『法華経』現代語訳と解説 その43 宿王華菩薩よ。この経はすべての衆生を救うのである。この経はすべての衆生を、多くの苦悩から離れさせるのである。この経は大いにすべての衆生を導き、その願を満たすのである。それはまさに、清らかな池が、すべての渇いた者を満たすようであり、寒さを感じる者が、火を得たようであり、裸の者が衣を得たようであり、旅の商人が隊長を得たようであり、子が母を得たようであり、渡ろうとする者が船を得たようであり、病の者が医者を得たようであり、暗闇に燈火を得たようであり、貧しい者が宝を得たようであり、民が王を得たようであり、貿易商が海を得たようであり、灯が闇を除くように、この『法華経』も…
『法華経』現代語訳と解説 その42 妙法蓮華経 薬王菩薩本事品 第二十三 その時に、宿王華(しゅくおうけ)菩薩は、仏に次のように申し上げた。 「世尊よ。薬王(やくおう)菩薩は、娑婆世界においてどのようなわざを行なうのでしょうか。世尊よ。この薬王菩薩は、百千万億那由他の難行苦行をしています。良き方である世尊よ。願わくは説いてください。多くの天竜八部衆、また他の国土より来た菩薩、および声聞たちはそれを聞いてみな喜ぶでしょう」(注1)。 その時に仏は、宿王華菩薩に次のように語られた。 「無量の大河の砂の数ほどの年数が過ぎた遠い過去に、仏がいた。その名を、日月浄明徳(にちがつじょうみょうとく)如来とい…
守護国家論 現代語訳 10 第五章 全体を七門に分けた第五として、正しい教えに導く善知識の人、ならびに真実の教えにはめぐり会うことは難しいことを述べるならば、これに三節ある。 一節は、人身は受け難く仏法は会い難いことを明らかにし、二節は、受け難い人身を受け、会い難い仏法に会うといっても、悪知識に会うために三悪道に堕ちることを明らかにし、三節は、正しく末代の凡夫のための善知識について明らかにする。 第五章 第一節 人身は受け難く、仏法は会い難いことを明らかにすれば、『涅槃経』第三十三巻には、「その時、世尊は地の少土を取ってこれを爪の上に置き、摩訶迦葉に告げて言われた。この土と十方世界の地の土と、…
『法華経』現代語訳と解説 その41 妙法蓮華経 嘱累品 第二十二 その時に釈迦牟尼仏は、法座より立って、大いなる神通力を現わされた。右の手をもって無量の大いなる菩薩たちの頭の上をなでて、次のように語られた(注1)。 「私は測ることもできないほどの無量の歳月において、この得難い阿耨多羅三藐三菩提への教えを修習した。今、これをあなたがたに委ねる。あなたがたはまさに、一心にこの教えを広め、多くの人々を導くべきである」。 このように三度、多くの大いなる菩薩たちの頭の上をなでて、次のように語られた。 「私は測ることもできないほどの無量の歳月において、この得難い阿耨多羅三藐三菩提への教えを修習した。今、こ…
『法華経』現代語訳と解説 その40 妙法蓮華経 如来神力品 第二十一 その時に、千の世界を微塵にしたほどの数の大いなる菩薩たち、および地より涌き出た菩薩たちは、みな仏の前において一心に合掌し、その尊い御顔を仰ぎ見て、仏に次のように申しあげた。 「世尊よ。私たちは世尊とその分身の諸仏の国土において、その仏の滅度の後、まさに広くこの経を説くべきと存じます。なぜならば、私たちもまた自ら、この真理であり清らかな大いなる教えを得て、受持し読誦し解説し書写して、これを供養しようと願うからです」。 その時に世尊は、文殊菩薩はじめ無量百千万億の娑婆世界の大いなる菩薩たち、および多くの僧侶や尼僧や男女の在家信者…
『法華経』現代語訳と解説 その39 妙法蓮華経 常不軽菩薩品 第二十 その時に仏は、大いなる得大勢菩薩(とくだいせいぼさつ)に次のように語られた。 「あなたはまさに知るべきである。もし、『法華経』を保つ僧侶や尼僧や男女の在家信者に対して、悪口を言い、罵ったり誹謗したりするならば、大きな罪の報いを受けることは、すでに述べたとおりである。また、『法華経』を保つ者は、その功徳によって、先に説いた通り、その者の眼、耳、鼻、舌、身体、心の働きはみな清らかとなる。 得大勢菩薩よ。数えることも測ることもできないほど遠い昔に、仏がおられた。その仏の名は、威音王(いおんのう)如来という。その仏の時代の名は離衰(…
