『ナイトメア・アリー』を鑑賞。キネノートのレビューはこちら『ナイトメア・アリー』 www.youtube.com まずこの映画の登場人物、キャスティングに驚く。製作にも関与しているブラッドリー・クーパーはもちろんだが、共演の多いケイト・ブランシェットとルーニー・マーラのほか、デル・トロ監督作品の常連や意外な人物がここに並ぶ。前作『シェイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー賞を獲得した効果と言えるかもしれないが、それにしても見世物小屋の物語にこれだけ大勢のスターが集うことがすごいと思う。 原作は1946年にウィリアム・リンゼイ・グレシャムが発表し、同名の映画が翌年タイロン・パワー主演で映画化されて…
黒澤明監督のライフワーク『乱』のメイキング映像を編集したドキュメンタリーが世界で評価されている。作者は河村光彦氏。膨大な量のメイキング映像が残されていたことが驚きだが、それを再現したことは奇跡だ。 黒澤明作品について書き出すとスペースがいくらあっても足りないので、ここでは『乱』にまつわる自分の記憶の、そのまたごく一部を紹介しつつ、この作品と関係者の方のメッセージなどを最後に紹介したいと思う。 話は『影武者』に遡る。 1976年『デルス・ウザーラ』を撮り終えた黒澤明は、次に『乱』の脚本を書き上げるが、スケールが大きすぎて金が集まらず、『影武者』を製作すると発表。主役交代劇から始まって、撮影中のエ…
昨日のアカデミー賞の主役は良くも悪くもウィル・スミスだった。 このニュースが独り歩きして色々言われているが、とにかく異例のことだったね。 第94回アカデミー賞は、終わってみればほぼ予想通りだとも言える。 まだ見ていないが『DUNE』が最多6部門、特に技術系の賞を獲得したのは、むかしむかしその昔、『スター・ウォーズ』が思い出される。第50回アカデミー賞。作品賞はウディ・アレンの『アニー・ホール』。そしてあの年もヴァネッサ・レッドグレイヴの問題発言で会場に不穏な空気が漂った。 今年の作品賞『コーダ』をひとことで説明できない。この受賞を心から祝福したい。この映画の勝利はジョニ・ミッチェルだと思う。B…
同じ高島屋でこういう展示もあった。 「まれびとと祝祭」。8月までやっているらしいので、まだ見ていない方はぜひご覧いただきたい。安藤礼二さんが監修されている。”まれびと”とは霊的な神のようなもの。 サブタイトル―祈りの神秘、芸術の力―とされていて、ここでも芸術というキーワードが示される。芸術などに価値はない、とか書いておいて矛盾するが、そこに”祈り”というキーワードをなぞらえることで、全く違った文化が醸し出される。 例えば沖縄の石垣島にはミルク様という微笑ましい神様がいる。しかしこれ、なんと弥勒菩薩をイメージしているらしい。未来に救いをもたらす弥勒。光瀬龍の『百億の昼と千億の夜』でも極めて重要な…
もう何度落語を聞きにいったろうか? ここお江戸日本橋亭は、柳之助師匠の会にいく日にちを間違えたら、たまたま小遊三師匠のお話を聞かせてもらったりした因縁(?)の場所。 そして去年の4月に友人を介して初めて春風亭龍柳之助師匠の噺を聞かせてもらった。 遊馬師匠と二人会だった。 その後も何度か寄席に行ったり、一緒に飲んだりした関係もあって思い入れが深い。 そして念願の独演会がこの日開かれた。 小さな日本橋亭だが、それでもこの日は盛況で、大勢のお客さんが集まった。噺家も大勢のお客さんの拍手や笑いが彼らのモチベーションだ。 女性の前座さん こと馬さんの「真田小僧」から始まり、二つ目の三遊亭花金さんの「大安…
『愛すべき夫婦の秘密』原題”Being the Ricardos” 驚くことに、ニコール・キッドマンがルシル・ボールを演じている。夫役はバビエル・バルデム。キッドマンはアカデミー賞にノミネートされている。確かに驚くべき演技だ。ルシル・ボールについてはこれまでほとんど知らなかったが、たしかに自分が子供の頃テレビでよく見かけた。ドラマにお客の笑い声が重なる、という構成はその後「奥様は魔女」などにつながる。そういえばあれもニコール・キッドマンがサマンサを演じていた。偉大な女優だ。 この『愛すべき夫婦の秘密』は、ルシル・ボール主演のライブテレビで、毎週驚異的な視聴率を得ていたらしい。ルシル・ボールがも…
