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名曲聴いて、何になる? https://why-classic.hatenablog.com

男子高校生の孫が、家に彼女を連れてくる。その子は音大を受験するつもりだそうだ。ジイさんのクラシック音楽の知識や集めたCDが……役に立つのか?

ヲハバリ太郎
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2021/04/15

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  • コロナの穴 (16)

    【作者ご挨拶】開設から半年ちょっとですが、ご覧下さり ありがとうございます!来年もどうぞよろしくお願いいたします。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(16)その日は午前十一時頃に生鮮品の第一便が着 く予定だった。ドライバーはたぶん、おれが (鬼軍曹) と密かに呼んでいる山城さんだろう。山城さんにはあの、重い鎖をガリガリ言わせ てるみたいなダミ声で、思いっきり爆発して もらいたかった。ところが、だ。柿田はもっさりはしているも のの、誘導の声そのものは空間全体をびりび り言わすほどバカでかかった。さすがドーブ ツというか。やつが 「ごぉらいごぉらい(オーライ、オーライ)」 とガナると (なん…

  • コロナの穴 (15)

    (15)その次の日からおれは柿田を連れて鍵の開け 閉めをしたり巡回コースを一緒にまわり、監 視カメラを見ているときには何に注意するか とか、従業員の通用口でチェックするポイン トなんかを教えたり、それから例の納品トラ ックの誘導をやって見せた。「順番、覚えた?」開錠の後でおれがそう聞くとやつはニヤァっ と笑って 「ううん」 と首を横に振った。おれはカッとして (仕事だぞ!) と怒鳴りたくなった。 (遊びの話してるみてえじゃねえか。ガキん ちょかよ、てめーは!)おれはそっぽを向いて、何とか自分の怒りを なだめようとしたが、こいつの無神経さがマ グソみたいにモワァっと臭ってくるようで、 怒りが収ま…

  • コロナの穴 (14)

    (14)また例のバイト先の回想に戻るが……そこの ボス、ブルドッグ男が自分の親戚だと言って 柿田まさるを職場に連れてきたのは去年の2 月下旬だった。おれがバイトを始めてそろそ ろ3ヶ月になろうとしていた。相変わらず仕事でヘマはし続けていたが、と にかく一生懸命ではあったので (ひょっとしたらこのままずっとココに居ら れるかも) という甘い期待がときどき腹の底に湧いてく ることがあった。納品トラックのドライバーにも 「よう、カカシ人間。元気かよ」 と声をかけられるくらいには存在を認められ て(?)きた。以前はこれが 「ゴルぁ! すりつぶすぞ、クソガキ」 だったんだから、それと比べたら大出世だ。柿…

  • コロナの穴 (13)

    (13) おれはどうも、口のまわりの神経がものすご く敏感で、人に見られると段々に痛痒くなっ てくる。だからマスクは (大口隠しの道具) としてふだんから絶対に外せなかった。家の 中であろうとトイレや風呂に入っていようと。だって洗面所の鏡にオレの顔が映って、見る つもりなかったのに自分のデカデカとした口 をうっかり見ちまうってことがあるから、ト イレや風呂に行くときも用心はしておくに限 るから。それがコロナになって、ウィルスなんて極小 のもんがマスクで防げるなんてバカみたいな 話なのに、みんな本気でマスク付け出したと きおれは (ざまあみやがれ) と思った。 (もしかして来たのか? おれの時代…

  • コロナの穴 (12)

    (12)「どうにも我慢できねえで親父を一発殴っち まった。そんで、そのまま家を飛び出したっ て言うんなら、おめえにもカナシミのカケラ くらいはあるってもんだ」(カナシミのカケラ?)「意味、分かるか?」 「へ」 「言われてる意味が分かるのか、って聞いて んだ」 「いや、あの、分かりません」 「だからおめえにはカナシミがねえって言う んだ」返事らしい返事も出来ず、それでも (「カナシミのカケラ」なんて、何となくイ イ言葉だな) と思っていると、伯父さんがまた空になった ジョッキに気づいてくれた。「まだビールでいいのか」 「あの……出来ればウィスキーを」 ロックのウィスキーがやってきて、おれがそ れ…

  • コロナの穴 (11)