『法華経』現代語訳と解説 その38 また次に常精進菩薩よ。もし良き男子や良き女子が、この経を受持し、読誦し、解説し、書写するならば、千二百の舌の功徳を得るであろう。 好ましい味、好ましくない味、おいしい味、まずい味、および多くの渋い味、苦い味など、この舌の器官においては、すべて良い味と変わり、天の甘露のようになり、好ましくないものなどないであろう。 もしその舌の器官を用いて、大衆の中において演説するならば、深く妙なる声を出して、よく人の心に入り、聞く者たちは喜びに満たされるであろう。また多くの天子、天女、帝釈天や梵天などの天的存在は、その深く妙なる声をもって演説される内容を聞いて、みな集まって…
『法華経』現代語訳と解説 その37 妙法蓮華経 法師功徳品 第十九 その時に仏は、大いなる常精進菩薩に次のように語られた。 「もし良き男子や良き女子がいて、この『法華経』を受持し、あるいは読誦し、あるいは解説し、あるいは書写したとする。その人は、まさに現世から未来世において(注1)、八百の眼の功徳、千二百の耳の功徳、八百の鼻の功徳、千二百の舌の功徳、八百の身の功徳、千二百の心の功徳を得るであろう。この功徳をもって、あらゆる器官を優れたものとし、清らかにするであろう。 この良き男子や良き女子は、生まれながらの清らかな肉眼をもって、あらゆる世界の内外にある山林や川や海を見ることができ、下は地獄の底…
『法華経』現代語訳と解説 その36 妙法蓮華経 随喜功徳品 第十八 その時に大いなる弥勒菩薩は、仏に次のように申し上げた。 「世尊よ。もし良き男子や良き女子がいて、この『法華経』を聞いて随喜するならば、どのような福を受けるのでしょうか」。 さらに偈の形をもって次のように申し上げた。 「世尊よ 仏の滅度の後に この経を聞いて随喜する者は どのような福を受けるのでしょうか」 その時に仏は、弥勒菩薩に次のように語られた。 「阿逸多よ。如来の滅度の後に、もし僧侶や尼僧や男女の在家信者、および他の智者であっても年配者であっても若者であっても、この経を聞いて、喜んで教えの場から出て、それぞれの場所に行った…
守護国家論 現代語訳 09 第四章 全体を七門に分けた第四として、謗法の者を対治すべきである証拠の文を出すならば、これに二つある。一つめは、仏法は国王大臣ならびに僧侶や尼僧や男女の在家信者に委ねるべきことを明らかにし、二つめは、まさしく謗法の人が王の治める国にいるならば、必ず対治すべきである証拠の文を明らかにする。 第一に、仏法は、国王大臣ならびに僧侶や尼僧や男女の在家信者に委ねるべきことを明らかにする。 『仁王経』には、「仏は波斯匿王(はしのくおう・歴史的釈迦の在世に、中インドを支配していたコーサラ国の王。息子の祇陀太子(ぎだたいし)は、祇園精舎のために土地を寄進し、娘の勝鬘夫人(しょうまん…
守護国家論 現代語訳 08 ただし『往生要集』は、序文を見る時は法華・真言を顕密の内に入れて、ほとんど末代の人々に相応しくないと記されているようだが、本文に入って委細に一部三巻の全体を見れば、第十の問答料簡の中で、まさしくあらゆる修行の勝劣を定める時、『観仏三昧経』・『般舟三昧経』・『十住毘婆沙論』・『宝積経』・『大集経』などの『法華経』以前の経論を引いて、すべての行に対して念仏三昧をもって王三昧(おうざんまい・最高の瞑想という意味)と定めている。そして最後に一つの問答があり、そこでは、『法華経』以前の禅定念仏三昧は、『法華経』の一念信解に百千万億倍劣ると定めている。また問いを通じて、念仏三昧…
『法華経』現代語訳と解説 その35 また如来の滅度の後に、もしこの『法華経』を聞いて、非難せず、喜びの心を起こす者があるとすれば、まさに知るべきである、これも深く信じ理解した姿である(注1)。 ましてや、読誦し受持する者はなおさらである。この人は、如来を背負っているようなものである。阿逸多よ。この良き男子や良き女子は、私のために塔や寺を建て、僧坊を作り、多くの僧のすべての生活を支えて供養する必要はない。それはなぜであろうか。この経典を受持し、読誦するこの良き男子や良き女子は、すでに塔を起て、僧坊を造立し、多くの僧を供養していることになるのだ。すなわち、仏の舎利(しゃり)をもって梵天に届くほどの…
