『法華経』現代語訳と解説 その29 また文殊菩薩よ(注1)。大いなる菩薩が、後の末の世の、教えが滅びようとしている時に『法華経』を受持する者は、在家、出家の人の中において、大いなる慈しみの心を起こし、菩薩ではない人の中において、大いなるあわれみの心を起こして、まさに次のような思いを持つべきである。『この人たちは、如来が相手の能力に応じて説く教えを大いに失っている。聞きもせず、知らず、悟らず、質問せず、信ぜず、理解しない。この人たちはこの経について、質問せず、信ぜず、理解しないといっても、私が阿耨多羅三藐三菩提を得たならば、どこにあっても、神通力と智慧の力をもって、彼らを導き、この教えの中に入ら…
守護国家論 現代語訳 06 問う:上にあげたところの曇鸞・道綽・善導・慧心などの諸師は、みな法華・真言などの諸経に対しては、末代不相応だとの解釈をしている。これによって、源空ならびに、その教化を受けた弟子たちは、法華・真言を雑行として難行道と排除し、その行者を群賊・悪衆・悪見の人たちと罵り、あるいは祖父の履物を孫が履こうとしても履けないようなものだと聖光房(せいこうぼう・法然の弟子の弁長)は言い、あるいは、享楽の歌にも劣ると南無房(なむぼう・良忠)は言っている。これらの意趣をみれば、すべて時機不相応の義があるということである。これらの人師の解釈をどのように理解したらいいだろうか。 答える:釈迦…
『法華経』現代語訳と解説 その28 妙法蓮華経安楽行品第十四 その時、文殊菩薩は仏に次のように申し上げた。 「世尊よ。この多くの菩薩たちは大変尊い者たちです。仏を敬い従うために、大いなる誓願を立てました。後の悪しき世において、この『法華経』を護持し、読誦し、説くでありましょう。世尊よ。菩薩たる者、後の悪しき世において、どのようにこの経を説くべきでしょうか」。 仏は文殊菩薩に次のように語られた。 「もし菩薩たる者、後の悪しき世においてこの経を説こうとすれば、まさに次の四つに安住すべきである(注1)。 第一は、菩薩の行処(ぎょうしょ)、親近処(しんごんしょ)であって、そこに安住して、衆生のためにこ…
守護国家論 現代語訳 05 第二章 全体を七門に分けた第二として、正法・像法・末法の時代に関して、仏法の興廃を明らかにする。そしてここでは、さらに二節ある。一節として、『法華経』以前の四十余年の間に説かれた諸経と「浄土三部経」との、末法における久住・不久住(注:長く存在するかしないか、という意味)を明らかし、二節として、『法華経』・『涅槃経』と、「浄土三部経」ならびに他の諸経との久住・不久住を明かかにする。 第二章 第一節 第一に、『法華経』以前の四十余年の内の諸経と「浄土三部経」との、末法にける久住・不久住について明らかにする。 問う:如来の教法は大小・浅深・勝劣を論ぜず、ただ時機に依って行…
守護国家論 現代語訳 04 第一章 第四節 第四に、権教を捨てて実教に就くべきことを明らかにする。 問う:その証文は何か。 答える:十の証文がある。『法華経』には、「ただ大乗経典を受持することを願って、他の経の一偈をも受けないようにせよ」。これがひとつめである。『涅槃経』には、「了義経(りょうぎきょう・完全な教えが説かれた経典という意味)に依って不了義経に依らないようにせよ」。四十余年の経典を不了義経という。これがふたつめである。『法華経』には、「この経は持ち難い。もししばらくでも持つ者がいれば、私は歓喜する。諸仏もまた同じである。このような人は諸仏が褒めるのである。これが本当の勇猛というもの…
守護国家論 現代語訳 03 第一章 第二節 第二に諸経の浅深を明らかにする。 『無量義経』には、「初めに四諦を説き、阿含、次に方等十二部経・摩訶般若・華厳海空を説き、菩薩の修行の経る過程を述べる」とある。また、「四十余年には未だ真実を顕わさず」とある。また、「無量義経はこの上なく尊い」とある。これらから、釈迦仏の四十余年間語られた諸経は、この『無量義経』より劣っていることは疑いない。 問う:『密厳経』には、「(この密厳経は)一切の経の中で最も勝れている」とある。また『大雲経』には、「(この大雲経は)諸経の転輪聖王である」とある。『金光明最勝王経』には、「(この金光明最勝王経は)諸経中の王である…
