能力・知覚する速さ、などなど)は異なっています。 従って、刺激するべき個別の要素を明確に判定できないし、それぞれの要素の発達に必要な経験・学習の違いもわかっていません(※1)。 何をやっていいかはっきりしていない段階で、とにかく全部やってみて様子をみようというのは、…

  • 親の関わり

    「才能の見分け方(※1)」で、親の判断が結構信頼できると書きました。 その他、親の子どもに対する関わりで、大切だとわかっていることは、「人的資源」、「物的資源」、「相互交渉」などの環境が整えられていることが、早期教育だけでなく、子どもの発達全般にも重要であるということです。 また、そのような環境が、小学生になってからの成績や学習意欲と関係があるという研究もあります(※2) 「人的資源」というのは、具体的には「親とのやりとり」です。生まれたときから、できるだけ子どもと接し、話を聞いてあげることが大切です。 「物的資源」というのは、本やおもちゃのことです。物的資源の豊富なことも大切です。 将棋の藤…

  • どうしてサボっちゃうの? その3

    その3は、「目標実行方略」です。 勉強しない子に対して、昔から「とにかくまず机に座らせなさい」とよく言われます。 これもこの方略の一つで、とにかく目標に向けて行動を始めるなど、行動面で目標に接近する(勉強で言えば、四の五の言わずにとにかく勉強を始める)という方略です。 私はこの方略の愛用者で、家でのデスクワークが多い仕事ですが、仕事をしたくないなと思い始める前に(時には起きたらすぐに)とにかくやり始めるようにしています。始めてみれば意外とすらすら進むものです。 この方略により、「誘惑優先行動(マンガを読むとかゲームをするなど)」が押さえられることが確かめられています(※1)。 注意点は、難しい…

  • 幼児教育に脳科学・心理学の根拠があるって、本当?

    「早期教育の効果には、心理学や脳科学の根拠がある」とか、「大脳の各領域の異なる働きが解明されている」などという宣伝もあります。 もちろん、例えば「楽しい時には脳のこの辺りが活発になっている」というように、ある気持ちになった時に脳のどの領域が活動しているかということは、脳画像技術の進歩によって、わかるようになっています。しかし、その時の脳のメカニズム(しくみや動きや働き)はまだ不明なのです。 また、「右脳と左脳の使い分け」のようなことも言われますが、その分業も単純に説明できるわけではありません。 脳の各場所にそれぞれの働きがあるとしても、脳のある場所を刺激して(脳のある場所を使うトレーニングをし…

  • どうしてサボっちゃうの? その2

    その1は、「誘惑に対して物理的な距離を取る方略」(2021-10-21)でした。 その2は、「気分転換方略」です。 音楽を聴く、散歩をするなど、他のことをしてから勉強に取り組むと効果があります。 ありふれた方法ですが、どのような種類の勉強をする時にも効果がある(※1)ので、おすすめです。 私のところに来て勉強に気乗りがしなかったり集中できなかったりする子どもに対しては、最初にいっしょに「お散歩」してから教えると結構集中してやっています。 自分が仕事をするときも、なかなかやる気が出ないときは、自転車で10分から20分程度その辺を走ると、案外仕事に取りかかれます。 適度な気晴らしは、ストレスや不快…

  • 「幼児のうちにたくさん習い事を」って本当?

    「子どもはいろいろな刺激を求めているので、何でもいくらでも吸収する。だから、早い時期にたくさん習い事をするのが有益」などと言われることがあります。 しかし、これは「神話」にすぎません。 まず、乳児ですが、確かに生後すぐから周りの物や人に刺激を求めます。しかし、乳児自身から能動的に(積極的に)働きかけるものしか、乳児にとって意味のある刺激にはなりません(※1)。 したがって、乳児が「何でもいくらでも吸収する」わけではないのです。 また、乳児も幼児も(というより、人間は)個人の特性によって興味をもつ刺激は異なります(※2)。だから、幼児であっても、やはり何でもいくらでも吸収するわけではないのです。…

