中山智香子『経済学の堕落を撃つ』
副題は、「自由」VS「正義」の経済思想史。こういうタイトルの命名法は講談社現代新書ではたまに目にするが、ある種の「誤解」や「先入観」を誘引される。が、内容としては、著者自身が「終わりに」に書いているとおり「著者なりの経済思想史の教科書」なのだろう。また、それ以上に、「経済とは人間が生きて食べて暮らしていくための活動であり、これを明らかにし、ささえるのが経済学である」という至極もっともなスタンスが貫かれており、そこに共感する。 著者は1880年代半ばの「方法論争」(オーストリア学派・メンガーvsドイツ歴史学派・シュモラー)から話を始める。それは、ここで、経済学に関わる2つの重要な理念—「自由」と…
2021/04/30 06:00