守護国家論 現代語訳 02 第一章 大きく分けた中の第一として、如来の経典の教えには、権実二教が定められていることを明らかにするが、さらにここでは、四節に分ける。第一節は、釈迦一代の経典の分類であり、第二節は、諸経の教えの浅深を明らかし、第三節は、大乗と小乗を分け、第四節は、権教を捨てて実教に就くべきことを明らかにする。 第一章 第一節 第一に、釈迦一代の経典の分類についてである。 問う:仏は最初にどのような経典を説かれたのか。 答える:『華厳経』である。 問う:その証拠は何か。 答える:『六十華厳経(注:『華厳経』の六十巻本のこと。もう一つに八十巻本がある)』の「離世間浄眼品」に、「このよう…
守護国家論 現代語訳 01 守護国家論 正元元年(1259) 三十八歳 序章 (注:この序章という見出しを含め、以下、第一章・第一節などは便宜上のものであり、原文にはない) じゅうぶん、数えきれないほどの悪しき世界のどこかに生まれて来るはずのところ、それを免れて、私たちは奇しくもこの日本に生を受けたのではないか。しかし、せっかく日本に生まれて来ても、結局、多くの人々は死後、数えきれないほどの悪しき世界に堕ちてしまうことは疑いがない。 さらに、この生の後に、悪しき世界に堕ちてしまう理由は、今の日本においては、ひとつやふたつではない。妻子や親族などを思うため、あるいは、殺生や悪しき行ないによる重い…
『法華経』現代語訳と解説 その27 妙法蓮華経勧持品第十三 その時に薬王菩薩摩訶薩と大楽説菩薩摩訶薩は、二万の付き従う菩薩たちと共に、みな仏の前において、次のように誓って言った。 「ただ願わくは世尊よ。ご心配なさらないように。私たちは仏の滅度の後に、まさにこの経典を保ち、読誦し、説くことをいたします。後の悪しき世の衆生は、善根は少なく、高慢であり、自分の利益を貪り、さらに不善根を増し、悟りから遠く離れています。そのような人々を教化することは難しいと言っても、私たちはまさに大いなる忍耐の力を起して、この経を読誦し、保ち説き、書写し、さまざまに供養して、身命を惜しむことはいたしません」。 その時に…
『法華経』現代語訳と解説 その26 妙法蓮華経提婆達多品第十二 その時に仏は、多くの菩薩および天や人や僧侶や尼僧や男女の在家信者たちに、次のように語られた。 「私は、過去の無量の劫の中において、『法華経』を求めることに、たゆむことはなかった。多くの劫の中において、常に国王となって、願を発して、この上ない悟りを求め続け、心が退くことがなかった。六波羅蜜を満たそうと、布施を行なったが、象や馬や珍しい七宝、国や城や妻子、奴隷や従者、さらに自分の頭や目や髄や脳、身の肉や手足を惜しむ心はなく、命さえ惜しまなかった。 その時の世の民たちは、その寿命が無量であった。教えのために、国における位を捨て、政治を太…
『法華経』現代語訳と解説 その25 その時に釈迦牟尼仏は、分身の諸仏がみな集まり、それぞれの立派な座に着いたことをご覧になり、そして諸仏が同じく、宝塔を開くことを願っていることを聞かれ、すぐに座より立って、空中に上りそこに留まられた。すべての人々は起立して合掌し、一心に仏を見上げた。 そこで釈迦牟尼仏は、右の指をもって七宝塔の戸を開かれた。そのとき、まるで大きな城の門の閂(かんぬき)を抜いて開く時のような、非常に大きな音がした。すぐにすべての会衆は、多宝如来が宝塔の中の立派な座に着き、滅度したにもかかわらず、全身が崩れることなく、禅定に入っているかのような姿を見た。さらにまた「良いことだ、良い…
『法華経』現代語訳と解説 その24 妙法蓮華経見宝塔品第十一 その時、仏の前に七宝の塔があった。高さは五百由旬、縦と横の広さは二百五十由旬である。地より涌出して空中に留まった。その塔は、あらゆる種類の宝物をもって飾られていた。五千の欄干があって千万の部屋があった。無数の旗をもって厳かに飾られ、宝の瓔珞が垂れ、万億の宝の鈴がその上に掛けられていた。四面から多摩羅跋(たまらばつ・注1)と栴檀の香りが醸し出され、世界に充満した。その多くの旗は、金・銀・瑠璃・硨磲・碼碯・真珠・玫瑰の七宝をもって造られ、高さは四天王宮に至った。三十三天(さんじゅうさんてん・注2)は天の曼陀羅華を降らして宝塔に供養し、他…