  • どうしてサボっちゃうの? その1

    勉強せずについ遊んでしまう。そうならないためにはどうすればよいか。 2021年の心理学研究結果を参考にしながら、「誘惑」(遊び等)に負けずに「目標」(勉強等)にとりくむための方法をいくつか紹介します。個人差もありますので、本人に合っていそうな方法を試してみるのがよいかと思います。 1「誘惑に対して物理的な距離を取る」(※1)。 例えば、机の上にマンガなど遊びに関係するものを置かない、勉強をする場所に遊びに関係するものを置かない、というように簡単に実行できることがたくさんあります。 作家の曾野綾子さんは、子どもが小さいときにテレビを買わなかったそうです。「時間をつぶすために子どもは本でも読むしか…

  • 幼児のうちに教えないと遅すぎるって本当?

    幼児教室の宣伝文句には、「心理学や脳科学によれば、学習は早く始めるほどよい。脳の柔らかいうちに経験しないと、後では取り返しが付かない」などというのがあります。 これは本当でしょうか? 端的に言ってウソです。 その時期を過ぎれば取り返しがつかないという、時期を「臨界期」と呼びますが、人間に明確な「臨界期」はありません(※)。 例えば、母国語(日本であれば日本語)は、生まれてから数年間で習得されます。しかし早ければ早いほどよいというものではありません。生後数年のあるときに子どもが急に話すようになったという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。 また、英語で早期教育が言われますが、早期に学習し…

  • なぜ子どもは「それ」の指すものがわからないのか?―理由と対策―その1

    「『それ』は何を指していますか?」という問題がよくありますが、子どもは結構苦手です。なんとなくこういうことだとはわかっていても、うまく名詞で答えられないことがしばしばあります。しかし、これは、どちらかというと、問題の方が不適切なのです。 かつては、「それ」は前に出てくる名詞を指していて、読むときには、どの名詞を指しているかを理解しながら読んでいると考えられていました。だから、「『それ』の指しているものを答えなさい」というテストが行われ、名詞で答えないとバツをつけるという採点がされてきたのです。 しかし、今は「それ」の指しているものをいちいち理解しようとすることは効率的ではなく、人間はそのような…

  • ほめ方のコツ

    ① 「教えてもらうと、できたね」のように、「教え手」(先生、保護者)のせいにする。 ② 「あなたは(元々)よくできるから」のように、「能力」のせいにする。 ③ 「やりやすいから、できるね」のように「課題(問題)」のおかげだとする。 ④ 「ラッキー!」のように、「運」のせいにする。 ④は問題外ですが、②のようにほめる保護者は案外多いかもしれません。 しかし、①~④よりも、 ⑤ 「がんばったから、できたね」 のように、「努力」のおかげだとするほめ方が、次の「やる気」につながることが明らかにされています(豊田・川崎,2019)。 もう一度ほめ方をふりかえってみましょう。 瀬戸内海 上蒲刈島 朝鮮通信…

  • ちょうどいいレベルの問題を!

    あまりに難しい問題に当たるとやる気を失うことがあります。 塾に通っているのに国語ができないと言われるお子様の何割かは、塾の問題が難しすぎて苦手意識を持っています。受験するにしても、発達段階にふさわしい問題というものがあります。そのあたりの配慮も必要です。 逆に、自信を持たせる目的で、簡単すぎる問題を与えるのもよくありません。子供が「こんな問題もできないと思っているんだ」と感じて、信頼関係が壊れてしまうからです。 したがって、子供をよく知り、どのようなレベルの問題を与えるかについてを、最初に知っておく必要があるのです。 認知心理学の一つに、認知カウンセリングという、家庭教師のような手法があります…

  • 復習なし、テストだけで覚えられる!

