抽象的な言葉の弊害

日常会話においては，「抽象的」という言葉は「わかりづらい」ということを意味している．例えば，「君の話は抽象的だ」と言われたとすれば，あなたの話はわかりづらいということで非難されていると考えて良い． しかし，そもそも「抽象的」は「わかりづらい」ということを意味しているわけではない．抽象的であるとは具体的ではないということであり，例えば，「犬」という言葉は「チワワ」よりも抽象的であり，「動物」という言葉は「犬」よりも抽象的である．簡単に言うならば，ある概念の外延が大きければ大きいほど，その概念は抽象的であるということになる．チワワの数よりも犬の数の方が多く，犬の数よりも動物の数の方が多いのである．

悩みは言語化せよ

誰しも辛い経験をしたことがあるはずである．────私にはないかもしれない． 「今までで一番辛かったことはなんですか？」という質問を投げかけられるたびに答えに窮する．まあ，こんな質問をされたことはないのだが．きっと困るだろうなあ，と妄想をしているわけだ．もちろん低気圧のせいで頭が割れそうになることはしばしばなのだが，だからといって，「天気が悪い日に頭がとんでもなく痛くなるのですが，あれはやべえですよ」とか答えようものなら，「それが一番辛かったことですか？しょうもない人生を送っているのですね！ああ，可哀想！」などとマウントを取られてしまう可能性がある．困ったものだ． いっそのこと，誰もが「それは納

memento mori

つい先日，このブログがツイッターを徘徊していた私の目に止まった． 難病と闘った末に亡くなられた京都大学の大学院生，山口雄也さんのブログである．彼がブログを始めたのは大学一年生のときであり，当初は日々の随想を書き留めることを目的としていたらしい．しかし，このブログは結果的に，彼の闘病の記録，彼の生きた証となった． どうやら彼は生前からかなり話題になっていたようで，本まで出版しているらしい．私は現時点ではまだ読めていないのだが． 私は普段から自分の死，そして自分の周りの存在者の死を意識することの重要性を吹聴しているわけだが，このブログを読んでまた新たな示唆を得た．いや，そのこと自体はずっと私の中に

memento mori

Just the other day, this blog caught my eye as I was wandering around Twitter. It's a blog by Yuya Yamaguchi, a graduate student at Kyoto University, who passed away after battling an intractable disease. He started his blog when he was a first-year university student, initially writing down his dai

余は如何にしてヴィーガンとなりし乎

誰しも「ヴィーガン」という言葉は聞いたことがあるだろう．しかし，ヴィーガニズムとは一体何なのか，ヴィーガンとはどういう人を指すのか，多くの人はこうしたことについてほとんど，あるいは何も知らないに違いない． もしも，ヴィーガンとベジタリアンが似たようなものだと思っているなら，そして，ヴィーガンを「肉や牛乳，卵などを一切食べない人」として理解しているのであれば，そうした理解は不十分であるか，あるいは誤りである． 後で詳しく説明するが，肉を食べるヴィーガンがいたとしても，状況によっては全く矛盾ではない．では，ヴィーガンとは一体何なのか． 予め言っておくが，私はヴィーガンである．それも新参者のヴィーガ