高島屋日本橋展で催されている『メゾン・エ・オブジェ パリ展』に向かう。 デザイン・ダイアローグとは、その名のとおりデザインとの対話だ。 日常の身の回りにある家具は何も語らないし、語りかけることもしない。しかし、そのファニチャーをデザインしたつくり手の主張やメッセージはどこかに隠されている。建築や芸術も同じだ。そしてそれらにはもともとなんの価値もない。価値のほとんどは本来あとから生まれるものだ。 例えばこの椅子と電気スタンド。デザイン性としては確かに奇抜なイメージだ。 しかしよく目を凝らして見ると、電気スタンドの支柱が拳銃になっている。作者のフィリップ・スタルクはフランス人で、実は日本にも馴染み…
偉大なるブライアン・イーノがプロデュースした多くの偉大なアーチストの中にU2がいる。ちなみにブライアン・イーノというとその幅広い活躍ぶりはあまり知られていないかもしれないが、彼の専門は環境音楽だ。美術館とかに行くと彼の音楽が流れたりしている。音と音楽の境界線を研究する姿勢は日本の偉大なる音楽家武満徹の活動を連想する。イーノが初期に組んだアーチストにはロバート・フィリップやデビッド・ボウイがいる。 そしてイーノが1980年代中盤からプロデュースしたU2が残した偉大な痕跡は、祖国アイルランドを中心に世界中に影響しリスペクトされている。そのU2の数ある楽曲の中でも極めて重要な曲のひとつが、今回見た『…
『アンネ・フランクと旅する日記』原題は”Where Is Anne Frank” 筋書きに合わせて言うなら”Where Is Anne Frank's dialy”だ。映画の後半で”Where is dialy"という文字が踊る。『戦場でワルツを』のアリ・フォルマン監督作品。 キネノートの『アンネ・フランクと旅する日記』はこちら。少し長いが。 www.youtube.com この映画の主人公はアンネ・フランクではない。アンネ・フランクがオランダの隠れ家で毎日書いた日記。その日記で彼女はイマジナリーフレンドであるキティという赤毛の少女を想像する。このキティが映画の主人公である。『ジョジョ・ラビッ…
ウィンター・オン・ファイヤー ウクライナ、自由への闘い エフゲニー・アフィネフスキー
ちょっと奇をてらうような話だが、いまだからこそ見る映画だ。 www.youtube.com まず、 大変不謹慎なことを書くようだが、この映画の感動は映像にある。目を覆うような残酷なシーンや国家と市民が対立する戦闘シーンなど、心が折れそうになるシーンの連続だ。 しかし、しかしである、 ウクライナの首都に集まる人々がどんどん数を重ねて大勢の人々がそこに集結してからのシーンの美しさ。群集劇というにはあまりにも美しすぎるこの光景が逆に胸を打つのだ。 大晦日に新年を祝うために集う市民がウクライナ国家を怒号のように合唱するシーンの感動。実写映画でこれほどの演出を施すのは不可能だ。どんな映画も現実を超越でき…
原題は”The Adam Project” Netflix映画『アダム&アダム』鑑賞。 www.youtube.com 高額ギャラランキングでドウェイン・ジョンソンと上位を争うライアン・レイノルズが『フリー・ガイ』に続いてジョーン・レヴィ監督とタッグを組んで作ったSF映画。ハルクのマーク・ラファロが父親役で登場する。正月に鑑賞した『ダーク・ウォーターズ』とは全く異なるキャラで好演。子役のウォーカー・スコーベルがとにかく美しくて演技も上手で舌を巻く。 www.youtube.com いわゆるタイムリープものだ。 冒頭、とてつもない宇宙船の迫力ありシーンから始まるこの映画は、これまでのタイムリープ…
『THE BATMAN ザ・バットマン』を高円寺に行く前、西新井で鑑賞。 www.youtube.com 思えばティム・バートンが1989年に復活させたバットマンシリーズはまさにティム・バートンワールドで、技術的な表現に加えてジャック・ニコルソン演じるジョーカーというキャラクターで成り立った。あの映画のおかげで、その後のシリーズで活躍(?)する悪役を多くのスターが演じる道筋を作ったと思う。 そして2005年にノーランが再び復活させたバットマンもまた、『ダークナイト』でヒース・レジャーが演じたジョーカーが頂点となり、2019年にホアキン・フェニックス演じたトッド・フィリップスの『ジョーカー』で一…