    漢字を覚えた後、復習の機会なしにテストを3回くり返したら、成績は上がるでしょうか? それとも下がるでしょうか? 下がると予測する人がまだ多いようです。(大学生にアンケートしたところ、2006年はほぼ全員が「下がる」と答え、2014年は70%の人が「下がる」と答えています;Hayashi,2014) 実は上がるのです。1週間空いても上がる場合があります。このように、テストをするだけで記憶が増していく現象を、記憶高進現象(hypermnesia)(Payne,1987;Elderly,1996)と言います。しかし、上述したように、この現象は日本でほとんど知られていません。 応用の仕方としては、社会…

  • 才能の見分け方

    将棋の糸谷哲郎八段は、大阪大学大学院で哲学を研究しながら、26歳のときに将棋界の最高峰とされる「竜王」のタイトルを取った人ですが、1、2歳の頃に大人ことばで親と話し、ご両親は「この子は頭のできがちがう」と思ったそうです。 このように、才能があるかないかについての親の判断は信頼性が高く、標準的な才能行動評定尺度ともかなり一致します(※1)。かなりの親が、例えば子どもが3歳ごろまでに文字を読むというようなことから、子どもの才能に気づきます(※2)。まずは親自身の目を信じることですね。 むしろ、幼児用の知能検査(WPPSI)の方が、能力が低く評価されてしまうので、才能の見分けには信頼性が低いのです。…

  • どうしてサボっちゃうの? その5

    今回は小学校高学年以上向けです。 まず目標を立てます。 志望校合格という目標であれば、なぜ志望校に合格したいのかという、目標の意味や重要性を考えることで、サボりたいとかゲームをしたい、遊びたいとかいう誘惑に勝ちやすくなります。これを「目標意味確認方略」(※1)と言います。例えば、志望校に合格することによって自分の望む職業に就きやすくなるなどというのはよく聞きますね。受験に限らず、どのような目標でも、その意味と重要性を考えることによって誘惑を避けやすくなります。 注意点が二つあります。一つは、目標達成が難しいと考えていると効果がないことです。最初から自分にできるはずがないと考えている場合には効果…

  • 習い事と能力

    能力・知能には様々なものがあります(MI)(※1)。 下の表は、主な習い事と能力の関係です。タテ枠が主な習い事、ヨコ枠がその習い事で活かせる能力・知能です(◎は「とてもよく活かせる」、○は「よく活かせる」)。 まず子どもが様々な学習材料や活動に触れされる機会をつくり、多様な学び方を経験してもらうと同時に、子どもが自発的に選んで取り組むものを見つけ、その能力を伸ばしてあげるときの参考にしてください。 藤井聡太さんは、幼児の時に将棋に出会って夢中になったそうですが、自発的に取り組むものが見つかった一つの例ですね。 ※1 2021-11-07のブログ参照 ※「空間把握能力」とは、物の形や、物がある方…

  • 学習の個性化 MIとは?

    英才教育と呼ばれたりする早期の幼児教育には、別に述べた(※1)ように無理や無駄がつきまといます。 しかし、子どものレベルに応じて早く学習を始めたり進度を速くしたりする方が適切な場合もあります(※2)。 では、その「適切な場合」をどのようにして見分けたらいいのでしょうか? 子どもの学習に最適な時期、指導や学習の方法・内容は、個人によって異なります。得意、苦手、興味も異なります。従って、それぞれの子どもの個性に応じた学習内容・指導方法・学習時期を考えることが有効(※3)です。 従って、一人一人の子どものことを知ることが大前提となります。そのヒントになる観点は二つあります。一つは「多重知能 mult…

  • どうしてサボっちゃうの? その4

    孟母三遷という言葉を学校で聞かされた覚えがあります。孟子が子どものころ、家が墓場のそばにあったので、孟子は葬式のまねばかりしていた。商店のそばに引っ越すと今度は商売のまねばかりして遊ぶ。そこで母親は、学校のそばに引っ越した。すると、孟子は勉強するようになったという話でした。 これを「目標に関連した対象への近接性を確保する方略(※1)」と言います。 孟子に勉強してもらうという目標に関連した対象(学校)への近接性を確保した(引っ越した)わけですね。 受験で言えば、あらかじめ志望校を見に行ったり、受験学年になる前に受験当日に会場に行って雰囲気を知ったりしておくと、やる気が出ると言われることがあります…

  • 色々やってみるのが脳の発達によいって本当?