『法華経』現代語訳と解説 その23 妙法蓮華経法師品第十 その時に世尊は、薬王菩薩をはじめ、八万人の菩薩たちに次のように語られた(注1)。 「薬王よ。あなたはこの大衆の中の、多くの天、魔、人および僧侶、尼僧、男女の在家信者、そして、声聞を求める者、辟支仏を求める者、仏の道を求める者を見るか。この者たちで、仏の前において、『妙法蓮華経』の一偈一句を聞いて、一念においてだけでも喜ぶ者に対して、私はみな記を授ける。彼らはまさに阿耨多羅三藐三菩提を得るであろう」。 仏は引き続き、薬王菩薩に次のように語られた。 「如来の滅度の後に、ある人がいて、『妙法蓮華経』の一偈一句を聞いて、一念においても喜ぶ者には…
『法華経』現代語訳と解説 その22 妙法蓮華経授学無学人記品第九 その時、阿難(あなん)と羅睺羅(らごら)は、このように思った。 「私たちも記が授けられれば、どんなにうれしいことだろう。」 すぐに阿難と羅睺羅は座より立って、仏の前に進み、頭を仏の足につけて礼拝し、共に次のように語った。 「世尊よ。私たちにも、記を授かる恵みを与えて下さい。私たちの帰するところは、ただ如来のみです。また私たちは、すべての天や人や阿修羅にまで知られています。阿難は常に侍者として、多くの教えを守り保っています。羅睺羅は仏の子です。もし仏が、阿耨多羅三藐三菩提を得るという記を授けられるならば、私たちの願いはすでに満ち、…
『法華経』現代語訳と解説 その21 妙法蓮華経五百弟子受記品第八 その時に富楼那弥多羅尼子(ふるなみたらにし・注1)は、仏からこの智慧と方便について詳しく説かれた説法を聞き、さらに、多くの大弟子に、阿耨多羅三藐三菩提を得るという記が授けられたこと、また前世の因縁を聞き、また諸仏が大いなる自在の神通力を持つことを聞き、未曾有のことを得て踊り上がるほど喜び、即座に立って仏の前に進み、仏の足を頭につけて礼拝し、片隅に座って仏の顔を目をそらさずに見上げ、次のように思った。「世尊は不思議な力をお持ちで、その行ないは非常に優れている。世間にいる人々の能力の違いに従って、方便の知見を用いて教えを説かれ、衆生…
『法華経』現代語訳と解説 その20 多くの僧侶たちよ。私はこのように沙弥であった時、無量百千万億の大河にある砂の数ほどの多くの衆生を教化した。私に従って教えを聞いた衆生は、阿耨多羅三藐三菩提を得るように導かれたのである。この多くの衆生は、今も声聞である者もいるが、私は常に阿耨多羅三藐三菩提を得るように教え導いている。この者たちも、この教えによって、やがて仏の道に入るであろう。なぜならば、如来の智慧は信じがたく理解しがたいからだ。 その時に私が教化した無量の大河の砂の数ほど多くの衆生は、今のあなたたちであり、さらに、私が滅度した後の未来世の声聞の弟子たちなのである。私が滅度した後は、弟子であって…
『法華経』現代語訳と解説 その19 その時、大通智勝如来は、十方の梵天王をはじめ、十六王子の願いを受け、四諦と十二因縁の教えを説いた(注1)。僧侶や婆羅門、あるいは天、魔、梵天および他の世の人が説くことのできない教えである。 四諦は次の通りである。すべては苦しみである、苦しみの原因は執着が集まったものである、執着を滅ぼせば苦しみも滅びる、その苦しみを滅ぼす道に八正道がある。 また、十二因縁(注2)を説かれた。すなわち次の通りである。無明(むみょう)があるから行(ぎょう)が生じ、行があるから識(しき)が生じ、識があるから名色(みょうしき)が生じ、名色があるから六入(ろくにゅう)が生じ、六入がある…
『法華経』現代語訳と解説 その18 また僧侶たちよ。東南方の五百万憶の国土のあらゆる梵天王は、各々の宮殿が、まばゆいばかりの光明に包まれ、今までになかったほど光輝いていることを見て、躍り上がるほど喜んだ。このため、多くの梵天王が互いに集まって議論をした。その中に、ひとりの大梵天王がいた。名前を大悲(だいひ)という。彼は多くの梵天たちのために、次の偈を述べた。 何の因縁があって このようなことが起きているのだろうか 私たちの宮殿の光明は 今までになかったほど光輝いている 大いなる徳を持つ者が天に生まれたのであろうか 仏が世に現れたのであろうか このようなことは今まで見たことがない まさに共に心を…