    (11)ブルドックおやじから 「しばらくこいつを頼むぞ」 と言われておれの教育係になっていた佐野と いう大学生が、一日にいっぺんは必ず 「おいおい、おぉーい!」 と呆れて大げさに天を仰ぐのだった。「アンタ、それ、ふざけてるワケじゃないよ な?」 違いますとおれが赤くなって答えると佐野は (はぁーっ) とため息をついてぶるぶるっと頭を振る。自分より年下のやつにそんな態度を取られる のは悔しかったが、仕方がない。特に納品のトラックの誘導では、自分じゃ大 声を出したつもりでもやっぱり (モゴモゴ声) だったらしく、運転席から身を乗り出したタ コ坊主みたいなドライバーに 「ナメてんのか、キサマぁ!」 …

  • コロナの穴 (10)

    (10)まあそういう訳で、伯父さんの影響下にある おれのウチはコロナのニュースに振り回され なかった。それだけ世間から受けるストレスは下がった とも言えるんだが、逆に思いっきりコロナに 振り回されてる(振り回されてむしろハイに なってるような)人間に関わるハメになると、 それがかなりのストレスになる。面接帰りに寄ったファミレスでおれの味わっ たのが、まさにそういうストレスだった。面 接に落ちただけでも十分忌々しいのに、ファ ミレスであんな扱いまで受けて、おれはふて くされた。だからそれから一週間、朝も十時近くまで寝 坊して、直接は悪いことをしていない親父の ことも (元はと言えばコイツのお陰で…

  • コロナの穴 (9)

    (9)(いや、いや……そうじゃない) おれもオヤジも、最初は怯えてたんだ。横浜の客船の中で感染が広がっていった、あ のニュースを見たときには (飛んでもねえウィルスが出て来やがった!) って、間違いなくおれもオヤジも震え上がっ た。どこかでそれが変わった。いつからだろう?頭の薄いお笑い芸人が死んだときみんな (恐い恐い) でうろたえ出し、それから必死でマスクを買 い漁ってた頃に、伯父さんがウチに寄って鼻 で笑ったのだ。馬鹿馬鹿しい、って。「おめーらみんな、映画見せられて恐がって んのとおんなじ」 吐き捨てるように伯父さんがそう言ったとき おれもオヤジもポカンとしていた。 「あんなのは映画だと思…

  • コロナの穴 (8)

    (8)おれは仕方なく新聞チラシの募集広告で、 「スーパーなどの警備(派遣)」 という仕事を見つけて面接に行った。軍隊だの戦争だの戦闘とかに、おれは興味 があって、ネット対戦型のバトルゲームに は今だって月に何万もつぎ込んでいる。警備員はもちろん戦闘はしないけど、制服 は着ているし連想クイズの次元でならけっ こう似ているんじゃないかと思って応募し た。親父は、同じチラシにあった 「プラスチック工場の検査業務」 の方がいいんじゃないかと言ったが、おれ は無視した。(オメーの無能のせいでおれが働くハメに なったんだから、オメーの言うことなんか 聞くかよ!) と思って。が、おれはいきなり立て続けに三つ…

  • コロナの穴 (7)

    (7)伯父さんの言うことはきっとその通りなんだ ろうと、おれも思う。だが、変なたとえかも 知れないが、それは身長1メートル80セン チの人たちの常識で、身長60センチの人間 には通じないんじゃないか……とおれは思っ ていた。おれが自殺未遂の騒動を起こした直接の原因 は、バイトをクビになったことだった。形の 上では自分から 「辞めさせて下さい」 と言ったが、実質は叩き出されたのだ。コロナの前から徐々に売り上げが少なくなっ ていたウチの商売が、コロナでまたガクンと 落ち込んだとき、オヤジはうろたえておれに 言った。「なあ謙也。悪いけど、お前……バイトでい いからどこかに勤めて……それで少し、家に …

  • コロナの穴 (6)

    (6)まず恥じらいがないっていうのは、具体的に おれのどういうところを言ってるのか分から ない。その上さらに哀しみがない……なんて、 そもそもどういうこと?いや、第一これは、おれが勝手に 「哀しみ」 という漢字にしたのであって、伯父さんはた だ 「カナシミ」 と言っただけだ。おれは何となく、悲しみよ り哀しみの方が上みたいな感じがして。 「てめえは酒だけは強いんだな」 おれはそのとき、中ジョッキを二口で飲んで しまっていた。中ジョッキならほんとは一気 飲みでも楽勝だが、伯父さんの前だから遠慮 していた。「そんなとこばっかり、あのウワバミ女の大 酒飲みのオフクロに似やがって」 「……」 「いつも…