『法華経』現代語訳と解説 その34 妙法蓮華経 分別功徳品 第十七 その時に、仏の寿命の劫数がこのように長遠であることを聞いて、無量無辺阿僧祇の衆生は、大いに仏からの利益を得た(注1)。 そして世尊は、大いなる弥勒菩薩に次のように語られた。 「阿逸多よ。私が如来の寿命が長遠であることを説いた時、六百八十万億那由他恒河沙の衆生は、無生法忍(むしょうほうにん・注2)を得た。また、その千倍の大いなる菩薩は、聞持陀羅尼門(もんじだらにもん・注3)を得た。また、一つの世界を微塵に砕いた塵の数ほどの大いなる菩薩は、楽説無碍弁才(ぎょうせつむげべんざい・注4)を得た。また、一つの世界を微塵に砕いた塵の数ほど…
『法華経』現代語訳と解説 その33 たとえば、智慧が豊かで、薬の知識が豊富で、よく多くの病を治す良医がいたとする。その人の子供たちは多く、十、二十、あるいは百人以上だったとする。ある時、用事があって遠い国に出かけた。その間に子供たちは毒薬を飲んでしまい、苦しんで地に転げまわった。そして父が家に帰ったが、子供たちの中には、毒を飲んで本心を失ってしまった者もあり、あるいは失っていない者もいた。遠くに父の姿を見て、みな大いに喜んで挨拶し、次のように言った。『よくご無事で帰られました。私たちは愚かにも、毒薬を飲んでしまいました。願わくは治療してくださり、命を長らえさせてください』。父は、子供たちが苦し…
『法華経』現代語訳と解説 その32 妙法蓮華経 如来寿量品 第十六 その時に仏は、多くの菩薩とすべての大衆に次のように語られた。 「多くの良き男子たちよ。あなたたちはまさに、如来の真理を明らかにする言葉を信じ理解すべきである」。 また大衆に次のように語られた。 「あなたたちはまさに、如来の真理を明らかにする言葉を信じ理解すべきである」。 また多くの大衆に次のように語られた。 「あなたたちはまさに、如来の真理を明らかにする言葉を信じ理解すべきである」。 この時に、菩薩たちと大衆は、弥勒菩薩を筆頭として、合掌して仏に次のように申し上げた。 「世尊よ。ただ願わくは、これを説いてください。私たちは仏の…
『法華経』現代語訳と解説 その31 その時に弥勒菩薩、および大河の砂の数を八千倍したほど多くの菩薩たちは、みな次のように思った。 「私たちは昔より今まで、このような大いなる菩薩たちが、地より涌き出して、世尊の前にあって合掌し供養して、如来に挨拶をするようなことは、見たことも聞いたこともない」 その時に大いなる弥勒菩薩は、その多くの菩薩たちの心を知り、ならびに自分自身の疑念を解決しようと思い、仏に合掌し、偈の形をもって次のように申し上げた。 「この無量千万億の多くの菩薩たちは 昔より今まで見たことがありません 願わくは尊い師よ 説きたまえ 彼らはどこから来たのでしょうか 何の因縁をもって集まった…
『法華経』現代語訳と解説 その30 妙法蓮華経 従地涌出品 第十五 その時に、他の方角の仏国土から来た、大河の砂の数を八倍したほど多くの数の大いなる菩薩たちは、大衆の中において起立し、合掌し、礼拝して仏に次のように申しあげた(注1)。 「世尊よ。私たちが仏の滅度の後に、この娑婆世界にあって、努め精進し、この経典を受持し、読誦し、書写し、供養することをお許しいただけましたら、この国土において、広くこの教えを述べ伝えます」。 その時に仏は、多くの菩薩たちに次のように語られた。 「良き男子たちよ。やめなさい。あなたたちがこの経を守り保つ必要はない。なぜならば、私の国土である娑婆世界には、すでに大河の…
守護国家論 現代語訳 07 第三章 全体を七門に分けた第三として、『選択本願念仏集』が謗法にあたる理由を述べる。 問う:何の証拠をもって、法然源空が謗法の者だと言うのか。 答える:『選択本願念仏集』の文を見ると、釈迦一代の聖教を二つに分けている。一つめは聖道・難行・雑行・雑行であり、二つめは浄土・易行・正行である。この中の聖道・難行・雑行とは、『華厳経』・『阿含経』・「方等経」・『般若経』・『法華経』・『涅槃経』・『大日経』などである。一方、浄土・易行・正行とは、「浄土三部経」の称名念仏などである。聖道・難行・雑行がなぜ退けられるのかといえば、末代の凡夫がこれらを修行しても、百人のうちに希に一…
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