『法華経』現代語訳と解説 その17 妙法蓮華経化城喩品第七 仏は多くの僧侶たちに次のように語られた。 「昔、無量無辺不可思議阿僧祇劫の過去に、仏がいた。大通智勝如来(だいつうちしょうにょらい)といい、供養を受けるべき方であり、遍く正しい知識を持ち、勝れた所行を具え、善い所に到達しており、世間を理解しており、無上のお方であり、人を良く導く方であり、天と人との師であり、仏であり、世尊であった。その国を好成(こうじょう)といい、その仏の現われる劫を大相(だいそう)といった(注1)。 僧侶たちよ。その仏が滅度してから今までの歳月は、非常に長いのである。たとえば、すべての世界の土地を細かく擦って、それで…
『法華経』現代語訳と解説 その16 妙法蓮華経授記品第六 その時、世尊はこの偈を説き終って、多くの大衆に次のように語られた。 「私の弟子の摩訶迦葉は、未来世において、三百万憶の諸仏世尊に仕え、供養し師事し敬い讃嘆して、広く諸仏の無量の大いなる教えを説くことになろう。そして、最後の生において仏となるだろう。その名を、光明如来といい、供養を受けるべき方であり、遍く正しい知識を持ち、勝れた所行を具え、善い所に到達しており、世間を理解しており、無上のお方であり、人を良く導く方であり、天と人との師であり、仏であり、世尊である。その国を光徳といい、その仏が出現する時代は、大荘厳(だいしょうごん)という。仏…
『法華経』現代語訳と解説 その15 妙法蓮華経薬草喩品第五 その時世尊は、摩訶迦葉(まかかしょう)および多くの大弟子たちに、次のようにおっしゃった。 「良いことだ。良いことだ。迦葉よ。よく如来の真実の功徳について説いたものだ。誠にその通りである。如来にはまた、数えることのできないほどの多くの功徳がある。あなたたちにそれを説いたとしても、いくら時間と歳月があっても尽くすことはできない。迦葉よ。まさに知るべきである。如来はあらゆる教えの王である。その中に、空しい教えなど一つもない。すべての教えにおいて、智慧による方便をもって説くのである。その説かれた教えは、すべてを知る仏の智慧に至らせる。如来はす…
『法華経』現代語訳と解説 その14 この時、摩訶迦葉は再びこのことを述べようと、偈をもって次のように語った。 私たちは今日 仏の教えを聞き 歓喜踊躍して 未曾有のことを得た 仏は声聞も仏になるということを説かれた 無上の大きな宝を 求めていないにもかかわらず 得ることができた たとえば ある子供が 余りにも愚かであったため 父を捨てて遠くの土地に行ってしまった 諸国を流浪すること五十余年 父は子を思って四方に探し求めた そのあげく捜すのに疲れ ある町に留まっていた 家を造り 平穏な生活に身をゆだねていた その家は非常に富んでいて 金・銀・硨磲・瑪瑙・真珠・瑠璃も多く 象・馬・牛・羊・輿・車・田…
『法華経』現代語訳と解説 その13 妙法蓮華経信解品第四 その時、須菩提(しゅぼだい)と摩訶迦旃延(まかかせんねん)と摩訶迦葉(まかかしょう)と摩訶目揵連(まかもっけんれん)は、仏から聞いた驚くべき教えと、世尊が舎利弗に最高の悟りを開いて仏となると記を授けたことについて、希有で尊いことだという心を起こし、躍り上がるほど喜び、座を立って衣服を整え、右の肩を出して、右の膝を地につけ、一心に合掌して身を曲げて尊敬の意を表し、仏の尊い顔を見上げて次のように言った。 「私たちは、僧侶の筆頭として長い年月が経ち、すっかり年を取りました。自ら、すでに涅槃を得て、これ以上の最高の悟りなどないと思い、それを求め…