    「知能には多数の要素があるので、まんべんなく刺激する(色々やってみる)ことによって開発できる」と言われると、つい納得してしまいがちですが、これは「神話」にすぎません。 知能を扱う精神測定学では、知能の構造(しくみ・成り立ち)について、まだ多数の理論が乱立している段階で、それぞれの理論によって知能の要素(記憶力・言語能力・数の能力・推理能力・知覚する速さ、などなど)は異なっています。 従って、刺激するべき個別の要素を明確に判定できないし、それぞれの要素の発達に必要な経験・学習の違いもわかっていません(※1)。 何をやっていいかはっきりしていない段階で、とにかく全部やってみて様子をみようというのは…

  • どうしてサボっちゃうの? その3

    その3は、「目標実行方略」です。 勉強しない子に対して、昔から「とにかくまず机に座らせなさい」とよく言われます。 これもこの方略の一つで、とにかく目標に向けて行動を始めるなど、行動面で目標に接近する(勉強で言えば、四の五の言わずにとにかく勉強を始める)という方略です。 私はこの方略の愛用者で、家でのデスクワークが多い仕事ですが、仕事をしたくないなと思い始める前に(時には起きたらすぐに)とにかくやり始めるようにしています。始めてみれば意外とすらすら進むものです。 この方略により、「誘惑優先行動(マンガを読むとかゲームをするなど)」が押さえられることが確かめられています(※1)。 注意点は、難しい…

  • 幼児教育に脳科学・心理学の根拠があるって、本当?

    「早期教育の効果には、心理学や脳科学の根拠がある」とか、「大脳の各領域の異なる働きが解明されている」などという宣伝もあります。 もちろん、例えば「楽しい時には脳のこの辺りが活発になっている」というように、ある気持ちになった時に脳のどの領域が活動しているかということは、脳画像技術の進歩によって、わかるようになっています。しかし、その時の脳のメカニズム(しくみや動きや働き)はまだ不明なのです。 また、「右脳と左脳の使い分け」のようなことも言われますが、その分業も単純に説明できるわけではありません。 脳の各場所にそれぞれの働きがあるとしても、脳のある場所を刺激して(脳のある場所を使うトレーニングをし…

  • どうしてサボっちゃうの? その2

    その1は、「誘惑に対して物理的な距離を取る方略」(2021-10-21)でした。 その2は、「気分転換方略」です。 音楽を聴く、散歩をするなど、他のことをしてから勉強に取り組むと効果があります。 ありふれた方法ですが、どのような種類の勉強をする時にも効果がある(※1)ので、おすすめです。 私のところに来て勉強に気乗りがしなかったり集中できなかったりする子どもに対しては、最初にいっしょに「お散歩」してから教えると結構集中してやっています。 自分が仕事をするときも、なかなかやる気が出ないときは、自転車で10分から20分程度その辺を走ると、案外仕事に取りかかれます。 適度な気晴らしは、ストレスや不快…

  • 「幼児のうちにたくさん習い事を」って本当?

    「子どもはいろいろな刺激を求めているので、何でもいくらでも吸収する。だから、早い時期にたくさん習い事をするのが有益」などと言われることがあります。 しかし、これは「神話」にすぎません。 まず、乳児ですが、確かに生後すぐから周りの物や人に刺激を求めます。しかし、乳児自身から能動的に(積極的に)働きかけるものしか、乳児にとって意味のある刺激にはなりません(※1)。 したがって、乳児が「何でもいくらでも吸収する」わけではないのです。 また、乳児も幼児も(というより、人間は)個人の特性によって興味をもつ刺激は異なります(※2)。だから、幼児であっても、やはり何でもいくらでも吸収するわけではないのです。…

  • どうしてサボっちゃうの? その1

    勉強せずについ遊んでしまう。そうならないためにはどうすればよいか。 2021年の心理学研究結果を参考にしながら、「誘惑」(遊び等)に負けずに「目標」(勉強等)にとりくむための方法をいくつか紹介します。個人差もありますので、本人に合っていそうな方法を試してみるのがよいかと思います。 1「誘惑に対して物理的な距離を取る」(※1)。 例えば、机の上にマンガなど遊びに関係するものを置かない、勉強をする場所に遊びに関係するものを置かない、というように簡単に実行できることがたくさんあります。 作家の曾野綾子さんは、子どもが小さいときにテレビを買わなかったそうです。「時間をつぶすために子どもは本でも読むしか…

  • 幼児のうちに教えないと遅すぎるって本当?

