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2020/02/19

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  • 連載小説・「海のなか」登場人物紹介

    「海のなか」もいよいよ最終局面になってきました。以下の登場人物紹介を読んで完結までお付き合いいただけると嬉しいです。今回の登場人物紹介は今までのまとめ記事に載せていたものに大幅加筆しています。以下には「海のなか」(39)までのネタバレも含みますのでご注意下さい。 【海のなか あらすじ】 とある夏の日、少女・夕凪は海の底にて美しい少年と出会う。少年は夕凪と昔会ったことがあると告げて…。愛と執着の境目を描く群像劇。 【登場人物紹介】 小瀬 夕凪(おぜ ゆうなぎ) 本作主人公。小瀬は父方の苗字。高校2年。B組。いつも無口な少女背中まである真っ直ぐな色素の薄い髪が特徴。細く見えて意外と剛毛。外見は白い…

  • 小説・海のなか(39)

    前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 気がつくと陵とはもう別れていて、わたしはひとり夜道を歩いていた。さっきまで食べていたおでんのせいか、腹の底はほかほかとぬくもりを宿していた。 無意識のうちに頬に触れていた手をそのまま握り込むと冷たかった。季節が移ろっていく。冬は好きだ。雑音が少なくて鬱陶しくない。空気もすっきりと澄んでいるように感じられる。 帰り道、なぜか頭の中の靄は薄らいでいた。つい先程まで嫌になる程付き纏っていた思考の渦が今は遠のいている。かわりに耳の奥では陵の声がいつまでも繰り返し聴こえていた。いつのまにか彼の声は別人のように低くなっていた。陵が変声…

  • 小説・海のなか(38)

    前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 夕凪は零れる涙を止めることができないのか、微かに体を震わせていた。けれどそのうち諦めて、流れてゆく涙をも食うように無言で食べ始めた。俺はといえば、どうすればいいのかもわからず、気がつけばつられるように食べ終えていた。味はしなかった。というよりも、覚えていない。そんなものよりも夕凪の涙の方がずっと衝撃だった。あんなに感情のない涙を、初めて目の当たりにした。なぜなら彼女は理解していない。今の心情も、そして流れた涙の理由も。全てはあの言葉通りだ。夕凪はただ純粋に驚いていた。「自分が涙を流した」という事実に。 俺はとぼとぼと暗闇の…

  • 小説・「海のなか」(37)

    前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com 「ありがとう…」こぼすように呟くと、夕凪は暗がりの中じっとこちらを見つめていた。 「なんか変?」 戸惑って俺は半笑いになってしまう。すると、夕凪ははっとして「いや、本当に来てくれると思ってなくて」 と言った。どうやらお互いに相手がいるか不安に思っていたらしい。そう考えたら、どことなく嬉しくなってしまった。 「夕凪でもそんなこと考えるんだな」 「え?」 「だって周りなんか気にしないと思ってたからさ」 紙袋からおでんを取り出して夕凪に手渡しながら続ける。 「俺が何したって、どうでもいいっていうか…。まあ、そんな感じ」 「なんかそれだけ…

  • 小説・海のなか(36)

    前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com ※今回は海のなか(35)と(36)は連続更新になります。近日中に(37)も更新予定。 *** 無理に走り出したせいで、走り方はまだどこかぎこちなかった。さっきまでのあまりにも自分らしくない強引なやりとりに、いまだ浮き足立っている。きっと俺の演技はバレてしまっているだろう。 羞恥に顔を熱くしながら、俺は全速力で帰路についた。今日の夕凪を思い起こすと熱っているはずの体がスッと冷めていくような恐怖を思い出した。夕凪に声をかけた時、咄嗟に夕凪かどうか自信がないふりをしたが、あれは嘘だった。夕凪であることくらい、最初からわかっていた。昔から…

  • 小説・海のなか(35)

    前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 見つかってしまった、と思った。 今だけは誰にも会いたくなかったのに。けれど、よく考えてみれば会わないはずがないのだ。陵の家はこの神社を抜けてすぐだった。そんなことすら頭から抜けてしまうほど考えに没頭してしまっていたらしい。気まずさに顔を上げることができず、足元に視線を彷徨わせていると、彼の手に握られているそれが自然と目に入ってきた。その両手には焦茶の通学鞄とビニール袋がある。きっと彼は帰宅するところなのだろう。 薄暗いせいで一瞬見た相手の表情は読めなかった。いっそのこと、真っ暗闇なら誰かすらわからなかったろうに。 「夕凪、…

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