日々認知症診療に携わる病院スタッフのブログです。診療の中で学んだ認知症の診断、治療、ケアについて紹介していきます。
前回は、高齢者や認知症の人にとって有効な「生活動作」活用したリハビリの具体例を、それらによって「期待できる主な効果」とともに6つご紹介しました。 今回はその続きになります。 「床上動作」は認知症高齢者で衰えやすい筋群を鍛えてくれる 和式生活では、日常的に床からの立ち座り動作に代表されるような「床上動作」が必要になります。 前回も「生活動作」を活用したリハビリ例の【具体例その6】の中で少し触れましたが、「床上動作」というのは、上下肢・体幹の筋力とバランス機能を要求されるので、高齢者にとっては比較的難易度の高い動作になっています。 この「床上動作」でよく使われる筋肉としては、「股関節周囲筋群」や「…
前回は、そもそも体力が落ちている高齢者では、身体に負荷がかかるような運動を長い時間行うのはなかなか難しいため、高齢者にリハビリを実施する際のキーワードは「低負荷・少量・頻回」になるけれども、そのような「低負荷・少量・頻回」のリハビリとして活用しやすいのが、毎日生活の中で繰り返し行っている「生活動作」であるというお話をしました。 そして「生活動作」を活用したリハビリは、生活の流れの中で自然に促すことができるので本人の負担感が少なく、リハビリをしたくない人や話の理解が難しい認知症の人にとっても実施しやすいといったメリットがあること、さらには、週1~2回専門的なリハビリを受けるよりも「低負荷・少量・…
前回は、高齢者では生活が不活発になると「廃用症候群」が少しずつ進行していき、それによってさらに生活が不活発になって「廃用症候群」も進行していくという「負のスパイラル」に陥りやすいため、もしそんな状態に陥ってしまったら、できるだけ早く「負のスパイラル」を断ち切る必要があるけれども、心身ともにどんどん弱っていく状態で、高齢者が自ら前向きな気持ちになって日々活動量を上げていくということはなかなか難しいため、他人の手を借りてでも思い切って生活そのものを変えていくしかないというお話をしました。 そして、その時非常に頼りになるのが介護保険サービスであり、中でも通所サービスを導入することができれば、日中起き…
前回は、何らかの原因があって過度の安静を強いられたり、日常生活の不活発や心身機能の不使用によって二次的に引き起こされる「廃用症候群」は高齢者で生じやすいけれども、これは自宅で自立した生活を送っている高齢者であっても、何らかのきっかけで生活が不活発になってしまうと、心身機能の低下とともに、さらに生活を不活発にさせるような要因も次々と生じやすくなるため、このような「負のスパイラル」が加速度的に進行して「廃用症候群」に陥りやすくなるからであるというお話をしました。 また、この「負のスパイラル」が始まるきっかけとしては、病気やケガといった突発的なアクシデントはもちろん、色々なストレスによる気分の落ち込…
前回は「使わない機能は衰える」ことの分かりやすい例として、しゃがんだ姿勢を楽にとれない人が増えてきているけれども、これは今では洋式トイレが主流になって和式トイレを使う機会が減ってしまったことが影響しているのではないかというお話をしました。 また和式生活をしている高齢者の人がベッドを導入しようとする際には、日中の活動量が減って体力が落ちたり、昼寝が増えて生活リズムが崩れやすくなるといったリスクがあることも心に留めておいてほしいというお話をしました。 今回はその続きになります。 「廃用症候群」とは 皆さんは「廃用症候群」という診断名を聞いたことがあるでしょうか。 「廃用症候群」とは、病気やケガなど…
前回は、和式生活からベッドや椅子を使う洋式の生活様式に切り替わると、生活の中で床から立ち座りする機会が減ってしまい、全身の運動機能が低下しかねないというお話をしました。 実は床からの立ち座り動作というのは全身の筋力やバランス機能を多く使うため、特に高齢者にとっては難易度の高い動作であると言え、この動作を日常的に行うことがリハビリにもつながるので、和式生活を続けるだけでも体力の維持・向上を図りやすくなるということもお話ししました。 今回はその続きになります。 しゃがんだ姿勢を楽にとれない人が増えている 「使わない機能は衰える」ことの分かりやすい例が「和式トイレ」の話だと思われます。 今やトイレは…
前回は、人間にはもともと「神経系が環境に応じて最適の処理システムを作り上げるために、よく使われるニューロンの回路の処理効率を高め、使われない回路の効率を下げる」という「脳の可塑性」が備わっていて、「よく使う機能は強化され、使わない機能は衰える」ようになっているので、身体の健康にとっては、その人が普段どのような生活を送っているかといった生活習慣や生活環境などが非常に大切になるというお話をしました。 さらにそのことを考えれば、特に大きな問題もなく和式生活を続けてきたような高齢者が「洋式の生活は楽で便利だから」という理由だけで安易に和式から洋式の生活様式へ切り替えたりすると、運動能力面において「使わ…
前回は、和式の生活様式は確かに不便で、人によっては身体に負担がかかる面があるため、高齢者では安全面を考えて洋式の生活に切り替えるケースが多いけれども、実は身体の健康維持にとって効果的な面もあるということをお話ししました。 今回はその続きになります。 よく使う機能は強化され、使わない機能は衰える 人間の身体はうまくできていて、その人が日常生活で行う頻度の高い動作や生活環境にうまく適応するよう日々モデルチェンジを繰り返しています。 つまり、生活の中で「よく使う機能は強化され、使わない機能は衰える」ということです。 これはいわば人間の限られた機能を、その人の生活環境に合わせて効率良く発揮させるために…
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