『法華経』現代語訳と解説 その12 舎利弗よ 私は衆生のために この譬喩をもって 一仏乗を説く あなたたちがもしよく この言語を信じ受ければ まさにそのすべての者は 仏道を成就することができるのだ この一仏乗は微妙であり 清浄第一であり 多くの世にあって この上ないものであり 仏の喜ばれるところであり すべての衆生が 称賛し 供養し礼拝すべきところである この車には 無量億千もの 多くの力と解脱 禅定と智慧 および他の仏の法がある このような車に乗せて 子供たちを数えきれないほどの劫数に日夜 常に遊戯することができるようにし 多くの菩薩 および声聞たちを この宝の車に乗せて 真っすぐに悟りの道…
『法華経』現代語訳と解説 その11 仏は重ねてこの義を述べようと、偈をもって語られた。 たとえばある長者に 一つの大邸宅があった その家は古く壊れかけており 建物は高く危うく 柱の土台は腐り 梁や棟は傾き歪み 土台の石は崩れ砕 塀や壁は破れ裂け 泥壁は剥げ落ち 覆っている茅は乱れ落ち 垂木やひさしはずれて脱落し 家の周りの垣根は曲がり 汚物が満ちていた 五百人の人々が その中に住んでいた トビやフクロウやクマタカや鷲 烏やカササギや鳩や家鳩 トカゲや蛇やマムシやサソリ ヤスデやゲジゲジ ヤモリやムカデ イタチや貍やハツカネズミや鼠など あらゆる害虫が 縦横無尽に走り回っている 糞尿の臭い 不浄…
『法華経』現代語訳と解説 その10 仏は舎利弗に次のように語られた。 「その通りだ、その通りだ。あなたが言う通りである。舎利弗よ。如来また同様である。すなわち仏はすべての世間の人々の父である。あらゆる怖れ、悩み、憂い、無知、不快などを永遠に尽くしており、余りあることはない。しかも、すべての無量の知見、力を成就しており、畏れるところなく、大神力および智慧の力があって、方便波羅蜜や智慧波羅蜜を具足している。大いなる慈悲を常に働かせ、絶えず善事を求めてすべての衆生に利益を与える。しかも三界(さんがい・注1)の古びて朽ちた燃える家に出現したことは、衆生の生、老、病、死、憂い、悲しみ、苦悩、愚痴、不快、…
『法華経』現代語訳と解説 その9 その時、僧侶と尼僧と男女の在家信者、天、龍、夜叉、乾闥婆、阿修羅、迦楼羅、緊那羅、摩睺羅伽などの大衆は、舎利弗が仏前において阿耨多羅三藐三菩提の記を受けるのを見て、心は大に歓喜し踊躍すること測り知れなかった。それぞれに身に着けていた上衣を脱いで仏に供養した。釈提桓因、梵天王などの無数の天子もまた、天の妙衣、天の曼陀羅華、摩訶曼陀羅華などを仏に供養した。その天衣は、虚空の中にあって自らひるがえった。諸天の百千万種の伎楽、虚空の中において共に同時に奏でられ、その天子たちは多くの天華を降らして、次のように語った。 「仏は昔、鹿野苑において初めて教えの法輪を転じ、今ま…
『法華経』現代語訳と解説 その8 その時、仏は舎利弗に次のように語られた。 「私は今、天、人、出家者、婆羅門たちの大衆の中において語る。私は昔、かつて二万億の仏のもとにおいて、あなたを究極の悟りのために常に教化した。あなたは長い間、私に従って受学した。私は方便をもってあなたを導いたために、今生においても、私の教えを受けることになった。 舎利弗よ。私はあなたが仏道を志願するようにしたが、あなたは今生においてすべてを忘れて、自らすでに滅度を得たと思った。私は再びあなたが前世において行じた道を思い出させようとして、多くの声聞のためにこの大乗経の菩薩の教えであり、仏が護念するところの妙法蓮華経を説くの…
『法華経』現代語訳と解説 その7 妙法蓮華経譬喩品第三 その時、舎利弗は踊躍(ゆやく)歓喜して、すぐに座より立って合掌し、尊い仏を仰いで次のように申し上げた。 「今、世尊に従いこの法の教えを聞いて、未曾有のことと心躍りました。なぜならば、私は昔、仏に従い、このような教えを聞き、多くの菩薩が記を受け仏となることを見ましたが、私たちはそれに預かりませんでした。私自身が、如来の無量の知見を失っていることに心を痛めました。世尊よ。私は常にひとり山林の樹下にあって、座りまた歩きながら、その度に次のように思いました。私たちも同じく世尊の弟子である。どうして如来は小乗の教えをもって導かれるのだろうか。これは…
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