過日、高円寺のシアターバッカスで特集された木内一裕監督の全作品を、同級生と一緒に鑑賞した。同級生に映画監督がいるということがまず驚きだったが、年に1度の忘年会ぐらいでしか会うことがなかった彼のこの20年の軌跡をたどる時間を共有したのはうれしかった。 短編映画の自主作品なので、メジャーで見る機会もないし、映画レビューサイトにも出てこないのだが、鑑賞した映画はいずれもクオリティが高く、何よりつくり手である木内氏の姿勢、生涯をかけて取り組もうとしてる姿勢が明確に示されていて心を打った。 この日は、この『Sun Flower向日葵』に出演され齋藤朱海さんが進行役で、会場に中野誠也さん(なんともうじき9…
ちょっと長いですよ。しょうもないブログで、いつもすいません。 イタリアの匿名作家エレナ・フェッランテの『ナポリの物語』を原作とする長編からマギー・ジレンホール(ジェイクの姉)がメガホンを取った母性のドラマ。オリビア・コールマン、ダコタ・ジョンソン、ジェシー・バックリーらの名優による素晴らしい演技が衝突(まさに衝突)する。おだやかなギリシャの舞台とは裏腹に、内面に抱えた母性あるいは親としての本能を喪失した女性たちの切実な叫びが聞こえる。ひりひりするような痛み、もやもやした不安が常に親(特に母親)には秘められている。『ロスト・ドーター』 www.youtube.com たまたまだが、ジョージ秋山さ…
浅草演芸ホールの2月下席に赴く。 狙いは春風亭柳之助師匠だが、同じ日に神田伯山が出てくるというので、早めに移動。 昼席は朝から小さな列ができるぐらいの入り。窓口で木戸銭を払うとき、ドラ猫が愛想を振りまいてくれる。 しょっぱなは桂伸治師匠のお弟子さんの桂伸都さんの「まんじゅうこわい」からスタート。初めての高座だそうだ。声の通りもいいしスジはいいのではないか。素人がこういうと失礼かもしれないが。前日の夜『しゃべれどもしゃべれども』を鑑賞したあとなので、前座や二つ目のことを察しながら聞かせてもらった。 同じ桂伸治門下の桂伸しんさんやナオユキさんで盛り上がる。 周りを見渡すと客席は6割か7割の入りにな…
『ナイル殺人事件』 www.youtube.com クリスティー原作の映画というと、どうしても1974年版シドニー・ルメットの『オリエント急行殺人事件』。アルバート・フィニーのポワロがどうしても原点。ジョン・ギラーミン『ナイル殺人事件』ピーター・ユスチノフも同じイメージで演じていたが、その優雅でのったりした雰囲気が印象深い。と、言いながら、実は1978年は映画館で見ていない。 ケネス・ブラナーが自らポワロに扮して2本も大作を撮る意味はなにか?と考える。それが今回の作品の冒頭に見事に綴られている。ベルギー軍でドイツ戦に従軍したポワロが自軍の窮地を救いながら上官の爆死に巻き込まれ、顔の半分に深い傷…
100万円で家を買い 週3日働く 三浦展 光文社新書 2018/10/30 たまたま家に置いてあった本をチラリと読んだらそこそこ面白いので記録することにした。先に本音を言うと、この本の全てが面白いとかためになるという類のものではない。ビジネス書的なものは所詮作者の自慢話だ。そして同じことを何度も繰り返してページを増やしている。世の中で本当に必要な本などそれほど多くはない。 日本の住宅事情の在り方が大きく変化を求められているような気がする。そのことを考える一助にはなる。一助にはなるが、実行するかどうかは別だ。何度もいうようだが、賛同できるところとできないところがあって、特に自慢げな表現が時々でて…
公開初日に『ドリームプラン』を鑑賞。 www.youtube.com ビーナスとセリーナ・ウィリアムズ姉妹を育て上げた父親”リチャード”・ウィリアムズの話し。テニスウェアをずっと来たままのウィル・スミスが熱演している。原題はKing Richard。 とにかく娘たちを徹底して命がけで育てる父親が描かれる。なぜ彼が娘たちをそれほどまでに厳しくし、命がけで彼女たちを守り続けるのか?という部分が強調されるべき映画だ。もちろん黒人である、面もあるがそれだけではない。リチャードたちが住む地域で起こる日常から開放されようと必死に努力した結果がセリーナ姉妹の業績と名誉に繋がっていたのだ。 しかも、単に厳しい…
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