    幼児教室の宣伝文句には、「心理学や脳科学によれば、学習は早く始めるほどよい。脳の柔らかいうちに経験しないと、後では取り返しが付かない」などというのがあります。 これは本当でしょうか? 端的に言ってウソです。 その時期を過ぎれば取り返しがつかないという、時期を「臨界期」と呼びますが、人間に明確な「臨界期」はありません(※)。 例えば、母国語(日本であれば日本語)は、生まれてから数年間で習得されます。しかし早ければ早いほどよいというものではありません。生後数年のあるときに子どもが急に話すようになったという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。 また、英語で早期教育が言われますが、早期に学習し…

  • なぜ子どもは「それ」の指すものがわからないのか?―理由と対策―その1

    「『それ』は何を指していますか?」という問題がよくありますが、子どもは結構苦手です。なんとなくこういうことだとはわかっていても、うまく名詞で答えられないことがしばしばあります。しかし、これは、どちらかというと、問題の方が不適切なのです。 かつては、「それ」は前に出てくる名詞を指していて、読むときには、どの名詞を指しているかを理解しながら読んでいると考えられていました。だから、「『それ』の指しているものを答えなさい」というテストが行われ、名詞で答えないとバツをつけるという採点がされてきたのです。 しかし、今は「それ」の指しているものをいちいち理解しようとすることは効率的ではなく、人間はそのような…

  • ほめ方のコツ

    ① 「教えてもらうと、できたね」のように、「教え手」(先生、保護者)のせいにする。 ② 「あなたは(元々)よくできるから」のように、「能力」のせいにする。 ③ 「やりやすいから、できるね」のように「課題(問題)」のおかげだとする。 ④ 「ラッキー!」のように、「運」のせいにする。 ④は問題外ですが、②のようにほめる保護者は案外多いかもしれません。 しかし、①~④よりも、 ⑤ 「がんばったから、できたね」 のように、「努力」のおかげだとするほめ方が、次の「やる気」につながることが明らかにされています(豊田・川崎,2019)。 もう一度ほめ方をふりかえってみましょう。

  • ちょうどいいレベルの問題を!

    あまりに難しい問題に当たるとやる気を失うことがあります。 塾に通っているのに国語ができないと言われるお子様の何割かは、塾の問題が難しすぎて苦手意識を持っています。受験するにしても、発達段階にふさわしい問題というものがあります。そのあたりの配慮も必要です。 逆に、自信を持たせる目的で、簡単すぎる問題を与えるのもよくありません。子供が「こんな問題もできないと思っているんだ」と感じて、信頼関係が壊れてしまうからです。 したがって、子供をよく知り、どのようなレベルの問題を与えるかについてを、最初に知っておく必要があるのです。 認知心理学の一つに、認知カウンセリングという、家庭教師のような手法があります…

  • 復習なし、テストだけで覚えられる!

    漢字を覚えた後、復習の機会なしにテストを3回くり返したら、成績は上がるでしょうか? それとも下がるでしょうか? 下がると予測する人がまだ多いようです。(大学生にアンケートしたところ、2006年はほぼ全員が「下がる」と答え、2014年は70%の人が「下がる」と答えています;Hayashi,2014) 実は上がるのです。1週間空いても上がる場合があります。このように、テストをするだけで記憶が増していく現象を、記憶高進現象(hypermnesia)(Payne,1987;Elderly,1996)と言います。しかし、上述したように、この現象は日本でほとんど知られていません。 応用の仕方としては、社会…

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