  • コロナの穴 (5)

    (5)その晩の「やわた」にはけっこう客の出入り があって、おれたちがそういう話をするには 都合がよかった。おれたちは他の客からはも ちろん、店のオヤジさんオカミさんからも適 度に放って置かれた。自殺未遂そのものはその年の春にあったこと で、前の晩親父をぶん殴ったこととは直接関 係がなかったのだが、おれは (ついに、来たか) と思った。いつか伯父さんがその話をするは ずだとは、ずっと考えていた。「この薄っぺら野郎が」 「……」 「てめえのサル芝居なんかにダマされるのは、 てめえのバカ親父だけだ」図星を指されて、おれはうつむいた。手首を切ること自体は十七、八の頃からやっ ている。たが、自分から (…

  • コロナの穴 (4)

    (4) そういう訳で、いまおれは 『法然……』 を読んで勉強している。と言ったって、もと もとこんな本の中味がすんなり入ってくるよ うなオツムじゃないから、ひたすらメモを取 っているのだ。 一一三三年に生まれる。いまの岡山県。 父親は漆間時国(うるまのときくに)で、 押領使(おうりょうし)。一人息子。という具合だ。押領使というのは 「地方の治安維持にあたる役職」 と、本の中で説明してあるが、よく分からな い。ネットでちょこっと調べたりして (まあ、ヤクザっぽい警察みたいなもんだろ) とアタリをつけた。そのうち伯父さんに試験をされるというのは 恐怖以外のナニモノでもないが、同時にほん のちょっと…

  • コロナの穴 (3)

    (3)その親父は、いま伯父さんに一喝されたばか りなのに、ピンク色の和菓子を両手に一つづ つ持ったままモジモジしていた。伯父さんがいたから自分を抑えられたが、普 段ならおれはこういう親父をみるとカッとな る。 (それが「おまんじゅう」かよっ!)親父が手に持っているのは道明寺という、こ しあんをもち米みたいなもんでくるんだ桜色 の和菓子だった。だが親父は、丸っこい菓子 なら何でも「おまんじゅう」と言うのだ。バカかよ、このオッサンは! だいたい、い い歳コイたオヤジがまんじゅうに「お」なん て付けるんじゃねえ。(昨日から、てか、もうひと月くらい親父の ことは殴ってねえんだから、今日はひとつ伯 父さ…

  • コロナの穴 (2)

    (2)先週はまだ親父を殴っていないうちから伯父 さんがやってきた。いや、あれは単に近所に 用があって、ついでに寄っただけなのかも知 れないが、おれは (やる前から、もう牽制に来たんか?) と、ビビった。あのときおれは親父と店の方にいて、見慣れ た「富士興業」の薄汚れたワゴン車が外に止 まったのに気づいてあわててマスクを外した。 (しゃべるときにマスクを外さないと伯父さ んは怒るのだ)伯父さんがクルマから降りて くると、親父は 「よぉ、兄貴」 と言いながらひょこひょこ表に出ていった。伯父さんは親父の顔をチラっと見ただけで返 事もせず、ずかずかと事務所に入り込んで来 て 「殴ってねえだろうな?」 …

  • コロナの穴 (1)

    コロナの穴 (1)おれが親父を殴ると、だいたい三日以内に亀 戸の伯父さんがやって来る。どうやってそれ を嗅ぎつけるのか分からないが、きっとやっ て来る。親父自身は家の中のカッコ悪いことは何でも 隠す性分だから自分で言うはずがないし、フ ィリピン人のお袋と伯父さんとはものすごく 仲が悪い。妹も家を出ているから告げ口は出来ないはず で、なんで伯父さんがそれに気づくのか、お れにはさっぱりわからなかった。この伯父さんは解体屋(引っ越しなんかもや る)の社長をしていて歳はもう六十に近いが、 見た目はヤクザそのものだった。以前は実際 に多少のつながりがあったんじゃないかと思 う。おれは小さい頃から動作と…

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